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大判昭和10.10.5 民集14巻1965頁(宇奈月温泉事件)
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(判決要旨)
所有権侵害による損害の程度がわずかで侵害除去のために莫大な出費と損失を生ずる場合,第三者が自ら不必要な土地を買収取得し不当の利益を得ようとして,その除去を求め,右土地を不相当に巨額な代金で買取るべき旨の要求を提示するなどの事情があるときは,その侵害排除の請求は権利の濫用にほかならず,認められない。
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(判決理由抜粋)
「 按スルニ所有権ニ対スル侵害又ハ其ノ危険ノ存スル以上所有者ハ斯ル状態ヲ除去又ハ禁止セシムル為メ裁判上ノ保護ヲ請求シ得ヘキヤ勿論ナレトモ該侵害ニ因ル損失云フニ足ラス而モ侵害ノ除去著シク困難ニシテ縦令之ヲ為シ得トスルモ莫大ナル費用ヲ要スヘキ場合ニ於テ第三者ニシテ斯ル事実アルヲ奇貨トシ不当ナル利益ヲ図リ殊更侵害ニ関係アル物件ヲ買収セル上一面ニ於テ侵害者ニ対シ侵害状態ノ除去ヲ迫リ他面ニ於テハ該物件其ノ他ノ自己所有物件ヲ不相当ニ巨額ナル代金ヲ以テ買取ラレタキ旨ノ要求ヲ提示シ他ノ一切ノ協調ニ応セスト主張スルカ如キニ於テハ該除去ノ請求ハ単ニ所有権ノ行使タル外形ヲ構フルニ止マリ真ニ権利ヲ救済セムトスルニアラス即チ如上ノ行為ハ全体ニ於テ専ラ不当ナル利益ノ掴得ヲ目的トシ所有権ヲ以テ其ノ具ニ供スルニ帰スルモノナレハ社会観念上所有権ノ目的ニ違背シ其ノ機能トシテ許サルヘキ範囲ヲ超脱スルモノニシテ権利ノ濫用ニ外ナラス従テ斯ル不当ナル目的ヲ追行スルノ手段トシテ裁判上侵害者ニ対シ当該侵害状態ノ除去並将来ニ於ケル侵害ノ禁止ヲ訴求スルニ於テハ該訴訟上ノ請求ハ外観ノ如何ニ拘ラス其ノ実体ニ於テハ保護ヲ与フヘキ正当ナル利益ヲ欠如スルヲ以テ此ノ理由ニ依リ直ニ之ヲ棄却スヘキモノト解スルヲ至当トス」
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