第8回 【スティーブ・ジャクソンの“魔法”】 |
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スティーブ・ジャクソンの方法論 | |
前回、第7回のコラムで触れた、FFシリーズの二本柱の一方であったスティーブ・ジャクソンですが、初期FFシリーズにおける彼の作品には明確な特徴がありました。 それは、システマチックな側面でのゲームブックへのアプローチ、というものです。 彼が初期(1〜10巻まで)に担当したFF作品(※)である『バルサスの要塞』『さまよえる宇宙船』(SF)『恐怖の館』(ホラー)の3作は、いずれもベーシックなFFスタイルに、“魔法”“パーティ性”“恐怖点”(※)という新たなシステムを導入し、単純なルールゆえにマンネリになりがちなゲームブックの、問題点の打破を目指したものでした。 それは、二本柱のもう片方、イアン・リビングストンが、共通世界の創造による世界観の広がりによってその問題に対処していたのとはまさに好対照を成しています。 しかし、全般的に見て、その試みが必ずしも上手くいっていたとは言えませんでした。 『バルサスの要塞』では、パラグラフ性の弊害として、“覚えている魔法が、つかえそうな場所であるにもかかわらず、選択肢として表記しされていないために使えない”ことがままありましたし、『さまよえる宇宙船』では、パーティによる複数メンバー性が、シンプルで遊びやすかったFFのシステムを、無駄に複雑にしてしまっていました。 そして、『恐怖の館』ではまさに目玉の“恐怖点”自身が、その難易度を高める原因となってしまっていたのです。 その解決策としてジャクソンが最終的に達した結論が、“パラグラフ数を増やす事で物語の幅を広げ、システムとしての余裕を確保する”ことでした。 その結果生まれたのが、全4巻、パラグラフ数で言えば総計2265パラグラフにも達する一大キャンペーン・『ソーサリー』シリーズだったのです。 このジャクソンの代表作でもある一大作品は、世界背景としてはFFと同じくタイタンを使用しています。 しかし、一巻あたりのパラグラフ数が400を突破しているためにFFシリーズとしての発行はされず(※)、日本でも社会思想社ではなく東京創元社の創元推理文庫から発行されました。 |
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スティーブ・ジャクソンのソーサリー! | |
“ソーサリー”とは簡単に言ってしまえば“魔法”のこと。 キャンペーンタイトルにその名を冠している通り、このゲームブックでは“魔法”が大きな意味を持っています。 主人公…冒険者である“あなた”は、能力値を決める際に、“戦士”(初級ルール)か“魔法使い”(上級ルール)か、そのどちらかを選ぶ事が出来ます。 戦士は技量に優れ(6面体サイコロ2個の値+6で決定する)、剣を用いた戦闘には有利ですが魔法を扱う事ができません。 魔法使いはその逆で、技量こそ戦士に比べて劣っています(サイコロ2個+4)が、魔法を扱う事ができるます。 そして、この“魔法”システムこそが、このゲームブックを不朽の名作たらしめているものなのです! 魔法は全て、3文字の英字の組み合わせによって表記され、体力を消費する事で使用できます。 例えば、以下のように。 『ZAP』 この上なく強力な武器となるこの呪文は、魔法使いの手から電撃を走らせるものだが、指先を狙った方向に向けておくことが必要だ。 防御の魔法の使えない、ほとんどすべての生き物に対して威力を発揮する。 だが、相当な体力と集中力を必要とする。 体力ポイントを4消費する。 全部で48種類に及ぶ魔法の効果は、単純に相手に打撃を与えるというものだけではなく、例えば怪物や動物と会話をしたり、未来予知を行ったり、幻影を作り出したりと多岐に渡ります。 また、その中の多くが、使用の際には特別な道具を必要とし、その道具はあなたが冒険をしていく間に、様々な場所で手に入るようになっています。 