実務の友   消費者金融等に関する判例集
最新更新日2003.1.25-2006.08.10
 文章内容を検索する場合は,[Ctrl]+[F]キー(同時押し)で,現れた検索画面に検索用語を入力して検索します。

28 カードの不正利用と責任
    1 キャッシュカード

      (1) 最高裁判平成5.7.19金融法務事情1369号6頁
      (2) 東京高裁判平成14.11.28金融法務事情1667号94頁

    2 ローンカード
      (1) 秋田地裁判平成10.12.21判例タイムズ1050号139頁
      (2) 福岡高裁判平成11.2.26金融法務事情1546号97頁(上告棄却)
      (3) 札幌簡裁判平成11.3.16判例タイムズ1041号218頁
      (4) 福岡高裁判平成11.9.22金融法務事情1562号93頁
      (5) 東京高裁判平成12.2.29金融法務事情1579号55頁(上告棄却)
      (6) 大阪高裁判平成13.3.23判例タイムズ1070号267頁

    3 クレジットカード
      (1) 名古屋地裁判平成12.8.29判例タイムズ1092号195頁
      (2) 最高裁三小判平成15.4.8金融法務事情1681号24頁



 カードの不正使用と責任
1 キャッシュカード
 (1) 最高裁判平成5.7.19金融法務事情1369号6頁

(判決要旨)
 預金者以外の者が真正なキャッシュカードを使用し正しい暗証番号を入力して現金自動支払機から預金の払戻しを受けた場合と免責約款による銀行の免責
(判決理由抜粋)
 「銀行の設置した現金自動支払機を利用して預金者以外の者が預金の払戻しを受けたとしても,銀行が預金者に交付していた真正なキャッシュカードが使用され,正しい暗証番号が入力されていた場合には,銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情のない限り,銀行は,現金自動支払機によりキャッシュカードと暗証番号を確認して預金の払戻しをした場合には責任を負わない旨の免責約款により免責されるものと解するのが相当である。」

 (2) 東京高裁判平成14.11.28金融法務事情1667号94頁
(判決要旨)
 盗難キャッシュカードを利用してA銀行のX名義の預金口座からY銀行のB名義の預金口座に振り込まれた後,Y銀行がB名義の預金の払戻しに応じた場合と,Y銀行のXに対する不法行為責任
(判決要旨)
 盗難キャッシュカードを利用してA銀行のY名義の預金口座からY銀行のB名義の預金口座に1600万円が振り込まれた後,Y銀行がB名義の預金の払戻しに応じたとしても,警察やA銀行ないしXから払戻しの停止等の要請がなかったときは,Y銀行に過失はなく,Xに対して不法行為責任を負うものではない。

