*どぞう*
【あやしろ家】の【どぞう】の周りは、すでに地元警察によってシャットアウトされていた・・・だが、僕が【うつぎ探偵事務所】の名前を出すと、すんなり通してくれた。所長の【うつぎ】さんに、よほどの実績か人望があるんだろう・・・。
【どぞう】の中では、警察の検死が行われていた。奥に、血に染まった【カンジ】の死体が見える・・・。僕は、監察医さんに話を聞いてみることにした。

「あの・・・すみません。」
「こらこら、関係者以外は立ち入り禁止・・・え?君が【うつぎ】さんのところの探偵だって?」
「死体の近くまで行ってもいいですか?」
「死体や、周りのものには絶対に手を触れないでくれよ。」

【カンジ】の眼は見開かれ、何かを訴えかけようとしているかのようだ・・・。おや、何か落ちているぞ。これは、鍵か・・・どこの鍵だろう。

「こらっ!勝手に触るんじゃない!指紋がつくじゃないか!」
「わっ!すいません・・・。」

怒られてしまった。結局鍵は鑑識の人が持っていったみたいだ。あと、【ぜんぞう】さんの話によると、あの鍵はこの【どぞう】の鍵らしい。なるほど・・・。

「凶器のナイフ・・・【カンジ】の胸に深々と突き刺さってる・・・。」
「これは、女の力じゃ無理かな?」

後ろから覗き込んだ鑑識さんが口を挟む。なるほど、そうみたいだ。

「出血は・・・少ないようだ。ナイフが刺さったままだからかな。」

そこで、後ろから警察官に声をかけられた。

「君、そろそろどいてくれないか?」
「あ、すいません・・・。」

しょうがない、後は鑑識の監察医さんに話を聞いてみよう。

「死因は、ナイフで胸を一突き!恐らく即死だろうね、傷は心臓まで達してる。死亡時間は昨晩10時から、11時までの間・・・執事の証言とはちょっと食い違うんだがね。」
「また、被害者は犯人とほとんど争うことなく、いきなり正面から胸を刺されてる。こういう状況は身内による犯行のとき良く見られるね。」

なるほど・・・【ぜんぞう】さんの証言と食い違う?今は【ぜんぞう】さんに話をきけるかな?

「ああ、【あやしろ家】の人たちに話を聞いてくれて構わんよ。発見者はここの執事だそうだ。」
「どうも、ありがとうございます。」

その前に、【どぞう】の中をちょっと調べてみよう。触らないように注意しながら・・・。
【ぜんぞう】さんの言っていた通り、高価な壷が沢山あるなぁ。僕には良くわからないけど。でも、ホコリが溜まってる。滅多に人がこないからかな・・・。おや?【どぞう】の奥にもう一つ扉がある・・・なんだろう?錠前がかかっていて、鍵がなければ開きそうにないな。
さて、じゃあそろそろ【ぜんぞう】さんたちに話を聞いてみよう・・・

やがてやってきた【ぜんぞう】さんは、端から見てもわかるぐらい、ショックを受けていた。当たり前だろうな・・・。

「茂木様!カ、カンジさまが・・・!なぜこのような恐ろしいことに!?」
「落ち着いてください、【ぜんぞう】さん!まず、形式的なことですがアリバイを聞かせてもらえますか?」
「いつも通り、11時から12時にかけて屋敷の見回りをしておりました・・・。」
「では、その時に【カンジ】さんの死体を発見されたんですか?」
「いえ、そうではないのです。見回りのときには、【どぞう】の扉にはしっかりと鍵がかかっておりました。ところが、今朝早く【どぞう】の前を通りかかって、ふと扉を見ましたら・・・。」
「鍵が開いていた・・・と。」
「はい!驚いて中に入ってみると、【カンジ】さまが変わり果てた姿で・・・。」
「しかし・・・失礼ですが、【どぞう】で殺人があったのは昨夜の11時ごろということでしたが。」
「警察の方も、私の勘違いではないか?とおっしゃるのですが・・・。」
「なにしろこの【どぞう】には高価な骨董品が多数収められております。鍵が開いているかどうかは、毎回キチンと確かめておりますので・・・。」
「じゃあ、滅多に人はこないんですね?」
「さようでございます。ただし、遺言公開の日・・・なぜか【アキラ】さまは【どぞう】の近くにこられたようですが・・・。」
「あの、奥の扉の中には何かあるのですか?」
「さあ・・・あれが何のために作られたものか、私は存じないのです。」

執事の【ぜんぞう】さんも知らない・・・?一体何のための扉なんだろう。

「ところで茂木様、実は・・・ここに保管されていた骨董品のいくつかが無くなっているのです!あのナイフも、ここにあったものの一つです。きっと、物盗りの仕業に違いありません!」
「なんですって!?【どぞう】の鍵は、普段は誰が持っていたんです?」
「【キク】さまの寝室にある、【タバコいれ】の引き出しにしまってあったはずですが・・・誰かが持ち出したのでしょうか・・・!?」
「【タバコいれ】?」
「旦那様の形見として、【キク】様が愛用しておられました。」
「【キク】さんはタバコを・・・?」
「はい、以前は。しかし、心臓に良くない、と【くまだ】先生に言われてからは禁煙しておられました。それ以来、小物入れとして使っておられたようです。」
「なるほど・・・で、その【タバコいれ】は?」
「あっ!そういえば、あの【タバコいれ】がいつの間にか無くなっているようです!」
「・・・!!」

これは・・・【あかね】さんにも話を聞いてみないといけないな・・・。
【ぜんぞう】さんに呼ばれてやってきた【あかね】さんは、可哀想にすっかり怯えきっていた。

「は、はい・・・お呼びでしょうか・・・。」
「すみませんが、昨夜の11時ごろはどうしていらっしゃいましたか?」
「・・・警察の方に全てお話しいたしました。」

・・・それは後で警察の人に教えてもらおう、じゃあ・・・。

「【あかね】さん、あなたは【キク】さんの寝室にあったという【タバコ入れ】については何か?」
「!・・・し、知りません、私・・・。」

これは怪しい!思えば、【アキラ】が【キク】の寝室に出入りしていたのを見ていたのも【あかね】さんだったな。この件はあとでもう少し突っ込んでみる必要がありそうだ。

「【どぞう】の中の骨董品がいくつかなくなっているようなんですが・・・。」
「し、知りません!」
「では、【どぞう】の鍵のことについては?」
「し、知りません!私、そんなこと何もわかりません!本当です!」

・・・ますます怪しい。でも、ここでこれ以上何かを引き出すのは無理かな・・・。と、そこに1人の男がやってきた。

「に、兄さん!どうしてこんなことに・・・!ちくしょう!一体誰が兄さんを!」

兄さん!?と、いうことはこの人が【ジロウ】さんなのか・・・。

「【あやしろジロウ】さんですね!?ちょっとうかがいたい事が・・・。」
「なんだ!?君は!」

【ジロウ】さんは、実の兄の死でかなりのショックを受けているようだ・・・困ったな、と思っていると、【ぜんぞう】さんが助け舟を出してくれた。

「茂木様、居間で話されてはいかがでしょうか?」
「そうですね、では・・・。」

僕たちは、居間に移動して話を聞かせてもらうことになった。