ハリーポッターと賢者の石
ハリー・ポッターと賢者の石 (2001/米)
Harry Potter and the Philosopher's Stone

製作総指揮 マイケル・バーナサン
監督 クリス・コロンバス
脚本 スティーブン・クローブス
原作 J・K・ローリング
撮影 ジョン・シール
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 ダニエル・ラドクリフ / ルパート・グリント / エマ・ワトソン / リチャード・ハリス / マギー・スミス / アラン・リックマン
クーマ 「ハリーポッターと賢者の石(以下ハリポ)」のDVDが出たね!
カズ山 出た!ショップに行くとさ、なんかスゲ〜でかい箱が並んでるんだ!
クーマ ああ見た見た!「DVDスペシャルBOX 金のスニッチバージョン」!
9800円(税抜)要らねぇ!(笑)
カズ山 うひゃひゃ!でも中味が見てみたいんだよねぇ・・・誰か買って見せてくれないかなぁ。
なんかクディッチで使う金のスニッチとか組分け帽子とか入ってるらしい。
クーマ ああシャポー爺ね。
カズ山 それはドロロンえん魔くんじゃねえかよ!!
クーマ まあそれはいいとして・・・映画の部屋だから、ここは。
で、どうよ?
カズ山 う〜ん・・・悪くはなかったよ。
クーマ なんだその微妙な言い回しは(笑)
全世界のファンに気兼ねしてんのかな?
カズ山 はい(笑)いや〜僕はのれませんでした。
劇場で見て、今回DVDで見てもね、原作読んでないからかなぁ?
なんかさ、ハリー君ってなんにもしてないことないですか?
まわりがお膳立てして、まわりで事件が起こって、まわりでいろんな人がジタバタするけどハリー君自身にはあまり意志が感じられない。
話の流れがすごく自動的、気が付いたら卒業してました・・・みたいな。


<ダーズリー一家>
ハリー君を物置に押し込んでこき使う平民家族。
典型的な俗物、すなわちもっとも現実的なキャラとして描かれながら、
魔法のフクロウが運んでくる郵便攻撃に耐えかねて荒れ狂う海の孤島の一軒家に引っ越してしまう?フツーそこまでやるか?
序盤から香港映画みたいなデタラメな展開にこの映画の行く末を見失うことうけあい。

<組分けの儀式>
ホグワーツ魔法学校には4つの寮がある。「グリフィンドール」「スリザリン」「パッフルパフ」「レイブンクロー」。
語感からキャラ分けがされているけども日本人にはなんのことやら?
どの寮にはいるかは「組分け帽子」が決めるんだけど、ハリー君は「スリザリンはイヤ!スリザリンだけは止めて!」と呟く。
やべえよハリー君、あとでスリザリンの上級生にシメられるぜ。

クーマ ファンタジーのジャンルではよくあることじゃない?
例えば「ロードオブザリング」のフロドもあんまり何もしないよ。
カズ山 うん、ファンタジーが異世界の存在自体を描く神話的構造の物語だとすれば、主人公がその世界を紹介する狂言回し的な役どころになることはよくあるけどね。
でもそういう意味では「ハリポ」はファンタジーではないでしょ。
そうだとこの映画、ホグワーツ魔法学校の学校紹介ビデオになっちゃうぜ!
クーマ 主な舞台は学校だけだからね。
カズ山 しかも現実のとなりに存在している世界の話だから魔法世界の話ばっかりしてもしょうがないしね。
現実世界も存在しながら魔法世界も存在しているんだよってところの落差を描かないといけない。
「ハリポ」では魔法世界のほうに現実世界にあるアイテムやルールを持ち込んでリアリズムを成立させてる。
そういう構造のプロットは神話にはならないでしょ。
クーマ アニメっぽいよね。
ところでホグワーツだけど、よく考えたらここヤなかんじだ。
あきらかに進学校だよな、エリートクラスもあるし。
カズ山 エリートねぇ・・・
ハリー君はエリートクラス(スリザリン)入らないんですよね。あらかじめ選ばれしものだからそんなん入らなくてもOK。
映画のはじめのほうで「学校行って魔法習えば世界一の魔法使いになれるよ」ってはっきり言われちゃうもんな。
クーマ 名家の血筋ですからね。


<豪華なお料理>
新入生歓迎会で全員がテーブルにつくと、テーブルのうえに魔法のように料理が現れる(っていうか魔法だけど)
わぁっと顔もほころぶ新入生たちですがそこはイギリス。
料理の内容は骨付きチキンとかゆでたトウモロコシとか素朴なもんばかりです。
居酒屋じゃないんだからさぁ。

