2003年下半期　映画感想文

2003年下半期　映画感想文

ソラリス
ザ・コア
チャーリーズエンジェル　フルスロットル
バトル・ロワイアルII　鎮魂歌〈レクイエム〉
地獄甲子園／ラーメンバカ一代
ＨＥＲＯ／英雄
ターミネーター３
トゥームレイダー２
バリスティック
S.W.A.T.
リーグオブレジェンド　時空を越えた戦士
キルビル　Vol.1
マトリックス　レヴォリューションズ
アンダーワールド
ファインディングニモ

ソラリス (2002/米 )　solaris
　　監督・脚本　スティーヴン・ソダーバーグ
　　原作　スタニスワフ・レム
　　音楽　クリフ・マルティネス
　　出演　ジョージ・クルーニー/ナターシャ・マケルホーン/ジェレミー・デイヴィス

宇宙ＳＦ映画といえば宇宙船なのである、普通は。
星の海を進む宇宙船の絵が出るだけで、おぉＳＦ映画を見てるぜ！という気になってワクワクしたりする。
場面としては実は純然たる「移動シーン」に過ぎないシーンが見せ場として機能する。
宇宙ＳＦ映画とは不思議なジャンルなのである。
ストーリーがダメダメでも、宇宙船がかっこよければなかなかどうして得した気分にもなるもので。
そう言う意味では旧作「惑星ソラリス」に比べるとずいぶんサービスがよくなった。
つまり宇宙船が出てくるわけね。
多くの宇宙ＳＦ作品に比べれば宇宙船の登場シーンはあっという間。それでも宇宙船が観測ステーションにドッキングするシーンが描かれ、銀ピカのステーション内部は見栄えのするデザインを施され、果てはソラリスの海がよこした「客」を始末する原理がよくわからないなんとかいうマシンまで登場（登場すれども作動シーンすらないが）するのだからさすが２１世紀だね。
しかしながら新作「ソラリス」はソダーバーグ自身も言っているように「ＳＦ映画」などでは全然ないのだ。

スタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」を、ソビエトを代表する映画作家Ａ・タルコフスキーが撮った「惑星ソラリス」。これはそのリメイクだがその目的とするところは何だろう？
ソダーバーグ版「ソラリス」はまるで、難解で退屈で世界一眠い映画として誉れ高い旧作を、手短にわかりやすくまとめ直して誰しも受け入れられるレベルに翻訳したような感がある。
アメリカでの不振の理由のひとつはストーリーが難解だからだというが「これで解らなければいったいどうしたらいいんだよ、アメリカ人！」というくらい脚本、演出ともに親切でわかりやすくなっている。
細かい違いはあれどストーリーはほぼ旧作に忠実で、物語を理解するに必要な情報も適切に説明され、旧作の、寡黙に徹するあまり何がどうなっているのかさっぱりわからないような傍観する演出はここにはない。
では、明快で面白い作品になったのか？というとそれはちょっと違う。

一見、平易な翻案版に見える新作「ソラリス」。
ソダーバーグがわざわざリメイクするというからには旧作のストーリーをなぞるだけでない何かが欲しいところだ。
確かにそれはある、がそれは実に微妙なものだ。

タルコフスキーの「惑星ソラリス」はＳＦとしては正統派だ。
淡々と状況を描くのみに徹する旧作は、それゆえにラストの「恐るべき事実」の衝撃がじっくりと心に染みていくような映画なわけだが、「衝撃のラスト」型作品のリメイクでは同じ手を使うわけには行かない。「猿の惑星」のリメイクもラストを違えたように。
ソダーバーグ版「ソラリス」ではストーリー上は旧作を踏襲しながらも、演出の主眼は登場人物の内面の葛藤のドラマに置かれる。旧作との違いはまさにその視線の違いである。
旧作のケルビン博士というのは科学者であろうとする。理性的、論理的であろうとし、それゆえある種受動的でもある。
たぶんこの視線があってこそ、旧作「惑星ソラリス」はＳＦ映画になりうるのである。
一方、新作の主人公ケルヴィン博士は、ソラリスの海が引き起こす事件に対して、最後に能動的に行動し明確にある選択をする。それは科学者の選択ではない、普遍的な一個人としての人生の選択だ。
だからソダーバーグが言うように新作「ソラリス」は「ＳＦ映画」ではないし、テーマにおいても別の物語になっている。
しかしまぁそこまで。
半歩前進したが一歩には足りない感じ。

ケルヴィン博士の選択で物語は「愛の認識」についてより焦点を絞って観客に設問する。
するのだが、その舞台に宇宙ＳＦはぜんぜん似合わない。やはり宇宙はＳＦ映画の領域であり、「ソラリス」もＳＦ映画の体裁になっている。
ＳＦというものはそもそも個人としての人間を扱うにそぐわないジャンルである以上、個人的な物語と捉えられがちなオチをして「だからなに？」という感想になってしまっても仕方ないんじゃなかろうか？
いっそ質問を投げるんじゃなく、物語をさらに踏み込んで「答え」を出してしまったほうが良かったんじゃないか？
とはいえそれでは判りやす過ぎだわな。

もはやＳＦ映画の古典中の古典である「惑星ソラリス」
好きなように料理するためにはある種バカっぽいくらいの開き直りが必要だろう。
それをやるにはソダーバーグはいくぶん小賢しすぎる。

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ザ・コア (2003/米・英)　The Core
　　監督　ジョン・アミエル
　　脚本　クーパー・レイン/ジョン・ロジャース
　　特撮　グレゴリー・Ｌ・マクマリー
　　出演　アーロン・エッカート/ヒラリー・スワンク/デルロイ・リンド/スタンリー・トゥッチ/チェッキー・カリョ

地球の核こと「コア」は宇宙からの電磁波を防ぐ巨大な磁場の発生装置である。
地球全体を覆うバリアの発生源であるであるコアがもし運動を止めてしまったら？
太陽からの放射線が遮るものなく地上に降り注ぎ、地上の生物はすべて滅んでしまう！
突然運動を止めてしまったコアを再び始動させるため、アメリカ政府は国内外の頭脳を集め、人類滅亡を回避する巨大プロジェクトをスタートさせた。
かくして地球中心部まで到達可能な特殊マシンに乗り込んだ６人のスペシャリストが人類存亡を賭けた決死のミッションに挑む！
…なんていう切り口で始めるから、普通は「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」のような地球に襲いかかる大災害を描いたパニック超大作だと思うよね。
でもこの映画はどちらかというと昔懐かしく荒唐無稽な「地底探検」ものの部類に入るんだと思う。
だって地球中心部まで穴を掘っていくなんて絶対無理なんだもん（笑）

映画の導入部は最近のパニック映画のような展開。
世界各地で異変がおき始める。ペースメーカー使用者ばかりの謎の集団突然死事件。トラファルガー広場ではハトの群れが方向を失ってビルや車に衝突する事件が発生。スペースシャトルのエンデバー号は慣性誘導装置の異常でロサンゼルスのど真ん中に不時着する。主人公の地球物理学教授ジョシュ・キーズは、これら一見何の関連もなさそうな事件が、実は地磁気の異常によるものだと気付く。
実はこのあたりの事件の意外性が昨今のパニック大作に比べても斬新で面白く、「前半は面白い」と言うひとも多いらしい。
であればあとの展開にもまじめなノリを期待するわけだけど、そうはならないからおおむねこの映画ってダメダメ扱い。
でも待って。良く考えれば前半だって充分荒唐無稽だ。いくらハトだって目の前にビルがありゃよけるでしょう。

ジョシュ教授が政府に影響力のある地球物理の権威のジムスキー博士に提言したことにより、事態を重くみた連邦政府は極秘に対策会議を招集する。
会議の席で「人類滅亡まで残された時間はわずか１年」と言い放つジョシュ。
回避策を問うパーセル将軍にジョシュは「回避策はありません。地球の内部は超高圧と超高熱。行くことは出来ない」と告げる。
まったくもってそのとおり。しかしそこでジムスキーが口をはさむのだ。
「…もし行けたとしたら？」
僕はもしかしてここがこの映画のハイライトなんじゃないかと思う。
「行けたとしたら？」ですって！そうこの映画では行けちゃうのだ！無敵の地底潜航艇ヴァージル号があるからだ！

