実務の友   背信行為と建物賃貸借契約解除
に関する最高裁判例集
2005.08.28 - 最新更新日2006.08.10
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索  引

■ 賃借人の背信行為と賃貸人の建物賃貸借契約の解除に関する判例 -------------------------
     1 最高裁二小判昭和26.04.27民集5巻5号325頁
     2 最高裁一小判昭和26.05.31民集5巻6号359頁
     3 最高裁二小判昭和26.10.19民集5巻11号619頁
     4 最高裁二小判昭和28.01.30民集7巻1号116頁
     5 最高裁一小判昭和28.05.07民集7巻5号525頁

      最高裁二小判昭和28.09.25民集7巻9号979頁
     7 最高裁二小判昭和28.11.20民集7巻11号1211頁
     8 最高裁一小判昭和29.10.07民集8巻10号1816頁
     9 最高裁一小判昭和29.10.26民集8巻10号1816頁
    10 最高裁二小判昭和30.05.13民集9巻6号698頁
    11 最高裁一小判昭和30.09.22民集9巻10号1294頁
    12 最高裁三小判昭和30.11.22民集9巻12号1781頁
    13 最高裁一小判昭和31.04.05民集10巻4号330頁
    14 最高裁二小判昭和31.04.06民集10巻4号356頁
    15 最高裁三小判昭和31.05.08民集10巻5号475頁
    16 最高裁三小判昭和31.07.20民集10巻8号965頁
    17 最高裁二小判昭和31.10.05民集10巻10号1239頁
    18 最高裁一小判昭和31.12.20民集10巻12号1581頁
    19 最高裁三小判昭和32.11.12民集11巻12号1928頁
    20 最高裁三小判昭和32.12.10民集11巻13号2103頁
    21 最高裁三小判昭和33.01.14民集12巻1号41頁
    22 最高裁一小判昭和33.03.13民集12巻3号524頁
    23 最高裁二小判昭和34.07.17民集13巻8号1077頁
    24 最高裁一小判昭和34.09.17民集13巻11号1412頁
    25 最高裁二小判昭和36.04.28民集15巻4号1211頁

    26 最高裁二小判昭和36.07.21民集15巻7号1939頁
    27 最高裁一小判昭和36.12.21民集15巻12号3243頁
    28 最高裁一小判昭和37.03.29民集16巻3号662頁
    29 最高裁二小判昭和38.04.12民集17巻3号460頁
    30 最高裁一小判昭和38.09.26民集17巻8号1025頁
    31 最高裁三小判昭和38.10.15民集17巻9号1202頁
    32 最高裁一小判昭和38.11.28民集17巻11号1446頁
    33 最高裁一小判昭和39.01.16民集18巻1号11頁
    34 最高裁二小判昭和39.06.26民集18巻5号910頁
    35 最高裁三小判昭和39.06.30民集18巻5号991頁
    36 最高裁一小判昭和39.11.19民集18巻9号1900頁
    37 最高裁二小判昭和39.11.20民集18巻9号1914頁
    38 最高裁三小判昭和40.05.04民集19巻4号811頁
    39 最高裁二小判昭和40.06.18民集19巻4号976頁
    40 最高裁三小判昭和40.09.21民集19巻6号1550頁
    41 最高裁二小判昭和40.12.17民集19巻9号2159頁
    42 最高裁一小判昭和41.01.27民集20巻1号136頁
    43 最高裁一小判昭和41.04.21民集20巻4号720頁
    44 最高裁二小判昭和41.10.21民集20巻8号1640頁
    45 最高裁三小判昭和42.01.17民集21巻1号1頁
    46 最高裁三小判昭和44.02.13民集23巻2号316頁
    47 最高裁三小判昭和44.02.18民集23巻2号379頁
    48 最高裁一小判昭和44.04.24民集23巻4号855頁
    49 最高裁二小判昭和45.12.11民集24巻13号2015頁
    50 最高裁一小判昭和47.03.09民集26巻2号213頁
    51 最高裁一小判昭和47.06.15民集26巻5号1015頁
    52 最高裁一小判昭和48.07.19民集27巻7号845頁
    53 最高裁二小判昭和48.10.12民集27巻9号1192頁
    54 最高裁二小判昭和48.10.12民集27巻9号1192頁
    55 最高裁二小判昭和59.04.20民集38巻6号610頁 
    56 最高裁二小判平成08.10.14民集50巻9号2431頁
    57 最高裁二小判平成08.10.14民集50巻9号2431頁
    58 最高裁一小判平成09.07.17民集51巻6号2882頁
    59 最高裁一小判平成09.07.17民集51巻6号2882頁


