実務の友 実友・判例集
 
 最一小判平成25.3.7(判例検索システム)
(判決要旨)
 銀行と顧客との間で固定金利と変動金利を交換してその差額を決済するという金利スワップ取引に係る契約を締結した際に,銀行に説明義務違反があったとはいえないとされた事例
(判決理由抜粋)
 3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,不法行為に基づ く損害賠償請求を一部認容した。

 上告人は,被上告人に対し,契約締結の是非の判断を左右する可能性のある,@ 中途解約時において必要とされるかもしれない清算金の具体的な算定方法,A先ス タート型とスポットスタート型の利害得失,B固定金利の水準が金利上昇のリスク をヘッジする効果の点から妥当な範囲にあることについて,説明しておらず,上告 人の説明は,極めて不十分なものであった。
本件契約締結の際,上告人が必要にし て十分な説明をしていたならば,本件取引における上記のリスクヘッジの可能性が 著しく低いものであったことなどから,被上告人が本件契約を締結しなかったこと は明らかである。
上告人の説明義務違反は重大であって被上告人に対する不法行為 を構成し,本件契約は契約締結に際しての信義則に違反するものとして無効であ る。

 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次 のとおりである。

 前記事実関係によれば,本件取引は,将来の金利変動の予測が当たるか否かのみ によって結果の有利不利が左右されるものであって,その基本的な構造ないし原理 自体は単純で,少なくとも企業経営者であれば,その理解は一般に困難なものでは なく,当該企業に対して契約締結のリスクを負わせることに何ら問題のないもので ある。

上告人は,被上告人に対し,本件取引の基本的な仕組みや,契約上設定され た変動金利及び固定金利について説明するとともに,変動金利が一定の利率を上回 らなければ,融資における金利の支払よりも多額の金利を支払うリスクがある旨を 説明したのであり,基本的に説明義務を尽くしたものということができる。

 原審は,上告人が上記3の@〜Bの事項について説明しなかったことを問題とす る。

しかしながら,本件提案書には,本件契約が上告人の承諾なしに中途解約をす ることができないものであることに加え,上告人の承諾を得て中途解約をする場合 には被上告人が清算金の支払義務を負う可能性があることが明示されていたのであ るから,上告人に,それ以上に,清算金の具体的な算定方法について説明すべき義 務があったとはいい難い。

また,上告人は,被上告人に対し,先スタート型とスポ ットスタート型の2種類の金利スワップ取引について,その内容を説明し,被上告 人は,自ら,当面変動金利の上昇はないと考えて,1年先スタート型の金利スワッ プ取引を選択したのであるから,上告人に,それ以上に,先スタート型とスポット スタート型の利害得失について説明すべき義務があったともいえない。

さらに,本 件取引は上記のような単純な仕組みのものであって,本件契約における固定金利の 水準が妥当な範囲にあるか否かというような事柄は,被上告人の自己責任に属すべ きものであり,上告人が被上告人に対してこれを説明すべき義務があったものとは いえない。


 そうすると,本件契約締結の際,上告人が,被上告人に対し,上記3の@〜Bの 事項について説明しなかったとしても,上告人に説明義務違反があったということ はできない。

 なお,以上に説示したところによれば,本件契約が無効となる余地もない。

5 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。

論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そし て,以上に説示したところによれば,被上告人の請求は理由がなく,これを棄却し た第1審判決は正当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。





2013.2-

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