実務の友   リース契約に関する最高裁判例集
最新更新日2005.03.07 - 2006.08.10
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索  引

 1 最高裁三小判昭和57.10.19 第36巻10号2130頁
 いわゆるファイナンス・リース契約においてリース業者が利用者の債務不履行を原因としてリース期間の途中でリース物件の返還を受けた場合と返還によつて取得した利益の清算の必要と,その場合の算定基準
 2 最高裁二小判平成07.04.14 第49巻4号1063頁
 いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約によりリース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があった場合における未払のリース料債権の性質
 3 最高裁二小判平成13.03.02 第55巻2号185頁
専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるカラオケ装置につきリース業者がリース契約を締結して引き渡す場合の注意義務
 4 最高裁三小判平成15.10.21 第57巻9号1213頁
いわゆるサブリース契約と借地借家法32条1項の適用の有無, 契約当事者が借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をした場合の請求の当否及び相当賃料額を判断するために考慮すべき事情
 5 最高裁二小判平成16.11.08 判例集登載現在不明
いわゆるサブリース契約と借地借家法32条1項の適用の有無, 契約当事者が借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をした場合の請求の当否及び相当賃料額を判断するために考慮すべき事情



 1 最高裁三小判昭和57.10.19 昭和55(オ)1061 リース料(第36巻10号2130頁)  (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 いわゆるファイナンス・リース契約において、リース業者がリース期間の途中でリース物件の返還を受けた場合には、その原因が利用者の債務不履行にあるときでも、リース業者は、特段の事情のない限り、右返還によつて取得した利益を清算する必要がある。
 いわゆるファイナンス・リース契約において、リース期間の途中でリース物件の返還を受けたリース業者が返還によつて取得した利益を清算すべき場合にその対象となるのは、リース物件が返還時において有した価値と本来のリース期間の満了時において有すべき残存価値との差額であつて、返還時からリース期間の満了時までの利用価値ではない。
(参照・法条)
   民法601条
(判決理由抜粋)
 「いわゆるフアイナンス・リース契約において、リース業者は、リース期間の途中で利用者からリース物件の返還を受けた場合には、その原因が利用者の債務不履行にあるときであつても、特段の事情のない限り、右返還によつて取得した利益を利用者に返戻し又はリース料債権の支払に充当するなどしてこれを清算する必要があると解するのが相当である。けだし、右リース契約においては、リース業者は、利用者の債務不履行を原因としてリース物件の返還を受けたときでも、リース期間全部についてのリース料債権を失うものではないから、右リース料債権の支払を受けるほかに、リース物件の途中返還による利益をも取得しうるものとすることは、リース契約が約定どおりの期間存続して満了した場合と比較して過大な利益を取得しうることになり、公平の原則に照らし妥当ではないからである。もつとも、右リース契約は、形式的には、リース業者が自己の所有する物件を利用者に利用させるという内容を有するものではあるが、これを実質的にみた場合には、リース業者が利用者に対して金融の便宜を供与するという性質を有することは否定できないから、右のような清算の必要を認めたからといって、リース業者に対して格別の不利益を与えるものではないというべきである。
 右のように、リース業者は、リース期間の途中で利用者の債務不履行を原因としてリース物件の返還を受けた場合には、これによつて取得した利益を清算する必要があるが、右の場合に清算の対象となるのは、リース物件が返還時において有した価値と本来のリース期間の満了時において有すべき残存価値との差額と解するのが相当であつて、返還時からリース期間の満了時までの利用価値と解すべきではなく、したがつて、清算金額を具体的に算定するにあたつては、返還時とリース期間の満了時とにおけるリース物件の交換価値を確定することが必要であり、返還時からリース期間の満了時までのリース料額又はリース物件がリース期間の途中で滅失・毀損した場合に利用者からリース業者に支払うことが約定されているいわゆる規定損失金額を基礎にしてこれを算定することは正当でない。なお、リース物件には、利用者の利用目的に適合するように特別の仕様が施されることが少なくないため、リース業者がその返還を受けても直ちにそれ自体として他に処分し又は新たにリース契約を締結することが必ずしも容易ではない場合がありうるが、そうであるからといつて、リース業者が返還にかかるリース物件を他に処分し又は新たにリース契約を締結して処分代金等を現実に取得しない限り、清算金額を具体的に算定することが不可能であるとはいえない。 」