 1 最高裁二小判昭和26.04.27民集5巻5号325頁 昭和25(オ)87 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸人の承諾のない転貸借と賃貸人の所有権に基く返還請求
(判決要旨)
 土地所有者である賃貸人がその承諾のない転貸借によつてこれを占有する転借人に対して直接土地の返還を請求するについては、賃貸借契約を解除しまたは賃借人の承諾を得るを要しない。
参照・法条: 民法601条,民法612条


 2 最高裁一小判昭和26.05.31民集5巻6号359頁 昭和25(オ)125 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借権の譲渡または転貸を承諾しない家屋の賃貸人は賃貸借契約を解除せずに譲受人または転借人に対し明渡を求め得るか
(判決要旨)
 賃借権の譲渡または転貸を承諾しない家屋の賃貸人は、賃借契約を解除しなくても、譲受人または転借人に対しその明渡を求めることができる。
参照・法条: 民法612条


 3 最高裁二小判昭和26.10.19民集5巻11号619頁 昭和25(オ)370 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  無断で間貸したことを理由として賃貸借を解除しうる一事例
(判決要旨)
 家屋の賃借人が、賃貸人の承諾を得ずに、次々と数人の者から相当の権利金を取つて右家屋の一部に居住させ、さらにその後他の者から保証金名義で三〇、〇〇〇円を受け取り、瓦斯、電燈、水道の料金をも含めて月々少くとも一、〇〇〇円の賃料を徴し、その一家数人を同居させ右家屋全部の使用を許していた場合においては、賃貸人は無断転貸を理由として賃貸借を解除することができる。
参照・法条: 民法612条


 4 最高裁二小判昭和28.01.30民集7巻1号116頁 昭和26(オ)767 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 間貸が民法第六一二条の転貸と認められる一事例
2 無断間貸を理由とする賃貸借の解除が権利濫用にあたらない一事例
(判決要旨)
1 後記(原判決理由参照)の事情にある間貸を民法第六一二条の転貸に外ならないものとしたのは、正当である。
2 後記(原判決理由参照)の無断間貸を理由として家屋全部の賃貸借を解除しても、権利の濫用とはいえない。
参照・法条: 民法612条,民法1条3項


 5 最高裁一小判昭和28.05.07民集7巻5号525頁 昭和27(オ)354 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 無断転貸を理由とする賃貸借の解除後賃貸人が転借人に引きつづき目的物の使用を許した場合と解除の効力
(判決要旨)
 賃貸人が無断転貸を理由として家屋の賃貸借を解除した後、転借人に対しあらたな賃貸等の事由により引きつづきその家屋の使用を許しても、解除の効力に影響はない。
参照・法条: 民法612条


 6 最高裁二小判昭和28.09.25民集7巻9号979頁 昭和25(オ)140 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物を使用させたときは賃貸人は常に契約を解除しうるか
(判決要旨)
 賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第612条第2項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
参照・法条: 民法612条


 7 最高裁二小判昭和28.11.20民集7巻11号1211頁 昭和26(オ)11 建物明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  建物賃借人が賃貸人に無断で建物の一部を営業共同経営契約に基き第三者に使用させる場合と民法第612条
(判決要旨)
 建物賃借人が、第三者との間の飲食店営業共同経営契約(調理販売は右第三者が担当し、賃借人は場所、什器等を提供して売上高の百分の五を取得する約旨)に基き、自己と対等の立場において前記建物の一部を右第三者に使用させているときは、かかる使用関係の設定につき賃貸人の承諾がないかぎり、民法第六一二条第二項による解除の原因となる。
参照・法条: 民法612条(667条)


 8 最高裁一小判昭和29.10.07民集8巻10号1816頁 昭和28(オ)761 借地權確認、家屋収去、土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 賃借権の共同相続人の1人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人から共有持分の譲渡を受けた場合と民法第612条
2 戦時罹災土地物件令第3条の適用を受ける土地賃借権と妨害排除請求の許否
(判決要旨)
1 土地の賃借権の共同相続人の一人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有持分を譲り受けても、賃貸人は、民法第六一二条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。
2 戦時罹災土地物件令第三条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその占有をなす第三者に対し、直接その建物の収去および土地の明渡を請求することができる。
参照・法条: 民法612条,民法601条,民法第3編第1章第2節,戦時罹災土地物件令3条,戦時罹災土地物件令6条


 9 最高裁一小判昭和29.10.26民集8巻10号1972頁 昭和27(オ)214 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借人が賃借家屋において他人を営業名義人とし、その出資を得て営業を管理する場合と転貸
(判決要旨)
 賃借人が賃借家屋において、他人を営業名義人としその出資をもつて営業を管理する旨の共同経営契約に基き営業をしている場合、これをもつて直ちに転貸に当らないとするのは審理不尽である。
参照・法条: 民法612条


