造本コンセプトは随便(スイピエン)!

デザインは、「ル・ガルー」「どすこい(仮)」やムーミン・シリーズなどを
手掛けてらっしゃる祖父江慎さんです。
「新千年図像晩会」では過激なんだけどなつかしい、
まさに内容にふさわしいデザインをしてくださいました。

スイピエンとは「随意」(くわしくは下)。
「ちいさいコトにはこだわらず、元気にゆきましょう」と祖父江さん。
かわいいピンクが大成功。
カバーの子供たちのほっぺをかわいいピンクにするために、
祖父江さんはひとりひとり、データを調整してくだすったんだよ。
みんながしている(やー、ほんとにみんなしてるな)よいこの紅スカーフの
紅もきれいにそろえてあるのだ!

カバーをとると「溺れる者は赤本つかむ」の図像。でもピンクにしちゃった。紅書(ホンシュー/毛沢東語録のこと)ピンクにしちゃっていいものだろうか。(でもかわいいんだもーん)。

スピン(しおり)は水色・幅広。でもって花ぎれはナイのだ。花ぎれがなくても製本上問題ナイとはしらなんだ。


そして角丸(カドマル)。
ページの角が丸くなってます。絵にあうこと、あうこと。これは型で裁つカドマルじゃなくて、グラインダーで削るタイプのカドマル。グラインダーのほうが安いんだ。

画面上ではワカンナイけど、背文字と表紙の「新千年」だけエンボス(下から型で押し上げてもりあげるコト)かけているのだ。「図像晩会」のほうはエンボスなし。(だって一冊につき20円も高くなっちゃうんだ)。でもって「新千年」のうえのはしはエンボスになってナイ。印刷所さん「こんなはじっこまでエンボスかけられない」と言われたので「じゃあ、はじっこはエンボスなしでスイピエン」ちゅうことに。

さすがは祖父江さん!というのがこの章扉デザイン。「大きいけど脱力してんの」だそうです。サイコウ。扉や節のタイトル、オビの文字は、祖父江さんが大正時代の本からスキャナで取り込んだ文字を組み合わせてつくってくださったんだよ(うーむスゴイ)。戦前の活字はいまのように画一的じゃなくってフシギなバランスをもってたんだって。これもまたスイピエン!

オビと奥付にいるのは「読書小僧」。作品社から出させていただく武田先生のご本の隠れキャラ。かならずどこかで本読んでます。めざせ「シナの五人兄弟」!


それでは本文より「スイピエン」のご説明を。

中国語には「随便」ということばがある。随意、都合しだい、自由、勝手、といった意味であるが、さらに、いい加減、わがまま、のんびり、というような意味合いをももつ。良くも悪くも使えることばだ。そして、いろいな場でよく耳にする。中国の文化を理解するためには、どうやらはなはだ重要な概念らしいのだが、総体的に説明することはできない。たとえば魯迅研究においては、このことばがしばしば問題にされている。そんなこんなで気になってはいたのだが、最近、ひとりのアメリカの若い研究者が――彼は中国のことをやっているのではなく、日本の妖怪を研究しているのだが―こう言うのを聞いた。「ぼくは、中国には一カ月ほどしか滞在していないし、中国語も少しかじっただけなんだけど、滞在中、どうも〈随便〉ということが、なにかとても大事なことであるかのように思った。タケダはどう?」と。「うーむ。1カ月で、よくぞそこまで」と感心しながらも、思わず「そうそう!」と声をあげてしまい、それからは「随便」談義とあいなった。