2 ローンカード
 (1) 秋田地裁判平成10.12.21判例タイムズ1050号139頁
(判決要旨)
 貸金業者のカードをカード会員以外が不正使用した場合に,カード会員の責任が否定された事例
(判決理由抜粋)
 「私法においては,私的自治の原則,即ち,個人は自由意思に基づいて自律的に法律関係を形成することができる(契約自由の原則)とされる反面,その意思によらないでは義務を負わされることはない(過失責任主義ないし自己責任の原則)という基本的な原理が支配しているのであり,これに照らすと,カードの不正使用に関して会員に全く過失がない場合(例えば,カードの管理について善管注意義務を尽くしていても盗難に遭う場合)にまで,会員が全面的な責任を負うとする本件特約は,極めて不合理な結果をもたらすものといわなければならない。勿論,本来基本契約を締結すること自体は,右の契約自由の原則に基づくものであるが,本件特約は,第一審原告が一方的に定めた本件基本契約の約款の一部に過ぎないから,契約自由の原則のみから,自己責任の原則に反する結果をもたらす本件特約が無条件に適用されたことを容認することはできないというべきである。
 そうすると,本件特約については,少なくとも右のような不合理な結果を生じないようにするため,制限的に解釈されるべきである。
 2 そこで検討すると,カードを不正に使用する者は,カードと暗証番号によって,そのカードの名義人たる会員本人であるという外観を作出しているのであり,カードによる取引システムの設営者は,右の外観を信頼して取引を行うことになるのであるから,これによって会員自身が責任を負い,システム設営者が保護されるためには,一方で,会員の側に右の外観を作出したことについての帰責事由があることが必要であるとともに,他方で,右外観を信頼したシステム設営者の側に保護に値する相当の事由があることが必要であるというべきである。
 これを換言すれば,本件特約を適用し得るためには,まず,会員において,カード及び暗証番号の管理等について,通常人であれば尽くすべき注意義務を怠った過失があることが必要であるというべきである。他方,システム設営者については,カードの不正使用を防止するためにシステムを改善し得るのは会員ではなくシステム設営者のみであること,システム設営者は不可避的に生じるカードの不正使用による損害について保険等による填補策を試みることが可能であること等の事情をも考慮して,カードやATMなどのシステムの設計,カードを発行する際のカードや暗証番号の管理等に関する会員への注意喚起等の諸方策,不正使用の疑いの有無等の監視を含む日常的なシステムの管理,会員がカードを使用して具体的な金銭消費貸借契約を締結する際の監視等,システムの全体を通して安全性を確保するために注意を尽くしていることが必要であるというべきである。
 そして,右の会員側及びシステム設営者側のいずれの要件が欠けても,本件特約を適用する根拠はないというべきであり,本件特約が適用されるのは,右2要件がいずれも充足されている場合であるといわなければならない。」
(本判決は,以上の理屈により,本件においては,第一審被告は,カードの暗証番号を盗み見られた上,安易にカードを交付するなどした点に全く落度がないと言うことはできないが,詐欺による被害者であり,その帰責性は相当に希薄であるが,他方,第一審原告は,第一審被告に対し暗証番号の秘匿等に関して何ら注意や指導をしておらず,カードの危険性や不正使用があった場合の責任等についても何ら説明しておらず,また,カードを不正使用した者がATMを利用して多数回にわたり金銭を引き出しており,この際に監視を尽くしておれば,より早期に犯罪が発覚していたにもかかわらず,第一審原告には,システム全体を通じた安全性を確保するための注意に欠けるところがあったとして,本件特約の適用を排斥した。)