10 最高裁二小判昭和30.05.13民集9巻6号698頁 昭和27(オ)1055 家屋明渡等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借権譲渡の承諾撤回の許否。
(判決要旨)
 賃借権の譲渡につき賃貸人が一旦与えた承諾はこれを撤回することができない。
参照・法条: 民法612条


11 最高裁一小判昭和30.09.22民集9巻10号1294頁 昭和28(オ)1146 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸人の承諾を得ないで賃借人の譲渡または賃借物の転貸が行われたにかかわらず契約の解除が許されない場合
(判決要旨)
 賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借権の譲渡または賃借物の転貸をした場合であつても、賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情のあるときは、賃貸人は民法第612条第2項による解除権を行使し得ないものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条

12 最高裁三小判昭和30.11.22民集9巻12号1781頁 昭和28(オ)1368 仮処分異議 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 地盤について所有権移転登記がなされた後に、立木についてなされた保存登記の効力
2 解除が許されないと解すべき一事由およびこれに該当しないと認められた一事例
(判決要旨)
1 土地およびその上に生立する立木をともに買い受けた者が、土地につき所有権取得登記をしたときは、たとえその後立木につき前所有者のため、保存登記がなされても、この登記は無効である。
2 解除権を有する者が久しきに亘りこれを行使せじ、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至つたため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、右解除は許されないと解するのが相当であるが、原審認定の事実関係(原判決参照)の下における解除権の行使は、未だ右の場合に該当するものと認めることはできない。
参照・法条: 民法177条,民法1条2項,民法540条1項,民法612条,立木ニ関する法律1条,立木ニ関する法律2条

13 最高裁一小判昭和31.04.05民集10巻4号330頁 昭和30(オ)604 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸借の合意解約により転借権が当然消滅すると解すべき場合
(判決要旨)
 家屋の賃貸人が、家屋の一部の転貸借につき近く予想される賃借人の家屋退去に至るまでの間を限つて承諾を与えたものであり、転借人もそのことを知つていたときは、右転借権は賃借人の家屋退去と同時に消滅するものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条,民法第3編第2章第7節第3款(617条の前),借家法4条


14 最高裁二小判昭和31.04.06民集10巻4号356頁 昭和29(オ)637 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  債務不履行その他背信行為による賃貸借の解除と借家法第五条の適用の有無
(判決要旨)
 借家法第五条は、賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため賃貸借が解除されたごとき場合には、その適用がないものと解すべきである。
参照・法条: 借家法5条


15 最高裁三小判昭和31.05.08民集10巻5号475頁 昭和29(オ)521 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
   賃貸人の承諾を得ないで賃借物の転貸が行われたにかかわらず契約の解除が許されない場合
(判決要旨)
 賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借物の転貸をした場合であつても、賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情のあるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項による解除権を行使し得ないものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条


16 最高裁三小判昭和31.07.20民集10巻8号965頁 昭和29(オ)110 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 判決の反射的効力を認めたことが違法とされた一事例
(判決要旨)
 土地の適法な転借人およびその者からその所有の地上建物を賃借する者等は、賃借人の土地明渡義務が判決により確定されている場合においても、これがために当然賃貸人の土地明渡の請求を拒みえないものと解すべきではない。
参照・法条: 民訴法201条,民法612条


17 最高裁二小判昭和31.10.05民集10巻10号1239頁 昭和29(オ)860 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借権の譲渡に対し賃貸人のなす承諾の相手方
(判決要旨)
 賃借人のなした賃借権の譲渡に対する賃貸人の承諾は、かならずしも譲渡人に対してなすを要せず、譲受人に対してなすを妨げない。
参照・法条: 民法612条


18 最高裁一小判昭和31.12.20民集10巻12号1581頁 昭和29(オ)466 宅地明渡等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 土地の無断転貸による解除権の行使につき権利濫用の判断が違法とされた一事例
(判決要旨)
 建物所有のための土地の賃貸借につき無断転貸を理由として契約解除の意思表示をした賃貸人が、土地の明渡しを受けてデパートを建設することを企図していた場合、賃借人および転借人の生活上の脅威等原審認定のごとき事実(原判決理由参照)があるだけでは、その解除権の行使を権利濫用とすることはできない。
参照・法条: 民法1条,民法612条


19 最高裁三小判昭和32.11.12民集11巻12号1928頁 昭和31(オ)253 共同住宅明渡等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  2棟の建物の賃貸借と1棟の無断転貸を理由とする賃貸借全部の解除の許否
(判決要旨)
 1個の契約で2棟の建物を賃貸した場合、1棟の建物の無断転貸を理由として賃貸借全部を解除しうるものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条