<ハーマイオニー>
たぶんもっと鼻持ちならない優等生タイプのキャラなはず。
セリフや行動からそれは推測できますがイヤミが無さ過ぎ、おそらくはミスキャスト。
だからプライドをくじかれて彼女がひとり落ち込むくだりの描写にも説得力がない、ていうか意味がわからん。
でもかわいいから許す、ぜんぜん許す。

カズ山 ああ、イギリスは貴族の国だからね。
要はハリー君は貴族なんですよ、でも親が覇権争いのゴタゴタに巻き込まれたかなんかで死んじゃったせいで平民の家に預けられて隠匿される。
無学でケチなクソ庶民の家で苦労するわけですなぁ。
それがこう、「じつはおまえは名家の出なんだよ」ってことでサクセスしてくっていう・・・
クーマ なんかハラ立つなぁ。
カズ山 う〜ん・・・いや
自分でも知らない秘められた力に目覚めていくパターンの話はよくあるし、イギリスらしい身分意識を下敷きにしていることも悪くないと思うんだよ。つくりかたによっては面白くなる。
けど「ハリポ」はハリー君自身が「いい気にならない」ことで好印象のキャラに見せようとしてる。
身分意識のこととか全部、なるべく触れないで観客に意識させないようにしようとしてる。
そこがいかにもヌルイ!!!
クーマ ムカついてますね(笑)
でもクリス・コロンバスの映画でヌルくないのなんて無いからね。
「グレムリン」だけは面白かったけどね。
カズ山 「グレムリン」はクリス・コロンバスがもっと毒気のある脚本書いたくせに自分でヌル〜く撮った結果、偶然にも絶妙のバランスを生んだという・・・
ってか「グレムリン」の話はまたいつかやるとしてさ・・・
>>お詫びと訂正


<トロール>
中盤の見せ場、地下から迷い出た怪物トロールがハーマイオニーを襲う!駆けつけたハリーとロンが大活躍!
あれ?でもちょっと待って・・・トロールってあなた「シュレック」さんじゃないですか?
え、違う?あ、すごく似てたんで・・・ごめんなさい人違いでした。
けど真っ先に女子トイレに行っちゃうトロールってイヤ〜ンな感じじゃない?

<ネビル・ロングボトム>
主人公トリオの三枚目キャラのロンよりもドジでのろまに設定されたため、ほんとに魔法使えんのか?なキャラになってしまった損な人。
いちおう最後にその行動を認められるくだりはあるもののぜんぜん魔法絡みではない、だからどうしたってかんじ。(いや僕はイイ奴だなぁと思ったけど)
ほうきが暴走して手首は骨折するわ、ハーマイオニーに呪文でフリーズさせられるわ、コイツは絶対に大成しない。
あと呪文が必ず爆発してたやつ、スリザリン組だったら国際的テロ魔法使いになれたかも。

カズ山 え〜とじゃあね・・・
原作が悪い!(笑)
クーマ よ!読んでもないのに!!(笑)
カズ山 んとね、原作者のJ・K・ローリングって離婚して貧乏で、女手ひとつで子供を育ててて、生活保護受けながら小説書いてたって・・・
それが世界的ベストセラーになって・・・っていう。
クーマ 美談になってますね。
でものんびり茶店で小説書いてる場合じゃないよね、フツー
働けよ!ママ
カズ山 たぶんそのせいじゃないかと思うんだ、なんか「ウチの子は他の子とは違うのよ!」みたいなママの願望を感じる!
クーマ おう!そこで選ばれしもの!
カズ山 里親のところで虐げられて暮らしているけど判ってないのは世間の方よ、ホラ見なさい!みたいな。
だからちゃんと判ってる人々のところへ行くと「おお、あなたがハリー・ポッター様!」ってなる。
クーマ ダイアゴン横丁の酒場とかだ。
カズ山 入学式のくだりでは「お前がかのユウメーなハリー・ポッターか!」みたいな言い方されるけど、こいつらは実は判ってないエセエリートなんだな。
クーマ ドラコ・マルフォイだね。
別に大した悪さもしてないのに印象だけは悪いという損なキャラ。
カズ山 ホグワーツの先生たちもなんかエコヒイキっぽいよね、とくにマクゴナガル先生。
ほうきを使っての飛行授業で言いつけを守らなかったハリーを窓越しに見咎めて、怒るのかと思ったらクディッチの選手に抜擢しちゃう。
なんじゃそりゃ!思わず劇場のイスからずり落ちました。
クーマ 試合の前には最新型のほうき(ニンバス2000!)を付け届けしたり、あれは教育上よろしくない!


