*あまちのマンション*
結局、数々の謎を抱えて飽和状態になった僕の足は、自然と【あまち】さんのマンションに向いていた・・・。

「やあ、茂夫くん。どうだい?【おまもり】の事はわかったかい?」
「いえ、それが・・・誰も知らない、っていうんです。」
「そうか、じゃあきっと君の個人的な事なんだろうね。まだ記憶が完全じゃないわけだ。・・・君の記憶が戻る事を、心から祈ってるよ。」
「・・・ありがとうござます。ところで、僕は本当に【おまもり】、と言っていたんですか?」
「やはり君は確かに【おまもり】と言っていたよ。聞き間違いじゃないと思うなぁ。」
「そうですか・・・。」
「君の記憶がすっかり戻れば、僕だって嬉しいよ。事件も大変だろうけど、自分のことをおろそかにしないようにね。ところで・・・。」
「なんですか?」
「実は仕事の都合でしばらく留守にするんだ。」
「そうなんですか・・・じゃ、訪ねてきても会えませんね・・・。」
「そうだね。何度も言うようだけど、君の記憶が戻る事を、心から祈ってるよ。」
「ありがとうございます。」

*あやしろ家*
【あまち】さんにあって少し気の晴れた僕は、再び【あやしろ家】に戻ってきた。おや?誰か訪ねてきてるみたいだぞ。

「茂木様!【ユリ】様の幼馴染のご夫人がお見えです!」
「はじめまして、【おおにしカツコ】と申します。」
「あ、はじめまして。私立探偵の茂木茂夫です。さっそくですいませんが、【ユリ】さんの話を聞かせていただけませんか?」
「はい。・・・【ユリ】がこちらの家を出てからまもなく1枚の【はがき】を受け取りました。今、手元にはないので、後日お届けしますが・・・。」
「それはどうも、ありがとうござます。」
「そのかわり、これをお持ちしました。」

婦人は古びた写真を差し出した。とても美しい女性が、優しく微笑んでいる・・・。

「これは・・・?」
「当時のユリの写真です。お持ちください。」
「これが・・・!ありがとうございます!」
「・・・葉書をもらった当時、【ユリ】は【やつか町】という町に住んでいたようです。苦労もあったようですが、駆け落ちした方と幸せに暮らしていたようで、私も喜んでいました。」
「そうだったんですか・・・。」

僕は【ぜんぞう】さんを呼んで、【ユリ】さんのことを伝えた。彼も嬉しそうだ・・・。

「茂木様!さっそく【やつか町】に行ってください。手がかりがきっとございます!」
「はい、すぐに行ってみます!」

・・・でも、何か一つ用事を忘れているような・・・。あ!そうだ、【ユキコ】さんに会って、【カズト】のことを聞きたかったんだ。先に【かぐら寺】に行っておこう。【げんしん】和尚さんなら何か知っているかも知れないし。

*かぐら寺*
・・・【げんしん】和尚さんは、こころなしかスッキリした顔をしているようだ。やっぱり隠してた事を全部吐き出したのが大きかったのかな?

「【げんしん】さん!茂木です。」
「おお!あんたかね。これからは出来る限り協力させてもらうからの。」
「実は、【ユリ】さんの弟の【カズト】という人の事を聞きたいんですが。」
「【カズト】か・・・。確かに【ユリ】には【カズト】という弟がおった。今はどこにおるのやら・・・。」

・・・やっぱり、【ユキコ】さんに聞くしかないのかなぁ。あ、そうだ。

「この手鏡は、【キク】さんの棺の中に入れたものだと聞きましたが・・・。」
「!おおっ、そういえば確かにわしも【アカネ】が【キク】さんの懐に入れたのを覚えとる!あんなところに落ちとるはずなど・・・?」
「【キク】さんは、旦那が亡くなってから色々と苦労なさったんじゃ。旦那が犯した過ちをひとりで背負って生きてきた人なんじゃよ・・・。」
「しかし、【キク】さんが【カズト】さんたち親子を追い出してしまったんじゃないんですか?」
「確かにな・・・しかし、【キク】さんはそのことを心から悔やんでおったよ・・・。自分はあの時、どうかしていたのだ、とな。」
「あの親子は、【キク】さんを恨んどったかもしれん・・・。無理もない話じゃがな。」

