*かぐら寺*
・・・僕たちは、暴かれた【キク】さんの墓の前で呆然と立ち尽くしていた・・・。

なんと、墓の中に【キク】さんの遺体はなかった!そのかわりに、1人の男の死体がそこにはあった。死体の検分を行っていた警察の鑑識官が、驚きの声をあげる。

「これは・・・【あやしろアキラ】だ。こんなところで死んでいたとは!」

【アキラ】はすでに死んでいたのか!?僕はたまらず声をかけた。

「すみません、ちょっとよろしいですか!?」
「ん、なんだい?」
「一体、どうなっているんです!?」
「死体のことかね?・・・そうだな、まず死因は撲殺、墓の上に乗っている石で後ろからやられたようだ。」

【げんしん】和尚さんの言っていた『血の跡』は、その時に付着したんだな・・・。

「死亡時間は・・・この段階でははっきりとは言えないが、【キク】という人よりは後だろうね。」
「また、腐敗がかなり進んでいることから考えても、ここに埋められてからずいぶんと経つようだ。」
「おっと、それよりも、この害者の胸ポケットから、青酸反応のある刻みタバコがわずかだが、出てきたよ。」

やっぱり・・・!【キク】の死に、【アキラ】が何らかの形で関わっていたのは間違いないようだ・・・。

「それから、犯人を泳がせて逮捕する為に、この死体が見つかったことは報道しない事に決定したからね。」
「はい、わかりました・・・。」

「しかし、これは意外ぢゃった・・・!まさか【アキラ】がのう・・・。ん!?」
「どうしたんです?【くまだ】先生。」
「ここに埋められてから、ずいぶんと経っているようぢゃが・・・こりゃ、どう見ても【カンジ】より先に死んどるぞ!」

・・・!じゃあ、【カンジ】を殺したのは・・・!!

「【アキラ】ではない!?」
「そういうことになるのう・・・。」

僕は改めて、持っている生前の【アキラ】の写真と、今目の前に埋まっている死体の顔を見比べてみた。

やっぱり、ずいぶん感じが違うな・・・。

「これが【アキラ】なのか・・・あんまり近付いてみたいとは思わないけど・・・おや?この顔、どこかで・・・?」

墓の底に眠る【アキラ】の顔を見ているうちに、僕の心の奥から1つの記憶が浮かび上がってきた・・・!!

「・・・あっ!お、思い出したぞ!僕はあの夜・・・【うなかみの崖】でこの男に・・・そうだ!あれは事故なんかじゃなかった!僕は、【アキラ】に襲われたんだ!!」

*うつぎ探偵事務所*
僕は探偵事務所に戻ってきた・・・蘇った記憶をあゆみちゃんに話すため、そして情報を整理する為に・・・。

「えぇっ!?あなたは【アキラ】に襲われたんですって!?何か思い出したのね?」

さすがにあゆみちゃんも驚いたようだ。まぁ、当たり前だろうけど・・・。

「【キク】、【カンジ】、【ジロウ】の3人は、【あやしろ商事】を我がものにしようとする人物によって青酸タバコで殺されたんだ。」
「そして、【キク】の【タバコ入れ】に青酸入りのタバコを忍ばせたのは、そいつに利用された【アキラ】の仕業だ。」
「だから・・・それを調査に来た僕に危険を感じた【アキラ】は、あの晩僕を電話で崖まで呼び出し、襲いかかってきたんだ!」
「頭を殴りつけたうえ、事故で死んだように見せかけるため、草むらへ、突き落としたんだ・・・。」
「・・・・・・?」

なんだろう、あゆみちゃんが変な顔をしているな。

「【アキラ】は色々な点で犯人にとって都合がよかった。しかしその反面、最も危険な人物だった・・・。だから【キク】の次に殺したんだ。」
「ねぇ!犯人は誰なの?なぜ、【アズサ】まで殺されたの!?」
「【アズサ】は確か、『遺言公開の日、【アキラ】が誰かと会っていた』と言っていたはずだ。つまり、その人物とは・・・。」

プルルルルル・・・そこまで話したところで、電話のベルが鳴った。あゆみちゃんが受話器をとり、二言三言話すと、僕に向かって受話器を差し出した。

「茂夫くん、電話よ。」

「モシモシ!【くまだ】ぢゃ!ついにわしはどえらいことを発見したぞ!」

電話の主は【くまだ】先生だった。なんだかえらく興奮しているな。

「あったんぢゃよ!例のタバコ殺人の実例が!」
「なんですって!?」
「ある薬剤師の女が、自分の夫に多額の保険金を掛けて心不全に見せかけた殺人事件があったんぢゃよ!」
「しかし、問題はその後ぢゃ。なんと、その事件の担当弁護士というのが実は・・・。」
「待ってください!その弁護士の名前は・・・【かんだ】ですね!?」
「そうぢゃ!その通りぢゃ!」
「やっぱりそうだったのか・・・!じゃあ、事務所で【かんだ】が見ていたファイルというのが・・・!」

・・・?どうしたんだろう、あゆみちゃん。

「どうしたんだい?僕の顔ばかり見て・・・。」
「さっき茂夫くんが言ったときから気になってたんだけど・・・【アキラ】は、あなたを殺そうとしたのにどうして海に突き落とさなかったのかしら?」
「・・・・・・!?」

そういえば、そうだ・・・草むらへ落としたりせずに、海のほうに突き落としていれば、僕は助かってはいなかっただろう・・・。
だけど、今はそれを考えている時間はない、僕は【あやしろ家】に向かった。まずは【ぜんぞう】さんに、【かんだ】弁護士のことを聞いてみよう。