その技術は人知れず砂漠のなかにあった。
かつてジムスキー博士のパートナーだった物理工学者のエド。ジムスキーに研究成果を独占されて日陰の身になってからも、砂漠のど真ん中のボロ倉庫にこもり、なんと独力で地底潜航技術を完成させていた！
連邦政府はその技術を元に、地球最強の地下鉄こと地底潜航艇ヴァージル号を完成させるのだ！（まるで銀河鉄道９９９のマイナー路線の列車みたいなダサいデザインだ！）
ヴァージル号は前方の岩石を高周波レーザーで溶かし、超音波振動で粉砕して地中を進む。その機体は地球内部の超高熱・超高圧に耐えるだけでなく、高熱を電気エネルギーに変換して取り込むという新合金アンオブタニウム製なのだ（ウソだよ！ウソ！）
かくしてヴァージル号は地球の命運を握る６人のスペシャリストを乗せ、３０００キロの地底へ核爆弾をぶちこみに行くのだった！

荒唐無稽で大雑把な御都合主義的展開を三段重ねにしたこのあたりから、映画は開き直ったかのように古典的な地底探検ＳＦ映画のテイストを発揮し始める。
誰も見たことのない地底の様相は華々しくデジタルで視覚化され、見たことないからどうだかわからんがそれなりのリアリティを持って描写される。
未知の領域へのスリリングな旅程と乗組員それぞれのドラマがそれなりに描かれ、深刻ぶった災害映画というより胸踊る冒険映画の趣が濃厚になる。映画の中盤ではたまに思い出したように描かれる地上の大災害はむしろどうでもよくなってくる。
はては巨大な水晶が立ち並ぶファンタスティックな地下空洞まで登場するあたり、これはやはり意図的に「地底探検（1959）」とか「地球は壊滅する（1965）」とかの古典ＳＦへのオマージュなんだろう。
そう思って楽しめるかどうかがこの映画の評価の分かれ道だが、事前にそうとうバカにしてたのが逆に良かったか、僕は案外楽しめた。
ステレオタイプだが王道の登場人物たちのドラマがあって、お約束の政府の陰謀があって、それを出し抜く逆転劇、そして不可能を機転で可能にする最後の脱出まで…
その全部が理論的に納得いかない（笑）けど、冒険映画にあるべきことは全部やってる楽しさの前にはいちいちツッコむのが虚しくなるよ！
（ただひとつだけツッコませてくれ！コアをディスティニーで止められたんなら、きっとディスティニーで動かせるよ！）
意外に楽しい作品です。

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チャーリーズエンジェル　フルスロットル (2003年/米)　Charlie's Angels: Full Throttle
　　製作　ドリュー・バリモア
　　監督　マックＧ
　　武術指導　ユエン・チョンヤン
　　出演　キャメロン・ディアス/ルーシー・リュー/デミ・ムーア/バーニー・マック/ルーク・ウィルソン

あいかわらず三人のエンジェルは大はしゃぎで暴走しまくり、だからといってこの三人のちょっとおばちゃん入ったキャストの暴走が見たくなければ見に来ること自体が間違いな映画であるわけだ。問題なし！
「フルスロットル」というサブタイトルに変えたドリュー・バリモアはほんとうに賢いと思う。
なんでかドリューは貫録がつくほどにかわいいし、ルーシーは個人的にもタイプだし（笑）、近頃じゃ他の映画ではバケモノじみてきたキャメロン・ディアスもこの映画ならこっちも覚悟決まってるからちょうどいい！
モトクロスライダーの有名選手がカメオ出演していたり、「ＣＳＩ」のパロディがあったりと日本でのマイナーネタにほくそ笑んだり、もう二度と見ることはあるまいと思っていたデミ･ムーアやＭ･Ｃ･ハマーに萎えてみたりとツボおされまくり。
他にもこの映画、プロレスラーに扮したドリューのメイクがディビッド・ボウイだったり、体操選手時代のルーシーのコーチが本物のコマネチのトレーナーだったりと、色々しょうもないところに凝ってるので逐一チェックするというくだらない楽しみ方も出来る。
ただ、頭パーになりそうな幸福感にちょっと水を差されるのは、前作と違ってストーリーらしきものがちょっとあるせいだとみた。

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バトル・ロワイアルII　鎮魂歌〈レクイエム〉 (2003/日)　Battle Royale II
　　製作　片岡公生/河瀬光
　　監督　深作欣二/深作健太
　　脚本　深作健太/木田紀生
　　出演　藤原竜也/前田亜季/前田愛/忍成修吾/竹内力/加藤夏希

僕らが観る映画というものの多くはとりあえず物語なわけで、だから映画はなにかについて物語る。
物語るからにはそのなにかについてとりあえず語り手なりの解釈があるわけで。
しかしながらリアルタイムななにかを扱う物語は難しい。
なにかについてまだ普遍的な解釈とおぼしきものがない段階でそれを物語るということについて、映画という媒体はそれほど器用ではない。
そんなわけで前作「バトルロワイアル」も正直言ってどう捉えていいのかわかんない怪作ではあった。
だけれども、それでも百戦錬磨の巨匠・深作欣二はプロの仕事でねじ伏せた。
ダメダメだって言う人は多かったけど僕はけっこう好き。居心地の悪さを感じるところたくさんあるんですけどいいところもいっぱいあったからな。
ただ続編をつくるっていう話はそりゃどうかな？と思ったよ。

前作のラストで秋也と典子はあれは反体制ゲリラになったわけで。
それっていうのは今の御時世ではおおむねテロリストのことなわけで。
もちろんだからこその続編、堂々とリアルタイムのなにかについて物語るつもり満々の映画なわけで。
でもそうなると作品としての映画の完成度は前作ほどにも期待できないのはもうほぼ確実なわけでね。
けどやっぱり巨匠・深作がどこまでやってくれるのかは期待した。したんだけども御存じのとおりクランクイン直後に逝去されてもはや勝負は決まったかんじもあった。
健太じゃさすがに荷が重い。

改定された新ルールはなんだか意図不明だ（篭城した反乱分子を掃討したいなら空爆だろう、それはニュースでやってただろう？）
そもそも劇中で説明される世界情勢の在り方がマンガ的すぎて、とてもリアルタイムの現実を投影できるような土俵ではないんではないかいな？
そんななか、秋也は案の定状況のジレンマを一身に背負って動けないキャラと化し、クラスのみんなはノープランで動き回ってはいつの間にか数を減らす犬死に状態、ワイルドセブンはちゃんとキャラが立っているのに脇役以下の扱いだし、一方で怒濤の怪演をする竹内力兄貴とソニー千葉ってもうメチャクチャ（笑）
そんでも前半戦はまぁいいんじゃないか？
訳もわからず戦場に叩き込まれる中学生という前作引き継ぎのプロットはより意地悪に強化されたシチュエーションによりパワーアップ。
アクション演出はスピード感があってテンポよく、エンターテインメント度は上がっている。
いつか誰かがやらなければいけなかった「シャッター４５度開角」もオマハビーチマルパクリ状態で再現、あとに一歩も引けなくなった現場の熱気、健太監督のヤケクソ気味なエネルギーを感じる。
しかし今風のエンターテインメント度が上がれば上がるほど、映画はそのテーマらしきものから離れていく。
そして後半戦、映画の焦点がそのテーマである「リアルタイムななにか」に方向転換していくと物語は急激に失速し停滞する。

