*あやしろ家*
「おかえりなさいませ、茂木様。なにかわかりましたか?・・・実は、先ほど【かんだ】様からお電話がありまして、【ユリ】様のお子様が見つかったとのことです!」
「やはり【カンダ】先生も、【キク】様から【ユリ】様を探して欲しい、と頼まれていたそうで・・・。」

【ぜんぞう】さんはまだ何も知らないんだ・・・僕は慎重に、言葉を選びながら真実を告げた。

「【ぜんぞう】さん・・・この事件の犯人は、どうやらその【かんだ】弁護士らしいんです・・・。」
「ええっ!そんな、バカな・・・!」
「【あやしろ商事】の顧問弁護士の【かんだ】先生が、【あやしろ家】の事情・・・20年前に失踪した【ユリ】さんのことについて詳しいのはおかしいとは思いませんか?」
「【ユリ】様については、【キク】様から色々聞いておられたでしょう。後継者の印がどのようなものだったかもご存知だったかもしれません・・・しかし・・・確かに・・・。」
「そういえば、結局例の【タバコいれ】はどこにあったんですか?」
「【アカネ】が持っておりました。呼びましょうか?」
「はい、お願いします。」

やがてあらわれた【アカネ】さんは、手に少し大きめの箱・・・【タバコいれ】を持っていた。

「ご迷惑をおかけしました。せめてもの罪滅ぼしに、この【あやしろ家】にお仕えするつもりです。」
「それが、例の【タバコいれ】なんですね?」
「はい。」

【アカネ】さんは、【タバコいれ】を居間のテーブルの上に置いた。ちょっと調べてみよう。

なるほど、引き出しがついていて、中に物が入るようになっているな。ここに土蔵の鍵が入っていたんだろう。
引き出しの奥には・・・?おっと!

『ガチャン!!』

引き出しを外した【タバコいれ】を取ろうとして、床に落としてしまった・・・大丈夫かな。おや?中から紙切れがでてきたぞ?

「『うま すすみ、うさぎ すすみて、とり ひらく、まんじのなかの しるし のぞまん。』・・・?」

なにかの暗号かな?いやに古びた紙だけど・・・。

「そういえば、【ぜんぞう】さんはこの【タバコいれ】を見ると、大旦那様や昔の事を思い出すそうです。」

なるほど・・・。ちょっと聞いてみよう。

「そうですね・・・【アカネ】が申しますように、この【タバコいれ】を見ていると昔の事が目に・・・あ!」

?【ぜんぞう】さんが何かを思い出したようだ。

「じ、実は、旦那様のせいで自殺に追い込まれてしまった家族の事を思い出したんです・・・その家族の名前は・・・【かんだ】でした!その家には確か、そのことで両親を失った息子が1人いたはずです!」

じゃ、その息子が【かんだ】なのか・・・?事務所へ行き、彼を問い詰めよう!

*かんだ弁護士事務所*
僕はそのまま【かんだ弁護士事務所】へとやってきた。またも【かんだ】弁護士自身は留守で、秘書の【レイコ】さんが応対してくれたが・・・すげなく追い返されてしまった。当たり前だよな、まだ証拠が少なすぎる・・・。

「【レイコ】さんの言うとおり、人違いの可能性だって捨てきれない・・・もっと詳しく、その自殺した【カンダ】という夫婦の事を調べなくちゃ。」

知っているとすれば・・・【げんしん】和尚!きっと何かを知っているはずだ。

*かぐら寺*
色々ショックなことが続いて、さすがの【げんしん】和尚様も顔色が悪い・・・。

「【キク】さんの遺体はまだ見つからん。あんたの手で早く犯人を捕まえてくれ。まったく、なんという罰当たりなことを・・・。」
「それに関してなんですが・・・【かんだ】弁護士の事を、何かご存知ではありませんか?」
「・・・・・・!」
「一連の事件は、全てその男の仕業のようです。話していただけますね?」

「そうか・・・あの男の仕業じゃったか・・・。あんたの思っとる通りじゃ。【キク】さんの旦那に両親を自殺に追いやられた男こそ、【あやしろ商事】の顧問弁護士・・・【かんだ】という男に間違いない。・・・【キク】さんは、【かんだ】のことをすべて知っておったんじゃよ。それでもあえて【かんだ】を顧問弁護士に決めたんじゃ。せめてもの罪滅ぼしのつもりでな・・・【キク】さんはこう言うとった。」

「『【かんだ】を弁護士にすることが正しいかどうかはわからん。しかし、その結果がどうあろうが、それは自分の意思であり、【あやしろ家】の定めじゃ。』とな・・・。」

「【かんだ】はよく働いたそうじゃ。【キク】さんも満足しておった。まさか、【かんだ】がこんな恐ろしい事を考えておったとは、夢にも思わんかったじゃろうな。」
「・・・【ユリ】も、【かんだ】親子のことは知っておったじゃろう。それもあって、【ユリ】は屋敷を出る覚悟を決めたのかもしれん・・・。【ユリ】は、かねてから【あやしろ家】の商売のやり方に耐えられんかったようじゃからな。じゃがのう・・・。」
「喰うか喰われるか、厳しい商売の世界の話、【あやしろ家】だけを責める事など誰にもできんことじゃ・・・。」

やっぱり!【あやしろ商事】の顧問弁護士【かんだ】には動機も、犯罪を犯すことのできる機会も充分に持っていたんだ!今度こそ、【かんだ】が調べていたという、過去の事件のファイルを見せてもらおう!

