*居間*
ついに殺人が起こってしまった。一体、誰が【カンジ】さんを・・・。そして、相変わらず【ジロウ】さんは興奮している・・・僕に噛み付いてきた。

「君は一体何者なんだ!?」
「僕は、【うつぎ探偵事務所】の探偵で、茂木茂夫と言います。」
「何?探偵?その探偵が、私に何のようだね!?」
「実は僕は【ぜんぞう】さんの依頼で、【キク】さんの急死について調べていたんです。その最中、あなたのお兄さんが・・・。お話しを、聞かせていただけませんか?」
「僕は・・・兄さんに見てもらいたい書類があったんだ、仕事上のことでね。会社には出ていないし、社の者に『ここにならいるだろう』と聞いてやってくればこの有様さ!ちくしょう・・・一体誰が【カンジ】兄さんを!?」
「他のご兄妹・・・【アズサ】さんについては何か?」
「あいつはひどい借金をして、すぐにでも金が欲しいんだろうが、【ユリ】が見つかるまで遺産の分配ができないから、いらついているようだな。」
「失礼ですが、あなたは昨夜の11時ごろ、どこで何をなさっておいででしたか?」
「なんだと?私を疑っているのか、失敬な!だいいち警察の人間でもない君に、なぜ私がそんな事を話さなきゃならんのだ。君に、それを聞く権利があるのかね!?」

確かに、それはそうだ・・・【キク】さんの件はともかく・・・。

「何か、事件の手掛かりになるようなことにお気付きになりませんでしたか?」
「ふん!これから私は兄さんの分まで頑張らねばならんのだ!君の相手などしている暇はない!」
「・・・大体さっきからなんだね、ジロジロと。失礼じゃないか!もう気が済んだだろう!?失礼する!」

【ジロウ】さんは踵を返すと、居間の扉に手をかけた・・・と、そこでふと振り向いて、こんなことを教えてくれた。

「ああ、そうだ・・・一つだけ教えてやろう。今度のことで【あずさ】姉さんは兄さん達に借金を返す必要がなくなったわけだ。ま、なにかの参考にはなるかもな!」

それを聞きとがめた【アズサ】さんが口を挟む。

「ちょっと【ジロウ】!それはどういう意味よ!?そういうアンタこそ、兄さんが死んで嬉しくてしかたがないんじゃないの?」
「な、なんて事を・・・!姉さんこそ!・・・もういい!話にならん!」

【ジロウ】さんは行ってしまった。この姉弟間の確執は凄まじいものがあるな・・・。

「あの・・・【アズサ】さん。」
「今度は何なの?あなたが兄さんを殺した犯人を捕まえてくれるとでもいうの?フン、とんだお笑い種だわ・・・そう、きっと【アキラ】が殺したのよ!」
「泥棒猫のような真似をしている所を兄さんに見つかって、あいつなら、やりかねない・・・【どぞう】の骨董品だって、【アキラ】が盗んだのに違いないわ!」
「【ジロウ】さんについては・・・?」
「何よ!あんな奴!大げさに悲しんでいたようだけど、あんなのみんなお芝居よ!」
「失礼ですが、【アズサ】さんは昨夜の11時ごろ、どちらにおいででしたか?」
「私がやったとでもいうの!?失礼ね、あなたにそんな事を話す義理はないわ!」

そういうと、【アズサ】さんは怒って居間を出て行ってしまった。結局、居間には誰もいなくなってしまったな・・・と、そこで居間にある電話のベルが鳴った。

「もしもし・・・はい、【あやしろ】ですが、今誰も・・・え?僕ですか?【うつぎ探偵事務所】の茂木と申しますが・・・。」

電話は、警察からだった。

「ああ、【うつぎ】さんとこの・・・。いつもお世話になってます。鑑識の結果が出たので、ご報告しようとお電話をしたのですが・・・実は、あの【どぞう】の鍵から、【あやしろアキラ】の指紋が検出されました。」

「・・・!!」

「従って、【アキラ】を【カンジ】殺害の有力容疑者として、全国に指名手配することになりました。ただ・・・凶器のナイフからは、誰の指紋も検出されなかったんです。解剖の結果については、もう少し時間がかかると思います。」

やはり、【アキラ】が犯人なのか・・?しかしまさか自分の父親を・・・と僕が考え込んでいると、、そこに【ぜんぞう】さんが入ってきた。どこに行っていたんだろう?

「ただいま戻りました・・・警察の方を、【くまだ医院】までご案内しておりまして。」
「そうだったんですか。ところで【ぜんぞう】さん、【キク】さんが亡くなられた後、【アキラ】さんをお見かけになったことは・・・?」
「いえ、あれ以来、姿をお見かけしておりません。以前はよく【キク】様の寝室に出入りされておられましたのに・・・。え!?【アキラ】様が指名手配に!?そんな、まさか・・・。」
「鍵の入っていた【タバコ入れ】、あれがなくなっていたのに気がついたのはいつ頃なんですか?」
「そういえば・・・【キク】さまが亡くなられた時、すでにあの【タバコ入れ】は無くなっておりました。間違いございません!」

やはり、寝室に足繁く通っていたという【アキラ】のことが気になる・・・。

「そういえば茂木様。【くまだ】先生が、何かお話があるとおっしゃられてましたよ。」

「えっ!そうなんですか。じゃ、早速行ってきます!」

・・・確かに、この【カンジ】殺人事件は僕が口を挟むべき事件じゃないかもしれない・・・でも、きっと何かがある!この殺人事件と、【キク】の急死の間にはなにかの関係が・・・。
僕は、【くまだ医院】へと向かう事にした。