この映画のテーマはあからさまにアメリカの対テロ戦争批判だ。リアルタイムななにかとは真っ正直にそれだ。
いまだ答えらしきものはこの世のどこにも用意されていないのだ。物語が口ごもるのも仕方ないといえば仕方ない。
しかしそのあと、映画はとんでもなく勘違いした方向に突進する！
映画のラスト、多くの犠牲を出しながらも秋也達は島を脱出し逃げ延びる。
その先はアフガニスタン！…ってバカタレ！それはアルカイダってことじゃねぇかよ！

前作「バトル・ロワイアル」は日本社会における世代間闘争についての映画だった。
各レベルで断絶して様々な軋轢のバリエーションを抱えた青少年たちが、殺しあいを強要されて初めて関係性を持つに至る。
だがまさにそれをこそ恐れていた大人達は、子供達に復讐されるまえに抹殺しようとする。
現代社会の様々な事象をクラスの生徒たちひとりひとりに当てはめては俯瞰していくという、テーマとプロットが見事に融合した構成で見せる前作は、そのアイデアのソリッドでタイトな優秀さでもって他のすべての欠点をカバーできていた（もっともそれは原作のアイデアであって映画のオリジナリティが「すべての欠点をカバーできていた」わけではないがね）

では続編「バトル・ロワイアルII　鎮魂歌」ではどうか？
前作のテーマ「世代間闘争」から「ユニラテラリズム対テロリズム」へとテーマをシフトさせているが、これは強引どころのはなしではない。
対テロ戦争については、戦場で殺しあっている当事者たちの立場と我々日本人の立場は全然別物である。
日本の中学生をアフガニスタンのテロリストに重ねてみせるなど、勘違いにもほどがある。
なんだか「単独覇権主義にはテロで反撃せよ！」と言っている映画に見える。
映画の登場人物は中学生かそこらの年令だから中学生レベルの勘違いをしているのだ…とかいう話ではないはずだ。
だからといって深作健太監督が本気で勘違いしているわけもないだろう。
ある意味確信犯的にやったのはわかる。
だけど気分で語れるほどリアルタイムは甘くないのである。

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地獄甲子園／ラーメンバカ一代 (2002/日)
　　監督　山口雄大
　　脚本　桐山勲/山口雄大
　　原作　漫☆画太郎
　　出演　坂口拓/伊藤淳史/谷門進士/榊英雄/飯塚俊太郎/西尾季隆/土平ドンペイ

なんかこう低予算のダメダメなところでわざと失笑を誘うような、そういうノリの映画なんだろうかと思っていたんだけど、そんなこと考えてる場合じゃない低予算ぶりで、それでも漫☆画太郎の強烈な世界観・ギャグを作りきってやろうという狂った意気込みさえ感じられる快作でした。
あまりにナンセンスなギャグの連続という、たぶん一番難しい笑いの世界をギリギリのところで構築できたのはいかにも！と思えながら実は結構ヒネリ技だったりするキャスティングの妙が支えている部分も大きいなぁと思った。
外道高校はもうただのゾンビ軍団だし、小西博之＞X-GUN西尾＞ラーメン小僧という番長三段変化はマジ笑ったし、土平ドンペイ、飯塚俊太郎、三城晃子などの濃いキャラの配置も絶妙で、そんななか蛭子能収が比較的マトモな芝居をしているのが逆にそこはかとなく可笑しいという副作用まで。
あと、監督の山口雄大は北村龍平の舎弟なので唐突にアクションが本格的だったりして坂口拓as野球十兵衛がなかなかフツーにかっこいい（笑）
へったくそな歌も聴かされるけどね。

…いや、ロケ地のひとつが自分の実家の近所の高校やったいうんが結構大きいだけかも知れん。
まぁダメなんだろうなと思いながら見ると意外に爆笑できるよ。

あ、短編（8分…）の「ラーメンバカ一代」のほうがキレがあって笑えるから。
まぁでも原作漫画のインパクトに比べたら、そりゃねぇ…

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ＨＥＲＯ／英雄 (2002/中国・香港)　ＨＥＲＯ
　　監督　チャン・イーモウ
　　脚本　リー・フェン/ワン・ビン/チャン・イーモウ
　　撮影　クリストファー・ドイル
　　音楽　タン・ドゥン
　　出演　ジェット・リー/トニー・レオン/マギー・チャン/チェン・ダオミン/チャン・ツィイー/ドニー・イェン

「紅いコーリャン」や「初恋のきた道」のチャン・イーモウ監督が武侠アクション大作？
チャン・イーモウといえば紅三部作とか骨太なドラマを撮るイメージだけど、僕は「あの子を探して」とか「至福の時」とかのらしくない作品のほうが好き（笑）
ともあれデジタルエフェクトまで使って大作アクションを撮るなんて、らしくなさすぎて（笑）一体どういうことになるのか不安いっぱいだったんですけど。
観てみると「なるほどね！」って思える出来栄えでした。やっぱり器用なんだよね、何でもこなす。
僕はけっこう好きだったな。

しかしながら一般に期待される「武侠アクション」とか「感動」とか「張芸謀らしさ」とか、全部微妙にハズしてるよな。
世界展開を視野に入れたときの大作感みたいなものを「グリーン・デスティニー」みたいにワイヤーアクション全開に行かずに、得意の「様式美」に持ち込んだのは正解だと思う。
だけど同時にアクションを期待した客には物足りなさを感じさせるとも思う。
ジェット・リーvsドニー・イェンの対決はスゴイけど、正直、僕だってもっともっと観ていたかった。
美しいビジュアルに基づいた美しいアクション、スタイリッシュな色彩の様式美は素晴らしいんだけど、チャン・イーモウはアクション自体が生み出す興奮じゃなく、アクションを華麗な舞踊として見せることを目指していて、それがゆえ食い足り無さを感じるのも事実。
同じ話を視点を変えて語っていくストーリーは羅生門スタイル（ていうかまんま羅生門）で、華麗な演出に見入っていると話がこんがらがってしまいがちかもしれない。
印象に残りやすい残剣と飛雪、如月の三角関係に気を取られていても、物語のテーマはそこにはなかったりするし。
演出はリアリティよりもビジュアル指向であってとても演劇的、寓話的で、いつものチャン・イーモウらしい細やかな人物描写はやや薄いかもしれない。
あのコン・リーの胸に迫るリアルな激情を期待すると肩透かしを喰らうかもしれない。

だけども「一度アクション映画を作りたかった」と言うチャン・イーモウがこだわったのは「型」と「様式」で魅せるアジアの伝統なんだなって思った。
ワイヤーアクション特有の重力を無視して飛び上がるある種のウソ臭さを、「内面の戦い」とか「語りの上での誇張」だとして許容させるっていうのは何だか変なこだわりだなぁって思っていたけど、それはこの作品のスタイルを読み解くカギなのかも知れないなって思った。
戦いは舞踏となり、情動は色彩で表現され、キャラクターは物語のテーマの前に抽象化される。これは演劇の、とりわけアジアの古典劇のスタイルだ。
ラストの無名のとった行動ではっきりと示される物語のテーマは、現代にも通じる普遍的なテーマでありながら、西洋の文化にはあまりみられない東洋独特の賢者の思想だ。
世界マーケットを視野に入れてのエンターテインメントであることも満たしつつ、アジア特有で王道でもあるテイストをきっちり提示しているあたり、やはりチャン・イーモウ、只者ではない。
次回作「十面埋伏」にも期待。

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ターミネーター３ (2003/米)　Terminator 3: Rise Of The Machiness
　　監督　ジョナサン・モストウ
　　脚本　ジョン・ブランケート/マイケル・フェリス
　　原案　ジョン・ブランケート/マイケル・フェリス/テディ・サラフィアン
　　出演　アーノルド・シュワルツェネッガー/ニック・スタール/クレア・デーンズ/クリスタナ・ローケン