『バルサスの要塞』での問題点(選択肢にないため使用する事が出来ない)が完全に解消されたわけではありませんが、総パラグラフ数が増えたことで魔法に割けるパラグラフも多くなり、はるかに使いやすくなっていると言えるでしょう。 しかしこれだけでは、真に特徴的なシステムとはいえません。 何よりジャクソン自身が、すでにそれまでの作品で“魔法”のシステムを取り入れていたのですから。 『ソーサリー』の魔法の、真に特徴的な部分というのは、その習得方法にあります。 主人公であるあなたが(作成時に魔法使いを選択した場合に)魔法を扱えるのは、旅立つまでの訓練において、『魔法の呪文の書』を使った厳しい魔法の修行を行ったからです。 そして、この魔法の数々は非常に強力で、悪人や怪物の手に渡る危険を冒すわけにはいきません。 『魔法の呪文の書』それそのものだけでなく、一片のメモ書きですら、駄目なのです。 …つまりあなたは、ゲームを開始する前ならば『魔法の呪文の書』(各巻の巻末にまとめられています)を何度読み返しても構いませんが、一度旅立ったならば、二度とと復習してはならないのです! これは非常に大変なことで、前述の通り魔法は全部で48種類、全て3文字の英字で名づけられ(中には、効果が全く異なるものの、名前だけは似通っている魔法もある)、特殊なアイテムを必要とするものもあります。 また、冒険の間、選択肢にあらわれる魔法名の中には実際には存在しない魔法も含まれており、誤って選択してしまっては身の危険を招きます。 真に、この魔法を効果的に利用することができるのは、それこそ冒険に出発する前に充分『魔法の呪文の書』を読みこみ、独自の方法でそれぞれの魔法を覚えこんだ“魔法使い”だけです。 もちろん、そんな“魔法使い”はそうそういるわけではありません…というよりも、ほとんどの人はそこまで読み込むことは不可能でしょう。 そんな人のために、『魔法の呪文の書』の冒頭には、特別な道具を必要とせずに、当座の冒険に直接役立つ6つの呪文が抜粋してまとめられています。 ただ、この6つの呪文は確かに強力で使いやすいのですが、その分体力消費量が高めで、また場合によっては“強力すぎる”という事もありえます。 『魔法の呪文の書』を読んで覚えていけば、さらにその場の状況に即した、体力消費が抑え目の魔法を選択できるようにもなっていくでしょう。 この独自の魔法システムは、ゲーム自体を特徴づけるとともに、経験値に代わる冒険者の成長ルールともなっています。 ゲームを始めた頃には、魔法の知識の不足から、不本意な死を遂げていた冒険者も、何度も死んで、その度に(やり直す前に)『魔法の呪文の書』で、魔法を学びなおすことで徐々に魔法を習得し、知識を深めていく事が出来るようになっているのです。 まだシステムに慣れないうちは戦士を選択し、己の腕と握られた剣のみで脅威に立ち向かうのもいいでしょう。 しかし、このキャンペーンの真髄はまさに“魔法”にあります。 何回か死んで、ゲームに慣れてきたならば、ぜひ魔法使いで冒険しなおしてみてください。 複雑で、しかし魅力的な世界がそこには広がっています。 |
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ソーサリーの世界 | |
この『ソーサリー』の世界は、上でも述べたとおり、FFシリーズと同じ世界であるタイタンに存在します。 第7回で提示した地図(別ウィンドゥで開きます)のうち、右上に位置する『旧世界』がこの冒険の舞台です。 『旧世界』は、いくつもの国々によって分割統治される、タイタンの3大陸の中では最も文明化の進んだ土地です。 タイタンが3つの大陸に分裂したのは、アトランティスという島を混沌の手のものが支配したことに対する神々の怒りによるものだと言われています(その当時の記録はことごとくが失われており、確かな事はいまだ不明)が、その混乱の中からいち早く回復し、国家としてまとまり始めたのが『旧世界』の国々なのです。 このうち、冒険者であるあなたが出発するのは、女神リーブラを信奉するアナランドです。 この国は海に面した貿易国家で、旧世界に存在する国の中でも穏やかな風土に恵まれ、洗練された文化を保持しています。 (女神リーブラは正義と真実、善悪の両面を理解した思慮深い神で、冒険の間、あなたに恩恵を与えてくれます。しかし、その機会は各巻につき1回のみ、しかも旅の間には、リーブラの加護を阻む存在や、加護を失わせる出来事などもあります) 元々、旧世界は文明的ではあるものの、それほど平和という訳ではありませんでした。 ガランタリア・フェンフリィ・レンドルランド・ブライス・ラドルストーン・アナランドといった各国は、程度の差こそあれ各々軍備を保有し、侵略戦争が起こる事もしばしばでしたし、また大陸にはカーカバードという、いまだ文明化のなされていない、邪悪な勢力の支配する地域があったからです。 しかし、そんな状況を一変させる秘宝が、フェンフリィの王、チャランナの手に入りました。 その秘宝の名は『王たちの冠』…それを持つものに統率力と威厳、そして偉大な力を与え、保有する国は例外なく発展するという神の力を秘めた秘宝です。 フェンフリィはこの力で大きな発展を遂げ、小さい国土でありながら富裕で強力な国家に成長したのです。 そして、さらに重要なのは、フェンフリィのチャランナ王がこの『王たちの冠』を、旧世界に存在する各国で順番に保有し、その恩恵を旧世界中に行き渡らせようと決めた事です。 その決まり事とは、『王たちの冠』を所持している間、各国は国土と文化の発展に努め、4年の後に次の国へと渡した後はフェンフリィ同盟に加わると言うものでした。 その順番が、とうとうアナランドにも回ってきました。 アナランド王はありがたくこれを借り受け、2年の間大事に保管してきました。 その間にも冠の力は目に見えて発揮され、アナランドは以前にも増して文明的で、豊かな国になっていったのです。 そう、ブラックムーンの夜までは…。 ブラックムーンの夜、『王たちの冠』はカーカバードの奥地、高地ザメンよりやってきたバードマンによって奪われ、マンパンと呼ばれる要塞に潜む邪悪な大魔王の元へと運ばれてしまいました。 カーカバードは邪悪な勢力の棲まう場所で、今までも危険な場所として認識されてきました。 しかし、それほどの脅威とならなかったのは、邪悪なもの同士が相争い、内乱が続いて統率が取れず、一大勢力として結集される事がなかったからです。 が、『王たちの冠』が大魔王の手に入ってしまったとあれば話は別です。 類稀なカリスマ性と統率力、所有したものの繁栄を約束するその力をもってすればカーカバードは統一され、各国も無視し得ない強大な悪の帝国へと成長するでしょう。 もちろんアナランド王は、すぐにでも軍隊を派遣して『王たちの冠』を奪回するべきです…しかし、それは難しい事でした。 『王たちの冠』が失われたことで、保有していた2年の間の恩恵がたちまち消え去ると言う不名誉な自体が生じ、各国との関係も悪化、侵略の噂さえ囁かれるようになったのです。 とても、カーカバードに軍隊を派遣して、その分国の守りを弱めることが出来るような状況ではありません。 そこであなたの出番なのです。 邪悪な勢力のひしめくカーカバードを横断し、マンパンまで辿り着いて大魔王から『王たちの冠』を奪い返すことができれば、アナランドの状況もたちどころに改善し、またカーカバードが一大勢力となる恐れもなくなるでしょう。 まさに『旧世界』の未来は、あなたの双肩にかかっているのです! |
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ソーサリー1 魔法使いの丘 |
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持つものに類稀な統率力を与え、その国に繁栄を約束する魔法の秘宝、『王たちの冠』が、邪悪なマンパンの大魔王の手に落ちた! このままではアナランドの権威は失墜し、マンパンの大魔王の下に統率された、カーカバードの邪悪の勢力によって、『旧世界』自体が危機に陥るだろう。 冒険者である君は、『王たちの冠』を取り戻すという困難な任務に自ら志願した。 目指すはカーカバードの奥地、高地ザメンに建設されたマンパンの要塞。 はたして君は、数々の困難を乗り越えて、無事使命を果たす事ができるだろうか? 