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最三小判平成19.7.17 集民第225号201頁(裁判所判例検索システム)
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(判決要旨)
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受益者」であると推定される。
(参照法条) 民法704条,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
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(判決理由抜粋)
4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理
由は,次のとおりである。
貸金業者が借主に対して制限利率を超過した約定利率で貸付けを行った場合,貸
金業者は,貸金業法43条1項が適用される場合に限り,制限超過部分を有効な利
息の債務の弁済として受領することができるにとどまり,同規定の適用がない場合
には,制限超過部分は,貸付金の残元本があればこれに充当され,残元本が完済に
なった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識
しているものというべきである。
そうすると,貸金業者が制限超過部分を利息の債
務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められ
ないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そ
のような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合
でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち
民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。
これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,貸金業者である被上告人
は,制限利率を超過する約定利率で上告人に対して本件各貸付けを行い,制限超過
部分を含む本件各弁済の弁済金を受領したことが明らかであるところ,被上告人
は,本訴において貸金業法43条1項の適用があることについて主張立証せず,本
件各弁済の弁済金のうち,制限超過部分をその当時存在する他の貸金債権に充当す
ることを前提とした計算書を提出しているのであるから,上記各弁済金を受領した
時点において貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有していたとの主張をし
ているとはいえず,上記特段の事情を論ずる余地もないというほかない。被上告人
が受領した弁済金について本件各貸付けによる貸金債権が別個のものであることを
前提とする充当計算をしてきたとしても,それによって上記判断が左右されること
はない。
したがって,本件各弁済によって過払金が生じていれば,被上告人は上告
人に対し,悪意の受益者として法定利息を付してこれを返還すべき義務を負うもの
というべきであるから,原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが
明らかな法令の違反がある。
5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中,上告人の敗訴部分のうち,平
成6年5月4日以降の本件取引に係る不当利得返還請求に関する部分は破棄を免れ
ない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
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