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Word文書をそのままに,すぐ使える簡単・短文データベースを作る

 法律実務家にとって,日々の仕事を判断処理する上で,関連する法令,判例,文献等からの有用な知識やデータ,情報を検索・収集し(リーガル・リサーチ),これを活用することは必要不可欠なことです。

 最近では,法令,判例等の法律情報は,書物以外のネット等から無料あるいは有料で,容易に電子データとして取得でき,便利な仕事環境になっています。法律専門家向けに法令検索や判例検索の大規模なデータベース・システムも構築され,大量データからの自在な検索が可能なシステムやネットサイトも相当普及しています。

 しかし,法律実務家は,おそらく,常に,あらゆる分野について全方位の知識情報を必要としているわけではなく,扱う個別のテーマや問題対応,処理案件に関連した情報を幅広く検索し,さらに周辺から核心へと絞り込みをかけ,情報探索と思考を深めていくのが普通と思われます。
 パーソナルな知的作業としては,毎回,まっさらの状態(つまり一から)判例検索をかけるのではなく,一度得られた情報をメモし,次第に関連情報を集積していき,いずれ分類整理し,こうした自分なりのデータベースを作り,これを元に更に検索し,日々の実務処理に役立てている場合が多いかと思います。

 「自分なりのデータベース」というと,そこまでのものは使っていない,法令・判例検索システムからプリントアウトし,あるいは法律雑誌等からコピーして,紙ベースでファイルを作っているという方もいらっしゃるかもしれません。しかし,日々多様な案件処理をこなす法律実務家にとって,これでは,いずれ身の回りは大量の資料集で埋められてしまいます。
 電子的検索システムがあるのであれば,その効率的な利用の仕方と情報の整理法を考えることも,これから重要になってくると思います。

 ここで,そもそもデータベースとは何かを押さえておくとよいと思います。
 広辞苑によれば,データベース(data base)とは,「(「情報の基地」の意)系統的に整理・管理された情報の集まり。特にコンピューターで,さまざまな情報検索に高速に対応できるように大量のデータを統一的に管理したファイル。また,そのファイルを管理するシステム。」とあります。

 仮に,個人的に,過払金返還や労働事件等に関して電子データから検索取得し実務処理に必要な多くの判例部分を集め,これを事件類型別にグループ分けしたファイルにまとめたとすれば,これも「系統的に整理・管理された情報の集まり」であり,実践的な「情報の基地」として,立派な一つの有用なデータベースだと言えます。

 しかし,電子データを利用する場合,データベースを作ることに意味があるのではなく,「大量のデータ情報から,必要な情報を必要な時に,すばやく検出して,すぐ使える」ということがなくてなりません。コンピュータはその高速検索を可能にする道具ですが,大量データから高速検索を可能にする仕組み(ソフト)作りが必要になります。

 そのため,人によっては,データベースソフトのAccessや表計算ソフトのExcel等を利用し,また,これにWordを組み合わせるなどして自作で対応し,あるいは,フリー又は市販のソフトで大量データ収納,高速検出,文書化等のシステム化を図ったものを利用している方もいらっしゃると思いますが,そこまではいかずに,日常的に文書作成で使用している,今あるWordを使う方法で考えてみたいと思います。
 今一度,前のページの説明とイメージ図をみておくと,理解が早いでしょう。



【1】 ここでは,過払金返還訴訟に関する最高裁判例の要旨を自分で収集し,これを時系列で整理したものを作る場合を例にして,説明してみましょう。

 冒頭に,ファイルのテーマ,名前,関連事項を記入します。
 ●印の行から次の●印の前までが,一つのデータブロックとなります。
 ●の次には,見出しとなる検索のキーワード,参考判決の年月日等のデータを記入し,末尾には必ず「改行」を入れます。
  Wordは基本的に段落単位で処理しますので,この改行までの文字列(1段落)が見出しとなります。1行以内にという制限はありませんが,システム上最大255字以内という制限があります。
 ●の見出しの下には,コンテンツ(内容)を記載します。判例集であれば,判例要旨や該当する判決理由の抜粋等を記載します。
 ●から次の●までの1データの記載分量は,1行でも何段落でも(A41枚以上でも),自由です。しかし,あまり1データの分量が大きすぎると操作に手間取りますし,1データは短く,大量にあった方がデータデースの効果は大きいと思います。
 コンテンツ(内容)には,アンダーラインや文字カラーを付けたり蛍光ペン表示にすることもできます。