全4部作の『ソーサリー』、第一巻はこの『魔法使いの丘』です。 使命を果たすべくアナランドを出立したあなたは、危険なカーカバードの地を横断し、高地ザメンへと向かわなければなりません。 その第一の関門となるのが、魔法使いの住むと言われているシャムタンティの丘です。 果たしてあなたは命を失うことなく、無事に通り抜けることができるのでしょうか? 冒険自体は、『ソーサリー』シリーズの最初の作品だけあって非常にオーソドックスなオープンフィールドアドベンチャーとなっています。 ですが、冒険の細かな部分に後々への伏線が張られ、正しい行動をする事で後の巻において有利になるような道具や手掛かりが手に入ります。 また、FFシリーズとは一風変わった世界観を表現するのが独特な絵柄の挿絵と、多くの登場人物たちです。 はるか彼方まで見通す目を持つという特性を買われ、アナランドとカーカバードを隔てる門の警備についているサイトマスター、無くしたものを届けてやりさえすれば、貴重な人脈であなたを支援してくれる酒場の主グランドレイガー、口うるさくあなたにまとわりつく、羽根を生やした小人・ミニマイトのジャン、表題にもなっているシャムタンティの丘の魔法使い・アリアンナ…。 このバラエティ豊かな登場人物たちや、旅の途中で出会う奇妙な生き物たち、そしてあなたの前に立ち塞がる怪物が、挿絵画家JohnBlancheの独特の筆致で描かれ、ソーサリーの世界を見事に表現しているのです。 数々の障害の待ち受けるシャムタンティの丘を無事通過できれば、次の冒険の舞台は『城塞都市カーレ』。 悪意を秘めた罠がそこかしこに存在する、迷路のような街が次巻の舞台になります。 |
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ソーサリー2 城塞都市カーレ |
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なんとか無事にシャムタンティの丘を通り過ぎた君は、カーカバードの中心に位置する城塞都市、カーレに辿り着いた。 この街を通過する事が出来れば、カーカバードに広がるバドゥーバグ平原に侵入し、マンパンの要塞にまた一歩近づく事ができる。 しかし、この街は数多くの罠が待ち受ける、危険な街でもあった。 その上、バドゥーバグ平原につながる北門は、秘密の呪文によって閉鎖され、4つの文句を揃えなければ命を落とす事になる! 生き延びる事すら困難なこの街で、君の探索は終ってしまうのだろうか? シャムタンティの丘を無事に通過したあなたの到達するのがこの『城塞都市カーレ』。 今度は、作風がガラリと変わってシティーアドベンチャーになります。 危険な罠がひしめく街の中での探索行というと、FFシリーズ第5巻『盗賊都市』を彷彿とさせますが、危険度ではこのカーレの方がポートブラックサンドよりも上です。 確かにポートブラックサンドは危険な街でしたが、それは集まった盗賊や海賊、街を支配する謎の貴族の冷酷さなどが主な要因でした。 しかし、このカーレは違います。 この『城塞都市カーレ』では、ごく普通に道を歩いているだけで、簡単に命を落としてしまうほどの危険があるのです。 カーレというのは、海から遠く離れた内陸部にあるにも関わらず、広大なジャバジ河に接しているために港湾都市として発達しました。 しかし、元々ここは邪悪な輩の集まるカーカバード、カーレが都市として栄えるにつれ、数多くのろくでなし、靴紐一本のために人をも殺すようなごろつきが数多く流入し、その為、ここカーレでは、都市の住民が自衛のための罠を街の各所に仕掛けてきたのです。 しかも、秘密の漏洩を防ぐために、自分以外にはその場所を一切漏らさないようにして! その結果街中には誰が仕掛けたとも知れぬ罠があふれ、当の住民も、自分が知っている罠の範囲外では安心して出歩けないほどの危険な街になってしまったのです。 あなたはそんな危険な街の中を、バドゥーバグ平原へとつながる北門の鍵を求めて、隅々まで探索して回らなければなりません。 果たして、命を失うことなく、見事4つの文句を見つけ出すことができるでしょうか? |
