(判決要旨)
1 パーティーを内容とするサービス契約に消費者契約法が適用された事例
2 民訴法248条を適用して,消費者契約法9条1号の「平均的な損害」を認定した事例
(参照条文:消費者契約法9条1項,民訴法248条)
(事実関係)
控訴人は,被控訴人(店)に対し,パーティーの予約をした。その際,控訴人は「実施日前日までは解約料不要。ただし,重複の予約申入れがあり,店が確認した後は,1人当たり5229円の営業保証料を支払う」との規約の説明を受けた。
その翌日,被控訴人から確認の電話が入り,控訴人は「実施する」旨回答したが,その翌日,解約の意思表示をした。そこで,被控訴人は,営業保証料として40人分の20万9160円の支払いを請求した。
(判決理由抜粋)
「1 本件予約は,飲食店を営む法人である被控訴人と個人である控訴人との間のパーティーを内容とするサービス契約であるところ,被控訴人は消費者契約法2条2項に規定する「事業者」,控訴人は同法2条1項に規定する「消費者」,本件予約は同法2条3項に規定する「消費者契約」に当たると解するのが相当である。ところで,本件予約は,平成13年4月8日にされたものであり,これを巡る紛争については,同月1日から施行されている消費者契約法(平成12年法律第61号)が適用される。
2 消費者契約法9条1号によれば,契約解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項であって,これらを合算した額が,当該条項において設定された解除の事由,時期等の区分に応じ,当該消費者契約法と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害を超えるものについては,当該超える部分は法律上無効であるとされている。
これを本件についてみるに,本件予約の解約に当たり営業保証料(予約の解除に伴う損害賠償の予定又は違約金)が定められているが,消費者契約法9条1号の法の趣旨に照らすと,前記営業保証料のうち,前記「平均的な損害」を超える部分は無効ということになり,被控訴人は控訴人に対し,「平均的な損害」の限度で請求することができるということになる。
3 そこで,問題となるのは,消費者契約法9条1項にいうところの「平均的な損害」の意義であるが,これについては,当該消費者契約の当事者たる個々の事業者に生じる損害の額について,契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定された平均値であり,解除の事由,時期の他,当該契約の特殊性,逸失利益・準備費用・利益率等損害の内容,契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らし,判断するのが相当である。
(略)
前記(1)アからも明らかなとおり,本件予約の解約は,開催日から2か月前の解約であり,開催予定日に他の客からの予約が入る可能性が高いこと,本件予約の解約により被控訴人は本件パーティーにかかる材料費,人件費等の支出をしなくて済んだことが認められる。
他方,前記(1)アないしウによれば,被控訴人は本件予約の解約がなければ営業利益を獲得することができたこと,本件パーティーの開催日は仏滅であり結婚式二次会などが行われにくい日であること,本件予約の解約は控訴人の自己都合であること,及び控訴人自身3万6000円程度の営業保証料の支出はやむを得ないと考えていること(弁論の全趣旨)が認められる。
以上の控訴人,被控訴人にそれぞれ有利な事情に,そもそも本件では証拠を検討するも,旅行業界における標準約款のようなものが見当たらず,本件予約と同種の消費者契約の解釈に伴い事業者に生ずべき平均的な損害額を算定する証拠資料に乏しいこと等を総合考慮すると,本件予約の解約に伴う「平均的な損害」を算定するに当たっては,民訴法248条の趣旨に従って,一人当たりの料金4500円の3割に予定人数の平均である35名を乗じた4万7250円(4500×0.3×35=4万7250円)と認めるのが相当であり,この判断を覆すに足りる証拠はない。」
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