桃源郷の機械学

1995.1
A5判上製/344pages/2,800yen
ISBN 4-87893-214-7
装幀・造本 祖父江慎
 

ひょうたん宇宙から怪物たち、清朝世紀末のエーテル・ブームまで。
中国の人びとが平然と織り成してきた途方もない想像力世界を武田先生がその独特の切りくちで次々と展開。大傑作!
目次
T さかしまの地理学
    宇宙卵クンルンの謎
    黄河の源流がひょうたんであること
    不死の山〈崑崙〉への航海
    地中海から来た火焔山

U 人工宇宙の遊び人たち
    偽りの山・懐胎の山
    リゾートにいたる地図学
    見立てのある宇宙論
    孔くぐりのルナパーク
    円明園の噴水と永久機関幻想
    金魚鉢の中の畸形宇宙
    海上蜃楼圖譜

V 怪物たちの午後
    中華風怪物の盛り合わせ
    ことばと怪物
    髑髏の幻戯
    八戒、その漂白の旅
    猪ッちゃんが喰うわよ!
    「イラ・フォルモサ!」への旅
    躍るテレメンテイコ

W 桃源郷の機械学
    近代中国における電気とエーテル
    中華風惑星カタログの旅
    杞憂のゆくえ
    月を見るサイ

←怪獣ラクダドリ!
唐代に西方の国から献上されたダチョウに、中国人は「脚がラクダのような鳥」ということで「駝鳥」という漢字を与えた。年月がたってダチョウが民族の記憶から消えても「駝鳥」の文字は残る。そして年月がたって「駝鳥」の文字情報から図像化を余儀なくされた絵師は、こんな怪物を生み出しちゃったんである。(V章ことばと怪物)より。
→はてさて、ではこの波間を泳ぐブタくんが何かっていうと、これは「海のブタ」−「海豚」、そう、イルカなのだ。「海豚」と「江豚(ヨウスコウカワイルカ)」たち。ラクダとちがってイルカは中国でも目にされていたはずなのに、なぜか彼らはイルカを海や江に投げ込まれたブタとして描く。そこんとこ、武田先生は「おそらくは<江豚>という二つの漢字の持つ魔力、そしてブタに似ているという文字情報に引きつけられて、<長江中に泳ぐ豚>という図像が確定してしまったのであろう。」と推論されるのであります。(V章「八戒、その漂白の旅」より)。

こちらは中華民国の5年(1916)に、10歳の神童・江希張くんが出版した
「大千図説」というきわめつきにアヤシイ宇宙カタログ。
ここに記された愛すべき宇宙人たちが以下のひとびと。
「三才図会」の辺境人カタログとの親戚カンケイもオモシロイよね。
それぞれの星で使用されている文字もちゃんと明記されてんのだ。
(W章「中華風惑星カタログの旅」より。

天笛星人
巨大で顔がこわい。
気は優しくて力持ち。

搖光星人
全身毛だらけで一本腕に目がひとつ。まっすぐにしか歩けない。

天○星人
明るい極楽世界。
鳥のようなコトバを話し、
地震がくると空に舞う。

天竿星人
まだ歴史の浅い人類。
凶暴で力持ち。
背中には甲羅が。

とゆーぐあいで
モノスゴクおもしろい本です!

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