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ソーサリー3 七匹の大蛇 |
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君は、罠のひしめく街『城塞都市カーレ』の北門を無事に抜け、バドゥーバグ平原へと足を踏み入れた。 目指すマンパンの要塞へは、後一息で辿り着く…しかし、そんな君の元へ、アナランドから異変を報せる急使が届いた。 アナランドへともぐりこんでいた大魔王の手下が、『王たちの冠』を奪回すべく旅を続ける君の任務を知り、大魔王へと伝令を発したというのだ! その伝令とは、神々の力を与えられた邪悪な『七匹の大蛇』、彼らはそれぞれ別のルートを取りながら、恐るべきスピードで高地ザメン、マンパンの大魔王の元へと急いでいる。 君は、自らの存在を秘密にし、冠の奪回という任務を無事に果たすためにも、彼らを無事に暗黒の要塞へと辿り着かせてはならない! この第三巻、『七匹の大蛇』では、第一巻の『魔法使いの丘』と同じオープンフィールドでの冒険に戻ります。 シャムタンティの丘を凌ぐ苦難が待ち受けるバドゥーバグ平原をあなたは横断し、マンパンの大魔王の待つ要塞に向かわなければなりません。 さらに不味い事に、あなたの任務は大魔王の手下に察知され、超常的な力を持つ七匹の大蛇によって、今にも大魔王に伝えられようとしています。 そうなってしまっては、ただでさえ困難な任務が、さらに難しいものになるであろう事は想像に難くありません。 この巻では、今まで邪悪な罠に追われる身であったあなたが逆に、七匹の大蛇を追いかけ、止めを刺していかなければならないのです。 あなたの標的であり、この巻の表題ともなっている『七匹の大蛇』とは、大魔王によって生み出され、神々の力を受けた巨大な七匹の蛇のことです。 その昔、大魔王がまだカーカーバードの一大勢力となる少し前のこと、大魔王は一頭のヒドラと戦いになりました。 壮絶な戦いは丸二日に及び、大魔王自身も深い痛手を負いましたが、ついにはヒドラを打ち倒しました。 そして大魔王は、ヒドラの力と生命力に感銘を受け、その7本の首を切り取ると、旧世界で信仰されている神々の力を宿した大蛇として甦らせたのです。 すなわちそれが、地水火風月陽時の七匹の大蛇…あなたの標的です。 七匹の大蛇は神々の力を模した超自然的な能力を持っています。 かろうじて、各々固有の弱点を抱えているため、なんとか戦える相手となっていますが、もしあなたが弱点を知らずに立ち向かったとするなら、かなりの幸運に護られてなお、大蛇の息の根を止めるのは難しいでしょう。 それほどの力を持った七匹の大蛇を相手に、あなたはたった一人で立ち向かわなければなりません。 バドゥーバグの平原にもあなたの手助けをしてくれる人物は少ないながらも存在します。 しかし、最後に大蛇に止めを刺すのはあなたの手にした剣なのです。 |
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ソーサリー4 王たちの冠 |
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君はついに、高地ザメンにそそり立つ、マンパンの大魔王の潜む要塞に辿り着いた! 目指す『王たちの冠』はこの邪悪な要塞の中、大魔王のもとにあるに違いない。 しかし、要塞の中には大魔王の駆り集めた混沌の軍勢がひしめき、旧世界中に向けて侵攻する日をいまや遅しと待ち構えている。 君は、そんな中に忍び込み、無事任務を果たさなければいけないのだ。 バドゥーバグ平原横断の結果、君が果たした成果によって、この要塞の中の警戒の厳しさは変わってくる。 君は、『七匹の大蛇』において、何匹の大蛇を仕留めただろうか? 七匹全てならば幸運は君と共にある、大魔王は君の接近をいまだ知らずにいるだろう。 だがそれ以外であれば、君の存在は既に要塞全体に知れ渡っている! ただでさえ困難な任務を、要塞内の警戒を潜り抜けた上で達成しなければならない。 『王たちの冠』を取り戻し、無事アナランドへ帰還する、それが君の使命なのだから…。 