実務の友   JTリンク集

  ○ リンクは,張るか貼るか,はるか,な悩み   2008年07月05日〜
 リンクを「はる」は,「張る」と書くか「貼る」と書くか。
       結論は,「張る」。


 この問題がネット上で話題にされたのは,2002年(平成14年)以前からのことで,インターネットの幕開けとともにホームページ作りが盛んになってからのころだったと思う。
  ネット上に繋がるようにするのだから当然「張る」とする考えと,URL(ネット・アドレス)をコピー&ペースト(貼り付け)して作成するから「貼る」が適当という考えの対立であった。
  ところが,その後5年以上経つが,この疑問がネット上解消された気配がない。依然として,「張る」か「貼る」かの疑問が寄せられ,はるかな悩みは続いている。

 2006年2月6日付けの経済産業省「電子商取引等に関する準則」を読み解く:(番外編) リンクを「張る」か「貼る」か には,「リンクを「張る」? それとも「貼る」?」との疑問から,調べた結果が掲載され,その「疑問に答えてくれるページ」が紹介されている。
 そのページというのは,中央大学商学部准教授飯田朝子氏の「ことばの素朴な疑問を素朴に考えるぺーじ」中の「似ていて違う?ことば特集」である。
 「Q リンクを「貼る」?それとも「張る」?」
  −この疑問に対し,答えは,
    『「リンクをはる」の「はる」は、漢字「張る」が適当』
とされている。

 その理由は,
 動詞の意味を見ると、「貼る」は物を(広げ)他の物に糊や鋲などで付着させることで、「張る」は、一点から伸びたものの先が広がる、糸・紐・綱・針金などを一直線に伸ばし、渡したりすることです。(中略)
 Webとはもともと英語で「クモの巣」の意味で、クモの巣のように世界に張り巡らされた情報網のことをインターネットのWorld Wide Webと言います。クモが巣を作るとき、いきなり網状の巣を貼り付けるのではなく、まずはある一点から別の一点に糸を渡し、それを繰り返しながら巣を編んでいきます。リンクもそのイメージで作られていると解釈すれば分かり易いと思います。
とあって,インターネットのWorld Wide Web(ワールド ワイド ウェブ、略名:WWW)システムとの関係から説き起こし,極めて説得的である。

 このページは,その掲載内容から2002年頃にネット上に公開されたと思うが,この解説辺りで,リンクの「はる」は「張る」と書くことで決着がついたように思う。
  ところが,今も,ネットで調べてみると,
      「リンクを張る」の検索結果は, 578,000件,
      「リンクを貼る」の検索件数は, 477,000件であり,
「張る」が多いように思うが,「リンクを張って」,「リンクが張られ」のような使用法もある。
  そこで,「リンク 張る」で検索すれば, 871,000件
      「リンク 貼る」で検索すれば, 3,320,000件
      「リンク はる」で検索すれば, 2,260,000件
がヒットする(グーグル調べ(2008.07.05現在))。
  リンクは「貼る」の使用法が圧倒的に多く,「張る」はその4分の1しかなく,「はる」も多いというのが実情のようである。
  なお,「はる」の表記は分かれていても,リンクが繋がらなくなることについては「リンクが剥がれる」などとは言わず,「リンクが切れる」という。「リンク切れ」などと使われることに異論はない。

 「張る」か「貼る」か。これを中央官庁等のホームページ(ウェブサイト)のリンクについて見ると,経済産業省は,「トップページに張る」,農林水産省は「リンクを張る」,国立国会図書館は「リンクを張られる」などの表現で「リンクを張る」ものとして扱っているが,「張る」を明確に採用しているのは,3庁くらいである。
  首相官邸,他の官庁(文部科学省,文化庁を含む。),裁判所では,「リンク設定」,「リンクを設定」,「リンクする」,「リンクを行う」などの表現をとっており,衆議院,参議院も「設定」を用い,「張る」の定着度は,胸を張るほどの勢いとはなっていない。
  なお,東京都の警視庁は,「リンクを張って」と表記している。

