*うなかみの崖*
本当に、僕はあの日何のためにここへやってきたんだろう。・・・いや、それどころかここへ来た、ということさえ思い出せない・・・。

「てがかりになりそうなものなんて、やっぱり何も見つからないなぁ・・・。【あまち】さんはああ言ってたけど・・・。」

しかたなく、【あまち】さんの部屋にすごすごと戻る僕・・・。何しに来たんだろ。
*あまちの部屋*
「どうだった?【うなかみの崖】でてがかりになりそうなものは何か見つかったかい?」
「いえ・・・それが何にも・・・。」
「そうか、残念だったね・・・ん?ちょっと待ってくれよ・・・!思い出したよ!君は、気を失っていた時うわごとでしきりに【おまもり】がどうのこうの、って言ってたよ。どうだい?何か心当たりはあるかい?」
「【おまもり】・・・??って言ってたんですか?」
「そうだ。確かにそう言っていたよ。あの様子じゃ、よほど君にとって大切な事だったんじゃないのかな。」

【おまもり】か・・・。もしかして、あの近辺に落ちているんだろうか。よし!もう一度行ってみよう!

*うなかみの崖*
僕が改めて【うなかみの崖】に着いたとき、1人の女性が崖の上に立っているのが見えた。美しい人だ・・・前に【へいきち】老人が言っていた女の人なのだろうか。
僕は、声をかけてみる事にした。

「あの、ちょっとすみません。」
「え・・・私になにか・・・?」
「失礼ですが、あなたは・・・?」
「私は【ふじみやユキコ】と言います。こんな所で何をしているのか・・・って思われちゃったかしら。」
「私はここで人を待ってるだけ。結婚の約束をした恋人を待っているの。二人の思い出の場所・・・この、【うなかみの崖】で・・・。」
「彼は町を出てゆくときこう言ったわ。『必ず成功して、きっと迎えにくる』って・・・そして今年がその約束の年なの・・・。」
「ちょっと唐突なんですが・・・【あやしろ家】のことはご存知ですか?」
「!【あやしろ】・・・ですって?あなた、【あやしろ家】の方なの?私が待っている人っていうのは、【あやしろカズト】って名前なのよ!」
「!?【あやしろ】・・・【カズト】!?」
「私と同じ、ここの隣町に彼は母親と一緒に住んでいたわ。彼のお母さんが亡くなられたあと、法律家になるといって町を出たの。」

【カズト】・・・?今までに聞いたことのない名前だ。それに、隣町に、母親と一緒に住んでいただって?もしかしてその母親というのが・・・。僕は【あやしろ家】に向かう事にした。とにかく、誰かに聞いてみないことには・・・。

*あやしろ家*
【あやしろ家】の玄関では、いつものように【ぜんぞう】さんが僕を出迎えてくれた。僕は挨拶もそこそこに、質問をぶつけた・・・。

「【ぜんぞう】さん、【あやしろカズト】ってご存知ですか!?」

【ぜんぞう】さんはかなり驚いているようだ・・・。やはり知っているみたいだ。

「ど・・・どこでその名前を!?いえ、隠していたわけではないのですが・・・。実は、【カズト】様というのは【ユリ】様の弟なのですよ。」
「・・・!【ユリ】さんには姉弟が・・・!?」
「はい、しかし、【キク】様の本当のお子様ではないのです。旦那様は【あやしろ家】の籍に入れて我が子として育てられました。」
「この屋敷に、住んでらしたんですか?」
「はい、【カズト】様とその母親は、当時この屋敷の離れに住んでいらっしゃいました。ところが、旦那様が亡くなられてからは【キク】様にうとまれて、この屋敷から出ていかれました。」
「今ごろ、どこでどうなさっておいでなのか・・・。」
「【カズト】様と【ユリ】様は本当に仲の良いご姉弟でした・・・。家を出られるときも、【ユリ】様は【カズト】様が気がかりでしたでしょう・・・。」
「・・・茂木様。【カズト】様なら【ユリ】様の居所をご存知かも・・・しれませんね。」