この第四巻『王たちの冠』は、シリーズ最終巻に相応しく、800ものパラグラフで構成された大作となっています。 舞台こそ、ほぼマンパンの要塞内という閉ざされた空間ではありますが、おこたりなく警戒を続ける要塞の警備兵や、通過するのに数々の秘密を解かねばならない3枚のスローベン・ドアなど、多くの苦難があなたを待ち受けています。 さらに、上でも書いた通り、第三巻『七匹の大蛇』で、何匹の大蛇を仕留めたかによって、この『王たちの冠』の難易度は上下します。 また、パラグラフの選択とその後の成り行きによっては、時間を飛び越えて一〜三巻のパラグラフに戻されてしまう、という事までありえます! その上であなたは、ほぼ全てが大魔王の手下、はっきり言えば敵だらけであるこの要塞の中で、自分の使命を悟られないようにしながら情報を集め、大魔王の正体と、そこに辿り着くための手段を探り出さなければなりません。 こういった展開の多彩さが、限られた要塞内という、舞台の狭さを感じさせず、あなたにl緊迫した探索行を味あわせてくれるのです。 ここまでくると、魔法に必要な道具も全てが出そろい、きちんと入手して、魔法の名前を覚えてさえいればほぼ自由に使えるようになります。 また、一〜三巻の間で手に入れた重要な手掛かりも、そのいくつかはこの巻の内容に関したものです。 もちろん、通読せずに、この『王たちの冠』だけをプレイしても使命を達成する事は可能です。 しかし、それはかなり難しく、通してプレイした人よりもさらに厳しいものとなるでしょう。 アナランドの、旧世界の平和と安定は、あなたの働き如何にかかっています。 邪悪な要塞内に存在する数少ない味方を慎重に見つけ出し、奇跡の秘宝、『王たちの冠』を取り戻してください。 |
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2004年6月7日 | |
ゲームブック・復刊リンク | |
『創土社』 http://www.soudosha.com/ | |
過去の様々な名作の復刊と、新作ゲームブックの発行を行っている出版社。 『スティーブ・ジャクソンのソーサリー!』シリーズも、第三巻『七匹の大蛇』まで復刊が終了しています。 今回の復刊は新訳で、上記のものとはタイトルが異なり、第一巻『シャムタンティの丘を越えて』、第二巻『魔の都の罠』として発行されています(第三巻のタイトルは同じ) |
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『ゲーム探偵団』 http://www.tanteidan.cc/ | |
各種ゲームハードの中古ショップである『ゲーム探偵団』ですが、通販リストの中にはゲームブックの表もあり、数々の作品がリストアップされています。 値段はプレミア価格+送料などがかかるため、かなりの割高になりますが、どうしても手に入れてみたいゲームブックがあった場合には、利用してみるのもいいかもしれません。 |
※ | S・ジャクソンの担当した作品 | 初期に奇抜なシステムとモチーフでファンを唸らせたS・ジャクソンだが、それ以降も『サイボーグを倒せ!』(スーパーヒーローもの)や『モンスター誕生』(主人公がモンスターという、それまでとは主客逆転した作品)など、バラエティに富んだ作品を提供している。 |
※ | 恐怖点 | FFシリーズ第10作・“恐怖の館”にて取り入れられたシステム。館を探索する主人公は、体力点の他にこの数値を持ち、館内で精神的なショック(恐怖)を与えられる毎にこれを減らしていく。 “恐怖の館”内において、恐怖点が減点される機会は非常に多いもので、肉体的な死よりも、精神的なショックで行動不能に陥る(ゲームオーバー)事の方が多かった。 |
※ | 400パラグラフの壁 | FFシリーズは、シリーズを通して一冊あたりのパラグラフ数が400近くでそろえられていた。 その為、シリーズとしての共通性は保たれていたものの、一冊の中でのバラエティに富んだ場面転換などには不向きで、自然と限定された空間での冒険が多くなっていた。 |