かのジェイムズ・キャメロンのアイデア一発低予算アクションムービー（大ヒット）の元ネタはドラえもんだったと言う話か！びっくりしたぜ！
戦略コンピュータ"スカイネット"の反乱による人類滅亡の日「ジャッジメントデイ」を回避して１０年。
ティーンエイジにして人生最大の目標を達成してしまったジョン・コナーは燃え尽き症候群！すっかり腑抜けてホームレスと化していた！（なぜか鼻の穴も広がっていた！）
そんなジョンの前にまたしても現れる"シュワ"型ターミネーター・・・
それは未来の嫁さん（つまりシズカちゃん）が「そんなこっちゃどうする！」とジョンに活を入れるために送り込んだ新たな T-850だった！
未来は変わっていなかったのだ！（なんでよ？！）

ジェームズ・キャメロンがけっして描こうとしなかった未来の状況に焦点を当て、タイムループを閉じようとするアイデアは悪くない。
ＳＦ映画としては秀作のプロットだと思う。これがターミネーター・シリーズじゃなければね。

ターミネーター・シリーズのファンが期待したものとは違うんじゃないか？
シリーズのキーになるイベント「人間とマシーンの全面戦争」を何故、キャメロンは注意深く避け、描こうとしなかったのか？
それはひとえに「そこはあんま考えてなかったから」なんじゃないんかと思うのだが・・・

とにかくさ、ターミネーターの基本プロットである「未来から送り込まれる無敵の殺人マシーン」てのは、派手に銃を撃ち合うアクション映画にいかにして高揚感とリアリティを同居させるか？という一点のみを見据えたものだった。これはそうに違いないのである。
８０年代。アクション映画は銃撃戦のエスカレーションによって発展していった。
しかし拳銃がマシンガンに持ち変えられ、敵味方が撃ちあう弾の数が増えれば増えるほど、その高揚感とともに致命的な疑問も浮かび上がってきた。
あれだけ撃ちあってなんで弾が当たらないんだよ！！
もちろん理由は明快だ。敵味方ともに主役級のヤツに弾が当たればそこで物語は終わりだからだ。
しかし、映画のお約束を良しとせず、痒いところに手の届くこだわりを持っていた若き日のキャメロンは、「あれだけ撃てば弾は当たる」というところにこだわったうえで、それを「いくら弾が当たっても死なない敵」の恐怖に昇華させた。
それが「ターミネーター」の原点である。時間ＳＦであることは実は理由付けに過ぎない。
発案者たるキャメロンがもっともそのことを自覚していたわけであるから、続編である「Ｔ２」においても（基底の設定となる未来の状況が若干説明されたにせよ）ストーリーの基本が未来から来た無敵の殺人マシーンから必死に逃げるだけの単純な逃亡劇であることに変わりはなかったわけである。

ところが今回は少々複雑だ。
やってきた T-850シュワは新型ターミネーターT-Xは倒せないと言い切り、回避したと思った人類滅亡の日は避けられないと言う（先延ばしされただけ？えぇ？聞いてねぇよ！話違うじゃねぇかよ！と思ったのはジョン・コナーだけじゃない！）
物語のゴールは謎に包まれ、シリーズならではのお約束アリ、設定ネタアリ。
キャメロンの前二作をリスペクトしながら撮ったジョナサン・モストウだが力量のある監督だけにさすがに旨く、面白い。
特筆すべきは「ターミネーターってきっとスッゲェ重いハズ」という視点にたって撮られたT-850対T-Xの大破壊アクション。
デジタルパワー全開で目を見張る過激なシーンが展開する。

しかしながらやはりターミネーター・シリーズの最終章と思って観れば、違和感は否めないどころか大アリだ。
何故我々はこんなしょぼくれたジョン・コナーのしょぼくれたおはなしを観なければいけないのか？
あぁしかしこの三作目が気に入らなければ、いっそ観た記憶を消し去ってしまっても「Ｔ２」でおはなしはしっかり完結しているというのが、最初から三部作とかいう企画と違って便利ではある。

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トゥームレイダー２ (2003/米・独・日・英・オランダ)　Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life
　　監督製作　ローレンス・ゴードン/ロイド・レビン
　　監督　ヤン・デ・ボン
　　脚本　ディーン・ジョーガリス
　　特撮　スティーブン・べッグ
　　出演　アンジェリーナ・ジョリー/ジェラード・バトラー/クリス・バリー/ノア・テイラー/サイアラン・ハインズ

またやっちまったよ、ヤン・デ・ボン！
アンタの悪いところはリアリズムへのこだわりと、派手であればいいという開き直りのバランス感覚を欠いてることなの！
ここらへんがカメラマン上がりの悪いトコ出ちゃってるんだなぁ。
絵（ビジュアル）としてはとてもいいんだけど、逆に絵以外への配慮がいつもいい加減。
現実の出来事をビジュアルとして拡大して見せる「ツイスター」や「スピード」は良かったけど今回は題材が合わないよね。
ファンタスティックな世界設定が舞台になる秘境冒険アクションである「トゥームレイダー」だと「なんか違うかなぁ？」というシーンが多い。

オープニングの月の神殿はこの手の冒険ムービーの真骨頂ってかんじでかなりイイ。
でもメインビジュアルにもなってたララ・クロフトのシルバーのボディスーツ＆謎のハンドガンがやたら思わせぶりなだけに、ただのウェットスーツ＆水中銃（水中発射銃　H&K P11、まさか実銃だったとはという驚き！）だったとわかったときの腰砕け具合ったら。
その後、ウェールズ、西安、上海、香港と駆け巡り、おう！と思えるアクションも展開するのだが、ゲーム原作ならではの「伝奇入ったファンタジー」の要素は忘れ去られててパッとせず。
アクロバティックなアクションをこなし、最新のハイテク通信機器を使い、そして恋！とララのキャラ描写は熱心なのだがリアルに寄りすぎて飛躍がない。
対する悪党、ハイテクバイオ企業のボス（シアラン・ハインズ）もキャラ造型がリアル過ぎで「こんな人物がギリシャ神話のアイテムを本気で手に入れようとしているのか！キチガイ？(笑）」てなふうに見えちゃう。
最後は人類起源の地である（！）ケニアの禁断の山に至り、ようやく「秘境」に到着！モンスターもやっと登場するけどもう遅いよ！
おまけに「トゥームレイダー」ならではの見せ場であるはずの「秘境」のセットがいかにも「セットです」ってかんじでセコイ（先に行くほどセットがショボくなる映画って何だよ！／笑）
ヘリで到達できるっていうのもワケ判らん。危険覚悟で踏み入ったララたちの立場は？
極め付けはラストでついに登場する「パンドラの箱」
なんだこれ？まるで「オカンのアクセ入れ」みたいなしょぼいシロモノだぜ！（しかも開けもしない／笑）

前作「トゥームレイダー」の良かったところは原作ゲームの雰囲気を巧くつかんだことに尽きる。
それはアンジェリーナ・ジョリーがまさにハマリ役だったことが大きいのだが、忘れてならないのは映画のなかにゲームの世界観を再現しようという配慮が行き届いていたこと。
原作ゲームは、ララ・クロフトという魅力的な（ある意味あまりにもベタな）キャラクターを据えることで「インディ・ジョーンズ」や「007」といったアクションアドベンチャー映画の世界観をうまくゲームに取り入れられたわけで、そのゲームから出発した映画が「リアル」になっては先祖返りをおこしてしまう。
こうして映画「トゥームレイダー２」はインディや007の出来の悪い亜流のように見えてしまうわけだ。
ヤン・デ・ボンは「ララ・クロフトというキャラクターを掘り下げ、リアルに撮った」というが、「英国貴族の令嬢であり、世界を股にかけるトレジャーハンター（しかも美女�）」なんて現実（リアル）にいると思うか！
ジョリ姐はすごく頑張っているのにこれじゃあララである意味はあんまりないな（おかげでラジー賞またもらったよ、アリガトよ／怒）
トゥームレイダーなのに「トゥーム」が単なるアクションの舞台に成り果ててはいかんだろう。
一作目の程よいゲーム感覚が忘れ去られた凡作。

