*キクの寝室*
僕は邸内にある和風の部屋に通された。この部屋で、【あやしろキク】は死んでいた、ということだが・・・。

「もう一度お聞きしますが、【キク】さんの死因は、なんだったのですか?」
「【くまだ】先生は、心不全に間違いない、とおっしゃっていましたが・・・。」
「【くまだ】先生?」
「【キク】様のかかりつけの先生で、この村でただ一人のお医者様です。」
「なるほど・・・、ところで、この屋敷には現在何人の人がいるんですか?」
「屋敷には、私と現在逗留されている【アズサ】様の他に、【あかね】というお手伝いがおります。」
「【キク】様のご遺体を発見したのは、【あかね】です。」

なるほど、第一発見者、ということになるんだ・・・。

「茂木様、一度【くまだ】先生に会っていただけませんか?」
そうだな・・・まずは死体の検分をした【くまだ】という医師の話を、その後で第一発見者の【あかね】さんの話を聞こう。

*くまだ医院*
僕は屋敷を出て、【くまだ医院】にやってきた。この村唯一の開業医、というだけあって村の人たちからは頼りにされているようだ。

「探偵の、茂木と申します。」
「ワシが【くまだ】ぢゃ、よろしく。」
「早速ですみませんが、【あやしろキク】さんの死因についてお聞かせ願えませんか?」
「心不全ぢゃよ。・・・とはいうものの、こんな急に亡くなられるほど悪かったわけでもないんぢゃが。まあ、時が時ぢゃから、執事が不自然に思う気持ちもわからんではないが・・・遺言を公開した晩に亡くなられたとはのう。」
「そうですか・・・。」
「そういえば、【かすがアズサ】という女性が喉を痛めて今、ここに来とるぞ。【あやしろ家】の関係者だそうぢゃ。」

遺言状の中身を知る三人のうち一人、【アズサ】がここに・・・?

「呼んでいただけますか?」
「ああ、ええとも。」

やがてやって来たのは、少々きつい顔つきをした女性だった。

「私が【かすがアズサ】だけど・・・。」
「探偵の、茂木と申します。ちょっとお尋ねしたい事があるのですが。まずはあの晩の事について・・・。」
「遺言公開の晩、私たち兄妹三人は、みんな屋敷に泊まったわ・・・コホン!そんなことは滅多にないことなんだけど。」
「それじゃ、【キク】さんの亡くなられた夜、みなさん屋敷の方にいらっしゃったのですね?」
「何よ!私たちが何かやったとでも言うつもり!?冗談はよしてよね・・・コホン!」
「いや、そうと決まったわけでは・・・。」
「確かに、タイミングが良すぎたかもね。遺言公開の晩に突然亡くなったんだから・・・コホン。」
「それで、遺言にはどう記されていたんです?」
「遺言の内容を話せですって?そんな面倒な事はゴメンだわ!兄さん達にでも聞けばいいでしょう。」

その時、【くまだ】先生が思い出したかのように教えてくれた。

「おっと、そうそう。【キク】さんは近くの【かぐら寺】に埋葬されたんぢゃ。」

【かぐら寺】か、一応、お寺の住職さんにも話を聞いておこう。

「【くまだ】先生、【アズサ】さん、お話ありがとうございました。」

*かぐら寺*
【かぐら寺】・・・村はずれの森の中に佇んでいる墓地は、昼間でも雰囲気が満点だ・・・僕は、【キク】さんが埋葬されている【あやしろ家】の墓に近付いた・・・。

「こらっ!墓にいたずらしちゃ、いかん!」

わっ!びっくりした!!横を見ると、真っ白な髭をたくわえた住職さんが、こちらの方にやってきていた。

「すいません。いたずらしていたわけじゃないんです。」
「おや?あんたこの村のもんじゃないな。それじゃ、この村の伝説について知らんのも無理はないのう。」
「伝説・・・?」

その言葉に興味を覚えた僕は、住職・・・【げんしん】さんに詳しい話を聞いてみる事にした。

「村人達の間で、古くから語り継がれている気味の悪い話なんじゃ・・・。」
「【あやしろ】の主が無念の死を遂げた時、主は墓の中より蘇り、恨みに思う人間を殺す、といわれておるのじゃ・・・。」
「・・・!!」
「それというのも、この村ではいまだに遺体を土葬にしておるからじゃろうな。」
「では、【キク】さんの遺体もそのまま・・・?」
「もちろん、そのままここに埋まっとる。さらに【あやしろ家】にはのう・・・、この伝説の元になったらしい、戦国時代からの言い伝えもあるのじゃぞ。」
「それは、一体どういう?」
「そうか、詳しく聞きたいか。戦国時代、【あやしろ家】はこの辺りの領主じゃった。じゃがある時、戦に敗れてのう、かろうじて生き延びた者たちは【みょうじん山】の砦に立てこもった。」
「それで、敵方の領主は見せしめに、【あやしろ】の先祖代々の墓を掘り返したんじゃ!・・・やがて最後の決戦となったが、【あやしろ】の領主は殺された・・・呪いの言葉を残してな。」
「戦が終わり、敵の殿様が村を訪れたが、まもなく謎の死を遂げたのじゃ。・・・ある者は【あやしろ】の呪いで狂った、と言い、またある者は・・・。」
「墓から蘇った【あやしろ】の領主が首を刎ねたとも言う・・・それが今でも伝説となってこの村に語り継がれておるのじゃよ。」
「この村にそんな伝説が・・・ところで住職さま、【キク】さんの遺体に、なにか不審なことは感じませんでしたか?」
「別になかったのう。【キク】さんは安らかに眠っとる!」
「そうですか・・・どうも、ありがとうございました。」

意外なところで貴重な話が聞けた・・・この伝説が、何か事件に関わってくるのだろうか。
僕はひとまず、【あやしろの屋敷】に戻る事にした。お手伝いの【あかね】さんの話も聞いてみよう。