随想


 『マスコミ悪者論』
 2003.12.27

 
 あらかじめお断りしておくと、今回は別に目新しい話ではありません。内容は通り一遍のものです。随想と言う副題が物語るように、とりとめも無い話です。

 掲示板の方で、過去に何度かマスコミにまつわる陰謀論めいた話題が出た事があります。「黒い噂」と言いたい所ですが、書き込みを拝見していると、どうも噂や都市伝説にカテゴライズするべき内容とはちょっと違ったようです。文面から、どちらかと言うと「真実の告発」を意図していたかのような内容でした。これらの書き込みへのレスは、タイミングを逸したり、意図的に見送ったりでつけていません。何かしら信念、思うところあっての書き込みであるようにも見受けられましたが、何分こんなサイトの管理人の意見ですから、レスをしても先方の意図と反駁するのは明らか。ともすれば不毛な水掛け論に陥る危険性があり、究極的には与太話の収集人であると自負している私としては、まるで社会正義の実現を叫ぶかのごときその内容に対すると、どうしても尻込みしてしまいます。そもそも当サイトの掲示板にそういう内容を書き込むのは、意味があるのか、それともかえって逆効果なのか、と思案に暮れたり。

 もっとも、書き込みの中にはむべなるかなと思える部分があったのも事実です。「マスゴミ」などと言う蔑称が生まれるあたりから、マスコミに対する不信感が広まりつつあるのは確かでしょう。マスコミが、世間に公表できない後ろ暗い事を行っていると言うような書き込みも、この不信感が背景にあるものだと思います。最近では視聴率至上主義が生んだであろう、日本テレビの視聴率操作事件もありました。視聴率と言う数字は、あくまでもテレビ局とスポンサーとの間において最も重い意味を持つものであり、視聴者にとってはさしたる重要性の無い事柄である以上、多くの人に対する重大な背信行為というのは違うように思いますが、マスコミ(特にテレビ)の更なるイメージダウンを引き起こしたのは、まず間違いないでしょう。

 マスコミ不信を誘発しそうな事柄として、個人的には「赤井邦道」事件が印象に残っています。いささか旧聞に属する話ですが、これは朝日新聞の読者投書欄に、赤井邦道を名乗る人物からの投書が掲載された事に端を発する出来事です。実は、朝日新聞は前々から目立って親韓国(親朝鮮)の報道をすると噂されていました。そこで、「2ちゃんねる」において朝日新聞が好みそうな内容が捏造され、それが「赤い報道」と同紙を皮肉る名前を与えられた架空人物名義で投稿され、見事(?)掲載されてしまったのです。「そういう事実があった」。それ以上にもそれ以下にも評価するつもりはありませんでしたが、一度朝日新聞の勧誘員の人を、この件について問い詰めたところ、「紙面の刷新に努めている」との返答でした。少なからず、私が思っていた以上にはブランドイメージへのダメージがあったことが伺えます。
 
 あの、2002年ワールドカップの時には、朝日に限らずマスコミの不自然な親韓報道が目に付いたものでした。まったく虚偽の内容を報じていたとは思いませんが、どうも、どちらかと言うと特殊な事例を一般化して報道していたように思えてなりません。特にテレビでは日韓友好を強調する場面が多かったように思いますが、その反動か、一般人がマスコミと言うフィルターを介さず大々的に発言できるインターネット掲示板は、逆にかなりの部分が韓国に対する反発めいた発言で占められていました。現段階では、ネット掲示板で発言する人々に平均的日本人像を求めるのは無理がありますが、あの当時は、対韓国報道においてネットの動向が忽せにできないほど大きなものだったのも事実でしょう。そうした動きを無視するかのように、一部を除けば韓国に対する批判を全く伝えなかったマスコミの姿勢は、やはり不自然だったと思います。

 もっとも、日韓両国の間に険悪なムードが立ち込めている状態は、到底両国に利益をもたらすようなものではありません。そういう状態を打破するため、あえてマスコミは友好ムードを演出したのかもしれません。もし仮にそういう理念の下に行われた報道だったとすれば、あの事態がマスコミが究極的に志向するものと著しくかけ離れたものであるとも思えませんが、同時に少し誘導的に過ぎたと言わざるを得ないのが悩ましいところです。多くの人にとっては余計なお世話でしょう。あるいは、ただ単に事なかれ主義から生じたものだとしたら論外です。お為ごかしにそんな事をしても、韓国に対してかえって失礼であるようにさえ思います。もちろん、根本的問題はそのような腫れ物に触るような対応しかできない両国関係にあることは言わずもがなです。

 日韓関係についてまで大風呂敷を広げるのは、このあたりでやめておきます。私の場合はたまたまワールドカップ報道が鼻についたと言うだけのことです。人それぞれ、マスコミ不信を感じる場面と言うのはあると思います。確かにマスコミと言えど、事実をありのままに伝えない事が往々にしてあります。意図的に虚偽を捏造するのはごく稀であるにしても、自分達の主義主張を補強する事実を選別し、それ以外にはほっかむりをし、都合のいい論理展開をする事は少なくありません。と言うより、情報の伝達とは本質的にそういうものなのでしょう。限られた紙幅、限られた放送時間内では重要(と思われる)情報のみをピックアップして伝えなければなりません。それが報道です。その取捨選択の判断基準が、著しくバランス感覚を欠いていれば、それが故意であるにせよ無いにせよ、糾弾されます。最大公約数的に受け入れられる報道をしても、全ての人が納得できる形に落ち着けると言うのはまず不可能です。何を以って良しとするかは人それぞれの価値観に拠っています。誰かから何かしらの形で叩かれるのは、マスコミの宿命だと思います。

 ただ最近、各所のネット掲示板を見るにつけ、全体にマスコミ批判が過熱しすぎるきらいがあるように思います。マスコミがらみで何か不祥事があると「だからマスコミは信用できない」と反応する人を時折見かけます。マスコミ悪者論は、一面の真理を含んでいるのかもしれませんが、しかし現状で、総合的に判断してマスコミ以上に信頼できるニュースソースも存在しないと思います。人伝の話は、このサイトの内容からも分かるように誤報が多いものです(別にそういうことを主張するためのサイトではないですが)。もちろん、マスコミが都市伝説に乗せられる事も皆無ではありません。最近ではネットを活用すれば有用な情報を引き出す事もできますが、これにも誤情報が含まれている事があります。中には既存のマスコミを超えるクオリティーのニュースサイトなどもありますが、量的な部分に難があります。もし、それら一癖二癖あるソースから有益な情報を引き出す能力(いわゆるメディアリテラシーと言う奴です)があれば、とどのつまりはマスコミの発信する事柄からも、より容易にさらなる情報を引き出す事が可能なはずです。マスコミは駄目だと言ったところで、それを超える決定的な情報発信源が確立されていない以上、最後に頼れるものはマスコミと言わざるを得ません。ただし、マスコミの情報を鵜呑みにするのではなく自分にとって必要で確実な情報を選別するメディアリテラシー能力を身に付けていくというのが現実的な対処でしょう。私自身、完璧にそのような事ができてるわけではないのでえらそうな事は言えませんが。

 手始めにこのサイト。果たしてどの程度信用できるものか、まず疑ってかかってみるのも良いでしょう。今回、ある意味ではこの部分が最重要です。何せ、なあなあの「鮫島」コラムと同時進行でこんな事を書いている奴のサイトなので…。