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バリスティック (2002/米・独)　Ballistic: Ecks vs. Sever
　　製作　カオス/クリス・リー/エリー・サマハ
　　監督　カオス
　　脚本　アラン・Ｂ・マッケルロイ
　　出演　アントニオ・バンデラス/ルーシー・リュー/グレッグ・ヘンリー/レイ・パーク/タリサ・ソト

原題の「エクス対シーバー」って何だっけ？と思ったら主役ふたりの名前だったよ。
そのくらい何にも記憶に残ってない映画です。以上。

…いやいや。
けどもストーリーを完全に忘れちまってたので調べました。
一個師団をたった一人で壊滅させるほどの伝説的な殺し屋シーバーがDIA長官ガントのひとり息子を誘拐。
引退した元FBIエージェント・エクスは強引に復帰させられ、シーバーを追う。
しかし事件の裏には、ベルリンの生物兵器工場から盗まれたナノマシン暗殺兵器「ソフトキル」を巡る陰謀が…
そんなかんじ？まぁストーリーはねぇどうでもいいよ（なげやり）
プロットは穴だらけだし、たいして目新しくも面白くもない。

見どころはルーシー・リューだけ。
冒頭の誘拐シーンでは夜の住宅街でいきなり自動車を爆破し、トラックで突入して車列を足止めすると、黒のロングコートでユラリと現れてはDIAエージェント達を次々なぎ倒す。
バンクーバー図書館で大量の武装したDIA隊員に包囲されての市外戦では、終始無表情でP90、M4A1、果てはM60を撃ちまくって包囲網を壊滅状態に。
フィリピンの武術"カリ"を駆使する棒術アクションはクールかつスタイリッシュ！
ラストでは"ダース･モール"ことレイ･バークと一騎打ち（ただし演出がしょっぱいのであんまり盛り上がらず）
とにかくルーシー・リューだけがいい。本気です。
撮影のために８ヶ月間、武術、武器のトレーニングを積んだそうな。
最強の殺し屋を演じるために根性入ったルーシーさん、銃を撃つときまったく目をつぶりません！（ダーティ･ハリーには見習ってもらいたいものだ）
劇中の多くのシーンを彼女自身がこなし、ラストのコンテナのシーンではとうとう怪我をしてしまい、３日入院。
本気です。
ルーシーさん以外は冴えないところばっかりだけど、ルーシーさんはホント魅力的。たぶんそれはプロ根性。
「チャリ･エン」の印象が強すぎて覚えてる人は少ないかもしれないけど「ペイバック」のときの女殺し屋のような貫禄がある｡
もうホント、ルーシー・リューだけだから。

あとはね。そうそう、ナノマシン暗殺兵器「ソフトキル」ですけどデタラメ過ぎ。唖然としました。
あれはカエルちゃんです。

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S.W.A.T. (2003/米)　S.W.A.T.
　　監督　クラーク・ジョンソン
　　脚本　デビッド・エイヤー/デビッド・マッケンナ
　　原案　ロン・ミタ/ジム・マクレイン/ロバート・ハマー
　　出演　サミュエル・Ｌ・ジャクソン/コリン・ファレル/ミシェル・ロドリゲス/ＬＬ・クール・Ｊ/ブライアン・バン・ホルト

「S.W.A.T.」っていうから往年の米テレビシリーズ「特別狙撃隊ＳＷＡＴ」と関係あるのかと思ったけどあんまり関係なかった。
でも劇中でメンバーがテレビ番組のテーマ曲をハナウタ合唱するシーンはあった。
いちおうテレビ番組のタイトルを踏襲しての映画化らしい。
もっともS.W.A.T.は実在の組織なので設定にテレビシリーズのならではのものがあるわけではないものな。
隊員の名前がテレビ版と同じだそうだがそんなことまで覚えてなかった。
さてその隊員ですが、とにかく濃い口の俳優で固めている。
なにか必要以上にド大層な大物イメージが独り歩きしているサミュエル・Ｌ・ジャクソンを隊長に、今が旬の眉毛怪人コリン・ファレル、目下ハリウッド最強の女優ミッシェル・ロドリゲス、あとＬＬ・クール・Ｊ。とにかく濃い！
だけど各々の持ち味は極めて控えめ。こんなメンバーだからなにかストーリーが怪しい方向に転がっていったりするのを期待したが本作はいわゆるアクションムービーの範疇に収まる映画である。
見どころはどっちかというと登場する銃器関係。
2002年からLAPD S.W.A.T.が採用しているキンバーM1911オートは映画初登場（ていうかガバメントだろ、それ）
ノースハリウッドの教訓から再評価されているコルトのM4、お馴染みのMP5A4、ベネリなどなど。
そうだから渋めのガンアクションが見れるのかと思いきや、警察ヘリがアンチマテリアルライフルで撃墜！されるあたりから後半戦はどんどん荒唐無稽に。
この映画で敵になるのは麻薬王アレックスがテレビニュースを通じて呼びかけたストリートギャング達なのだから、そんな重武装持ってるんって変じゃないか？
というわけで無法地帯と化したＬ.Ａ.で孤立無援の S.W.A.T.が…って「リオ・ブラボー」みたいになっていきます。
まぁそういうノリが軽めのところはテレビ版っぽいといえば確かに。

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リーグオブレジェンド　時空を超えた戦い (2003/米・独・チェコ・英)　The League of Extraordinary Gentlemen
　　監督　スティーブン・ノリントン
　　脚本　ジェームズ・デイル・ロビンソン
　　原作　アラン・ムーア/ケヴィン・オニール
　　出演　ショーン・コネリー/スチュアート・タウンゼンド/ペータ・ウィルソン/ショーン・ウエスト/トニー・カラン/ジェイソン・フレミング/ナセールディン・シャー

原作は「The League of Extraordinary Gentlemen（非凡なる紳士同盟）」というコミック。
19世紀末大英帝国を舞台に、当時の小説中の架空のヒーロー達が実在したという前提の元に、その活躍を描く。
怪奇＆冒険小説の古典的作品に登場する誰でも知っている有名キャラクターが一同に結集！　リーグ（同盟）を結成して怪事件に立ち向かうというプロットは、オールスター戦的な王道のノリだけど、「誰でも知っている」といいながらもちょっとひねっていて、あまりにも定番なキャラクターはあえて避けてある。
ドラキュラ伯爵でなくミナ・ハーカーである、フランケンシュタインの怪物でなくジキル博士とハイド氏である。
あまりにもメジャーなお決まりのキャラは避けて、新たにイメージを膨らませる余地のある手垢のついてないキャラをチョイスしているところが粋である。
それがこうして映画になってみるとなかなか斬新で期待させる設定だと思う。
だけどもここに登場するキャラクター達がそれ相応の魅力を発揮できたかというと、これはちょいと疑問なのである。

今どき「ジキル博士とハイド氏」や「透明人間」に思い入れを持ってるヤツがどのくらいいるのか？
アラン・クォーターメインとかドリアン・グレイなんか若いヤツ（日本人は特に）は知らんだろう？
とかいう問題ではない。（まぁそれもあるが）
残念ながらちょいと演出が単調なのでいまいち盛り上がらないのだ。
シナリオの構成があんまり巧くないのもある。
比較的多めの登場人物それぞれの見せ場をバランスよくさばけてないのも問題、見せ場はちゃんとあるのに均一に配置してしまってメリハリが無いのが勿体ない。

ともあれ、パーツとしてはワクワクする名シーンが大量に盛り込まれている。
既に一線を退いたクォーターメインが大立ち回りの末、逃げた刺客を長距離射撃で仕留める冒頭のシーンでは、このキャラがどういう人物であるかをショーン･コネリーの貫録が語りきっていてさすがだなと思う。
悲しいかなその他キャラにはこうした風格があまり感じられないんだけど、その後いろいろあったらしく吸血鬼化したミナ・ハーカーが敵兵士の血を啜るところとか、二重人格の設定のせいで思いがけず他よりキャラが立ってしまった（笑）ジキル博士の葛藤とか、やっぱイイよ。
また、19世紀に登場する超科学メカ群の活躍は、そういうのが好きな人（オレか）にはたまらない。
最初の掴みに登場する戦車（菱形戦車のMark4にそっくり）はもちろん、機関銃や軍用飛行船、火炎放射器携行の装甲兵士などなど。
なかなかに見どころは盛りだくさん。