 (2) 福岡高裁判平成11.2.26金融法務事情1546号97頁,判例時報1692号71頁(最高裁二小決平成11.9.17上告棄却,上告不受理として控訴審判決支持(金融・商事判例1077号8頁))
(判決要旨)
1 カードローン契約に基づくカードが盗用された場合において金銭消費貸借契約の成立が否定された事例
2 カードの保持者につきカードの管理に善管注意義務違反が認められ,金融機関に提出された書類の印影(または暗証)を届出の印鑑(または暗証)に相当の注意をもって照合し,相違ないものと認めて取引したときは,書類,印章等について偽造,変造,盗用があってもそのために生じた損害についてはカード保持者の負担とする旨の特約に基づくカードの盗用による損害を填補する契約上の債務が認められた事例(一審の福岡地裁判平成10.10.21金融法務事情1546号97頁は,カード契約者に帰責性があり,損害はカード契約者が負担すべきであるとする判決で,これを維持した。)
(判決理由抜粋)
 「右事実によれば,被控訴人が主張する求償債権の原因となった貸金は,本件車から本件カードを盗取した第三者が,何らの権原もなしに本件カードを使用して,参加人の現金自動支払機から現金を引き出したことによって,参加人において消費貸借契約が成立したと扱っていたものであるから,契約としては無効(不成立)といわざるを得ない。(略)三 (略)
 本件ローン契約の本件特約を含む主要な契約条項の要旨は,前記「当事者間に争いのない事実等」に摘示のとおりであるところ,右条項からすると,本件ローン契約は,契約で定められた取引期間内において,顧客が,参加人から貸与された本件カードを,参加人の本支店に提示し,又は現金支払機等に差し込み,その際に暗証番号の照合をして顧客の同一性の確認を行うことのみにより,直ちに貸越極度額の範囲内で顧客の要求する現金を交付し,参加人と顧客との間で消費貸借契約を成立させることを内容とする契約であると認めることができる。そして,右契約により,顧客は,カードと暗証番号以外の同一性の確認手段を求められることや,個別の信用調査をされることなく,極めて迅速に金融を得ることができる利益を享受し,参加人においても,右信用調査等に手間とコストをかけることなく,小口の金融に迅速に対応し,顧客を確保することができるという利益を得ているものということができる。
 これにより本件特約をみるに本件特約は,本件ローン契約に基づき,カードが参加人に提示され,又は機械に挿入された際に申告又は入力された暗証番号と,事前に届け出られた暗証番号とを,金融機関に求められる通常の注意をもって照合し,相違がないと認めて,カードを提示等した相手方と取引した場合には,それがカードの盗用等による不正な取引であった場合にも,顧客が,その取引による参加人の損害を負担する旨の特約であると理解される。そして,本件ローン契約は,右のような簡易迅速な金融の方法を許容し,顧客や参加人に相応の利益を与える反面,カードの盗用等の不正な利用による損害や,通常の審査手続を経た貸付けを上回る貸倒れの危険を生じさせるものであるから,取引上の紛争の防止のため,これらの危険より生じた損失の負担について参加人と顧客の間で約定する必要性があるところ,右の危険のうち,カードの盗用等によって生じる危険の発生は,参加人においてこれを防止する手段が乏しいのに対し,顧客の側がカードの暗証番号の管理を適正に行うことにより比較的容易に防止し得るものであることからすれば,右危険により生じた損害を顧客に負担させることには,十分な合理性があるというべきである。
 控訴人は,控訴人と無関係の第三者が参加人に加えた損害につき,控訴人の軽過失を理由として,そのてん補義務を負わされることはなく,本件特約は,民法の原則を超えて,控訴人に負担を負わせるものであると批判する。しかしながら,取引の当事者間において,当該取引に伴う危険の負担につき特約することを禁ずる法令上の根拠はなく,本件ローン契約の特質に照らして本件特約の必要性,合理性があることは,前示のとおりである。本件ローン契約の当事者が一般消費者であることをもって,右の合理性を否定する根拠とするに足りるものということはできないし,本件カードの紛失,盗難等による損害につき保険による保障がないことを理由に控訴人(顧客)の責任を軽減することも,物事の本末を転倒するものであって,右の合理性を否定するものということはできない。
 そうすると,控訴人は,本件カードが盗用されたことによる参加人の損害につき,少なくとも控訴人に本件ローン契約の債務不履行がある場合には,本件特約に基づき,右損害をてん補する契約上の債務を負っているものと解することが相当である。」

 (3) 札幌簡裁判平成11.3.16判例タイムズ1041号218頁
(判決要旨)
 サラ金会社発行の借入カードを名義人の実弟が無断使用した場合に,カードの他人使用については名義人が一切の責任を負うとの契約条項の趣旨を名義人に帰責事由があったときに限定して解釈した上,名義人の帰責事由を認定して,その支払義務を認めた事例
(判決理由抜粋)
「2 それでは,他人によるカード使用についてカード名義人(顧客)が一切の責任を負う旨の本件条項に基づく請求(請求原因二)は認められるか。
 民法の原則は個人責任であり,他人の行為の責任を本人が負うのは本人に何らかの帰責事由がある場合に基本的に限定されている(民法110条,715条等)。しかるに,本件条項には何らの帰責事由もなく,結局いかなる場合もカードを使用した借入があれば,顧客が全責任を負う内容となっており,個人責任の原則に反する。また,全国的な貸金業者である原告と顧客にすぎない被告の力関係には圧倒的な差があり,被告には本件条項を排除・変更した契約を締結する自由は事実上存在しない。
 したがって,民法の原則に沿い,また相対的に弱者の立場にある顧客に過酷な結果とならないように,本件条項により顧客が支払義務を負うのは,顧客にカードの保管や暗証番号の秘密保持などの義務違反があったために他人がカードを使用した場合に限定して解釈するのが相当である。
 3 では,本件では,被告にカードの保管義務違反等の帰責事由は認められるか。
 被告は,拘留中あるいは在監中とはいえ,正利が原告に対する弁済をした後に,本件カードの返還を受けるなり,同人に廃棄を指示するなりすることはできた。また,原告に対し,本件契約の解約又は本件カードの使用の停止を通知することも可能であった。さらに,重大な帰責事由は,被告が正利に本件カードの暗証番号(4桁の数字)を教えたことである。被告が使用していた暗証番号は,被告の生年月日などから容易に推測できるものではなかったから,被告が正利にこれを教えなければ,正利が本件カードを被告に無断で使用することはほぼ防止できたはずである。
 以上のとおり,被告には正利が本件カードを利用して借入をすることを防止することが可能であったのに,これを怠った帰責事由がある。
 したがって,本件では被告は,本件条項に基づき,正利の借入について支払義務を負うと言わざるを得ない。」

