*第一章・やまかわこうぞう殺人事件*

*港*

この港からはポートアイランドの大観覧車が見てとれる・・・美しい眺めだ。が、その風景には不釣合いな・・・いかにもスジ者と思われる男がそこには待っていた。

「さっき電話くれた人だな。じゃあ、この包みを受け取ってくれ。としゆきによろしくな。」
そういって男が差し出した包みを、我々は即座に調べてみた。

「麻薬です!ボス!」
やはりな、としゆきは不合法な取引きに手を出していたのか。

「麻薬密売の現行犯で逮捕する!」
「げっ!しまった!」

男は警官に連れられて去っていった・・・やがて周辺住民に聞き込みをしていたヤスが戻ってくる。

「ボス、17日の9時過ぎ、港でとしゆきを見たという人がいました。写真で確認しています。」
ふむ、こうぞうの件はともかく、これでとしゆきは逮捕できそうだな。

「捜査本部に戻るぞ。」
「はい、ボス。」

*捜査本部*

港の男から押収した麻薬の包みを携え、我々は取調室に戻ってきた・・・目の前にはとしゆきがいる。

「もう一度お尋ねします。17日、午後9時ごろどこにいましたか?」
「部屋にいたといってるだろ!」
「嘘をつけ!港にいたのを見た人がいるんだ!」
「さーね、人違いじゃねぇのか?」
「・・・これを見てもそんな口がきけるかな?」

部屋にあった【メモ】と、港で手に入れた【包み】をとしゆきに突きつける。

「・・・!」
「さあ、言うんだ!ボカ!ガス!」
「わかったよ!あの晩、俺は港で麻薬の取引をしてたんだ。だから部屋にいた、って嘘をついたんだ。叔父貴を殺ったのは俺じゃねぇ。
さぁ、もういいだろ?麻薬の方で俺を逮捕しな!」
「ではボス、としゆきを逮捕します。さあ!行くんだ!」
「ふん!あばよ!」

「結局、としゆきは殺しの犯人ではありませんでした。捜査は振り出しに戻ってしまいました。」
「まぁ、それはしかたがない、てがかりはまだあるんだ、1つづつ潰していくしかないだろう。」
「はい、ボス・・・。」

我々は、次の手掛かりであるスナック【ぱる】へと向かうことにした。おそらく、容疑者の1人である【ひらた】の手掛かりが何かつかめるはずだ・・・。

*新開地*

「たしか、このあたりだと電話で言っていたはずだが・・・。」
「すみません。この辺に【ぱる】というお店は・・・?」
「へぇ、ぱるならそこでっせ。」

そこは落ち着いた雰囲気のスナックだった。マスターがカウンターの奥からこちらを見ている。

「ようこそ、カウンター席が開いていますよ。お二人さまですか?」
「いや、我々は・・。」

ヤスが手帳を見せると、マスターは小さく頷いた。

「警察の方ですか、何の御用です?」
「この写真を見てくれますか?」
「あっ!この人は・・・いつだったかここで【かわむら】さんと大喧嘩していた人です。えっ!殺された!?」

かわむら・・・確か地下の迷路で手に入れた借用書にあった名前だな。

「それで、他に何かわかることはありませんか?」
「かわむらさんと一緒に飲んでた人ってだけで・・・すみませんねぇ。」
「では、かわむらさんの方は?」
「そういえば、かわむらさんは最近飲みに来られていませんね。」

ふむ、殺されたこうぞうと争っていた男、かわむらか。

「ボス、残念ながら、マスターは【ひらた】のことは知らないそうです。」
「そうか、仕方がない。こうなったら京都へ向かうしかないか。」

我々は挨拶もそこそこに捜査本部へと戻った。鍵を握る男、ひらた・・・なんとしても見つけださなければ。