しかしだ、個人的にイチオシなのはネモ船長。もうネモ船長で決まり！である。
原作「海底二万リーグ」に忠実に好戦的なインド系に設定されたネモ船長は、ターバン巻いたマハラジャスタイルも勇ましく、カンフーもどきの立ち回りを見せる。
そしてもちろんネモ船長といえばノーチラス号！この映画のノーチラス号はものすごくかっこいい！
長大で幅の狭いフォルムゆえに"大海の剣"と称されるノーチラスが海上を突き進む様はまさに海を切り裂く刃のよう！
外観は真っ白な船体にヒンドゥーの神々をかたどった銀の装飾がつき、セイルはちゃんとシヴァ･リンガの形！ゴージャス＆デコラティブ！
おまけに有り得ないほどデカイ！ヴェニスの運河になんか絶対に入れない！（笑）
ともかくネモがスゲー！ノーチラスは弾道ミサイルまで搭載してるし、石より硬いネモービル（六輪自動車）もあるし、忠実で統率された部隊を率いてるし、ネモさえいればあとのメンバー必要ない！とはいわないが、ネモがいなければヴェニスの壊滅を防ぐことはおろか、そもそもファントムを追って行く手立ても無いんだからな～。
設定が強力すぎてストーリーの本筋にほとんど絡まないのが御愛嬌だ（笑）
残念ながら興行成績が奮わなかったので続編の企画はお流れになったようだが（シリーズの映画化権をすべて抑えたＳ･コネリーの立場は？）むしろネモ船長のスピンオフシリーズとか作れ！

マジにノーチラス号のデザインはここ数年でも一、二を争うグッドデザインメカなので、それだけでも観るべきだ！

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キル・ビル Vol.1 (2003/米・日)　Kill Bill: Vol. 1
　　製作　ローレンス・ベンダー
　　監督・脚本　クエンティン・タランティーノ
　　原案　Ｑ / Ｕ
　　出演　ユマ・サーマン/ルーシー・リュー/サニー千葉/栗山千明/ゴードン・リュー/國村隼/北村一輝/麿赤児/前田愛/大葉健二

実のところ多くの人は劇場で戸惑ったんじゃないかとおもうんだけど、どうかな。面白いのか、これ？って。
パロディっていうのともオマージュていうのとも違う、タランティーノ自身が心酔するいわゆるＢ級映画からの引用の数々で構成されているこの映画。
もちろんそれは一貫してタランティーノの手法であったわけだけれども、今度ばかりは自分の好きな映画達の場面をなりふり構わず片端から詰め込んでみた結果、まるで中学生の撮った自主映画みたいになった。
元ネタの荒っぽいテイストそのままに持ち込まれてなんだか悪ふざけしてるみたいな多くの場面は、やっぱり悪ふざけにしか見えないかもしれない。
これまでのタラ映画のように元ネタからの引用をお洒落格好良くアレンジしてあるわけでもない。
かといってこの映画のスタンスは、Ｂ級映画の貧相ぶりやバカノリを嘲笑って楽しむというのでもない。
キルビルの本質は相当に映画を見込んだひと＝映画オタクくらいでないとわからないものであり、さすがに誰しもがそのまま受け入れられるようなものではないわけで。
そういう意味では、なんかちょっと持ち上げ過ぎなんじゃないか？と思うところもあり。いや世間的に。

タランティーノというひとは一度映画を壊している。
それまでの決まりきった映画の文法を解体して再構成するということをやってのけ、それがその後の映画史を大きく変えた。
それはもちろん、タランティーノただひとりによる転換ではなく、ブロックバスター映画のハイコンセプト主義が行き詰まり、多くの映画作家たちが斬新で野心的なスタイルを世に送りだしたことによるわけだけども、その口火を切ったのは「パルプ・フィクション」のヒットだったと言っていいだろう。
だけど、タラの編み出した手法は「コロンブスの卵」的なある種のわかりやすさを伴っていたため、それはさんざんコピーされ、世間にすっかり広まった。
そしてたぶん自分ではすっかり飽きてしまった。

そもそも、映画の文法の再構成-表層的には時制の入れ替え等々のテクニック的な部分-はタラにとっては本質ではなかった
（時制の入れ替えなどは、そもそもタラ映画が「気に入った映画の要素を組み合わせる」というサンプリング的手法で構成されていることがまず先にあって、「それがよりカッコよくなるんだったらそもそもバラバラに集めてきた各要素が時系列に並んでいる必要はない」…という順序で発想されているんだと思う）
むしろその本質たるＢムービーへのリスペクトが真に世間的に理解され、認められたのかどうかはかなり怪しい。
だって多くのひとにとって、タラのリスペクトする類いのＢムービーなんてものはすっかり忘れ去られているか、そもそも観たことも無かったに違いないのだから。
要するに、パルプとかで見せてきたタラの持ち味の「映画の定型をぶっ壊して再構成する」という表面的な手法を評価しながらも、多くの人は同じ映画にこめられた「オタク的な映画への想い」「日の当たらない過去の名作（オレベスト）への愛」…ていうか「燃え」だな…を理解したわけではなかったのだ。

だから開き直って自分が好きな元ネタたちを、洗練された演出に置き換えて現代風にアレンジすることもなく、もう引用そのまま、ナマのままでぶちまけてみたようなもの。
まるでコラージュのような映画である。
だからって映画の底流に流れる本質（Ｂ級映画にこそ燃えるモノがあったのだ！という主張）は、その他のタラ映画となんら変わらないわけ。

まあ正直挑発なんだろうね。
おめえら片腕カンフーとかカジメイコとかソニー千葉とか見てねえのかよ！わかってねえな！っていうね。
タラいわく「スパゲティ・ウェスタン、香港のカンフー映画、日本のサムライ映画、ヤクザ映画に影響された自分の中にあるものを吐きだした」と語るように、いままでの鬱憤を晴らすかのように、目一杯詰め込まれたオモチャ箱をぶちまけたような快作である。
ああでもね、宣伝は最悪だった。鳴り物入り過ぎ。
キルイズラブって何？
だいたいそんなみんなに見せるような映画か？

あとね、これはあんまり聞かない意見だけど、僕はもしかしてユマはミスキャストじゃねえのか？と思った。
手足長過ぎ、顔にも品があり過ぎて復讐に狂った女な感じには見えなくて違和感。
何をやってても「演じてる感じ」が強くて作品のコント感に拍車をかけていた気がするけどどうかな？
そこらへんが「恨み節」流れても恨みな感じはあんまりなくて、オフビートコメディの主人公みたいだったけどそういうキャラでいいの？
この物語のキャラクターに合ってるとは思えなかった。まじめに言えばね。
まぁはじめにユマ有りきの企画だからそれはそれでいいんかも知れないけど。
栗山千明はキャラ造型がブチ切れてて得をしたね。
華奢な彼女はちょいと鉄球（ゴーゴーボール/笑）に振り回され気味だったけど、もっともっと暴れても良かった。
あと忘れてならないのはNHKフランス語講座のジュリー・ドレフュスが演じたソフィー。
人が死ぬまでボコられてる横でケータイで喋ってるって、こんな嫌な女見たことないぞ！
そしてこればっかり言ってる気がするけどルーシー・リューはよい。
キルビルVol.1中最大の腰砕けポイントであるヘタな日本語もルーシーのはぎりぎりセーフ。
逆にちょっとカッコ良かったかもね。
オーレン石井は完全にブライドを喰っちゃったね。
アニメも最高！個人的な好みもあるけど、実のところキルビルVol.1でいちばんカッコよかったのは僕の中ではアニメパートだったりする。
だけどもあんなに強力にキャラ立ちしたオーレンの最期がカッパハゲってどういうことさ！