 (4) 福岡高裁判平成11.9.22金融法務事情1562号93頁
(判決要旨)
 カードローン契約によるカードの保持者につきカードの管理に帰責事由が認められ,金融機関が使用された暗証と届出の暗証との一致を確認して,預金の払戻しをし,またはカードローンの借入れをした上は,カード又は暗証につき偽造,変造,盗用その他の事故があっても,そのためにつき責任を負わない旨の特約がある場合,そのカードの盗用があったとしても,右特約の趣旨により,正当な貸付があったとして取り扱われた事例(一審の福岡地裁判平成11.1.25金融法務事情1546号98頁は,カード契約者に帰責性はなく,損害は銀行が負担すべきであるとする判決で,これを取り消した。)
(判決理由抜粋)
 「前示認定によれば,被控訴人は,不特定の者が出入りするパチンコ店の駐車場に,施錠はしたものの,(1)他の多数のキャッシングカード等や数通の預金通帳,実印等重要な品々と一緒に,本件カードを入れたセカンドバッグ(通常貴重品類を入れるのに用いられる)を本件自動車の窓ガラス越しに外から見える場所に置いていたのみならず,(2)本件カードその他のカードの暗証番号も,最も解読されやすい自分の生年月日の数字をそのまま用いているのに,生年月日を容易に確知しうる運転免許証をも同車内のサンバイザーという容易に発見できる場所に置いた状態で,本件自動車を駐車し,約2時間もその場を離れていたというのである。右(1)のような状態は,往々にして盗難を誘発するに足りるものであり,しかも,右(2)により暗証解読を容易にして,本件のようなカードの不正利用を惹起しやすい危険な状況を作出したものということができる。
 これらのことを考慮すれば,被控訴人に帰責事由がなかったといえないことは明らかである(右説示の本件カードの保管状況は,いわば預金通帳と取引印を一緒にして放置した状態を想起させるもので,この場合に預金通帳等の保管に過失があることは容易に理解されるところである。)
 3 次に,被控訴人が本件B約款により責任を負う限度について検討するに,被控訴人は,補助参加人銀行のカードを盗用した第三者に対する損害賠償請求権の範囲内で右約款の効力が認められると解すべきであると主張する。しかしながら,前示のとおり,右約款の趣旨は,当該払戻しを当該カード契約者に対する正当な貸付けとして取り扱うというものであるから,被控訴人の責任は本件カードローン契約に基づく債務と同じ範囲というべきであって,被控訴人の主張するような責任の限定をする理由を認め難い。」

 (5) 東京高裁判平成12.2.29金融法務事情1579号55頁最高裁二小決平成15.5.30公刊物未登載,上告棄却・上告不受理として控訴審判決支持,金融法務事情1677号72頁)
 カードを使用して現金貸出機により貸付がされた場合,会員又はその家族らが真正カードを使用して借り受けたとして会員の責任が認められた事例
(判決要旨)
 カードを使用して現金貸出機により現金の貸付がされた場合,右貸出機の利用状況,カードの保管状況等判示の事実を総合すると,本件カードを使用して本件貸出機から10万円を借り受けたのは,本件カードを使用し,暗証番号やキャッシング限度額を了知することができる者,すなわち会員若しくはその家族又はこれらの者の意を受けた者と推認するのが相当であり,会員は,右貸付について支払義務を負うというべきである。

