実務の友 実友・判例集
 
 最三小判平成9.9.9 集民第185号217頁(裁判所判例検索システム)
(判示事項)
 被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が恋愛関係にある場合と過失相殺において右運転者の過失が被害者側の過失と認められるために必要な身分上、生活関係上の一体性の有無
(裁判要旨)
 被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもない場合には、過失相殺において右運転者の過失が被害者側の過失と認められるために必要な身分上、生活関係上の一体性があるとはいえない。
(参照法条) 民法722条2項
(判決理由抜粋)
 二 原審は、EとDはいまだ正式の夫婦ではないから、Eの過失を直ちに被害者側の過失ととらえて過失相殺をすることはできないが、本件事故は、EとDが待ち 合わせてデートをした後、EがDを同女宅に送り届ける途中に発生したもので、Eの過失も重大であることなどの事情にかんがみれば、なお、衡平の見地から過失相 殺に関する民法722条2項を類推適用し、損害額から一割を減ずる限度でEの過失をしんしゃくするのが相当であるとして、損害合計額5505万8767円を2 分した2752万9383円(円未満切捨て。以下同じ。)から1割を減じ、てん補額各1781万6350円を差し引き、弁護士費用各69万円を付加し、上告人 らに対し支払うべき賠償額を各765万0094円とした。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 不法行為に基づく損害賠償額を定めるに当たり、被害者と身分上、生活関係上一体を成すとみることができない者の過失を被害者側の過失としてしんしゃくする ことは許されないところ(最高裁昭和40年(オ)第1056号同42年6月27日第三小法廷判決・民集21巻6号1507頁、最高裁昭和47年(オ)第457 号同51年3月25日第一小法廷判決・民集30巻2号160頁参照)、DとEは、本件事故の約3年前から恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居し ていたわけでもないから、身分上、生活関係上一体を成す関係にあったということはできない。DとEとの関係が右のようなものにすぎない以上、Eの過失の有無及 びその程度は、上告人らに対し損害を賠償した被上告人がEに対しその過失に応じた負担部分を求償する際に考慮されるべき事柄であるにすぎず、被上告人の支払う べき損害賠償額を定めるにつき、Eの過失をしんしゃくして損害額を減額することは許されないと解すべきである。
 四 そうすると、Eの過失をしんしゃくし、Dの死亡により生じた損害額の全体を一割減額した金額を基に賠償額を定めた原審の判断には、民法722条2項の解 釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。これと同旨をいう論旨は理由がある。





2013.2-

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