 2 最高裁二小判平成07.04.14 平成3(オ)155 動産引渡等(第49巻4号1063頁)  (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
  いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約によりリース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があった場合、未払のリース料債権は、その全額が更生債権となる。
(参照・法条)
   民法601条,会社更生法102条,会社更生法103条,会社更生法208条7号
(判決理由抜粋)
 「いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があったときは、未払のリース料債権はその全額が更生債権となり、リース業者はこれを更生手続によらないで請求することはできないものと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。
  右の方式によるファイナンス・リース契約は、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース業者がリース物件の取得費その他の投下資本の全額を回収できるようにリース料が算定されているものであって、その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであるから、右リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではない。したがって、会社更生手続の開始決定の時点において、未払のリース料債権は、期限未到来のものも含めてその全額が会社更生法一〇二条にいう会社更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権に当たるというべきである。そして、同法一〇三条一項の規定は、双務契約の当事者間で相互にけん連関係に立つ双方の債務の履行がいずれも完了していない場合に関するものであって、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しをしたリース業者は、ユーザーに対してリース料の支払債務とけん連関係に立つ未履行債務を負担していないというべきであるから、右規定は適用されず、結局、未払のリース料債権が同法二〇八条七号に規定する共益債権であるということはできないし、他に右債権を共益債権とすべき事由もない。 」


 3 最高裁二小判平成13.03.02 平成12(受)222 著作権侵害差止等請求事件(第55巻2号185頁)  (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
  カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。
(参照・法条)
   著作権法22条,著作権法22条の2,著作権法第7章権利侵害,民法709条,民法719条
(判決理由抜粋)
 「 1 飲食店等の経営者が,音楽著作物である歌詞及び楽曲の上映機能を有するレーザーディスク用カラオケ装置又は音楽著作物である歌詞の上映及び楽曲の再生機能を有する通信カラオケ用カラオケ装置(以下「カラオケ装置」という。)を備え置き,客に歌唱を勧め,客の選択した曲目につきカラオケ装置により音楽著作物である歌詞及び楽曲を上映又は再生して,同楽曲を伴奏として客や従業員に歌唱させるなど,音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるためにカラオケ装置を使用し,もって店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益をあげることを意図しているときは,上記経営者は,当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り,客や従業員による歌唱,カラオケ装置による歌詞及び楽曲の上映又は再生につき演奏権ないし上映権侵害による不法行為責任を免れない(最高裁昭和59年(オ)第1204号同63年3月15日第三小法廷判決・民集42巻3号199頁参照)。
 2 【要旨】カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解するのが相当である。けだし,(1)カラオケ装置により上映又は演奏される音楽著作物の大部分が著作権の対象であることに鑑みれば,カラオケ装置は,当該音楽著作物の著作権者の許諾がない限り一般的にカラオケ装置利用店の経営者による前記1の著作権侵害を生じさせる蓋然性の高い装置ということができること,(2)著作権侵害は刑罰法規にも触れる犯罪行為であること(著作権法119条以下),(3)カラオケ装置のリース業者は,このように著作権侵害の蓋然性の高いカラオケ装置を賃貸に供することによって営業上の利益を得ているものであること,(4)一般にカラオケ装置利用店の経営者が著作物使用許諾契約を締結する率が必ずしも高くないことは公知の事実であって,カラオケ装置のリース業者としては,リース契約の相手方が著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことが確認できない限り,著作権侵害が行われる蓋然性を予見すべきものであること,(5)カラオケ装置のリース業者は,著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたか否かを容易に確認することができ,これによって著作権侵害回避のための措置を講ずることが可能であることを併せ考えれば,上記注意義務を肯定すべきだからである。 」


