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 最二小判平成24.6.29 集民第241号1頁(裁判所判例検索システム)
(判決要旨)
 貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,Yとの間の債権譲渡基本契約に基づき,Aの顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,上記債権譲渡基本契約が,Yの国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金債権をYに移行し,その貸金業を廃止するために行われたもので,同契約にはAが顧客に対して負担する過払金返還債務をYが併存的に引き受ける旨の条項があったとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下では,Yは,AのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえない。

(1) 上記債権譲渡基本契約には,個別の債権譲渡によりAの契約上の地位がYに移転する旨又はAの負担する過払金返還債務が当然にYに承継される旨を定めた条項はない。
(2) Xは,上記債権譲渡に係る通知を受けてから上記の併存的債務引受けに係る条項が効力を失うまでの間に,Yに対し,弁済をしただけであって,上記条項に係る受益の意思表示とみる余地のある行為をしていない。

(参照法条) 民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
(判決理由抜粋)
 3 原審は,上記事実関係の下において,被上告人は,本件債権譲渡基本契約及 びこれに基づく本件譲渡により第1取引によって発生した過払金等返還債務を承継 するものではないと判断し,上告人の請求を第2取引のみによって発生した過払金 15万5000円及び民法704条前段所定の利息の支払を求める限度で認容し た。

 4 所論は,被上告人は,本件債権譲渡基本契約及びこれに基づく本件譲渡によ り,第1取引によって発生した過払金等返還債務を承継したものであり,これを否 定することは信義則に反するというものである。

 5 貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者 (以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者 の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるとい うべきであり,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲 受業者に当然に移転するものではなく,また,譲受業者が上記金銭消費貸借取引に 係る過払金返還債務を当然に承継するものでもない(最高裁平成22年(受)第1 238号,同年(オ)第1187号同23年3月22日第三小法廷判決・裁判集民 事236号225頁, 最高裁平成22年(受)第1405号同23年7月8日第二 小法廷判決・裁判集民事237号159頁等)。

 前記事実関係によれば,本件譲渡 は,Aから被上告人への債権譲渡について包括的に定めた本件債権譲渡基本契約に 基づくものであるところ,同基本契約には,契約上の地位の移転や過払金等返還債 務の当然承継を定める条項はないというのであるから,本件譲渡により,直ちに, 被上告人が,第1取引に係る契約上の地位の移転を受け,又は第1取引に係る過払 金等返還債務を承継したということはできない。

 また,前記事実関係によれば,本件債権譲渡基本契約中の本件債務引受条項は, 譲渡債権に係るAの顧客を第三者とする第三者のためにする契約の性質を有すると ころ,本件変更契約の締結時までに,上告人は,被上告人に対し,本件譲渡に係る 通知に従い弁済をした以外には,第1取引に係る約定残債権につき特段の行為をし ておらず,上記弁済をしたことをもって,本件債務引受条項に係る受益の意思表示 をしたものとみる余地はない。

 そうすると,本件債務引受条項は,上告人が受益の 意思表示をする前にその効力を失ったこととなり,被上告人が本件債務引受条項に 基づき上記過払金等返還債務を引き受けたということはできない。最高裁平成23 年(受)第516号同年9月30日第二小法廷判決・裁判集民事237号655頁 は,被上告人が,本件業務提携契約を前提としてその完全子会社の顧客に対し被上 告人との間で金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結することを勧誘するに当たっ て,顧客と上記完全子会社との間に生じた債権を全て承継し,債務を全て引き受け る旨の意思表示をしたものと解するのが合理的であり,顧客も上記の債権債務を被 上告人において全てそのまま承継し,又は引き受けることを前提に,上記勧誘に応 ずる旨の意思表示をしたものと解される場合につき判断したものであり,上告人の 意思を考慮することなくAと被上告人との間で本件譲渡がされたにすぎない本件と は,事案を異にすることが明らかである。

 以上によれば,被上告人は,本件債権譲渡基本契約及びこれに基づく本件譲渡に より,第1取引によって発生した過払金等返還債務を承継したとはいえない。
 また,前記事実関係によれば,被上告人において上記過払金等返還債務の承継を否定 することが信義則に反するともいえない。

 6 以上と同旨の原審の上記判断は,正当として是認することができる。論旨は 採用することができない。





2013.2-

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