■2008年4月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●GM作物についての2つの報告書


 2月13日、GM作物推進団体ISAAA(国際アグリバイオ事業団)が、2007年のGM作物栽培面積を発表した。例年より約1カ月遅い発表だった。それによると、昨年GM作物は世界で1億1430万ha 栽培され、日本の国土の約3倍となった。
 同じ日に、国際的な環境保護団体、地球の友(Friend of the Earth)と、米国の市民団体・食品安全センター(Center for Food Safety)が、GM作物は農薬使用量を増やしただけで、収穫量の増加や飢餓・貧困の解消にはつながっていない、とする報告書を発表した。

 ISAAA報告では、栽培面積を大きく増やした作物はトウモロコシで、大豆の作付けは横ばいだった。これは米国でバイオ燃料ブームが起き、トウモロコシ価格が高騰、栽培農家が増えたことが影響している。その分、大豆の栽培面積が減少した。性質別では、除草剤耐性と殺虫性を組み合わせた「スタック」タイプが大幅に増加した。
 昨年、GM作物の栽培にかかわった農家も1200万戸に上るとされ、その大半が小規模農家だった。そのほとんどがアジアの農民で、中国710万、インド380万の農家が栽培したとされている。
 中国ではGM綿に続いて、GMパパイヤが3500ha、GM ポプラが25万本も栽培されている。また昨年報告書にあったイランのイネが、今年は入っておらず、栽培が失敗だった可能性が強い。
 今回の報告で、前年に比べて際立った栽培面積の伸びを示したのがインドで、昨年より63%増の620万haにBt 綿が作付けされた。また、最初のGM食品となるGMナスがまもなく承認されようとしている。この栽培面積拡大が、農家の経済状態を圧迫して自殺者を増やし、社会問題となっているが、その点には触れられていない。今後の栽培国としては、ブルキナファソ、エジプト、ベトナムがあげられている。
 多くの市民団体が、この報告自体が多国籍企業による宣伝活動であり、その数字も過大に評価したものになっていると指摘している。

 前出の市民団体の報告書によると、GM作物の大半は貧困国の食料ではなく、裕福な国の家畜の飼料になっている。南米で栽培されているGM大豆は、欧州の家畜の飼料になっており、現地の人々の食料は減少している。南アフリカではGM綿の導入によって小規模農家が激減した。バイテク業界が宣伝する栄養価が増え、旱魃に強いなどの品種はまだ栽培されていない。除草剤耐性作物に使用される除草剤は10年間で15倍に増えた。除草剤使用量の増加に伴い除草剤に耐性をもった雑草、スーパー雑草が増えている。そのスーパー雑草に対処するため、2-4Dの散布量が増えている。また業界が喧伝しているような収量の増加は認められていない、と指摘している。〔The Washington Post 2008/2/14ほか〕