実務の友 実友・判例集
 
 最一小判昭和51.3.25 民集第30巻2号160頁(裁判所判例検索システム)
(判示事項)
 夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被つた場合において夫にも過失があるときと民法722条2項
(裁判要旨)
 夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被つた場合において、右衝突につき夫にも過失があるときは、特段の事情のない限り、右第三者の負担すべき損害賠償額を定めるにつき、夫の過失を民法722条2項にいう被害者の過失として掛酌することができる。
(参照法条) 民法722条2項
(判決理由抜粋)
 民法722条2項が不法行為による損害賠償の額を定めるにつき被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは、不法行為によつて発生した損害を加害者と 被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものであると考えられるから、右被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をな すとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。したがつて、夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者 が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被つた妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するにつ いては、右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とす る。このように解するときは、加害者が、いつたん被害者である妻に対して全損害を賠償した後、夫にその過失に応じた負担部分を求償するという求償関係をも一挙 に解決し、紛争を1回で処理することができるという合理性もある。
 これを本件についてみると、原判決は、被上告人B1は夫である被上告人B2の運転する自動車に同乗して岩手県盛岡市a町b丁目c番d号先の道路を進行中、上 告人Aの運転する上告人有限会社D所有の自動車に衝突され、傷害を被つたものであり、右交通事故における上告人Aと被上告人B2の過失の割合は、5対5である が、被上告人B1自身に過失はなく、同被上告人が被つた損害額を定めるについて、夫である被上告人B2の過失は斟酌すべきではないとするものである。  しかし、前記のとおり、夫の運転する自動車に同乗していた妻が第三者の運転する自動車に衝突されて、傷害を被つた場合に、その損害額を定めるにつき、特段の 事情のない限り、運転者である夫の過失を被害者側の過失として斟酌すべきであるから、原判決には、この点について法令の解釈適用を誤つた違法があり、右違法が 判決に影響を及ぼすことは、明らかである。したがつて、右の点についての論旨は理由があり、原判決中破上告人B1に関する上告人ら敗訴部分は破棄を免れず、前 記特段の事情の有無、同被上告人の損害額を定めるについての過失の割合等について、更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し戻すこととし、上 告人らの被上告人B2に対する上告は、理由がないから棄却することとする。





2013.2-

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