 (6) 大阪高裁判平成13.3.23判例タイムズ1070号267頁
 カードローン契約者は,カードの盗用により銀行に生じた損害を填補する義務があるとされた事例
(判決理由抜粋)
 「原判決認定のとおりの契約条項が存するカードローン契約において,カード契約者にカードの管理又は暗証番号の設定・管理に善管義務違反がある場合には,カード契約者はカード盗用により銀行の受けた損害を負担すべき義務があるというべきである。  本件において,上告人は銀行より簡易書留郵便で送付されたカード入り封筒を,健康保険証(それには上告人の生年月日の記載がある。)と共に,職場店舗の抽斗(これに鍵をかけていたとの主張はない。)に置いたままにし,暗証番号には生年月日を用いたなど原判決認定の事実のもとでは,職場店舗が施錠されていた事実を考慮しても,上告人にはカードの管理,暗証番号の設定に善管義務の違反があったというべきである。」
(本件規約2条では,会員が,カードを他人に使用させ,それに起因してカードを不正に利用された場合,会員はそのカード利用代金につき支払の責を負う旨定められている。)

3 クレジットカード
 (1) 名古屋地裁判平成12.8.29判例タイムズ1092号195頁
(一部認容・確定)
(判決要旨)
 クレジットカードが会員に無断で使用された場合,加盟店が会員本人の確認義務を怠ったときは,無断利用の代金の2分の1については,クレジット会社が会員に対して支払請求をすることが,権利の濫用として許されないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「以上によると,被告は,本件規約2条4項に基づき,本件無断利用分について,支払義務があると認められるが,右各売上票には,一見明白に被告以外の署名と認められる署名がなされていて,加盟店としては,署名の同一性を比較することにより,被告カードの利用者が,カード会員本人でないことを容易に知ることができ,被告カードの利用を拒絶できて,カードの不正利用を防ぐことが可能であったと認められる。そうすると,加盟店がかかる義務を怠った結果,発生した本件無断利用分のうち2分の1については,原告が被告に対し,規約2条4項に基づき支払を請求することは,権利の濫用として許されないというべきである。  4 したがって,被告の権利濫用の抗弁は右の限度で理由があり(以下略)」

 (2) 最高裁三小判平成15.4.8金融法務事情1681号24頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
1 現金自動入出力機による預金の払戻しと民法478条の適用の有無
2 無権限者が預金通帳またはキャッシュカードを使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けた場合に銀行が無過失であるというための要件
3 無権限者が預金通帳を使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けたことについて銀行に過失があるとされた事例
(判決理由抜粋)
1 「無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても,民法478条の適用があるものと解すべきであり,これが非対面のものであることをもって同条の適用を否定すべきではない。」
2 「債権の準占有者に対する弁済が民法478条により有効とされるのは弁済者が善意かつ無過失の場合に限られるところ,債権の準占有者に対する機械払いの方法による預金の払戻しにつき銀行が無過失であるというためには,払戻しの際に機械が正しく作動したことだけでなく,銀行において,預金者による暗証番号等の管理に遺漏がないようにさせるため当該機械払の方法により預金の払戻しが受けられる旨を預金者に明示すること等を含め,機械払システムの設置管理の全体について,可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたことを要するというべきである。」
3 「無権限者による払戻しを排除するためには,預金者に対し,暗証番号,通帳等が機械払に用いられるものであることを認識させ,その管理を十分に行わせる必要があることにかんがみると,通帳機械払のシステムを採用する銀行がシステムの設置管理について注意義務を尽くしたというためには,通帳機械払の方法により払戻しが受けられる旨を預金規定等に規定して預金者に明示することを要するというべきであるから,被上告人は,通帳機械払のシステムについて無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたということはできず,本件払戻しについて過失があったというべきである。」