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最二小判平成21.9.4 民集第63巻7号1445頁(裁判所判例検索システム)
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(判決要旨)
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は,当該貸金業者が過払金の受領につき民法704条所定の悪意の受益者であると推定されるときであっても異ならない。
(参照法条) 民法704条,民法709条
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(判決理由抜粋)
3 原審は,上記事実関係の下において,第1取引と第2取引とが事実上1個の
連続した貸付取引であると評価することはできず,かつ,第1取引に基づいて発生
した過払金に係る不当利得返還請求権の消滅時効が完成したと判断して上告人の主
位的請求を棄却すべきものとするとともに,被上告人が過払金を受領し続けた行為
が違法であるとはいえないと判断して上告人の予備的請求も棄却した。
所論は,上
告人の予備的請求を棄却した原審の上記判断の法令違反をいうものである。
4 そこで検討するに,一般に,貸金業者が,借主に対し貸金の支払を請求し,
借主から弁済を受ける行為それ自体は,当該貸金債権が存在しないと事後的に判断
されたことや,長期間にわたり制限超過部分を含む弁済を受けたことにより結果的
に過払金が多額となったことのみをもって直ちに不法行為を構成するということは
できず,これが不法行為を構成するのは,上記請求ないし受領が暴行,脅迫等を伴
うものであったり,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであ
ることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たの
に,あえてその請求をしたりしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著し
く相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は,当該貸金業者が過払金
の受領につき,民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合において
も異なるところはない。
本件において,被上告人の上告人に対する貸金の支払請求ないし上告人からの弁
済金の受領が,暴行,脅迫等を伴うものであったことはうかがわれず,また,第1
取引に基づき過払金が発生した当時,貸金業法43条1項(平成18年法律第11
5号による改正前のもの)により,制限超過部分についても一定の要件の下にこれ
を有効な利息債務の弁済とみなすものとされており,しかも,その適用要件の解釈
につき下級審裁判例の見解は分かれていて,当審の判断も示されていなかったこと
は当裁判所に顕著であって,このことからすると,被上告人が,上記過払金の発生
以後,貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通
常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのにあえてその請求をしたという
こともできず,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠くものであ
ったとはいえない。
したがって,被上告人が民法704条所定の悪意の受益者であ
ると推定されるとしても,被上告人が過払金を受領し続けた行為は不法行為を構成
するものではない。
原審の前記判断は,これと同旨をいうものとして是認することができる。論旨は
採用することができない。
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