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最二小判平成21.12.4 集民第232号529頁(裁判所判例検索システム)
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(判決要旨)
更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することは,管財人又は更生会社が,顧客に対し,過払金返還請求権が発生している可能性があることやその届出をしないと更正会社がその責めを免れることにつき注意を促さず,保全管理人が上記貸金業者の発行したカードは従前どおり使用することができる旨の社告を新聞に掲載したなど判示の事情があったとしても,信義則に反するものではなく,権利の濫用にも当たらない。
(参照法条) 民法1条2項,民法1条3項,旧会社更生法(平成14年法律第154号による改正前のもの)241条,会社更生法204条1項
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(判決理由抜粋)
3 所論は,本件決定がされるまでに発生した上告人らの過払金返還請求権につ
き,被上告人において,上告人らが更生債権の届出期間内にその届出をしなかった
ことを理由として,その責めを免れる旨主張することが,信義則に反するとも,権
利の濫用であるともいえないとした原審の判断には,法令違反があるというもので
ある。
4(1) 前記事実関係によれば,管財人等は,本件更生手続において,顧客に対
し,過払金返還請求権が発生している可能性があることや,更生債権の届出をしな
いと被上告人が当該更生債権につきその責めを免れることにつき注意を促すような
措置を特に講じなかったというのである。
しかし,更生計画認可の決定があったときは,更生計画の定め又は法律の規定に
よって認められた権利を除き,更生会社がすべての更生債権につきその責めを免れ
るということ(以下「失権」という。)は,更生手続の根本原則であり,平成14
年法律第154号による改正前の会社更生法(以下「旧会社更生法」という。)に
おいては,更生会社の側において,届出がされていない更生債権があることを知っ
ていた場合であっても,法律の規定によって認められた権利を除き,当該更生債権
は失権するものとされており,また,更生債権者の側において,その責めに帰する
ことができない事由により届出期間内に届出をすることができず,追完もできなか
った更生債権についても,当然に失権するものとされていた。
以上のような旧会社
更生法の規定の内容等に照らすと,同法は,届出のない更生債権につき失権の例外
を認めることが,更生計画に従った会社の再建に重大な影響を与えるものであるこ
とから,更生計画に定めのない債権についての失権効を確実なものとして,更生手
続につき迅速かつ画一的な処理をすべきこととしたということができる。
そうすると,管財人等が,被上告人の顧客の中には,過払金返還請求権を有する
者が多数いる可能性があることを認識し,あるいは容易に認識することができたか
否かにかかわらず,本件更生手続において,顧客に対し,過払金返還請求権が発生
している可能性があることや更生債権の届出をしないと失権することにつき注意を
促すような措置を特に講じなかったからといって,被上告人による更生債権が失権
したとの主張が許されないとすることは,旧会社更生法の予定するところではな
く,これらの事情が存在したことをもって,被上告人による同主張が信義則に反す
るとか,権利の濫用に当たるということはできないというべきである。そして,こ
のことは,過払金返還請求権の発生についての上告人らの認識如何によって左右さ
れるものではない。
(2) 前記事実関係によれば,被上告人の保全管理人は,新聞紙上に「ライフカ
ードは,これまで通りお使いいただけます。」という見出しで本件社告を掲載し,
従前どおりの取引を継続するよう求めたというのであるが,本件社告は,カード会
員の脱会を防止して会社再建を円滑に進めることを目的として行われたものであっ
て,その目的が不当であったとはいえず,その内容も,顧客に対し更生債権の届出
をしなくても失権することがないとの誤解を与えるようなものではなく,その届出
を妨げるようなものであったと評価することもできない。そうすると,本件社告が
掲載されたからといって,被上告人による失権の主張が信義則に反し,権利の濫用
に当たるということはできない。
(3) さらに,前記事実関係によれば,約定利率により計算をした元利金の残債
権額をもって顧客との間の金銭消費貸借取引を管理していた被上告人が,これを前
提としてその評価がされた営業資産をもって,資金を調達することができたこと
や,過払金返還請求権を更生債権として届出する者がわずかであったということ
が,会社の早期再建に寄与したということはできるものの,このような事情があっ
たからといって,上記の判断が左右されるものでもない。
そして,他に,被上告人による失権の主張が,信義則に反し,権利の濫用に当た
ると認められるような事情も見当たらない。
(4) 以上によれば,被上告人において,上告人らの過払金返還請求権が失権し
たと主張することが,信義則に反するとも,権利の濫用であるともいえない。
これ
と同旨の原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。
5 上告人らは,不法行為に基づく損害賠償請求に関する部分についても上告受
理の申立てをしたが,その理由を記載した書面を提出しないから,同部分に関する
上告は却下することとする。
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