■2008年6月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●動物工場
●ロシアとベラルーシがGM動物開発で協力

 ロシアとベラルーシの政府関係者が協議し、今後もGM動物開発で協力することを確認した。両国による開発は、乳から人間の医薬品成分を取り出す「動物工場」をおもなターゲットにしており、ヒトラクトフェリン、抗菌・抗炎症タンパク質などを作りだす山羊の開発などに取り組む。〔Russia-InfoCentre2008/4/7〕
●クローン家畜
●業界によるクローン家畜モラトリアムに、米農務省介入せず

 米国農務省は4月7日、体細胞クローン由来食品について、業界が現在行っているモラトリアム(一時停止)の撤廃を求めない、と発表した。これは今年1月、FDAがクローン家畜食品について安全を宣言し市場化を容認する以前から、農家や牧場主などがとってきた措置に対して不介入を宣言したもの。〔ロイター2008/4/7〕
●GM汚染
●神戸大がGM大腸菌を違法投棄

 神戸大学大学院医学研究科の久野高義教授の研究室が、がん発症のメカニズムの研究などに用いた遺伝子組み換え大腸菌などを排水口からそのまま流したり、一般ごみとして捨てていたことが判明し、神戸大はただちに全学の遺伝子組み換え実験を停止させた。GM大腸菌に関しては、カルタヘナ国内法で滅菌処理が求められているにもかかわらず、4年間にわたりそのまま投棄していた。〔神戸新聞2008/4/12〕
●遺伝子組み換え食品
●日本食品化工がコーンスターチ用にGMトウモロコシ輸入

 日本で最も多く食品用トウモロコシを輸入している、コーンスターチ製造の最大手・日本食品化工が、GMトウモロコシの輸入・加工に踏みきった。飼料用としては、GMトウモロコシが輸入されているものの、食品用としては食用油を除き、非GMトウモロコシが輸入されてきた。ここにきてトウモロコシ価格が高騰し、さらに非GMトウモロコシに対するプレミア(割増金)が高騰したことから、同社は今年2月からGMトウモロコシの輸入を開始、飲料メーカーなどへの提供を始めた。現在のところビール会社各社は、非GMコーンスターチ使用を継続することを決めているものの、ジュースなどに使用するメーカーも現われており、対応が分かれ始めている。〔Bloomberg2008/4/27〕
●企業動向
●シンジェンタ社が北京に研究施設設置

 スイスに本社を置く多国籍企業のシンジェンタ社が、反対運動がなくバイテク開発に積極的な中国・北京にグローバル・バイテク・リサーチセンターを設置すると発表した。トウモロコシ、大豆などの主要穀物をターゲットに、高収量、旱魃耐性、耐病性、バイオ燃料用などの作物を開発する。最初の5年間で6500万ドルを投資する予定。〔FoodNavigator2008/4/17〕
●省庁動向
●体細胞クローン家畜食品の審議始まる

 5月2日、体細胞クローン家畜由来食品の安全性に関する審議が、食品安全委員会の新開発食品専門調査会作業部会で始まった。作業部会には、クローン家畜で実験を行い「安全」と評価した、厚労省研究班代表の熊谷進東京大学教授がおり、自らの評価を審議するという点に消費者団体から批判が強まっている。

●農水省のGM作物栽培指針見直しへ

 4月18日、農水省の「遺伝子組換え作物栽培実験指針検討会」が開催され、北海道農業試験場で行われた交雑試験の結果(前号参照)を受けて、指針の見直しが発表されたが、見直しは小手先の修正にとどまった。北海道の交雑試験では、農水省の指針が示している隔離距離が短かすぎて非現実的であることがわかったが、修正されなかった。
 見直しの箇所は次の2点である。@「過去のデータに基づき、開花期の平均風速が毎秒3mを超えない場所を選定して行うものとする。その場合においても、台風等の特段の強風が想定される場合には、防風ネットによる抑風又は除雄を行うものとする。」、A「イネ及びダイズについて、開花前の低温により交雑の可能性が想定される場合には、(2)に定める交雑防止措置を講ずるか、又は開花前に栽培実験を中止するものとする。」
 (2)に定める交雑防止措置とは、「ア、開花前の摘花、除雄又は袋かけ。イ、開花中の風、訪花昆虫による花粉の移動を防止できるネットによる被覆又は温室内での栽培。ロ、学識経験者の意見を聞いて農林水産技術会議事務局長が定める措置」の3種類である。
●iPS細胞
●iPS細胞研究シンポジウム開催

 4月15日、東京・千駄ヶ谷の津田ホールで毎日新聞社主催の「iPS細胞研究の展望と課題」と題するシンポジウムが開かれた。パネリストには07年に人の皮膚細胞から人工多能生幹細胞(iPS細胞)を作成した京都大学再生医科学研究所教授の山中伸弥、96年に体細胞クローン羊「ドリー」を誕生させたスコットランド再生医療センター長のイアン・ウィルムットらが参加。講演のなかで山中は、iPS細胞を使って出来そうなのは「薬の毒性実験、創薬、細胞治療」の3つで、現時点で最も実現の可能性が高いのは薬の毒性試験と創薬だと語った。また、ドイツの製薬メーカー・バイエル社との特許取得合戦については、「報道を観る限り、あの研究では我々のほうが先を行っている。我々の後追いをしてるだけならば、それほどの脅威ではない」と強気の姿勢を見せた。