「茂木とやら!【かんだ】に目的を果たさせてはならん。このままでは・・・奴は救われん!」
「まかせてください!【げんしん】和尚!」

*かんだ弁護士事務所*
「またあなたですか!いい加減にしてください!どうせ人違いよ!」

【レイコ】さん、かなり怒ってるな・・・でも、僕だって引き下がるわけには行かないんだ・・・!

「・・・これが、【かんだ】弁護士が調べていたというファイルですね?」
「ちょっと!?何をするんです!やめてください!」
「このファイルを、見せていただけませんか?」
「これは、誰にでも見せていいような物じゃないんですっ!」
「そんな事いわないで・・・ね?」
「駄目ですっ!」
「そこをなんとか・・・。」
「駄目ったら、駄目!」
「堅いこと言わないで・・・ねぇったら、ねぇ。」
「ふん!・・・。」

ありゃりゃ・・・ツ〜ンとしちゃってる・・・当たり前か。じゃ、ここはちょっとからめ手で・・・。

「僕だって、あなたのようなカワイイ人を困らせたくはないんだ。」
「・・・カワイイだなんて、嬉しいわ。ちょっとだけ見せちゃおうかしら!」
「なんて言うわけないでしょ!お帰りください!」

あはは、これも当たり前か。でも、この調子で怒らせたらもしかしたら・・・?

「これだけ言ってるのに・・・ケチ!」
「なっ、何ですって!?いい加減にしないと警察を呼ぶわよ!」

よしっ!その方がこっちには都合がいいや!もう一押し・・・。

「呼べるもんなら呼んでみろ!」
「言ったわね!?待ってらっしゃい、本当に呼んでやるから!」

【レイコ】さんは受話器を手に取った。しめしめ、これで多分・・・。

「もしもし!警察ですか?今、変な人が来ているんです。・・・えぇ、そうなんです。その人です。」
「もう、しつこくって・・・。はい?はぁ?・・・わかりました、そうします。どうも・・・。」

あ、戻ってきた。

「警察があなたには全面的に協力しろですって!どうぞ、あなたが見たがっていたファイルよ!ぷんぷん!」
「どうも、すいません。」

ずいぶん怒らせちゃったなぁ・・・おっと、今はそれよりもファイルだ。
・・・やっぱり!これは【くまだ】先生の言っていた保険金殺人事件のファイルだ。殺害方法などが書かれている・・・!
もはや間違いないな・・・。!そうだ、【かんだ】は【ユリ】さんの子供をここへ連れてきていたかも!

「あのー、すいません・・・。」
「はい。何か御用ですか!」
「【かんだ】先生は、17・8歳ぐらいの少年をここに連れてきたことはありませんでしたか?」
「時々、あなたくらいの少年を連れてこられましたよ。とっても礼儀正しくて・・・誰かさんとはずいぶん違うわね!」

やっぱり・・・!しかし、一体誰なんだ・・・?

*うなかみの崖*
【かんだ】の行方を捜して【みょうじん村】にやってきた僕は、ふと【うなかみの崖】に足を向けた。
ここに立っていると、あの夜のことがありありと蘇ってくる・・・あの、殺気に満ちた【アキラ】の顔が。

「たしかに僕はこの崖で【アキラ】に襲われたんだ。だが・・・気を失ってからの事はさすがに何もわからない・・・ここに、何か手がかりはないんだろうか?」
そうだ!助けてくれた【あまち】さんなら、他に何かを知っているかも・・・行ってみよう!
*あまちのマンション*
勢い込んでやってきた僕だったけど、ドアの前まで来たところでふ、と気がついた。そういえば【あまち】さん、仕事でいないんだった・・・。話を聞きたかったんだけどな。

『ガチャガチャ・・・。』

「やっぱり留守だ。鍵がかかってる。」

*うなかみの崖*
がっかりして【みょうじん村】へと戻ってきた僕だったけど・・・。

「あっ、もう日が落ちてきた。今日はもう帰ろうかな。」

それにしても、なぜ【アキラ】は僕を海の方へ落とさなかったんだろう?あれだけ殺意をみなぎらせて僕を襲った相手が・・・。

どんどん日が落ちてゆく・・・おや?崖の突端でなにかが光ったぞ?