<シーカー>
クディッチの選手になったハリー君がつくポジション。スニッチを見つけてゲームを終了させる最重要ポジションだ!
え〜っとしかしハリー選手、ゲーム開始からまったく動きません。上空からぼんやり試合を眺めています。
どうしたんでしょうか?あ、いまスニッチがハリー選手をかすめてようやく動き出しました。
よく考えたらハリー選手、眼鏡をかけてますよねぇ?シーカーのポジションは不向きなのではないでしょうか?

<魔法使いのチェス>
ラスト近くのロンの見せ場にして劇中もっとも手に汗握るシーケンス。
命懸けのチェスの試合でロンは策士としての才覚を発揮!ハリーを行かせるために自らを犠牲に・・・
え〜っ!ロン!死んじゃうの!(マジでハラハラした)
なんだよ、後ろに倒れただけじゃん!あほか!

カズ山 そういう見方をする映画じゃないとも思うけど、なんか「他の生徒はこれ見てどう思うよ?」なんてのが気になって気になって。
でも「ハリポ」って結局ハリー君を中心に世界が回っていて、他の生徒なんてハリー君を持ち上げるための比較対象物なんだな。
主人公トリオのハリー、ロン、ハーマイオニー以外は魔法使いですらないように見える。タダの人間。
クーマ ふ〜ん。
でも原作は小説なのでそこらへんはうまくフォローされているのでは?
カズ山 そうかもしれない。
ハリー君の心理描写がもっとしっかりできていれば良かったかも知れない。
そのへんはクリス・コロンバスがボンクラなのかダニエル・ラドクリフがダイコンなのかわかんないけど。
少なくともハリー君がなにを考えているのかあんまりわからない。
途中から「いままで知らなかった両親への想い」が出てきて、さらに「それを乗り越えて独り立ちしていく」というプロットがあることは理解はできるのだけど全然伝わってこないんだな。
クーマ そうだね、いいはなしじゃん。切ない。
うまく作れば感動的!泣ける!
カズ山 でも全体のトーンを重くしたくなかったんだろうな・・・ってのはわかるよ。
ていうか子供に苦労させたくなかったんだろうな〜(笑)
クーマ 結局それかよ!!(笑)


<ジョン・クリース>
モンティパイソンのメンバーにして今やイギリスを代表するコメディ俳優としてピンでメジャー映画にどんどん出演しているジョン・クリース。
007シリーズではMに代わっての活躍が大期待だね!
「ハリポ」ではホグワーツの亡霊「ほとんど首無しニック」として登場する。
が、ジョン・クリースの使い方としては映画史上最低!なめとんのか!(ジョン・クリースも仕事選べ!)

<大団円>
卒業式のシーンで重要になるのが寮の組ごとのポイント争い。
ですが、ハリー君があまりポイントに興味がなさそうだったのでそんなのがあるのも忘れてました。
卒業式も終わってみなさんともお別れですね。え?ハリー君はダーズリー家に帰るの?あんなところに?マジで!
いくら続編があるとはいえ、そんな終わり方でいいのかな〜?

カズ山 まあでも世界中にファンのいる原作を忠実に映像化してくってところはとてもうまく達成されているわけだろう。
でもそのぶん原作を未読の観客に「ここはどういう世界でなにが魅力的なのか」「話はどこに向かおうとしているのか」ということを提示し損なったままどんどん進んでくところがさ・・・ まあ見どころはてんこ盛りでそれなりに楽しめるとしてもだね、映画化の手法というか、映画としてこれでいいのか?
だいたい僕、悪者が賢者の石を手に入れるとどうなるのか!ってところがどうしても思い出せないんだ。
クーマ 2回も見たのにね。まあクーマも同じです。
カズ山 というわけで、ひどくつまらないとは言わない、ていうか充分楽しめるよ。
でもいい大人がきゃあきゃあいうような作品なのか?ってことで・・・
カズ山的には「アンチ」ってことで。
クーマ 言ったね!すごいケンカ売りましたよ!
カズ山 でもまだこれからがあるので・・・
二作、三作目には期待しようね!
クーマ もうフォローすんのかよ!!
カズ山 いや・・・巻を追うにつれ、魔法らしいダークなテイストも入ってきますし
・・・三作目の「アズカバンの囚人」にはスピルバーグがメガホンを取るかもしれないですし。
クーマ それはそれで別の問題がありそうだね!
2002 05/20
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