地獄の黙示録 特別完全版 |
地獄の黙示録 特別完全版 (2000年/米) Apocalypse Now REDUX 製作 フランシス・フォード・コッポラ 共同製作 フレッド・ルース/ゲイリー・フレデリクソン/トム・スタンバーグ 監督 フランシス・フォード・コッポラ 脚本 ジョン・ミリアス/フランシス・フォード・コッポラ 音楽 カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ 撮影 ヴィットリオ・ストラーロ 美術 ディーン・タボラリス 出演 マーロン・ブランド/ロバート・デュバル/マーティン・シーン/フレデリック・フォレスト/アルバート・ホール サム・ボトムズ/ローレンス・フィッシュバーン/デニス・ホッパー |
もう20年以上も前だ。 「ゴッドファーザー」を撮ったフランシス・F・コッポラ監督の超大作戦争映画。 フィリピンでの難航する製作現場のゴシップを報じる雑誌記事の果てに遂に公開された「地獄の黙示録」だったが世間の評価はおおむね辛口。 壮大な実験作、あるいは難解な失敗作。 たしかに映画は「ワルキューレの騎行」で超有名なヘリ奇襲作戦のシーケンスの後、急速にトーンダウンして難解で冗長な残り半分に落ちて行くように思えた。 やがて行き着くラストは、マーロン・ブランド演じるカーツ大佐が、暗闇の中、謎のような台詞を延々と喋り続けるというものだった。 「なんだかよくわからない」 それが正直な感想だったろう。 結局、残ったのは「ヘリコプターの映像には「ワルキューレ」をつける(それがお笑い番組のバツゲームだろうが)」というお約束だけだった。 |
いったいあの映画は何だったのか? コッポラ夫人が撮影現場で記録したフィルムを元に作られたドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」で、我々は映画本編よりも壮絶で過酷な撮影現場の実状(これはすごく面白い!スゴ過ぎて笑える)をあらためて知り、「地獄の黙示録」は巨大すぎてコントロールを失ったプロジェクトの結果である・・・これは失敗作なのであると確信した。 しかし・・・ |
初公開から21年が経って、カットされた50分以上ものフッテージを追加して再編集された「地獄の黙示録 特別完全版」が封切られた。 上映時間は3時間22分に及ぶ。 「あの難解で冗長な映画のさらに長いヤツにまたつき合うのかよ!」 そう思った。 だが驚くべきことに「地獄の黙示録 特別完全版」はまるで別物のように明確で面白く、論理的で完全な作品になっていたのだ。 1979年の初公開に向け、コッポラは当時としてはとても風変わりなこの映画をどうまとめ上げるか悩んでいた。 この映画を理解する観客は誰もいないのではないか? そう考えたコッポラは、4時間を超えるラフカット版を切りつめ、なるべく普通の「戦争映画」に見えるように編集したそうだ。 そのせいで映画のテーマが薄らぎ、ぼやけてしまったというのはあるかもしれない。 「特別完全版」ではそのカットされたフッテージを加えて語り直すことで、本来のテーマがはっきりと浮かび上がっている。 だがもちろんそれだけではないだろう。 20年以上の時間の中で、我々を取り巻く世界も変わり、初公開当時にはまだ肉薄することの出来にくかった「戦争の現実」というものに観客の方が近づいたということもあるだろう。 (なんたってベトナム戦争終結はコッポラが撮影を開始するわずか1年前だ!) 恐るべきは、コッポラが79年の時点ですでに、この映画を語りきるために必要なフッテージを全て撮り終えていたということだ。 |
さて実のところ「地獄の黙示録 特別完全版」についてはあまり語ることもないし語ろうとも思わない。 映画の見所なんてもう語り尽くされていて単なる想い出話になるだけだし、新たなフッテージについても至る所で語られているだろう。 映画のテーマについては、それはもう観れば明らかである。 明らかついでにもうズバリ言ってしまうと、これは「戦争」そのものについての映画である。 ベトナム戦争を舞台にしているが、それすらも超えて映画は戦争そのものについて語る。 (近代の戦争といえばほとんどアメリカの係わる戦争であることは言うまでもない) 幾多の戦争映画が「反戦映画」止まりだったのにくらべ、「地獄の黙示録 特別完全版」は突き抜けている。 戦争はなぜいけないか? 人殺しだから、人が死ぬから・・・というだけではないのである。 戦争とは狂気であり、ウソで塗り固められた欺瞞なのだ。 「戦争だから人を殺すのは仕方ないよね」というウソの大義名分によって殺人が正当化される・・・それが戦争の本質である。 映画はそのウソを繰り返し暴いていく。 |
戦争、アメリカ・・・ ウソの大義名分のもと、ブッシュ大統領は「ならず者国家」「悪の枢軸」等の悪い冗談のようなネーミングとともにさらに新たな戦争に向かっていこうとしている。 |
2002 09/11 |
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