アメリカの精神医学者マクレガー博士は、精神病理学の視点から見る美術研究の権威で、数多くのアウトサイダー・アーティストを世に知らしめている。なかでもダーガー研究は博士のライフ・ワーク。ラーナー夫妻の協力のもと、ダーガーの遺した文学作品と絵画作品を精査した唯一の人物であり、現在書かれているダーガーに関する文章のほとんどが、マクレガー博士の研究に依拠している(その多くが無断で、博士はひどくお怒りである)。資生堂ザ・ギンザ・アート・スペースのダーガー展の際に来日、講演を拝聴した人もいるかもしれない。★博士は長年の研究の成果を大冊にまとめあげたが、不幸にしてアメリカで出版社がつかず、未刊行のままであり、本書が唯一、単行本として刊行された博士のダーガー論となっている。★この論文で博士はダーガーの生涯と、アート制作の技法を解き明かす。博士の撮影したダーガーの制作過程を物語る資料図版も満載。博士のダーガーへの深い理解と愛情も胸をうつ。★日本版の刊行に際して、マクレガー博士はスイス版にはない「ノーマ・キャサリンの大虐殺」を寄稿してくださった。未刊の大冊の一部であり、博士の美学と心理学への深い造詣をうかがわせる迫力の一節である。 |