[アンプ製作日記 SIEMENS F2a11 PushPullアンプ]
F2a PushPullアンプの続編としてF2a11 PushPullアンプ製作記を考えていたのですが、 よく考えて見れば全く同じアンプの作る過程を同じ様に紹介してもあまり意味がありま せん。そこで、アンプ製作の進捗状況と共にアンプ製作に至るまでの経緯や部品の入手、 或いはアンプ作りの個人的な考えとかを纏めて行こうと思います。 ![]()
左の画像はF2a(左),F2a11(右)で違いが
わかる様に 2枚並べて見ました。
画像では解りにくいですが、両者の電
極の形状とガラスのサイズは全く同じで
プロングだけが異なっています。
F2aはベースがセラミックでアルミを
被せてあり、ペーストのような物で直接
ガラスに接着しているのに対し、 F2a11
はモールドに穴の開いたアルミを被せて
あり、中は空洞です。恐らく放熱を良く
し熱がベースに伝わらない様にする為と
思われます。
それから、F2aは9ピン、F2a11は8ピンとなっていてN.C.ピンの数が違うだけです。
F2a11のソケットは EL156の10ピン用のソケットを2ピン遊ばせて使えます。
左の画像がそのモールド製で1800円ぐらいのソケットで、シ
ャーシの表側から取り付ける様になっています。
左の画像は私が最も気に入っている 9ピンMTソケットです。
製造メーカーは EBYで、球をソケットに挿した時にガタツキが
少ないので利用しています。
ソケットの入手と選択は毎度の事ながら頭の痛い話で、国産品、輸入品共々当たりは
ずれがありガタツキの少なく自分のフィーリングに合う物を探し当てるのはなかなか骨
が折れます。もしかしたら真空管を入手する以上に面倒な事かもしれません。
F2a11 PushPullアンプの製作はシャーシ加工まで完了しました。
左の写真は600Ω:600Ωの入力トランス:25A22で、
その名のとおり入力ライン受けに使用しました。入出力でトラン
スを使い、中はCR結合というやり方です。音質に対する効能は特
に考えておらずわかりません。 UTCのA-20と同じ規格ですが、こ
ちらの方は少々安っぽい造りです。写真でみると解りますが番号
と端子が見事にずれてます。(^^;;
このトランスは 300Ωずつスプリットされているので位相反転回路となって全段プッ
シュプル構成にする事が出来ます。また、入力インピーダンスを可変出来たり、バラン
ス伝送も可能となり応用範囲が広がります。しかし、タムラトランスとデザインが合わ
ないので、可愛そうですがシャーシの中に押し込めてしまいました。
F2a11 PushPullアンプの製作は組み立てまで完了、配線はこれからというところです。
左の写真がそのコンデンサです。左から、 F2a11のカソードバ
イパス用に使用している SIEMENSの電解コンデンサです。その隣
が今年のフェアで購入したドイツ製?で、初段のE80Fのカソード
バイパス用に使用しています。その隣がカップリング用に使用し
ている EROのコンデンサ MKP1845です。右端は同じく EROのコン
デンサのMKT1813です。
カップリングコンデンサは以前オイルコンも試していましたが、最近は殆ど EROのポ
リプロピレンコンデンサです。一方、カソードバイパスコンデンサはこれと言うものを
使っていません。
F2a11 PushPullアンプの製作はターミナルボードへの部品取り付けが完了しました。
コンデンサはいろんな種類を試しているのですが、抵抗に関
して言えば殆どArrenBladry製ばかり使用しています。この抵抗
が気に入っている点は、リード線の硬さとシャーシに収まった時
の色合いです。音質はどうかと尋ねられるとはっきり自覚して音
が変わった!という感じではないので判らないとしか言えないの
ですが、この抵抗を使う様になってから何となくアンプの音のグ
レードがあがっている様に感じる今日この頃です。
それから ArrenBladryを使用するところは音の通る箇所のみで、
電源回路のデカップリングは酸化金被抵抗を使っています。
つまり、私の場合そこが手の抜きどころで、何から何まで完璧に
