◆傾聴ボランティアとは
 「誰かのお役に立ちたい」と願う人たちが、相手の話を否定しないで受けとめて聴くという聴き方(そういう聴き方のことを「傾聴」と言います)について学んだ人たちが、学んだ聴き方を活かしながら、話す機会の少ない高齢者の方々(認知症等の障害を持つ方々を含む)や、悩みや不安を持った方々や、子育て中のお母さんたちや、精神障害の方々等のお話を聴くという活動をしています。このように活動している皆さんのことを、傾聴ボランティアと言います。今、この活動は、全国で、大きなうねりのように広がっています。

◆傾聴ボランティアの起源はアメリカのシニア・ピア・カウンセリングから
 傾聴ボランティアの活動の理念は、アメリカのシニア・ピア・カウンセリングに端を発します。同世代の者たち同士であれば同じ歴史体験・社会体験を共有していることにより、よりよく理解し合えるということを最大のメリットとしたこの活動は、ピア・サポートの考えを大切にしています。ピアとは仲間のことですので、ピア・サポートとは仲間同士の支え合いという意味になります。勿論、状況により仲間には様々な意味が考えられますので、場合によっては人と人との支え合い、相互支援といった意味合いも含まれます。

◆より社会的な運動として協会独自に展開
 協会は、1999年に、このシニア・ピア・カウンセリングの考え方と養成講座のカリキュラムを日本に初めて導入し、ボランティアの育成を始めました。全米的に行われているシニア・ピア・カウンセラーの活動は個室における対面式のカウンセリングですが、協会は、この活動の理念はそのまま大切にしながら、話したくても話せない人々(特に高齢者)を対象に、より社会性のある運動として独自に展開してきました。それが現在の「高齢者のための傾聴ボランティア」というわけです。

◆傾聴ボランティア活動の特徴と新しい形の社会貢献活動
 傾聴ボランティア活動の大きな特徴は、話を聴いて差し上げる相手の方にとってメリットがあるだけではなく、傾聴ボランティア活動をするボランティア自身にも大きな喜びと学びの場となっているということです。様々な方々のお話を聴かせていただくことによって、これまで自分が知らなかったことをたくさん教えていただくと同時に他者のために役に立っているという有用感と社会貢献の充足感を感じることのできる貴重なボランティア活動です。特に、4人に1人以上が高齢者という超高齢社会の中では、重要な相互扶助活動となります。

◆傾聴はどの世代に対してでも
 前述のように、協会は、日本における傾聴ボランティア活動を、主として高齢者を対象した活動として展開してきましたが、傾聴の基本的な技能は、相手の方とよりよいコミュニケーションを図るためのものですので、この技能は、若い世代の人々や子どもたちをも含めたどの世代の方々に対しても通用するものです。あるいは、認知症を持つ高齢者や各種の障害を持つ人々とコミュニケーションを図る上でも有効な技法です。今、全国で、多くの傾聴ボランティアが急速に増えている認知症状高齢者の方々に、ひとときでも、穏やかで豊かな時間を持ってもらおうと、一生懸命関わりをさせていただいています。

◆ホームヘルパーや施設で働く職員の皆様のスキルアップにも
 本講座は傾聴ボランティア養成講座と銘打っていますが、内容は相手の方とよりよい人間関係を構築するためのコミュニケーション技法の修得を目指したものですので、傾聴ボランティア活動を志望する方々だけではなく、お仕事として日常的に高齢者に関わっていらっしゃるホームヘルパーや各種の(高齢者)施設等で働く職員の方々看護の現場で働く方々、あるいは民生委員の方々にとっても、お仕事のグレードアップのための講座として必ずお役に立ちます。

◆傾聴活動が目指すものと効果
 人がこの世の中で生きていくためには、必ず話をする相手が必要です。傾聴ボランティア活動は、普段から話をする機会の少ない方々のためにお話し相手をすることが多くあります。たくさん話をしてもらうことは、相手の方に喜ばれるだけではなく、その方の気持ちの整理にもなり、場合によっては、その方なりの自律的な判断や納得に至ることのお手伝いをすることになります。相手の方を受け入れてお話を聴くことは、相手の存在を認めることになり(存在認知)、生きる自信を湧かせてもらうことにもなり、また、ときには、相手の方の自立的な生き方のお手伝いともなります(自立支援)。

◆傾聴の基本的な技法(スキル)
 傾聴の技法は、主としてロールプレイ(役割演技)実習を通じて学びますが、大事なことは、相手の言うことを否定しないで、肯定的・共感的に受けとめて聴くということです。また、このことは、相手の立場に立つ、尊重するということなしには成立し得ないことですので、本講座では人に対する温かい心遣いや姿勢あるいは情緒的一体感の共有の大事さについて学ぶことにもなります。

◆受講の資格は
 本講座を受講していただくにあたっては、一切、 受講資格(条件)はありません。つまり、資格・学歴・年齢による制限はありませんので、どなたにも受講していただくことができます。

◆傾聴ボランティアの活動場所
 本講座の修了生の多くは、高齢者の個人宅、あるいは各種(高齢者)施設、病院等を訪問して傾聴ボランティア活動をおこなっています。最近では、多くの社会福祉協議会・ボランティアセンター等でも取り組みが始まっていますので、受講後、活動を始めるためには、地域のこうした機関と相談されることをお勧めします。また、講座中に協会から「傾聴ボランティア活動の始め方」について、ご説明します。

※傾聴ボランティアは、今回の3.11東日本大震災の被災者の皆さんの傾聴を、震災直後から仮設住宅や復興住宅、サロンを訪問しながらおこなっています。