この道 : 国道154号線





 国道マニアの間には、『港国道』と言う言葉がある。あるいはもう少し一般的な概念なのかもしれないが、その名の通り経路上に港がある国道のことだ。経路上とは言うものの、多くの場合は起点か終点が港になっている。
 国道154号線も、そんな港国道のひとつである。大抵、ごく短い距離で完結するのが港国道の特徴で、154号線は全線で4km。名古屋市内完結の国道となっている。もっとも、これでも港国道の中では極端に短いとは言えない。短い国道十傑は全て海港もしくは空港が絡んだ国道だが、154号線はその中にはランキングされていない。ちなみに、日本最短の国道は、神戸港と国道2号線を結ぶ174号線で、総延長187.1m。これはかなり縮尺の小さい地図でないと表記すらされない距離だ。
 なぜこのような短い国道が存在するかと言えば、国道が国道たる要件を定めた道路法において、港湾や空港と、特に重要路線とされる国道を結ぶ道も国道とする旨が明記されているためである。
 国道154号線は、名古屋市港区にある名古屋港のガーデン埠頭交差点を起点とし、1号線との交点である名古屋市熱田区・白鳥橋西交差点を終点としている。
 いくらなんでも短すぎるので、今回の行程は自転車で移動。車で走れば全区間走っても10分とはかからないはず。



道路法による国道定義で154号線に関係すると思われるのは、『港湾法に規定する港湾、重要な飛行場または国際観光上重要な地と高速自動車国道又は第一号に規定する国道とを連結する道路』。
上で言う「第一号」の条文は、『国土を縦断し、横断し、又は循環して、都道府県庁所在地その他政治上、経済上又は文化上特に重要な都市を連絡する道路』というもの。
 名古屋港側から見ると“Garden Pier”という英語表記しかなく、若干不親切とも思えるガーデン埠頭交差点を出発。北にある終点に向かって走る。
 この起点近辺には地下鉄名城線名古屋港駅やレジャー客を当て込んだであろう飲食店などの他、港警察署、水上警察などのお堅い施設もある。道幅は少し狭いが、ここまで入りこんで来る車が少ないせいもあるのだろうか。『客待ち禁止』の看板が立てられているにもかかわらず、路上駐車の客待ちのタクシーの中で運転手がヒマそうにしていたりして、どうもうらぶれた印象がある。ガーデン埠頭近辺までは地下鉄によるアクセスが便利なため、利用者が少ないのだろう。
 築地口交差点の一つ前の交差点から道幅が拡大する。築地口交差点は、伊勢湾岸自動車道に接続する金城埠頭線との交点となっている。この伊勢湾岸自動車道、将来的には第2名神になるとは言われているが…。




 名古屋港とは言っても、ガーデン埠頭界隈にあるのは水族館などレジャー施設中心。大型貨客船は、このあたりから発着してはいない。
 築地口交差点付近では、154号線の経路が非常に不明瞭になる。全線走破などと言う酔狂に挑んでいるのでもなければさしたる問題ではないが、築地口交差点で右方向に進み、その直後今度は左方向へ侵入するのが正しい154号線のルート。築地口交差点あたりまで進むと、国道23号線の高架が見えてくる。23号線に乗るのも少々ややこしく、もう少しスマートに出来ないものかとも思う。
 築地交差点を過ぎ、23号線をくぐって少し進んだあたりにはマンションなどが建っており
宅地化されている。ただ、商店の類は少なく、何とはなしに無機質な印象の道だ。片側3車線は確保されている。やはり、まず物流ありきの道なのだろうか。




 154号線は23号線にまたがれる。合流経路は煩雑。これが旧一級国道と旧二級国道の差か。
 154号線の一区画東側は、もう堀川である。23号線と交差直後の住宅地帯が終わり、千年交差点に至る手前あたりまでは、堀川沿いに海運業者の倉庫や大手企業の工場が建ち並んでいる。どうやら工場の近くから直接海に出られるようになっているらしい。反対車線側には住宅や病院、学校などがあって、こちらの方が生活臭がある。
 千年交差点で東海通を横切る。名古屋市の南部地区を東西に走り抜ける道である。
 千年交差点を過ぎても、港向き車線側には工場、名古屋都心向き車線側には住宅と言う傾向は続く。



 自転車で全線走っても、20分かかるかどうかと言ったところだろうか。国道1号線との交点である終点、白鳥交差点にたどり着いた。写真は、1号線側から名古屋港方向を撮影したもの。
 全般に工場が立ち並ぶ印象の強い路線だった。住宅地・店舗をはじめ、港区の都市機能は154号線よりも一本西側の主要地方道江川線沿いに集中しているようである。同族の中ではやや長めの距離を走るとは言え、154号線はやはり、港とそれに関係する工場との間を接続する典型的な港国道だったようだ。
 それにしても必要以上に高規格な道路というのが感想である。今は伊勢湾岸道路、将来的には第2名神に接続することを想定して整備されたものなのだろうか。
 この伊勢湾岸道路は、先行して東名阪自動車道の四日市JCTに接続していたのに続き、2004年12月12日に東名高速道路豊田JCTと接続した。これを利用すると岡崎―四日市間は、名古屋まで回りこんで東名阪に乗っていた従来の経路に比べて、30分の時間短縮になるそうだ。



 大都市の湾岸地区はどこでもそうだが、154号線の走る区間は埋立地なのだろう。終点近くには、旧東海道・七里の渡し跡(1号線レポ参照)があり、往時はこのあたりが海岸線だった事を物語っている。






ロケ地:名古屋市営駐輪場(名古屋港)
今回使用した車
自転車/イオン社製(排気量:乗り手次第?)

国道154号線総括
 短い上に、まっすぐ、平坦、歩道もやたらに広いと、自転車でも非常に走りやすいコース。区間が短いと言う不利もあって、道自体はさほど魅力的ではない。
 今回は起点終点に対して忠実にあるため、名古屋港側から市街地に向け走ったが、名古屋市南部在住者がガーデン埠頭あたりを目指し、サイクリングがてら走るのが一般的だろう。


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