しようとすると大変な事になります。また、出力段のカソードバ
イアス用抵抗は国産のホーロー抵抗です。
いずれも、秋葉原に行けば容易に入手できるものばかりです。
で、上側の写真の一番右端は最近見かけなくなった5Wのホーロー抵抗です。
それから、入力レベル調整に使うボリュームはNOBLE製です。伊藤喜多男さんの本に紹介
されています通り国内外の他の製品と比較してもかなり良い物だと思います。やや薄型
で、シャーシにとりつけると若干スペースが稼げます。また端子の穴もやや大きめで配
線がしやすいのが特徴です。今も300円くらいの値段で売っており重宝する品です。
F2a11 PushPullアンプの製作は配線を半分程終えたところです。
ヒューズホルダー
国産品のヒューズホルダーは碌な物がないのでやむなくLITTEL
FUSE、BUSSMANといった輸入品を使っています。国産品がどうい
うものか知っている方は判ると思いますが取り付けナットがプラ
スチック製で本当に「ちゃち」です。コストダウンの為とはいえ、
「ここまでやるか?!」という感じです。
ACコネクタ
アンプを製作する時、私は必ずHIROSEのACコネクタを使います。
取り外しが簡単に出来るのでアンプを持ち運ぶ時ACケーブルが
邪魔になりません。ACケーブルはOA機器に付属している物を
JUNK屋さんで買って来て使っています。プラグのところにノ
イズフィルタ付きの物もあるので使い良いと思います。
キャノンコネクタ
キャノンコネクタは電気的接続の確実性もさることながら、アンプのデザインが引き
締まって見えるというのもひとつの利点です。外側から取り付けるのでシャーシの切り
口が見えることもありませんので、少々シャーシ加工が下手でも綺麗に仕上がります。
ここでは3ピンのキャノンコネクタを左右のチャンネルで一個づつ使うのですが、そ
れ以上のピン数の物もあるのでいろいろ応用して使えると思います。
ターミナルブロック
F2021出力トランスのタップは 4,8,16Ωが用意されていますが、
全てのインピーダンスを切り替え自由にしておくと非常に便利な
ので、ターミナルブロックを使用しています。
電源スィッチ
電源スィッチは国産、輸入品共良い物が出回っているので入手
に苦労することはありません。ジャンク屋さんにいけば掘り出し
ものもありますし、現在生産されている物で充分です。
但し、F2a アンプに使用しているものは輸入品で、且つ取り外
しジャンク品です。このスィッチはレバーがとても堅くON-OFFす
る時のパチンという感触がなかなかの物です。
それから、必ず2連のスィッチを使い、両極がOFF出来る様にしています。
ターミナルボード
無くても困らないパーツですが、有ると余計な配線の引き回し
が少なくなりアンプの内部の配線をすっきりとまとめることがで
きます。
![]() F2a11 PushPullアンプはようやく完成にこぎつき、ランニングテストを開始しました。 右チャネルがF2a11、左チャネルがF2aという変則的なステレオですが、最初に述べた様 に電極構造は全く同じなので音質に違いはありません。どの文献に書いてあったか覚え ていないのですが、元々F2aは汎用の真空管であったのに対しF2a11はオーディオ管とし て作られたものだそうです。F2a11が KLLナンバーで製造されていた事から推測すると F2aを使い易くする為にプロングを作り直したのではないでしょうか。
F2aは黄リボンのデザインがとても映えるので人気が有るよう
で、近年は市場価格が F2a11と逆転しており割高です。 また、
最近は黄リボン無し(Lot b燒ウし)の物が安く出回っており価格
とのトレードオフとなります。それから、黄リボンは紙なので熱
による経年変化は避けられません。
一方、F2a11は見栄えが悪いのですが、市場価格がF2aより安く、
ソケットの入手も容易です。また、 F2aと比較して熱がシャーシ
に伝わりにくい構造なので放熱が楽です。
見栄を張るならF2a、お金を節約するならF2a11といったところでしょうか。
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