■2004年4月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●生物多様性条約
カルタヘナ議定書の国内法施行される

 2月19日、遺伝子組み換え生物の国際間の移動に一定のルールを設ける「生物多様性条約カルタヘナ議定書」の国内法が施行された。それ
に先立つ2月17日、衆議院議員会館において、農水省・環境省の担当者と市民との討論会が開かれた。農水省の担当者によれば、この法律の
規制対象には、農作物は含まれず、野生生物だけであるという。そのため、遺伝子組み換え作物の野放図な栽培に対する歯止めにならない
ことが分かった。なお、農作物に対する規制に関しては、新たな国際条約で対応する方針のようだ。
 野生生物への影響に関する見解では、メキシコで起きた原生種への遺伝子汚染事件に触れ、「わが国には原生種が存在しないから問題は
起きない」と発言し、結局のところ日本では、この法の規制対象がほとんど存在しないことが明らかとなった。


●省庁動向
FAOの植物遺伝資源条約批准へ


 FAO(国連食糧農業機関)では、2001年11月に116カ国が賛成して食料農業植物遺伝資源に関する条約(ITPGR)を採択した。この条約は、
稲や小麦などの作物に限定して、生物の多様性を守り、遺伝子資源を活用し、利益を還元するのを目的につくられた。日本政府は米国政府
とともに、遺伝子を解析しても特許にならない可能性があるため、署名を拒否してきた。しかし、今年中に条約が発効することから、批准
し、生命特許を主張していく方針に切り替えることになった。


●規制
日本CRO協会が食品の臨床試験の指針づくりへ

 日本CRO(開発業務受託機関)協会が食品ワーキング・グループをつくり、主に健康食品のトクホ(特定保健用食品)の試験を行う際の業
界内自主指針づくりを行うことになった。同協会では、態勢が整えば、過去に表示認可を得た素材に関しても再評価していく予定である。
 健康食品の臨床試験を担う機関としては、健康・栄養食品CRO連絡会が昨年8月に発足しており、両者の関係は不明瞭である。いずれにし
ても健康食品をに対して、科学的な裏づけが求められる時代に入ったといえる。 〔日経バイオテク2004/2/2〕

農業生物資源研が栽培規制に対抗

 独立行政法人・農業生物資源研究所は昨年12月に「遺伝子組み換え研究推進室」(室長・田部井豊)を設置し、市民対策の一環としてPA
(パブリック・アクセプタンス)を強化する方針を打ち出した。さらに人員を補強して、自治体などで広がっている栽培規制の動きに対抗
して、「攻めの姿勢でのぞむ」ことを明らかにした。 〔日経バイオテク2004/2/16〕


●海外動向
中国がGM作物輸入解禁へ

 中国政府は2月23日、米国モンサント社の大豆、トウモロコシ、綿の3作物の輸入を期限付きで承認した。承認期間は、綿が2009年2月20日
まで、大豆、トウモロコシが2007年2月20日までである。同国政府は、2002年3月からGM作物を輸入規制してきたが、大豆に関しては規制が
先のばしにされてきたため、すでに大量のGM大豆が流入している。なお、中国のGM作物規制措置は、4月20日付で正式に撤廃される。〔ENN
News Story 2004/2/25〕

カリフォルニア州の郡がGMO禁止を決定

 3月2日、カリフォルニア州メンドシーノ郡は、米国で初めて住民投票によってGM作物・家畜の禁止条例を決定した。同郡は、ブドウを中
心にした農業地帯で、もともと農民によるGM作物反対の声が強かった。モンサント社などのバイテク企業は、60万ドル以上を費やしてこの
条例を潰そうと図ったが、失敗に終わった。同州の他の郡や他の州にも住民投票を検討する動きが出ており、波紋はさらに広がりそうだ。
〔ロイター 2004/3/4〕

●脳死
自民党調査会、臓器移植法改正案まとめる

 2月25日、自民党の脳死・生命倫理及び臓器移植調査会(会長宮崎秀樹参院議員)が開かれ、臓器移植法の改正案がまとめられた。現行法
は1997年10月の施行から3年をめどに見直すことになっており、それを受けて議論が続けられていた。改正案では、15歳未満の臓器提供を認
め、「本人の拒否の意思表示がなければ家族(遺族)の承諾のみで行いうる」としている。脳死判定の実施については、「本人の書面によ
る意思表示と家族の承諾を不要」とし、「本人の意思尊重」を基本理念に掲げる現行法を根本から覆す内容になっている。今後、超党派の
生命倫理研究議員連盟(会長中山太郎衆院議員)で議論し、今国会での提案を目指す予定。


●ヒト胚
総合科学技術会議、ヒト胚中間報告シンポ開催

 2月8日、内閣府総合科学技術会議事務局主催の「ヒト胚に関するシンポジウム」が東京で開催された。2003年末に生命倫理専門調査会が
まとめた中間報告「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」へのパブリックコメント募集の一環として、中間報告の説明や同専門調査会の
委員らによるパネルディスカッションが行われた。パネリストの1人である島薗進東京大学大学院教授は、「審議が十分に反映されていない
」と中間報告のまとめ方を批判したうえで、「生命科学が進歩し、人の生命を操作する強大な力になった。難病の治療という良い面だけを
見て研究を進めることは、非常に危険を伴う」と発言した。シンポジウムは2月15日に神戸でも開かれた。


●ES細胞
文科省、新たにヒトES細胞使用計画を承認


 2月13日、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関)が開かれ、新たに使用計画1件が承認された。使用計画とは、すでに
作られたヒトES細胞を用いて研究を行うこと。
 今回承認されたのは田辺製薬先端医学研究所と自治医科大学医学部の共同研究で、スウェーデンのCell Therapeutics Scandinavia AB社
から輸入したヒトES細胞を使用し、神経系細胞への分化誘導法の開発、さらにはパーキンソン病モデル動物(ラット、サル)への移植を行
う。この使用計画は今会合に初めて提出され、その日のうちに承認されるというスピード審議だった。