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◇ 判例1 ◇
○ 最高裁大判昭和39.11.18民集18竄X号1868頁,判例解説民事篇昭39・429頁 (最高裁判例HP該当判例) 債務者が任意に支払った利息制限法所定の制限を超える利息・損害金は当然に残存元本に充当されるか。→ 積極
(注) 本判決は,最高裁が昭和37年6月13日言い渡した大法廷判決を2年半足らずの間に変更し,いわゆる元本充当説を採用したものである。裁判官14名中,多数意見が10名,反対意見が4名である。 本判決の理由として,次のように説示されている。 (判決理由抜粋) 「債務者が利息,損害金の弁済として支払つた制限超過部分は,強行法規である本法(注:利息制限法)1条,4条の各1項により無効とされ,その部分の債務は存在しないのであるから,その部分に対する支払は弁済の効力を生じない。従つて,債務者が利息,損害金と指定して支払つても,制限超過部分に対する指定は無意味であり,結局その部分に対する指定がないのと同一であるから,元本が残存するときは,民法491条の適用によりこれに充当されるものといわなければならない。 本法1条,4条の各2項は,債務者において超過部分を任意に支払つたときは,その返還を請求することができない旨規定しているが,それは,制限超過の利息,損害金を支払つた債務者に対し裁判所がその返還につき積極的に助力を与えないとした趣旨と解するを相当とする。 また,本法2条は,契約成立のさいに債務者が利息として本法の制限を超過する金額を前払しても,これを利息の支払として認めず,元本の支払に充てたものとみなしているのであるが,この趣旨からすれば,後日に至つて債務者が利息として本法の制限を超過する金額を支払つた場合にも,それを利息の支払として認めず,元本の支払に充当されるものと解するを相当とする。 更に,債務者が任意に支払つた制限超過部分は残存元本に充当されるものと解することは,経済的弱者の地位にある債務者の保護を主たる目的とする本法の立法趣旨に合致するものである。右の解釈のもとでは,元本債権の残存する債務者とその残存しない債務者の間に不均衡を生ずることを免れないとしても,それを理由として元本債権の残存する債務者の保護を放擲るような解釈をすることは,本法の立法精神に反するものといわなければならない。」 |
◇ 判例2 ◇
○ 最高裁3小判昭43.10.29民集22竄P0号2257頁,判例解説民事篇昭43下788頁 (最高裁判例HP該当判例) 法定の制限をこえる利息を支払った連帯債務者は他の連帯債務者に対して制限超過の利息相当金を求償することができるか。→ 消極
(判決理由抜粋) 「金銭消費貸借上の利息の約定が利息制限法所定の制限利率をこえるときは,その超過部分に関しては右約定は無効であるから,X・Yは連帯債務者としてAに対しては右超過部分の利息債務を負担せず,したがって,右超過部分に関してはYには負担部分たるべきものも存在しなかったものといわなければならない。してみれば,XがAに対して右制限を超える部分に相当する金員の求償を請求することは許されない筋合であって,これと同旨に出た原判決の判断は正当である。」 |
◇ 判例3 ◇
○ 最高裁大判昭和43.11.13民集22巻12号2526頁,判例解説民事篇昭43下841頁 (最高裁判例HP該当判例) 債務者が利息制限法所定の制限をこえる利息。損害金を任意に支払った場合における超過部分の充当による元本完済後の支払額の返還請求の許否 → 積極
本判決(多数意見12名)は,次のように判示する。 (判決理由抜粋) 「思うに,利息制限法1条,4条の各2項は,債務者が同法所定の利率をこえて利息・損害金を任意に支払ったときは,その超過部分の返還を請求することができない旨規定するが,この規定は,金銭を目的とする消費貸借について元本債権の存在することを当然の前提とするものである。けだし,元本債権の存在しないところに利息・損害金の発生の余地がなく,したがって,利息・損害金の超過支払ということもあり得ないからである。この故に,消費貸借上の元本債権が既に弁済によって消滅した場合には,もはや利息・損害金の超過支払ということはあり得ない。 したがって,債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し,その制限超過分を元本に充当すると,計算上元本が完済となったとき,その後に支払われた金額は,債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならないから,この場合には,右利息制限法の法条の適用はなく,民法の規定するところにより,不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」 |
◇ 判例4 ◇
○ 最高裁大判昭和44.11.25民集23巻11号2137頁,判例解説昭44下600頁 (最高裁判例HP該当判例) 債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を元本とともに任意に支払った場合と右制限に従った元利合計額をこえる支払額に対する不当利得返還請求権の許否 → 積極
昭和39年判決は,利息制限法の制限超過部分の利息・損害金について元本充当説を採用,同43年判決は,その超過部分の返還請求を認容したが,これらの事例は,いずれも利息・損害金を少しずつ支払った場合であった。 本判決は,元利合計額を一括支払った場合に上記判例理論が適用されるかが争点となったが,次のように判示し,積極説を採用した。 (判決理由抜粋) 「債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払ったときは,右制限をこえる部分は,民法491条により,残存元本に充当されるものと解すべきことは,当裁判所の判例とするところであり(昭和35年(オ)第1151号,同39年11月18日言渡大法廷判決,民集18竄X号1868頁参照),また,債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し,その制限超過分を元本に充当すると,計算上元本が完済となったとき,その後に支払われた金額は,債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならず,不当利得としてその返還を請求しうるものと解すべきことも当裁判所の判例の示すところである(昭和41年(オ)第1281号,同43年11月13日言渡大法廷判決,民集22竄P2号2565頁参照)。そして,この理は,債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を,元本とともに任意に支払った場合においても,異なるものとはいえないから,その支払にあたり,充当に関して特段の指定がされないかぎり,利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金はこれを元本に充当し,なお残額のある場合は,元本に対する支払金をもってこれに充当すべく,債務者の支払った金額のうちその余の部分は,計算上元利合計額が完済された後にされた支払として,債務者において,民法の規定するところにより,不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。けだし,そのように解しなければ,利息制限法所定の制限をこえる利息・損害金を順次弁済した債務者と,かかる利息・損害金を元本とともに弁済した債務者との間にいわれのない不均衡を生じ,利息制限法1条および4条の各2項の規定の解釈について,その統一を欠くにいたるからである。 ところで,本件において,原審の確定するところによれば,上告人は,被上告人らの先代から30万円を利息および弁済期後の遅延損害金とも月5分の約で借り受け,右貸付日から弁済期までの14か月22日間の月5分による利息・損害金を含め合計555,000円を任意に被上告人ら先代に支払ったというのであるから,他に特段の事情のないかぎり,元本30万円およびこれに対する右期間に相当する利息制限法所定の利率による利息・損害金をこえる部分について,上告人は被上告人らに対し,不当利息の返還を請求しうるものというべきである。」 |