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マトリックス　レヴォリューションズ (2003/米)　The Matrix Revolutions
　　製作　ジョエル・シルバー/グラント・ヒル
　　監督　アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー
　　脚本　アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー
　　特撮　ジョン・ゲイタ
　　出演　キアヌ・リーブス/ローレンス・フィッシュバーン/キャリー・アン・モス/ヒューゴ・ウィービング/ジェイダ・ピンケット

あんたらやっぱり何にも考えてなかったな！
もしかしたらスゴイことになるのかと（ちょっとだけ）期待してた完結編「マトリックスレヴォリューションズ（以下レヴォ）」はおおむね正調ハリウッドアクション大作になってました（悪い意味でね）
やたらと謎ばかり積み重ねたまま次回につないだ「マトリックスリローデッド（以下リロ）」より、話が完結してる分だけなんとなく満足感はある気がするけどちょっと待て。
大規模でド派手な戦いに決着がついてなんとなく大団円？
だけど「リロ」で無駄に思わせぶりだったフリの数々はどうなった？
回収できないんだったら伏線張るな！ということなら「リロ」のほうがダメ映画のようだけど、変な推測やら期待を持たせて盛り上がれるだけ「レヴォ」よりマシかもしれないぞ（映画として壊れてるけど）

「リロ」が張り巡らせた謎の数々には曖昧ながらも一応の答えが用意されている。
でもそれらは物語の本筋とは特に関係がなくてすっかり枝葉のエピソードになってしまってた。
特にトレインマンとインド人親子、メロヴィンジアンとパーセフォニーなんかは完全にストーリーから遊離してしまっている。
スミスの野望は世界征服だし、ツインズはあれで死んだらしく出てこねぇし、セラフはただの傍役だし、トリニティもモーフィアスもオラクルの駒に過ぎない。
「リロ」でみんながスッゴイ深読みした、ネオが現実世界でセンチネルを倒した件、物理接続無しにマトリックスに残れた件にいたっては説明がない！
（まぁモバイル接続になったってことだよね。
　で「センチネルを倒せ」っていうネオの思念がコマンドになってメインフレームに届いたから機能停止した？
　まぁザックリ言って「超能力を身につけた」ってことだよ/笑）
いずれにしろ「リロ」で思わせぶりだった謎の数々は物語の本筋にはまったく絡んでこないんだ。

ＯＫ、結局リロとレヴォは前後編のひとつのストーリーなのだから分けてどうこういうのもおかしいんかもしれない。
じゃあまとめてどういう話だったのよといえばフタを開けてみればこれが実に平凡なストーリーじゃないか。

２０世紀の終わりの人間･マシーン戦争で負けた人間はマシーンの電力供給用に仮想世界の夢を見ながら飼われるようになった。
でもマシーンの与えた仮想世界は完璧すぎて失敗、アーキテクトはわざと不完全な仮想世界・マトリックスを作った。
しかし不完全なゆえ、マトリックスは最初から致命的な欠陥を抱え、アノマリー（突然変異）を生み出す。
アノマリーは周囲に影響を与え、これを放置するとマトリックスは重大なダメージを受けかねない。覚醒したアノマリーの集団、ザイオンのことだ。
そこで預言者オラクルは、マシーンに反乱を企てる人間達に「救世主の予言」を信じさせてザ･ワン＝救世主を抽出。
オラクルに誘導されて救世主がソースに行き、人類を救う選択をすると救世主はソースに特異コードを撒布して不安定になったマトリックスはリロードされる。
で、ザイオンは滅ぼされるが、マシーンはわざと人間の男９人、女１５人を覚醒させ新たなザイオンを用意してサイクルは始めに戻る。
なんのことはない、「リロ」でアーキテクトが全部喋ったとおり。
ただアーキテクトの筋書きが狂ったのは、オラクルのせい。
ネオは６サイクル目の救世主（セラフが５番目、ハーマン評議員も何番目だかの救世主、たぶん）だが、オラクルはちょっとネオのプログラムをいじってみる。それがトリニティへの「愛」
おけげでネオはいままでのよりバージョンアップした救世主になり、いままでとは違うサイクルが生まれてくる。
ネオに接触したスミスは自我に目覚めてウイルス化、マトリックスをコピーで埋め尽くし、メインフレームの乗っ取りも目論む。
ネオは今までのサイクルと違う選択をし、リロードはせず、マシーンシティへ乗り込んでザイオン攻撃を中止させるべくマシーンの親玉･デウスエクスマキナと交渉。
スミスの件もあってマシーンは交渉に乗り、ネオはスミスと決闘へ。
オラクルを乗っ取って未来を見、勝ちを確信していたスミスだが、ネオの目論みは負けてスミスと同化することだった。
かくてスミスはワクチンプログラムを注入され消滅、ザイオンは救われ、マシーンと人間は協定を結び、共存の道へ。
おおむね全てはオラクルの筋書き通り…みたいな話か。
（あれ？マシーン側のレゾン･デートルがないよ/笑）

最初の「マトリックス」の設定からシミュレートしていけば、まぁそういう話にゃなるわな。
でもこの程度なら誰にでも思いつけるレベルの話じゃねぇかよ！
どうもウォシャウスキー兄弟は最初の「マトリックス」で構築した世界設定にえらく思い入れがあったみたいで、「リロ」と「レヴォ」でやりたかったのはその世界をさらに緻密に描写してくことだったようだ。
つまりコンピュータネットワークシステムのあれこれを擬人化して現実に重ねるというアイデアが気に入ったんだね（なんだそれ？「逆トロン？」いつの映画だよ！）
でもそれはただの設定萌えだ。

だから「リロ」「レヴォ」の物語にテーマは無い。
立ち向かった敵は強大すぎたのでネゴってみましたという話。しかも実はぜんぶ出来レースでしたという話。
まぁリアルといえばリアル。デストピアＳＦなら及第点か。
だけど何度も言うけど「マトリックス」は「体制なんかクソ喰らえ！」という意気込みの勝利を描いた映画だったから素晴らしいんだ。
現実では負け続けのオレ達が、愛と信念とカンフーで敵に勝つ！からいいんだ。
しょせん映画は夢物語だけど、ヤツラと戦い続ける勇気をくれる…というかその気にさせてくれるからこそ「マトリックス」には心を揺さぶられたんじゃないか？
別にＳＦ設定が秀逸だったからではないと思うぞ。
極端に言えば「マトリックス」は真実味のあるカンフー映画にするためにＳＦである必要があっただけだ！
案外、冷静に考えると穴だらけというか、屁理屈というか、バカＳＦの「マトリックス」。
一歩間違えばギャグになるところだった無茶苦茶なシチュエーションのボロを隠すのがＳＦ仕立ての「マトリックス」の巧妙さ（ここを失敗してたら本当のバカ映画だった）だったけど、それが物語のテーマではなかったはずだ。

それを凡庸なアプローチでシミュレートするから全く逆の話になるんだよ！「体制には勝てない」って知ってるよ！当たり前じゃん！
ていうかそこをいやほど理解してた野郎どもだったからこそ「マトリックス」のあの絶妙な仕掛けを構築できたんじゃないの？
金を儲けて小賢しくなったか。
せめてＳＦに行くならもっと巧妙にやってよ。なんでこんな安直なＳＦになっちゃうんだ？バカ

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アンダーワールド (2003/米・独・ハンガリー・英)　Underworld
　　監督　レン・ワイズマン
　　脚本　ダニー・マクブライド
　　原案　レン・ワイズマン/ケヴィン・グレイヴォー/ダニー・マクブライド
　　出演　ケイト・ベッキンセイル/スコット・スピードマン/シェーン・ブローリー/マイケル・シーン/ビル・ナイ