 それでも,国会議員の音声を厳密に文字化する表記を誇る国会会議録検索システムで調べてみると,衆議院,参議院の各種委員会の議事録で,「リンクを張る」,「リンクを張って」,「リンクが張られ」,「リンクが張って」などとあり,少なくとも16件の議事録がヒットする。「貼る」,「はる」で検索してもヒットがない。
  これを考えれば,国会会議録では,表記上「張る」が正しいとみて,これに統一されていることは間違いない。

 一方,裁判所の判例検索システムでみると,「リンクが貼られ」で検索した結果では,平成14年に東京高裁1件,東京地裁で1件がヒットし,「リンクを貼り」,「リンクを貼る」で検索した結果では,平成15年に広島地裁の裁判例1件と東京地裁の知的財産裁判例が4件あるが,その後はない。
  「リンクを張」,「リンクが張」で検索した結果では,平成14年から平成19年にかけて,いずれも東京地裁の知的財産裁判例で15件の裁判例がヒットする。これによれば,「リンクを張る」の表記が定着に向かいつつあるように思われる。
  前述の飯田朝子氏の「ことばの素朴な疑問を素朴に考えるぺーじ」が2002年(平成14年)ころ掲載されたとすれば,その頃から,リンクは「張る」ものとしての表記が徐々に浸透してきたのではないかと思われる。

 しかし,本日の新聞社関連のウェブサイトを見ると,朝日新聞(asahi.com)は「リンクを張る」,毎日新聞(毎日jp)は「リンクを貼る」,読売新聞(YOMIURI ONLINE)は「リンクする(リンクされる)」としていて(2008.07.05現在),三者(社)三様であり,マスコミの表記にも,未だブレがあることが分かる。

 扱うシステムの理屈や行為の意味関連から「張り」と書くのが適当なら,もう少し,「リンクを張る」表記が増えてもよさそうであるが,その気配はなさそうでもある。ネットの現状は,積極的に「リンクを張る」と書かず,「リンクを貼る」,「リンクする」等の表記の選択で悩み,躊躇しながらも,感覚的に「貼る」,「はる」と書く人の方が圧倒的に多いようである。
  リンクの表記1つで「切った張った」の議論をするほどのことでもないが,「張る」か「貼る」か,未だ明瞭にならず,むしろ「貼る」の方が増加傾向にあるのは,日本人の考え方や気質による面がありはしないかなどと思うと,興味深い。

10 これまで日本人が使用してきた言葉は,頑張る,気を張る,欲を張る,我を張る,見栄を張る,向こうを張る,相場を張る,値が張る,肩が張る,ピンと糸が張る・・等で,「張る」のは,内向きに力を込めて外向きに打って出る,又は,他者との関係性を意識して張り詰める感があるときに使う傾向があるようでもある。
  これでは,力が入りすぎているようで気恥ずかしくもあり,リンク程度のことで,他者との間で緊張感を持ちたくない。内向き,内輪の行為ですます作業的な「貼る」,又は,意味を感じ取られない仮名の「はる」,あるいは無機質的,機械的な「設定」の用語使用の方が無難とみる深層心理が働いているのかも知れない・・・などと思ってしまう。

11 その深層心理の真相までは分からないが,リンクは,クモの巣のように世界に張り巡らされた情報網(World Wide Web)への繋がりや情報交流を求めるものであり,リンクは外に向けてアンテナのように「張る」ものであって,レッテルのように「貼る」ものではない。URLをコピー&ペーストする,貼付け作業の向こうにある世界(World Wide Web)との繋がりを持とうとすることが,リンクを張ることだと思う。この点は確認しておきたい。
  「張る」が正しく「貼る」は間違いか,と問われれば,正しいか否かではなく,先の「ことば特集」の答えと同様,『「リンクをはる」の「はる」は、漢字「張る」が適当』という答えになる。





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