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最二小判平成15.7.18 民集第57巻7号895頁(裁判所判例検索システム)
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(判決要旨)
1 貸金業者甲の受ける利息,調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く,乙の受ける保証料等の割合と甲の受ける利息等の割合との合計は乙を設立する以前に甲が受けていた利息等の割合とほぼ同程度であったこと,乙は甲の貸付けに限って保証しており,甲から手形貸付けを受ける場合には乙の保証を付けることが条件とされていること,乙は,甲に対し,保証委託契約の締結業務,保証料の徴収業務,信用調査業務及び保証の可否の決定業務の委託等をしており,債権回収業務も甲が相当程度代行していたことなど判示の事実関係の下においては,乙の受ける保証料等は,甲の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たる。
2 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が利息制限法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができない。
(参照法条) 利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限法3条,民法136条2項,民法488条,民法489条,民法491条
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(判決理由抜粋)
第2 平成13年(受)第1032号上告代理人滝田裕,同川戸淳一郎の上告受
理申立て理由について
【要旨1】1審被告の受ける利息等とE保証の受ける保証料等の合計額が法所定
の制限利率により計算した利息の額を超えていること,前記第1の1(8)記載のE
保証の設立経緯,保証料等の割合,業務の内容及び実態並びにその組織の体制等に
よれば,1審被告は,法を潜脱し,100%子会社であるE保証に保証料等を取得
させ,最終的には同社から受ける株式への配当等を通じて保証料等を自らに還流さ
せる目的で,借主をしてE保証に対する保証委託をさせていたということができる
から,E保証の受ける保証料等は,法3条所定のみなし利息に当たるというべきで
ある。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用す
ることができない。
第3 平成13年(受)第1033号上告代理人松山満芳の上告受理申立て理由
について
1 原審は,1審被告とD技研は,基本取引約定及び手形貸付取引約定を取り交
わし,これに基づく複数の貸付金取引を並行して行っていたのであるから,D技研
がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を支払い,この制
限超過部分を元本に充当した結果生じた過払金については,1審被告の貸主として
の期限の利益を保護した上で他の借入金債務に充当するとすることが,1審被告と
D技研の意思であると合理的に推認され,1審被告は充当されるべき元本に対する
約定の期限までの利息を取得することができると判断した。
2 しかしながら,原審の上記判断のうち,過払金が他の借入金債務に充当され
るとの判断は是認することができるが,この場合に1審被告が充当されるべき元本
に対する約定の期限までの利息を取得することができるとの判断は是認することが
できない。その理由は,次のとおりである。
同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り返
される金銭消費貸借取引においては,借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権
利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることか
ら,弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完済され,
これに対する弁済の指定が無意味となる場合には,特段の事情のない限り,弁済当
時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。
また,法1条1項及び2条の規定は,金銭消費貸借上の貸主には,借主が実際に利
用することが可能な貸付額とその利用期間とを基礎とする法所定の制限内の利息の
取得のみを認め,上記各規定が適用される限りにおいては,民法136条2項ただ
し書の規定の適用を排除する趣旨と解すべきであるから,過払金が充当される他の
借入金債務についての貸主の期限の利益は保護されるものではなく,充当されるべ
き元本に対する期限までの利息の発生を認めることはできないというべきである。
したがって,【要旨2】同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸
付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債
務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充
当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が
存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,
弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定
の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利
息を取得することができないと解するのが相当である。
そうすると,これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな
法令の違反があり,原判決中1審原告らの敗訴部分は破棄を免れない。
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