1000年以上の長きにわたる血みどろの抗争を続けてきたヴァンパイア（吸血鬼族）とライカン（人狼族）
数百年前、種族の首領ルシアンが倒されて劣勢となったライカンは、ヴァンパイアの処刑人達による残党狩りで数を減らし、抗争は終わりつつあるかに見えた。
しかしヴァンパイアの女処刑人セリーンは、ライカン達がひとりの人間を追いかけていることに気付く。
ライカン達はこの男を捉えて何をしようとしているのか？
不審に思うセリーン。だが種族の勝利を目前にしたヴァンパイアの権力者たちは耳を貸そうとしない。
セリーンは単身、真相に迫ろうとし、ヴァンパイアとライカンの間の隠された重大な秘密を知ることになる・・・

なんてストーリーは資料をあたるまですっかり忘れていたのさ。
実際ストーリーは忘れるどころか映画を観ている最中だってほとんど意識されないくらいのものだった。そうこの映画、ストーリーが弱いんである。

そもそもヴァンパイアとライカンという怪物同士の戦いの話であるこの映画は、両者の長い長い抗争の歴史を背景にした「闇対闇の戦い」を描くゴシックホラー風味が魅力。
人間の世界との接点がほとんどないストーリーも本来は、人知れずというよりむしろ「人類などとは関係なく存在する闇の抗争」というハードでダークな世界観を強調するものなのだ（だからこそタイトルがUNDERWORLD）
ただ人間側（すなわち日常）からの視点がすっとばされて、いきなり怪物同士の争いとなると、映画としては少々入り込みにくい設定ではある。
くわえて原典の吸血鬼や狼男の概念からおおきくアレンジした設定を持つからこそ、本来は古典的なモンスターを「どうアレンジしたか？」というのがひとつの見どころにもなりうる。
むしろ両種族の設定と歴史についての説明が無ければ、観客は物語に興味を持てず、置いていかれてしまいかねないのだが、しかしそういう説明はすっとばされる。

基本的にヴァンパイアの女処刑人セリーンのキャラ立ちありき、シリーズ化意識もバリバリの映画なので、やはり主人公を活かす為の背景説明は重要なのだ。
しかし、昨今の幾多のコミック原作つきムービーがそうであるように、キャラのバックボーンの説明に時間を費やす余り「話がなかなか始まらない」という欠点があり、ここをうまくやらないと映画のテンポが死んでしまう。
この映画にとって苦しかったのは、似たようなキャラとの差別化が難しかったところなのだろう。
細かい設定の違いはあれど正直「ブレイド」とどう違うのか？　という話になれば大雑把に言って何も違わない。むしろもともと二番煎じなのは承知の上。
見込み違いだったのは、多くの既出のメタヴァンパイアもの（実は今後もいっぱい控えている）との差分を逐一描写していくよりも、そもそも似たキャラであるのは了解としたうえで、了解済みの話を繰り返すよりも説明は端折ってセリーンの魅力で押しきろうとしてしくじったところなんだろう。
方法論自体は間違ってない。特にセリーンの女性キャラならではの魅力は、黒ブーツにロングコートで佇むポスタービジュアルのカッコよさだけでも充分証明されているだろう。
ただ処理の仕方がうまくなさすぎた。

かくして観客を作品世界に乗せそこなったまま、映画は走り始める。
あとはもう何処かで見たような場面をもう一回見ているかんじでいっぱいだ（笑）
なんだか状況がよく掴めてない状態で観ているから登場人物の行動が説得力を欠く。
語り口のテンポよさもかえって災いする。
女だてらに非情に徹して生きてきたセリーンの無口でストイックなスタイルさえ裏目に出て、同族を裏切るに至るまでの葛藤も薄っぺらく見えてしまう。
わりと意外に思えるケイト・ベッキンセールの起用もハード＆ダークに徹するあまり華が無い。セリーンのコスチュームすらただの一度も変わりもしない。
カッコ良くも可愛くもないんだったら別に女キャラでなくていいよ。
題材はいいと思うのでもっと緻密にやってほしかった。

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ファインディング・ニモ (2003/米)　Finding Nemo
　　製作総指揮　ジョン・ラセッター
　　監督　アンドリュー・スタントン
　　脚本　アンドリュー・スタントン/ボブ・ピーターソン/デビッド・レイノルズ
　　出演　アルバート・ブルックス/エレン・デジェネレス/アレクサンダー・グールド/ウィレム・デフォー

「トイ・ストーリー」からディズニーと提携してフルＣＧ劇場映画を制作してきたピクサーの今度の作品の主役は魚。
っていうか登場キャラのほとんどは魚。よりによって魚だよ！

とにかく手がける作品のひとつひとつに、商業的な成功以外に常になにかしらの挑戦を自ら課してくるピクサーですが、今回の挑戦はまず「魚」キャラ。
まぁでも魚キャラがなんで挑戦なのかって思うかもしれない。
魚だったらどうだってのさ？というところ、たしかにピンと来にくいものはある。
しかも劇中ではさらりと自然にキャラが描かれているので、どのくらい大変なのかが実にわかりにくい。はっきり言って損な挑戦だ（笑）
しかしおよそ人間とはかけ離れたシェイプを持つ魚をキャラクターに据えてドラマをつくるなんてとんでもないことだ。
「モンスターズ・インク」でひとつ目のキャラクターが何の遜色もなくあらゆる表情を演じてみせた時にもひっくり返ったが、今度はもう手も足もない魚だし。
にもかかわらず、主人公のニモ、マーリンどころかすべてのキャラクターがなんと生き生きとした表現力でもって物語を綴っていくことか。

でもってその魚たちが冒険を繰り広げる「海」の環境表現が第二の挑戦。
ピクサーの恐れ入るところは、ＣＧＩによる表現力を挑戦的に切り開いていくという、物語あるいは商業映画としての目的とも違う目標を掲げ続けていること。
フルＣＧアニメーションのＮｏ．１としての自負なんだかどうかわからないけど、業界をリードしていく制作会社がつねにチャレンジングであることは幸せなことだ。
それが仇になり、これまでピクサーが描いてきた世界と比べて本作には、ビジュアル的な広がりが感じられないという評価もあるわけだが、それは「海」というデジタルが不得意とする舞台のひとつを、ファンタジーとしての奔放さをあえて落としてでも描写するという目標があったのだと思う。
たしかに今回の舞台は、これまでの作品と比較するとリアルに寄り過ぎ、空想物語ならではの飛躍、遊び心に欠ける。
そのぶん環境表現のリアリティに力が注がれてハイレベルな海中描写が成されているが、そこに感銘を受けるかどうかは個人個人の海に対する思い入れの違いもあるしね。
僕は、デジタルであればこそ達成できる海中の色鮮やかな風景、生命の躍動にあふれた活き活きした描写、たゆたう水に身を任せたときの浮遊感は素晴らしいと思ったし、これはデジタルで緻密にシミュレートしなければ達成できない感覚だと思う。本当に。実写ではこの感じは出ないよ。

もっとも物語のテーマ自体がかなり高年齢ターゲットにアピールするものにシフトしちゃったので、これまでの作品の感覚を期待して観にくる観客にちょいと違和感があったかもしれん。
しかしここのところの本家ディズニーのアニメ映画の不振を横目にやたら制約の多いネタを題材にしつつ、さらには主役キャラが身体障害っていうネタを（よりによってディズニーブランドで）しれ～っと作ってしまうあたり、ピクサーの製作環境の余裕ぶりを嫌ほど思わせて、括りでいえばいちおう同じデジタル業界に身を置く僕はずいぶんメゲるのだ。

さてピクサーはディズニーとの提携を解消したり、また提携するという噂があったり、どうすんでしょか？という昨今ですが、次回作は満を持してというか、いよいよというか、実はデジタルにとって一番ハードルの高い人間キャラに挑む「Mr.インクレディブル」
これがまたカッコいいんだわ～

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2004 10/01

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