「そうですか・・・そういえば、【ジロウ】さんはどうなさっているんですか?」
「先日【ジロウ】様は警察へ、事情聴取のために出頭なさったようです。しかし、アリバイが成立したということでしたので、今ごろはお仕事に励んでいらしゃる事でしょう。」
「警察も何を言い出すことやら・・・よりによって【ジロウ】様を疑うとは・・・。」

「・・・・・・。ところで、僕を介抱してくれた人から聞いたんですが、僕は【おまもり】のことをずいぶん気にしていたそうなんです。何か心当たりはないですか?」
「【おまもり】?はて、何のことでしょう。ちょっと心当たりがございませんが。」
「そうですか・・・。」

「そういえば茂木様、【カズト】さまのことをどなたからお聞きになられたのですか?」
「【カズト】さんの婚約者だという、【ふじみやユキコ】という女性から聞いたんです。なんでも【カズト】さんは今年、どこからか戻ってくるそうなんですが・・・。」
「さようですか・・・。【キク】様の亡くなられた年に戻られるとは、何か因縁めいたものを感じますね・・・。」
「そういえば茂木様、そろそろ最終電車のお時間でございますよ。」

そうだな、僕はとりあえず、【うつぎ探偵事務所】に戻る事にした。事件は複雑さをますばかり・・・真実はどこにあるんだ?

*うつぎ探偵事務所*
探偵事務所では、あゆみちゃんが僕の帰りを待っていてくれた。

「おかえりなさい、茂夫くん。・・・実は私、あなたに電話した後【アキラ】がよく出入りしていたというスナックへ行ってみたの。そこで聞いたんだけど・・・。」
「【アキラ】は、ヤクザに借金をしてずいぶんと困っていたらしいの。ところが最近どうしたわけか、溜まっていた借金を全て返済しているのよ!」
「・・・!!」
「それどころか【アキラ】は仲間達に、『自分は将来【あやしろ商事】の社長だ』って言ってたんだって。【キク】さんが死ぬ少し前のことよ・・・。」
「あと、【アキラ】を乗せていた車を運転していた人については、それが誰だったのかわかんなかったの。ゴメンね。」
「でも・・・その男の人って言うのが、40歳前後の紳士然とした男性で、【アキラ】と一緒にいるのがとても不自然だったそうよ。」

【アキラ】は、盗んだ骨董品を処分した金で借金を返したのだろうか?
また、おかしなことに【アキラ】は自分を『未来の社長』だなどと触れ回っていたらしい。
その【アキラ】と一緒に行動している40歳ぐらいの男とは誰なのか?
【カンジ】殺しは盗みを見咎められた【アキラ】のとっさの犯行だと警察は思っているようだ。

・・・だが、待てよ・・・。

【カンジ】がナイフで刺された時、すでに死んでいたとすれば・・・この殺人は計画的なものだ、ということになる!
【キク】の死と言い、【カンジ】殺しと言い、これら一連の事件は全て【誰か】の都合の良いように進んでいるじゃないか!?

と、僕がそこまで推理を進めたとき、電話のベルが鳴った・・・。

「あら?電話だわ。誰かしら?」
「茂夫くん!大変!!」

「茂木様・・・大変です!【ジロウ】様が・・・【ジロウ】様が・・・!」
「えっ!?【ジロウ】さんがどうしたんです!?もしもし!【ぜんぞう】さん!!」

あなたの声は空しく響いた・・・事件は、執事【ぜんぞう】の電話で新たな展開を迎える!

【カンジ】は伝説通り、蘇った【キク】によって殺されたのか!?
それとも、【キク】の遺産を狙うものの犯行なのだろうか?
そして、事故の為に失われたあなたの記憶は・・・。

待ち受ける恐怖の謎を、あなたはまだ何も知らない・・・。