*みょうじん駅*
次の日、僕はいつものように【みょうじん駅】に降り立った。相変わらず村人たちが【キク】さんの噂をしている・・・。犯人を見つけることが出来れば、それを否定もできるんだけど・・・。

「見たんじゃ!わしは【キク】さんを見てしもうた!本当だで!」
「わしもゆんべこの目で見た!ありゃ、絶対【キク】さんじゃ!」

こりゃ駄目だ・・・僕は、その隣りでその騒ぎを見ていたほかの村人に声をかけてみることにした。

「はい、私も怪しい人影の噂は聞いたことがありますだ。」
「・・・裏山で畑仕事をしておる私の従兄弟が、あの首吊りのあった前の晩に人影を見た、といっておりましただ。」
「!!それは本当ですか!?」
「う〜ん、私は聞いただけですんでなぁ・・・。従兄弟でしたら今日も畑に出ていると思いますだよ。」
「ありがとうございます。早速行って聞いてみます。」

*みょうじん山*
興味深い話を聞いた僕は、さっそく事件のあった【みょうじん山】へとやってきた。もう死体は片付けられており、あたりに人影はない・・・。

「誰もいない・・・無駄足だったかな?」

と、木陰の暗がりから、いきなり誰かが姿を現した!

「そうでもないぞ。なんか用か?」
「わっ!ビックリした・・・すいません、あなたはどなたですか?」
「ただの通りすがりだべ。あんた、この間ここで首吊りがあったのを知っとるか?」
「はい、実は僕はそれを調べているんです。もしかして、あなたがここで人影を見たという・・・?」
「おう、わしはあの前の晩に、ここで人影をみ見たぞい。」

「この間、ここで首を吊ったのはこの人なんですが、あなたが見かけた人じゃありませんか?」
「少し離れとったし、暗かったから顔まではわからなんだが、人影は二人だった。一人は酔いつぶれていたのか、もう一方の人に寄りかかるように歩いとった・・・いや、歩いとった、というよりどちらかと言えば引きずられとる・・・といった感じだったな。」
「・・・・・・!!」

「そうか、この人が亡くなったのか。気の毒になぁ。どりゃどりゃ・・・?【あやしろジロウ】・・・何!?死んだのは【あやしろ家】の人じゃと!?」
「じゃあ、わしの見たのは・・・キ、【キク】さんじゃ!!あの人影は、【キク】さんがこの人を殺してここへ連れてくるところだったんじゃ!え、偉いもんを見ちまっただ!!」

ありゃ、あわてて逃げて行っちゃった・・・。しかし、一体何を見かけた、というんだろう?

*あやしろ家*
僕はその足で、ふもとにある【あやしろ家】にやってきた。と、【ぜんぞう】さんが何かを手に持ってやってきた。

「茂木様、あのご夫人が早速【はがき】を届けてくださいましたよ。こちらです。御覧ください。」
「あ、ありがとうございます。」

きれいな字で書かれた【はがき】だ。優しい文章は、【ユリ】の人柄を語っているかのようだ。住所は【やつか町1丁目】・・・やはり、【ユリ】は【やつか町】に住んでいたんだ・・・。
すぐにでも行ってみたい所だけど、電車の時間までまだだいぶあるなぁ。

「そういえば【ぜんぞう】さんは、【カズト】さんには・・・?」
「もう、20年余りお会いしてはおりません。きっと立派な法律家になられていることでしょう。」
「法律家と言えば・・・【カンダ】様もお年は【カズト】様と同じくらいでしたな。」
「・・・茂木様!すでに【カズト】様が法律家になられているとすれば、【カンダ】様とお知り合いではないでしょうか!?」

そうか、もしかしたら知っているかも・・・と言っても、いまだに【カンダ】先生には会えていないんだよな。どんな人なんだろう?

「あと、茂木様。【くまだ】先生が戻られたようですよ。休診の札が外れておりました。」
「ありがとうございます。行って話を聞いてみます。」

*くまだ医院*
【ぜんぞう】さんの言った通り、休診の札はかかっておらず、中では【くまだ】先生がなにやら深刻な顔をして考え込んでいた。

「先生。どこへ行ってらしたんですか?」
「うむむむ・・・。実は、あの後ずっと考えとったんぢゃが・・・確かに、【ジロウ】が自殺するのは不自然ぢゃ、とわしも思ったんぢゃ。」
「それでわしは、【ジロウ】の検死をやり直させてくれ、と言いに警察病院に行ってきたんぢゃ。」
「・・・!で、どうだったんですか!?」
「警察は渋々了解しおった。で、色々やってみたが、やはり何にも出てこない・・・思い過ごしぢゃったか、とあきらめかけたその時ぢゃ・・・。」
「【ジロウ】の身体の一部から、わずかではあるが青酸反応が認められたんぢゃ!」
「せ、青酸ですって!?じゃあ、【ジロウ】は毒殺ということに・・・!?」
「ところがぢゃ、青酸反応があった場所が右手の人差し指と中指のあたりだけで、他からはまったく出んかった。つまり、直接死亡した原因とは言えないんぢゃ・・・。」

「・・・先生、やたらとはりきっておられませんか?眼がマジですよ。」
「ふっふっふ・・・わかるかね。この事件の謎は、わしが解く!!」
「ぢゃぢゃぢゃぢゃ〜ん!【名探偵くまだ】ここに誕生ぢゃ!」

