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題名と翻訳者、登場人物、場面など

英文

CHARMIDES, OR TEMPERANCE
by
Plato
Translated by Benjamin Jowett

PERSONS OF THE DIALOGUE: Socrates, who is the narrator, Charmides, Chaerephon, Critias.
SCENE: The Palaestra of Taureas, which is near the Porch of the King Archon.

翻訳作業

CHARMIDES, OR TEMPERANCE
英語では「チャーミデス」とでも読むのだろうか。実際に古代アテネに実在した人物名なので、歴史書の日本語訳の本にも出てきている。「カルミデス」と書くのが普通なので、そうしておく。プラトンの母の弟にあたる。プラトンから見れば、叔父(おじ)さんだ。ペロポンネソス(ペロポネソス)戦争で、アテネはスパルタに負けた。このとき、アテネにスパルタを後ろ盾とする三十人政府ができる。カルミデスのいとこのクリティアス(クリチアス)は、その政府の指導者となり、反対者を断罪する独裁政治を行う。カルミデスもアテネの外港ペイライエウス(ピレウス;ピレエフス)の10執政官の一人として、三十人政府の一員となる。亡命していた反対派が兵を挙げ、その戦闘でクリティアスもカルミデスも命を落とす。
TEMPERANCE は、「節制」が哲学らしい。必ずしも日本語の「節制」と一致するものではないと思うが、のちに『国家』(というプラトン著の書物)でも「節制」の徳は出てくる。一般的に日本語にすると「節制」となっている。本文の中で「節制」とは何かが明らかになってくるので、不都合が出てきたら、そのとき変更すればよい。ひとまず「節制」でいく。
or は「または」。まあ、それでもいい気がするが、プラトン作品は、副題として「〜について」としている日本語訳本が多い。それにしたがって「節制について」とすることにする。

by Plato
これは、「プラトン著」でいいだろう。

Translated by Benjamin Jowett
翻訳者名である。「ベンジャミン」は、そうだろう。「ジョウェット」か「ジョウエット」。どっちだろう。「ジョウェット」にしておく。
ちなみに、彼はオックスフォード大などの教授として活躍した。この英訳文は1891年と百年以上前のもの。

PERSONS OF THE DIALOGUE: Socrates, who is the narrator, Charmides, Chaerephon, Critias.
プラトンの作品は、舞台の台本のように対話が中心となっている。プラトン作品が「対話篇」と呼ばれるのは、このためだ。THE DIALOGUE と The がついていることもあり、「この対話篇の登場人物」としておく。
「ソクラテス」。関係代名詞のあとに、is the narrator とあるので、「ソクラテスがナレーターを兼ねている」のだろう。あとは、「カルミデス」、「カイレポン」。英語では「カエレフォン」だろう。いろんなプラトン作品に登場し、「カイレフォン」となっている日本訳も見たことがあるが、ここは「カイレポン」でいく。「クリチアス」。「クリティアス」が英語の発音に近いだろう。ギリシャの歴史書や哲学書の日本語訳でも「クリティアス」がある。私もこのページの上のほうで、そう書いているが、以後は「クリチアス」でいこうと思う。やっぱり、「クリティアス」にしておく。あるとき(2005年10月)、Google 検索で調べたら、クリティアス(1,030)、クリチアス(69)であった。もちろん、他の人物を指しているものもあるのだが……。

SCENE: The Palaestra of Taureas, which is near the Porch of the King Archon.
SCENE は「場面」とぶっきらぼうに書くか、「場面設定」と親切にいくか。「状況」はちょっと薄いか。
ここで困ってしまった。The Palaestra of Taureas
Palaestra も Taureas も大文字なので、固有名詞であろう。英和辞典を見てもない。Palaestra は、palace に近いから、「宮殿」ではないか。もう少し読み進めると、続々と市民が集まってくる。用もないのに宮殿に人が押しかけてくることはないだろう。Taureas とかいう人物の「屋敷」という意味だろうか。開放的なお金持ちか権力者が、自分の屋敷を開放しているのだろうか。
後日、ネット検索等で調べてみると、古代ギリシャの「体育場」が palaestra のようだ。「拳闘場」「レスリング場」の可能性もあるが、ここでは広い意味の「体育場」をとりたい。ギリシャの体育所は、大きなものが三つ、郊外にある。アカデメイア(北)、リュケイオン(東)、キュノサルゲス(南)(プラトン著山本光雄訳『ソクラテスの弁明』の中の『エウチュプロン』の訳注3、P139)。Taureas とは音が合わない。“King Archon のポーチの近くにある”と英文にあるので、郊外の体育所ではない。アルコン(Archon)とは、「執政官」のこと。民会(エクレシア)の決定を執行する内閣の大臣たちのような役割。だから、アテネの中心部にあるはず。
紀元前429年に、ポテイダイアは降伏している。この年の話だと考えられる。当然、アテネでは王政は、もう行われていない。King は、意味が分からない。筆頭執政官のことを the King Archon と訳しているのだろうか。この辺りは、もうちょっと古代アテネについて勉強せねば。
Taureas は、英語にはない。Taurus が「おうし座」なので、「おうし座の体育場」というくらいの内容ではないか。
porch は、「張り出し玄関」「屋根つき玄関」、ときには「ベランダ」。あっつ、これか。the Porch で「古代アテネの哲学者ゼノンが弟子に講義した柱廊(研究社『ジーニアス英和辞典』第三版)」。ゼノンが講義するのは、百年以上も後だけど、「柱廊」だけもらっておく。

暫定日本語訳

『カルミデス』〜節制について〜
プラトン著 ベンジャミン・ジョウェット英訳
登場人物:ソクラテス、語り手もソクラテス、カルミデス、カイレポン、クリチアス。
場面設定:筆頭執政官の館に続く柱廊の近くにあるタウレアスの体育場。

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