第3回
【逆転裁判】その2

『怪しい者じゃないですよ!ただの霊媒師です…修行中の。』
(by綾里真宵・逆転裁判TGSムービーより)

【逆転裁判】シリーズの魅力は、前回述べた通り、『裁判パートにおける、成歩堂と検事たちとの丁々発止のやり取り』な訳ですが、もちろんそれは、数多くある魅力の1つでしかありません。
では、その他の魅力は?というと、それはもちろん、各話を彩る多彩なキャラクター達です。
『1』〜『3』にまたがって登場する準レギュラーなキャラクターもいれば、限られた話数にしか登場しないサブキャラクターもいますが、その誰もが非常に濃く、異様にキャラが立った人たちばかり!
今回は、その中から何人か紹介してみたいと思います。

まずは綾里姉妹。
弁護士として、成歩堂龍一の師匠であった『綾里千尋』、そしてその妹の『綾里真宵』は、倉院の里という霊媒の里を故郷とする霊媒師一族の出身です。
この“霊媒”という設定が、実は【逆転裁判】1〜3を通して重要な設定になっていることを考えると、この作品の真の主役であるといってしまっても良いかもしれません。
残念ながら姉の千尋は、物語冒頭にて不幸な死を遂げてしまいます。
…が、妹の真宵の所持する強力な霊力を依代として彼女に憑依し、シリーズを通して成歩堂の強い味方となってくれます。
また、綾里真宵も、オッチョコチョイでトボケタところが多いものの、その純粋な視点から、成歩堂の気付かなかった証言の矛盾や隠された真実を指摘することがあり、成歩堂の助手としての立派に役立ってくれます。
成歩堂の事を“なるほどくん”と呼んで慕い、自分の力のなさに悩み、事件の悲惨さに涙する、綾里千尋は霊媒という特殊な能力を持っていながら、一番一般人に近い視点から事件に関わっていくのです。

そして『綾里春美』。
彼女は、千尋や真宵とは従姉妹同士にあたる、綾里家の分家の娘で、真宵を姉のように慕っています。
ゲームには【逆転裁判2】からの登場で、とある事情から調査に加われない真宵の代わりに成歩堂に手を貸し、他人の心の秘密を暴く『サイコロック』の力を授けてくれます。
しかし、彼女や綾里姉妹を取り巻く、霊媒師としての“綾里の血筋”は因縁と欲望にまみれており、それが悲劇的な事件を導いてしまう事も…。
関係ないですがこの春美ちゃん、その言葉遣いや様々なアクションが非常に可愛らしく、見ていて微笑ましく思える存在でもあります。

次に『糸鋸圭介』…通称イトノコ刑事。
彼は、事件の担当刑事として成歩堂と対決し、被告人の有罪を目指す立場です。
裁判パートでは、主に彼が最初の証人として召喚され、事件の概要、被告人が逮捕、起訴された理由を証言してくれます。
ただこのイトノコ刑事、無類のウッカリ者で、その証言には数々の矛盾が存在します。
とりあえずは彼の証言の矛盾を指摘して、話を先に進めましょう。
…とはいえこのイトノコ刑事、ただの敵役という訳ではありません。
彼は刑事としての自分に誇りを持ち、検事との信頼関係を大切なものとして事件の捜査に当たります。
(もっとも見落としが多いために検事からはにらまれており、しょっちゅう減給されては肩を落としているのですが…)
また、成歩堂のことは苦手に思っているものの、敵愾心を燃やしているわけではなく、時にはイトノコ刑事の方から調査に協力してくれることすらあります。