そういえば、前に【げんしん】さんが言っていた『血の跡』って何だったんだろう?【カンジ】が殺される少し前の事だ、って確か言ってたっけ。墓の中を検めれば・・・。

「それはならん!墓を暴くなどと・・・もっての外じゃ!」
「でも、あの手鏡はたしかに【キク】さんと一緒に埋めたって、さっき【げんしん】さんも言ったじゃないですか。おかしいと思いませんか?」
「ううむ、確かに・・・いや、やはりそれだけは・・・できん相談なんじゃ。」

確かに、和尚さんとしては許すわけにはいかないだろうなぁ・・・。

「ところで【ユリ】さんについては、何か覚えていませんか?」
「うむむ・・・【ユリ】は村に戻ってくるじゃろか?芯の強い娘じゃったから、いまさらのこのこと戻るとは思えんが・・・。」
「現在の【あやしろ家】は、死神にでも魅入られているようじゃからな・・・。」
「【ユリ】さんと【カズト】さんは、とっても仲が良かったと聞いていますが。」
「そうじゃ、【ユリ】がおったらあの親子も屋敷を出ることもなかったかもしれん。・・・あの親子が【あやしろ家】を出たのは、【ユリ】が屋敷を出た翌年ぐらいのことじゃった。」
「まだ、14・5の息子を連れたあの母親は、さぞ苦労したことじゃろう・・・。」
「【カズト】さんたち以外に、【あやしろ家】に恨みを抱くような人に心当たりはありませんか?自殺した家族がいたそうですが・・・。」
「・・・!!【キク】さんは、もう充分に旦那の罪滅ぼしをしたはずじゃ。まだ恨んどるものがおるとすれば、【キク】さんも浮かばれん事じゃのう・・・。」
「わしが知っているのはこの程度じゃ。何か役に立ちそうかの?」
「ええ、ありがとうございました。」

ううん・・・そうかぁ・・・。今度は【ユキコ】さんを探してみよう。【うなかみの崖】にいないかな?

*うなかみの崖*
崖の上では、相変わらず潮騒だけが辺りに響いていた・・・。

「僕の記憶はまだ不完全なんだろうか・・・?【おまもり】の意味もわからないし、まだ駄目みたいだ・・・。」

おや?あれは【へいきち】老人だ。

「またあんたか。さては、あのべっぴんさんに会おうと思うて来たな?残念じゃが、今日はまだ来とらんぞ。」
「【へいきち】さんは、その【ユキコ】さんについては何かご存知ではないですか?」
「ほう、あん人は【ユキコ】っちゅうんか?キレイな名前じゃ。・・・残念ながらほとんど知らんのう。」
「あんた、あの娘さんに会いたいんじゃろ?彼女のことで、わしはいい事に気付いたんじゃぞ。」
「?何です?」
「それはのう・・・。ヒ・ミ・ツ!じゃ。かっかっか!」

ガクッ!なんなんだか、このじいさんは・・・。そろそろこっちに向かってないかな・・・?

「おらん、というのに。きっきっき。」
「【ユキコ】さ〜ん!!」
「呼べど叫べど彼女はおらん。けっけっけ。」

む・・・っ!でもあきらめないぞ!

「【ユキコ】さ〜ん!!」
「なかなかしぶとい男じゃのう。努力に免じて、わしの秘密を教えてやる!・・・と思ったら大間違いじゃ!うひょひょひょ!」
「・・・男前の【へいきち】さ〜ん!」
「おっ!なかなか正直な奴!しかたがない。教えてやるか。あの娘さんがここへ来るのはだいたい5時くらいじゃから、その頃に来れば多分会えるぞ。」
「・・・どうも、ありがとうございます。」

やれやれ・・・やっと教えてもらえたか・・・じゃ、その時間まで他の事を調べておこう。