 4 最高裁二小判平成15.10.21 平成12(受)573、574 敷金請求本訴,賃料相当額確認請求反訴事件(第57巻9号1213頁)  (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間であらかじめ賃料額,その改定等についての協議を調え,その結果に基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても,借地借家法32条1項の規定が適用される。
 不動産賃貸業等を営む甲が,乙が建築した建物で転貸事業を行うため,乙との間であらかじめ賃料額,その改定等についての協議を調え,その結果に基づき,乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)を締結した後,借地借家法32条1項に基づいて賃料減額の請求をした場合において,その請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,同契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約等が付されるに至った事情,とりわけ約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係,甲の転貸事業における収支予測にかかわる事情,乙の敷金及び融資を受けた建築資金の返済の予定にかかわる事情等をも考慮すべきである。
(1,2につき補足意見がある。)
(参照・法条)
   借地借家法32条1項
(判決理由抜粋)
 「 (1) 前記確定事実によれば,本件契約における合意の内容は,第1審原告が第1審被告に対して本件賃貸部分を使用収益させ,第1審被告が第1審原告に対してその対価として賃料を支払うというものであり,本件契約は,建物の賃貸借契約であることが明らかであるから,【要旨1】本件契約には,借地借家法が適用され,同法32条の規定も適用されるものというべきである。
 本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが,借地借家法32条1項の規定は,強行法規であって,本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁,最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁参照),本件契約の当事者は,本件賃料自動増額特約が存するとしても,そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。
 なお,前記の事実関係によれば,本件契約は,不動産賃貸等を目的とする会社である第1審被告が,第1審原告の建築した建物で転貸事業を行うために締結したものであり,あらかじめ,第1審被告と第1審原告との間において賃貸期間,当初賃料及び賃料の改定等についての協議を調え,第1審原告が,その協議の結果を前提とした収支予測の下に,建築資金として第1審被告から約50億円の敷金の預託を受けるとともに,金融機関から約180億円の融資を受けて,第1審原告の所有する土地上に本件建物を建築することを内容とするものであり,いわゆるサブリース契約と称されるものの一つであると認められる。そして,本件契約は,第1審被告の転貸事業の一部を構成するものであり,本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は,第1審原告が第1審被告の転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって,本件契約における重要な要素であったということができる。これらの事情は,本件契約の当事者が,前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから,衡平の見地に照らし,借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に,重要な事情として十分に考慮されるべきである。
 以上により,第1審被告は,借地借家法32条1項の規定により,本件賃貸部分の賃料の減額を求めることができる。そして,上記のとおり,【要旨2】この減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,本件契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情,とりわけ,当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無,程度等),第1審被告の転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等),第1審原告の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきである。  (2) 以上によれば,本件契約への借地借家法32条1項の規定の適用を極めて制限的に解し,第1審原告の主位的請求の一部を認容し,第1審被告の反訴請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中第1審被告敗訴部分は破棄を免れない。 」


 5 最高裁二小判平成16.11.08 平成15(受)869 賃料減額確認等本訴請求,同反訴請求控訴,同附帯控訴事件 (未登載)  (最高裁判例HPから入手)
(参照・法条)
   借地借家法32条1項
(判決理由抜粋)
 「 (1) 前記の事実関係によれば,本件契約は,被上告人が上告人に対して本件各建物部分を賃貸し,上告人が被上告人に対してその対価として賃料を支払うというものであり,建物の賃貸借契約であることが明らかであるから,本件契約には借地借家法32条の規定が適用されるべきものである。
借地借家法32条1項の規定は,強行法規と解されるから,賃料自動増額特約によってその適用を排除することができないものである(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁,最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁,最高裁平成14年(受)第689号同15年6月12日第一小法廷判決・民集57巻6号595頁,最高裁平成12年(受)第573号,第574号同15年10月21日第三小法廷判決・民集57巻9号1213頁参照)。したがって,本件契約の当事者は,本件賃料自動増額条項が存することにより上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使を妨げられるものではないから(上記平成15年10月21日第三小法廷判決参照),上告人は,上記規定により,本件各建物部分の賃料の減額を求めることができるというべきである。
 なお,前記の事実関係によれば,本件契約締結に至る経緯,取り分け本件業務委託協定及びこれに基づき締結された本件契約中の本件賃料自動増額特約に係る約定の存在は,本件契約の当事者が,前記の契約締結当初の賃料額を決定する際の重要な要素となった事情と解されるから,衡平の見地に照らし,借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合における重要な事情として十分に考慮されるべきである。
 (2) 以上によれば,本件契約への借地借家法32条1項の規定の適用を極めて制限的に解し,同項による賃料減額請求権の行使を認めることができないとして,上告人の請求を棄却し,被上告人の反訴請求中,主位的請求の一部を認容した原審の判断には,判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 」


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