じゃ、名探偵の先生にこれの意見を聞いてみようかな。

「さすが【ユリ】さん!美しい文字ぢゃのう。そうか、【やつか町】にのう・・・。ほう、【ユリ】さんは【とおやま】という人と結婚したんか・・・。」
そうか、【ユリ】は結婚して苗字が変わってたんだ。【やつか町1丁目】【とおやまユリ】。これだけわかれば充分だな。
「おい!わしは今から新聞社の資料室に行くぞ!過去に同じような事件があったかもしてんし・・・一緒に来るか?」
「病院をほったらかしにしておいていいんですか?僕はまず、【やつか町】へ行ってみます。」
「ならば後でくるがよい。行ってくるぞ。犯人逮捕は時間の問題ぢゃ!」

う〜ん、張り切ってるなぁ・・・。僕も少しは見習わなきゃ。

*やつか町*
やれやれ、こう毎日電車に揺られていると、さすがに飽きてくるな・・・。やっと着いたけど・・・。

「あれっ?【やつか町1丁目】と言えばこの辺りじゃないか。それらしい家は見当たらないけどな。すいませ〜ん!」

僕はたまたま通りかかったお婆さんを呼び止めた。・・・っと、この前の駄菓子屋のお婆さんさんじゃないか。

「なんか、用ですかいの?」
「お婆さん、こんにちわ。」
「おや、あんたは・・・。見たことあるような・・・最近、物忘れがひどうなりましてなぁ。」

本当に、物忘れがひどいみたいだな・・・。

「【とおやまユリ】という人をご存知ですか?」
「【とおやまユリ】さんなら、よう知っております。・・・ホンに気立ての良い、美しい人でしたからのう。」
「その【ユリ】さんというのは、この写真の人ですね。」

僕は、【ユリ】さんの写真を見せてみた。

「そうそう!この方が【とおやまユリ】さんですわ。昔この辺りにおられましてな、そらあ美しく、気立ての良い人でしたわ。」
「では、この辺りに住んでいたんですね?」
「そうです、確かにこの辺りに住んでおられましたわ。」
「ところが、この【はがき】の住所には【とおやま】という家が見当たらないんですけど。」
「それもそのはずじゃ。・・・17年程前、火事で焼けてしもうてのう。その火事で、【ユリ】さんは気の毒に・・・死んでしまわれたんですわ。」
「なんですって!?【ユリ】さんはすでに死んでいたのか・・・。」
「【ユリ】さんは、必死の思い出赤ん坊を助け出して、大火傷を負ったんじゃ。」
「・・・!【ユリ】さんには子供がいたんですか?」
「その子は、【ユリ】さんが生前親しくなさってた、【やまもとサワコ】という人に引き取られたんですわ。」
「それにしても最近、よう人が訪ねてこられますわ。皆さん、同じようなことを聞いて行かれますなぁ・・・。」
「さっきも身なりの立派な方に、【やまもと】さんの家を聞かれたところですわ。」

一体誰が・・・!?確か、前にこの町に来た時にもそんな話を聞いたけど・・・。

「【やまもと】さんの家は、3丁目にある【アパート】ですわ。」
「どうも、ありがとうございます、お婆さん!さっそく行ってみます!」

僕はお婆さんが教えてくれたアパートへと向かう事にした・・・。

*アパート*
「ここがそうか・・・。」

確かに表札には【やまもと】と書かれている。ここに【ユリ】さんの子供がいるのだろうか?

「ごめんください。」
「はい・・・どちらさまですか?」

中から出てきたのは、まるまる太ったおばさん・・・おや?この人、どこかであったことがあるような・・・?

「探偵の茂木と申します。【とおやまユリ】さんという人のことをお聞きしたいのですが・・・。」
「お名前は聞いたことがありますが、直接の知り合いではないんです・・・。」
「昔、【とおやま】さんという方の家が全焼しまして・・・【ユリ】さんという人はお気の毒でしたが、赤ん坊は左肩に火傷を負っただけだったそうです。」
「その赤ん坊を、当時孤児院を経営していた私の母の【サワコ】が引き取って育てたのです。・・・私は、【やまもとサワコ】の娘の【モトコ】と申します。」
「では、【サワコ】さんは・・・?」
「母は、先日亡くなりました・・・。経営していた孤児院を無理やり立ち退かされまして、そのショックで寝込んでしまい・・・。」
「それで、引き取った赤ん坊はその後・・・?」
「【サワコ】は、最後までその子供のことを心配していました。こみいった事情があったようで、表向きには捨て子だった、ということにして育てていたようです。」
「事情とは?」
「それは申し上げられませんが・・・。その子は、ある日何かに気がついたのか、母の元を飛び出してしまい、それっきりだということです。」
「ところで【モトコ】さん、どこかでお目にかかったような気がするんですが・・・。」
「はあ?初めてだと思いますよ。」
「そうですか・・・どうも、ありがとうございます。失礼しました。」
「あら?・・・いえ、気をつけて・・・。」
「・・・・・・。」

僕は、探偵事務所に戻る事にした・・・何か、重要な事を思い出さなきゃならない、そんな気がする・・・。

*うつぎ探偵事務所*
「おかえりなさい、茂夫くん。なにかわかったの?」
「・・・・・・。」

青酸反応が【ジロウ】の死体から出たものの、死因には結びつかない・・・。
【ユリ】はすでに死んでいた・・・その子供は行方不明で、手がかりは左肩の火傷の跡だけ・・・。

「どうやって調査をすればいいんだ!」
「馬鹿っ!茂夫くんの弱虫!!」
「・・・・・・。」
「こんな時こそ頑張らなくっちゃ・・・ねっ!」
「ゴメン、あゆみちゃん。心配かけて・・・頑張るよ!」
「やったぁ!!」

そうだ、【くまだ】先生が新聞社へ調べ物をしにいくって行ってたな。まだいるかな?行ってみよう!

「あゆみちゃん、【くまだ】先生と約束してたんだ。今から行ってくるよ。」
「気をつけてね!」