LSearcher  法律とコンピュータ

情報処理術と知的生産力

 以前,このホームページで,インターネット時代の「あ・か・さ・た・な」情報処理術について書いたことがあります。
 インターネット時代の情報処理術(あかさたな)
  「あ」は,集める「情報収集・入力(Input)」
  「か」は,変える「編集・加工(Edit)」
  「さ」は,探す「探知・検索(Search)」
  「た」は,貯める「保存・蓄積(Save)」
  「な」は,なくす「消去・整理(Delete)」
 この4つの術が,これからの仕事人の情報処理には重要だという話でした。

 では,法律実務に携わる者にとって,この「あ・か・さ・た・な」情報処理術は,どういう意味を持つのでしょうか。
 インターネット時代においては,この4つのうち,「集める」,「貯める」は,簡単にできるようになりました。
 このホームページ開設当初(2001年8月)には,「刑法」の条文を得たい人のためにと,条文を打ち込んで掲載したり,実務ソフト「法情報検索」(「Jの窓」に収録)を公開したこともあります。当時,外にも,そういうサイトがありました。これは,これから時代に求められるのは,ペーパー情報ではなく,デジタル情報だとの思いからでした。しかし,その作業に要する時間と負担は大きく,しかし,悲しいかな,利用される可能性は少ないものでしかありませんでした。

 それが,最近では,インターネットの公共的組織的運営サイトから,各種法令の条文情報が簡単に入手できるようになり,個人的な法文提供は無意味と化すことになりました。
 このホームページのWebリンク集(「法令・判例」)の中にもありますが,総務省・行政管理局運営の「法令データ提供システム」が充実してきており(平成13年4月1日以降),各種法令(憲法・法律・政令・勅令・府令・省令・規則)の条文内容を検索して,「正確な情報を」,「無料で」,「容易に」入手することが可能となっているのです。
   (参考)法令情報提供源「法令データ提供システム」とは何かを知る
 これ以外にも,有料のものを含めれば相当な数の提供があり,インターネットの世界が提供する情報庫は,急速に拡大して分量が増し,内容的にも豊富になりました。そして,その情報,データの入手は,極めて容易に,迅速にできるようになったのです。情報やデータの保存も,ハードディスクの記憶容量の急速な拡大と技術的な性能向上により,もはや何の不便も感じさせなくなりました。

 上記の情報処理術のうち,情報やデータを集めたり(収集),貯めたり(保存)することは,インターネットに接続可能なパソコンさえあれば,誰にでも簡単にできるようになったのです。
 この面では,パソコンの有無,操作力が,仕事の処理力と質を決定づけるような時代に突入してきたといえます。頭の良さ,記憶力がモノをいう時代というよりも,パソコンの利用の仕方,才覚がプラスされて,仕事人の能力と組織力の最大効果を見せる時代になっていくのです。

 折しも,新聞報道によれば,法務省は,民事訴訟の訴状や準備書面の交換など書面に限られている訴訟手続について,電子メールでも可能とするなどの方針を固め,裁判所に保存する文書類も,電子化する方向で検討しているということです。
 遠い話ではなく,法務省は,来年の通常国会に民事訴訟法改正案を提出する考えだというのです(2003年2月17日付け読売新聞)。民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱中間試案

 前記の「あ・か・さ・た・な」情報術のうち,電子情報の入手・収集,保存の仕方は,裁判実務,法情報の分野でも,現実世界を大きく変えていくことになります。
 裁判官,書記官,弁護士等,裁判実務に携わる法律実務家にとって,これからは,どういう時代になっていくのでしょうか。
 パソコンとインターネットにより,デジタル情報としての法令条文や判例等の入手は,極めて容易になり,その供給態勢も,公共的なサイトから,信頼性の高い豊富な良質の法情報が提供されるようになってきました。便利な時代になりました。しかし,大量の情報が「入手」される反面では,これを受動的に「受付」ざるを得ない態勢にもなり,逆に言えば,その分,電子情報が一方的に洪水のごとく押し寄せられ,これをどう処理するかも,大きな問題になってくるのです。
 問題は,その次にあります。
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「集める」「貯める」の次は,「か・さ・な」の情報処理術です。
 つまり,「変える(編集・加工)」,「探す(探知・検索)」,「なくす(消去・整理)」情報処理術です。

 「入手」・「受付」で収集・蓄積された情報は,そのまま読み下し,一定期間保存しておく限りでは,あまり問題はありません。
 しかし,情報は,いうまでもなく,蓄えや保存自体に意味があるのではありません。これからの仕事はイコール「情報処理」であり,その情報は,組織目的や仕事の内容,処理方式や文書形式等に合わせて,見やすく,分かりやすく,また仕事の目的に役立つように,なにがしかの加工が加えられなければなりません。
 情報の内容を整理したり,表示形式を変えたり,関連情報を探し出したり,他の情報と関連付けたり,不要部分は削除したりと,情報は,「変える」,「探す」,「なくす」などの処理が加えられる,それによって初めて知的生産力を増し,創造性ある仕事に役立つものになるのです。

 情報とは,人間の判断や行動を決定するに必要にして役立つものをいいます。その意味で,「変える(編集・加工)」,「探す(探知・検索)」,「なくす(消去・整理)」,つまり「か・さ・な」の情報処理術は,「仕事=情報処理」にとって必要不可欠の事柄です。この情報処理術が不十分では,パソコンの情報庫と処理能力は直ぐパンクし,せっかく集め蓄えた情報も,何の役にも立たないことにもなってしまうのです。
 情報の入手・収集,保存がしやすくなればなるほど,その後の情報の編集,検索,整理を考えなければなりません。

 インターネット時代の情報処理術(あかさたな)
  「あ」は,集める「情報収集・入力(Input)」
  「か」は,変える「編集・加工(Edit)」
  「さ」は,探す「探知・検索(Search)」
  「た」は,貯める「保存・蓄積(Save)」
  「な」は,なくす「消去・整理(Delete)」
 この5つの術が,これからの仕事人の情報処理には重要だという話でした。

(以上2003.02.18/2003.02.23/2003.11.26記)



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