 Wordで画面に向かい,(1)「●を付し見出しを書いて改行」,(2)「下に文例を書いて改行」。これだけの方法でデータを書き綴っていく。これだけで,これを「Wordの友」のシステムにかければ,すぐ高速検索のデータベースが実現します。
 ちなみに,サンプルとして示した「過払金返還訴訟に関する最高裁判例要旨集」の分量は,A4で1行40字,36行,全19ページとなっていて,実際は53個の最高裁判例要旨が収められています。
 これを高速に検索して閲覧できるようにすれば,実務処理の中で,かなり敏速に情報処理と法的思考が促進される効果は高いのではないでしょうか。

【2】 「Wordの友」Ver.12(次期バージョン)では,こうして作成したWordファイルを利用して,「必要なものを必要な時に,すばやく検出して,すぐ使える」ような仕組みを作ってみました。

 「My文例庫」では,定型文(参考データ)を収納したファイルが20個まで呼び出しが可能であり,上記のようにWordで作成したファイルのリスト表示から,クリックするだけで,ファイルの切替えが容易にできる仕組みになっています。

 前記のとおり作成した過払金訴訟に関するWordのデータファイルをリストから呼び出して利用する場合を例に説明してみましょう。
 ファイルを切り替えると,そのファイル内で書かれた●印の見出し部分がリストに表示され,これに対応した内容が,その下段にテキストとして表示されます。
 ここで,テキスト表示部分が小さいと感じる場合は,表示画面を縦に広く拡大することができますし,また,表示文字の大小も自由に加減できるようになっています。
 テキスト画面に,リスト表示とテキスト内容を同時に表示して閲覧したい場合は,「□見出し付き」にチェック印を入れます。
判例集

 操作方法をもう少し,簡単に説明しておきましょう。

(1) Word画面へのデータ挿入
 リスト指定したファイルの内容をWord文書内に取り込み表示したい場合は,[Word画面に転記]ボタンをクリックします。
 判例の一部を引用して文書を作成する場合には,その部分を登録しておけば,簡単に呼び出し,文書内に挿入ができます。
 リスト下のテキスト画面では,内容を閲覧することだけが目的であり,文字修飾やインデント等は表示されませんが,このWord上への転記では,データファイルにアンダーラインや蛍光ペン表示などがあれば,そのままWord上に表示されます。

(2) 印刷
 表示の内容だけを印刷したい場合は,[印刷]ボタンをクリックします。「見出し付き」にチェックがあれば,●見出しとともに印刷されます。
 ファイル全部を印刷したい場合は,画面右上部の[表示]をクリックすればWord画面に表示されますので,ここで通常の場合と同様に,Wordの印刷操作ができます。

(3) 検索,蛍光ペン表示
 そのデータファイルに,ある文字があるか否か検索をかけたい場合は,検索語を入力し[検索]ボタンをクリックすれば,検出個数が表示され,さらに必要があれば,Word文書上に,検出箇所を黄色の蛍光ペンで表示させるようになっています。
 ただし,この場合,蛍光ペン表示の画面を表示した場合には,その画面を「×」で消さず,必ず元の画面に戻ることが注意点です。終了時にファイル保存の要否が問われたときは,蛍光ペン表示を残したくない場合は,「保存しない」処理をします。

(4) ファイルの修正
 データの内容を書き直したり,部分的に編集したい場合,あるいは,記載順を変えたい場合などは,データファイル収納のフォルダ(JCData)から,直接,通常のWordファイルとして呼び出して必要な修正をします。

【3】 以上の方法によるWordファイルは,検索システム内で使用するほかに,研究会又はゼミ,研修等の場で,「情報の集まり」として全体をプリントアウトして使えば,他のデータベース,検索システムとは,また違った紙ベースの利用価値が広がっていきます。
 ここでは,便宜上,法律情報のデータベースで「Wordの友」の活用方法を説明しましたが,法律情報に限らず,他のビジネスの分野でも,多かれ少なかれ,大規模なデータベースを扱うとともに,自分用にまとめたコンパクトな知識情報のデータベースに基づき,仕事に対応している場合があると思います。

 知識情報のデータベース化は,結局は自分のためのものですので,自分流儀の「data base=情報の基地」として,簡単なところから工夫して充実させ,活用範囲の広いものにしていくことが望まれるでしょう。

2013.12
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