実務の友  問題解決学

問題解決

1 仕事は問題解決
 仕事=問題解決である。仕事は,問題解決の過程だとも言われる。
 仕事では,その持ち場で生起するあらゆる課題,問題を適切に解決していくことが求められる。そのためには,常日頃から積極的な問題意識を持ち,実務知識を活かして,状況に応じた有効適切な問題解決が図られるのでなければならない。
 裁判官や書記官の日常の法律実務でも,常にこうした問題解決との取り組みである。ただ,「法規に従う」という明確な解決基準に規制される度合いが強い点で,一般実務との違いはある。

2 問題解決の手順
 有効適切な問題解決のためには,合理的な思考法がなければならない。問題解決を有効適切に導く,それ相応の効果的な考え方,方法が必要である。
 その合理的な思考法とは何か。
 「何が問題なのか」,「なぜ問題なのか」,「どうしたらよいのか」,
このWHATとWHY,HOWの3つを考えることである。この3つの課題を導きの糸として,順次適切な解を下していくのである。

 一般的な問題解決の手順は,
(1) 何が問題なのか(WHAT)
         を考えることによって 「問題の明確化」を図り,
(2) なぜ問題なのか(WHY)
         を考えることによって 「原因の究明」を図り,
(3) どうしたらよいのか(HOW)
         を考えることによって 「解決策の策定」を図る
のである。

 どのような問題解決も,基本的に,「問題の明確化」→「原因の究明」→「解決策の策定」の3段階をたどる。

 これをもう少し仕事に即して言えば,
 問題解決の手順は,
 「問題状況の把握」→「問題の明確化」→「原因の検討」→「解決策の決定」→「実行」→「結果の反省,評価,フィードバック」
というプロセスになる。

3 問題解決の要件
 こうしたプロセスを経て的確に問題解決を図っていくためには,第1に,主体的な問題解決力がなければならない。主体的というのは,他に強制されたり,盲従したりすることなく,自分の意思に基づいて的確に判断・行動できることである。
 主体がしっかりしていてこそ,知識を活用し,合理的な思考法により有効適切な問題解決が図られる。問題解決の中心は,主体である。

    知識  →   思考法  → 有効適切な問題解決
        ↑
        主体

 第2に重要なことは,問題解決には「情報」が核になるということである。問題解決の手順の中では,情報の収集,分析,活用,必要部署への伝達等が組織の動脈として有効に機能するのでなければならない。情報が不足したり,間違っていたのでは,有効適切な問題解決は得られない。
  情報の収集・活用のためには,状況や物事に対する分析力,先見力,洞察力,対人能力での気遣いや交渉力等の総合的な能力を磨かなければならない。

 第3に大事なことは,組織に勤める各人の仕事は一人では成り立っていないということである。協働の認識が大切になる。組織に勤める以上,対外的には,その組織の代表として,組織として行動しているとの認識を持たなければならない。
 実務の基本は「正確な処理とチェック」が第1に求められるが,同時に,組織内では,組織としての仕事をするのであるから,必ず人と人を結ぶ「情報の伝達と確認のし合い」がなければならない。状況をよく読み,必要な情報を得ること,情報を必要な部署に伝達し,組織として連携して対応できることが求められる。仕事では「ホウ・レン・ソウ」が大事だと言われる所以である。

 最後に心得るべきことは,「期限」である。紛争解決主体の能力が高く,情報を密に活用し,人との協働関係を得て結果を出し得たとしても,それだけでは,有効な問題解決とは言えない。状況やニーズに応じた「適時」適切な解決が求められる。仕事は,時間軸の中でスケジューリングし,「計画」して行わなければならない。

4 問題解決のプロセス
  以上のような仕事=問題解決を的確にこなすためには,問題解決をシステム的に考える必要がある。システム的とは,問題解決の手順自体を,その目的,役割,理想等との関連で考えることである。
  これには,第1に,目的指向である。何のためにその仕事をするのか,目的から手段,方法を考えることが大切になる。
  第2に,全体指向である。全体との関わりの中で個々人,あるいは部分の役割機能を考えることである。組織の1歯車としてでなく,常に全体との関係で自らの役割のやり方,やりがいを求めていく主体的な姿勢が大事である。
  さらに第3に,理想指向である。あるべき姿,理想から,現実的解決を導き出そうとする理想志向がなければならない。
  この3点の指向を欠けば,仕事自体の進歩はないし,また,仕事を通した自己自身の成長もない。

  以上の要点を図解して示せば,別図のとおりである。法律実務においても,生活の種々のシーンで,この図式の手順での思考様式に沿った行動が行われているのを見ることができる。
  昔は,仕事は,「指示を受け,適切な処理(Plan−Do−See)を経て,報告で終わる」と言われたが,仕事の起点が指示待ちであってはならない。
  常に自己啓発意欲を持ち,自発的な問題意識をもって仕事に取り組む。そうすれば,仕事の内容やレベルは違ってくるし,人の見る目も違ってくるだろう。これらの経験と評価の厚みが自己能力の拡充にも繋がっていく。
  自分で,自分の仕事の夢を設計することが大事である。夢は小さくてもいい。そして,行動を起こすときは,前述の思考経路をじっくり点検し,失敗や過誤を避け,思考法に磨きをかけることである。

(以上2002.9.28記)



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