*あやしろ商事*
ここが【あやしろ商事】の本社ビルか、さすがに大きいなぁ。なんとなく気後れするけど、そう言ってもいられない。まずは【ジロウ】さんを探さないと。

「すみません、僕、【うつぎ探偵事務所】の茂木茂夫と申しますが、【あやしろジロウ】さんに取り次いでいただけますか?」
「アポイントメントはお取りでしょうか?」
「いえ、特には・・・。」
「申し訳ありませんが、事前にアポを取られていない方はお通しできないんです。」

・・・急な来客には応じないらしい。どうしようかな・・・とあたりを見回していると、社員が1人通りかかった。

「あの・・・すいません。」
「はい、なにか・・・?」

僕はここぞとばかりに色々聞いてみた。それによると、やはり会長の【キク】は全社員に尊敬されていたようだ。
また、【ジロウ】の評価も以外に高い・・・ただ、『【カンジ】が亡くなられた時も、ほとんどうろたえていなかった』という言葉が気になるな・・・。
そういえば、【カンジ】と【ジロウ】の対立についても聞いてみようかな?

「社長と専務は、会社内で対立していた、ということですが・・・。」
「ちょっと!妙な事を言わないでくださいよ!そんな質問に答えられるわけないじゃないですか!」

それもそうか・・・。

「どうも、すみません。」
「もう、よろしいですか?お客様を待たせていますので。」
「あ、どうもお時間をとらせまして。ありがとうございます。」

社員の人は行ってしまった。さて、これからどうしようか・・・と考えていると、ロビーにいた他の客同士の会話が耳に入ってきた。

「・・・しかし何ですねぇ。ここの専務も危ないところでしたな。」
「まったくです。あの社長の計画がもし実現していれば、今ごろは専務としての立場すら危うかったでしょうな。正直な所、犯人には感謝してるんじゃないでしょうかね。」
「しっ!言いすぎですよ。誰かに聞かれたらどうするんです!?」

・・・!!社長の計画?誰か知っている人はいないかな・・・とあたりを探してみると、先ほどの社員さんがちょうど商談を終え、帰ってきたところだった。

「あの・・・すいません。」
「?またあなたですか。今度は何です?」
「実は先ほどの噂についてなんですが・・・。」
「ちょっと!だからやめてくださいって!専務の耳に入りでもしたら・・・あっ!専務、おはようございます!」

と、そこに【ジロウ】が通りがかった。どこかに出かけるところらしい。社員は恐縮しきりだ。

「専務!こちらが申しておりました書類でございます。」
「ああ、その書類は私の机まで持っていっておいてくれ。」
「かしこまりました。」

社員はそそくさと立ち去った・・・でも【ジロウ】さんに会えたのはラッキーだったな。少し話を聞いてみよう。

「どうも・・・。」
「なんだ、また君かね。今度は何のようだ?」
「実は【アキラ】さんについて・・・彼は遺言公開の日に誰かと会っていたそうなんですが、【ジロウ】さんじゃありませんか?」
「私が?【アキラ】と会う?冗談じゃない!あんな奴と話すことなど何もない。」

にべもなく否定されてしまった・・・。

「ところで・・・亡くなられた【カンジ】さんの計画・・・それが実現していたら、【ジロウ】さんの立場も危うかったそうですね?」
「誰から聞いてきたのか知らんが・・・仮にそれが本当のことだとしても、どうだって言うんだ?」

うう、開き直られると弱いな・・・。こちらにはまだ追求するだけの材料がない・・・。

「ところで、【アキラ】さんが容疑者として追われているようですが、それについてなにかお気付きになられた点は?」
「関係ないね。今更誰が犯人であろうと、それも関係ない。・・・君が何を言いたいのかわかったよ。私が【アキラ】をそそのかして兄さんを殺させたと思ってるんだろう?」
「いえ、そんな事は・・・。」
「ふん、たいした推理だね。どう思おうと君の勝手だが、君の探偵ゴッコに付き合うのは真っ平だよ。もう会う事もないだろうが、どうしてもまた会いたいって言うのなら・・・証拠でもなんでも見つけてくればいいさ。もっとも、そんなものがあれば、の話だがね。」

それだけ言うと、【ジロウ】さんは立ち去ってしまった・・・まずったな。もう少し慎重に話を聞くべきだったか・・・。
しょうがない、また【あやしろ家】にお邪魔して、色々調べてみよう。まだ何かわかることがあるかもしれない。

*みょうじん駅*
僕が【みょうじん駅】に降り立つと、そこは大変な騒ぎになっていた。村人たちが集まって、蒼ざめた顔でなにやら話をしているようだが・・・。
と、そこで僕の姿を認めた駅員さんが話しかけてきた。

「お、恐ろしい事になってしまいました!村人たちが蘇った【キク】さんの姿を見た、と言ってさっきから大騒ぎなんですよ。」

なんだって!?【キク】の姿を見た?僕はあわててあたりの村人に話を聞くことにした。

「わしらの話は本当だったべ!?【キク】さんは蘇りなさっただ!【キク】さんが墓から出てくるのを見たというもんもおるだ!おそろしや〜。」
「伝説の通り・・・?」
「伝説は本当じゃった!じゃが、これだけじゃあねぇ。【あやしろ家】にはこれからもっと恐ろしい事が起こるに違ぇねえだ!」
「しかし、【カンジ】さんの息子の・・・。」
「その男が犯人だとお前さん信じとるんか?とんでもねぇだ!これは【キク】さんの崇りだ!・・・」

う〜ん・・・駅員さんはどう思ってるのかな・・・。

「【キク】さんが蘇ったって、村中大騒ぎですよ!でも、人が殺されたとなると、ただの噂話とも思えませんね。・・・新聞で読みましたが、【カンジ】さんの息子の【アキラ】さんが容疑者だそうですね。でも・・・村人たちはそうは思っていないようです。」
「そうですか・・・。」
「ところで、何か言おうと思ってたんですけどね、なんでしたっけ?」

???そんな事僕に聞かれてもなぁ。

「あっ!そうそう、思い出しました。以前言ってらした【ユリ】さんかどうかはわかりませんが、上品なご婦人がたった今【あやしろ家】の方に行かれましたよ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」

いまだ姿を現さない【正当なる後継者】・・・【ユリ】さんに、とうとう話が聞けるのか!?僕は急いで【あやしろ家】に向かう事にした・・・。