「おや、ボタンが落ちている・・・草の間に落ちていたから、前に調べた時には気付かなかったんだな。一応持っておこう。」

事務所に帰る前に、一応【あまち】さんのマンションに寄ってみよう、もしかしたら帰っているかも・・・?
*あまちのマンション*
「やっぱり帰ってないか・・・残念だなぁ。」

【あまち】さんは、やっぱりまだ仕事みたいだ・・・仕方がないので事務所へ帰ろうと思っていた僕に、見知らぬ男が声をかけてきた。

「おたく、【あまち】さんのお知り合いですか?【あまち】さんから洗濯物を頼まれたんですが遅れちゃって・・・やっとお持ちしたんですが、お留守なんですよ。」
「ああ、クリーニング屋さんですか。はい、【あまち】さんとは知り合いですが。・・・その洗濯物、多分僕のものだと思うんですよ。」
「えっ?この服がですか。確かに【あまち】さんから預かったものです。じゃ、受け取ってくださいよ。」
「いいですよ。もらっておきます。」
「いやー助かりましたよ。ところであなた、海にでも落ちたんですか?その服、海水でびしょ濡れでしたよ?」
「・・・なんですって!?」
「じゃ、それお願いしますね。」

服が海水でずぶ濡れ・・・!?じゃあ僕は・・・一体、どうなってるんだ!?

*うつぎ探偵事務所*
僕は【うつぎ】探偵事務所に戻ってきた。そうとう疲れた顔をしていたらしい、あゆみちゃんが心配して声をかけてきた。

「どうしたの、茂夫くん。顔色が悪いわよ。」
「それが・・・。」

僕は、今日わかったことをあゆみちゃんに話した。

「えっ!?やっぱり海に落とされていたらしいっていうの?」
「実は、【あまち】さんの部屋の前で僕のものらしい服をもったクリーニング屋さんに出会ったんだ。」
「驚いた事に、【あまち】さんから預かったその服は、海水でずぶ濡れだったらしいんだ。・・・でも、僕はくさむらに倒れていた・・・??」
「多分、海に落ちていたあなたを誰かが助けてくさむらまで運んだのね・・・理由はわからないけれど。」
「そして、倒れていたあなたを【あまち】さんが発見した。・・・ところで茂夫くん、事件の方はどうなの?」

「うん、両親の恨みを晴らすと共に【あやしろ商事】の乗っ取りを計画した【かんだ】は、【あやしろ商事】の内情を知り尽くしている・・・そして、ついに【ユリ】の息子を見つけたらしい。」
「【あやしろ商事】に絶大な発言力をもつその人物を抱き込んでしまえば、もう【あやしろ商事】は【かんだ】の思い通りだ。」

「でも、【ユリ】さんの息子って私たちと同じぐらいの年よね。何もわからないうちは【かんだ】の言うとおりにするでしょうけど・・・そのうち、思い通りにはならなくなるんじゃないかしら?身元ははっきりしないし、後継者の【しるし】さえあれば・・・。」
「そうか!本物の後継者は必要なくなるのか!!その子を殺して、自分の思い通りになるような替え玉を用意したのかもしれない・・・そう言いたいんだね?あゆみちゃん!?」
「うん!」

「じゃあ、【かんだ】が事務所に連れてきていたというのは・・・【ユリ】の本当の子供じゃない可能性が高いのか!」

「ところであゆみちゃん、これかなぁ。僕のシャツって・・・。」

確認しなくちゃ。僕は、クリーニング屋さんから受け取ったシャツをあゆみちゃんに見せてみた。

「これよ、これ!あなたがいつも着ていたのは。あら?ボタンが1つ取れてるわね。」
「もしかしてこれかな?【うなかみの崖】で拾ったんだけど。」
「同じボタンね。多分そうだわ。待ってて、今つけてあげるから・・・はい、できたわよ。ねぇ、いつもの服に着替えたら?せっかく洗濯もされたんだし。」
「そうしようかな・・・?」

僕は上着を脱いだ。

「きゃっ!何もここで着替えなくてもいいでしょ!?」
「あっ、ごめんごめん。」
「・・・・・・あら?茂夫くんって、そんなところに火傷の跡があったのね。いままで気がつかなかったわ。」
「えっ!?火傷の跡!?ど、どこにあるんだい?」
「そのままじゃ見えないわ・・・待ってて、鏡があるわ。」

こ、こんなところに火傷の跡が・・・これは、昨日や今日出来たような火傷の跡じゃない・・・そういえば、前からあったような・・・。
なにか思い出せそうだ!でも・・・!ま、まさかそんな!ああっ、頭が・・・頭が割れそうだ!もしや、僕は・・・!!

「どうしちゃったのよ!?茂夫くん!」

そ、そうだ・・・もう一度・・・もう一度【やつか町】の【アパート】へ行って、【モトコ】さんに会ってみよう!!

「茂夫くん!!」
駆けつけた茂夫を、【モトコ】は驚きをもって迎えた・・・遠い過去の記憶がついに蘇り始めた茂夫は、目の前にいるこの女性に特別な記憶を持っている自分を強く感じていた・・・。