お次はサブキャラの中でも個性ナンバーワン!な『矢張政志』。
彼は成歩堂龍一や御剣怜侍の小学生時代の同級生で、惚れっぽくてオッチョコチョイな軽い男。
そして何よりなぜか彼の周囲ではいつも事件が巻き起こる、とんだお騒がせ野郎です。
(小学生当時の評判曰く“事件の陰にやっぱり矢張”。)
この矢張、ゲーム中でもその能力(?)を活かしてとにかく色々な事件の現場に登場します。
そもそも第一作【逆転裁判】の冒頭は、弁護士として初出廷する成歩堂が、矢張の殺人容疑を晴らすために弁護するところから始まっているのですから…。
しかしこの男、はた迷惑なだけでなく、様々なヒントを成歩堂に与えてもくれます。
基本的に彼の関わっている事件では、彼の変な行動、ウッカリやってしまったこと、そして目撃したこと、それらが鍵を握っていることが多いのです。
成歩堂はそれを踏まえて、矢張の奇妙な行動に隠された、事件の真実を探り出していくのです。
また、矢張はその軽い性格にも関わらず友情には篤く、成歩堂や御剣の事を本気で心配し、協力もしてくれます。
時にはそれも、変なトラブルの原因になったりもするんですが…。

そして最後はなんと言っても【逆転裁判】、彼がいなくちゃ始まらない、『裁判長』。
彼はその名のとおり、裁判パートで裁判の審理を務め、検事、弁護士両方の立証を聞いた上で判決を下してくれます。
もちろん、成歩堂の弁護が正当で的を射ていれば“無罪”判決を下してくれますが、誤った証拠を提出し続けたり、矛盾の指摘に失敗し続けたりすれば、無情にも“有罪”判決を下してしまいます。
その判決はあくまで厳格、威厳を備えた裁判長ですが、審理中には極めてコミカル、双方の提出する証拠や証人の証言にいちいち頷き、時には変な感想を漏らしてくれます。
また、押しの強い相手には極めて弱いらしく、裁判の進行役の座を奪われる事もしばしば…。
ちなみにこの人、最初は“サイバンカン”と表記されていましたが、そのうち“サイバンチョ”という奇妙な表記に変わってしまいました。

…正直、【逆転裁判】シリーズのキャラクターの魅力に関しては、このくらいでは全然語り足りません。
今回触れたのはサブキャラの中でも主要な人たちばかりですが、それ以外、各話に登場する容疑者や証人、真犯人に証言者、そのどれもが魅力的です。
次回は、今回触れられなかった人の中から、私が特に気に入っている人たちについて言及したいと思います。

To be Continued...
2004年3月17日
【逆転裁判】シリーズ・オススメ攻略本
『【逆転裁判】真相解明マニュアル』  1000円+税
『【逆転裁判2】真相解明マニュアル』 1200円+税
『【逆転裁判3】真相解明マニュアル』 1300円+税

双葉社刊・ファイティングスタジオ編・著の【逆転裁判】シリーズ攻略本。
【逆転裁判】の時には63pほどの薄い攻略本だったのが、巻数を増すごとに厚さも増大、最終的には250p近くに達する分厚い攻略本として完成しました。
もちろんゲーム攻略に関しても丁寧で、重要な部分は袋とじにしてある(『1』のみ袋とじはなし)という念の入れようですが、この本の真価は攻略ページよりも、むしろそれ以外のオマケ部分にこそあると思います。

『1』にはCAPCOM開発スタッフ直筆のサイドストーリー漫画4本とゲーム未登場キャラの画像。
『2』には主要キャラ全ての初期設定を含むラフ画像と、『1』〜『2』サブキャラのデザインラフ。
そして『3』では、ゲーム中のモーション画像をも含めた500点にも及ぶ設定・ラフ画に加え、各キャラに対する開発者側のコメントや、脚本の巧舟氏、『2』からメインキャラデザイナーに就任した岩元辰郎氏、そして【逆転裁判】シリーズのプロデューサー・稲葉敦志氏の三者によるシリーズ全体を通した対談等々資料性も満載の内容!

かう言う私も、今現在トップページに飾っている【逆転裁判】のイラストを描く際には、『【逆転裁判2】真相解明マニュアル』におおいにお世話になりました。
もちろん、攻略本という特性上、中身はネタバレが満載で、特に『3』の対談はページ冒頭に“全シリーズクリア後に読むことをオススメ!”とまで書かれているような代物ですが、それだけに内容は深く、読んでいるだけで面白い本に仕上がっています。

ゲームを買う前に攻略本を買うというのは、それこそ主客が逆転してしまいますので、ゲームをプレイしてみて、大いにはまった場合にはぜひとも購入してみていただきたいものです。