20 最高裁三小判昭和32.12.10民集11巻13号2103頁 昭和31(オ)276 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  無断転貸終了後における解除の許否
(判決要旨)
 無断転貸により賃貸借契約の解除権が発生した場合、その転貸が終了した一事のみによつては、解除権の行使は妨げられない。
参照・法条: 民法612条


21 最高裁三小判昭和33.01.14民集12巻1号41頁  昭和31(オ)1103 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 1ケ月に満たない転貸により家屋賃貸借の解除が認められた事例
(判決要旨)
 賃借家屋の一部についてなした無断転貸の期間が1ケ月に満たなかつたとしても、原判決認定の如き事情があるときは、賃貸人はこれを理由として賃貸借契約を解除しうるものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条


22 最高裁一小判昭和33.03.13民集12巻3号524頁 昭和31(オ)966 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 債務不履行その他背信行為による賃貸借の解除と借家法第五条の適用の有無
2 物の引渡を求める訴訟において留置権の抗弁を認容する場合と判決主文
(判決要旨)
1 借家法第5条は、賃貸借が賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため解除された場合には、その適用がないものと解すべきである。
2 物の引渡を求める訴訟において、被告の留置権の抗弁を認容する場合には、原告の請求を全面的に棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする。
参照・法条: 借家法5条,民法295条


23 最高裁二小判昭和34.07.17民集13巻8号1077頁 昭和32(オ)816 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借地の一部の無断転貸を理由とする全部解除が有効と認められた事例
(判決要旨)
 賃貸土地310坪6合5勺のうち無断転貸された部分が30坪にすぎない場合でも、賃貸土地が道路に沿つた海岸の波打際に存する砂地で、右30坪および賃借人所有建物の敷地12坪を除いた残余の部分がとりたてていう程の用途に供されていないときは、賃貸人は右無断転貸を理由として賃貸土地全部につき賃貸借契約を解除し得るものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条


24 最高裁一小判昭和34.09.17民集13巻11号1412頁 昭和32(オ)571 売買代金返還請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 賃借権の譲渡と賃貸人の承諾をえる義務
2 履行不能と責に帰すべき事由の挙証責任
(判決要旨)
1 賃借権の譲渡人は、特別の事情のないかぎり、譲受人に対し、譲渡につき遅滞なく賃貸人の承諾をえる義務を負うものと解すべきである。
2 債務が履行不能となつたときは、債務者は右履行不能が自己の責に帰すべからざる事由によつて生じたことを証明するのでなければ、債務不履行の責を免れることはできない。
参照・法条: 民法612条,民法415条


25 最高裁二小判昭和36.04.28民集15巻4号1211頁 昭和32(オ)1087 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 賃貸人の承諾をえないで賃借物の転貸が行なわれたかにかかわらず契約の解除が許されないものと認められた事例
2 右の場合における賃貸人の転借人に対する家屋明渡請求の許否
(判決要旨)
1 店舗用家屋の賃借人が賃貸人の承諾をえないでこれを転貸した場合に、右転貸が賃借人との共同経営契約に基くもので、転貸部分は家屋のごく一小部分に過ぎず、右共同経営のために据え付けられた機械は移動式で家屋の構造には殆ど影響なく、その取除きも容易であり、しかも転借人は右家屋に居住するものではないこと、また、家屋の所有権は賃貸人にあるが、その建築費用、増改築費用、修繕費等の大部分は賃借人が負担し、その上、賃貸人は多額の権利金を徴していること等の事情(原判決理由参照)があるときは、右転貸は賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情があるものであり、賃貸人のした契約解除は無効と解すべきである。
2 前項の場合において賃貸人は転借人に対し転借部分の明渡を求めることはできない。
参照・法条: 民法612条


26 最高裁二小判昭和36.07.21民集15巻7号1939頁 昭和33(オ)719 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借建物の無断増築が契約解除原因に当らないとされた事例
(判決要旨)
 借地上の建物の賃借人が空地に建物を無断で増築した場合でも、増築部分が賃借建物の構造を変更しないでこれに附属せしめられた一日で撤去できる程度の仮建築であり、しかも賃借建物は賃借人が自己の費用で適宜改造して使用すべく家主において修理しない約定で借受けた等の経緯であるときは、賃借人の右増築行為は、建物の賃貸借契約を解除しうる背信行為に当らない。
参照・法条: 民法541条,民法616条,民法594条1項


27 最高裁一小判昭和36.12.21民集15巻12号3243頁 昭和34(オ)596 第三者異議等 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借人の債務不履行による賃貸借解除と転貸借の終了
(判決要旨)
 賃貸借の終了によつて転貸借は当然にの効力を失うものではないが、賃借人の債務不履行により賃貸借が解除された場合には、その結果転貸人としての義務に履行不能を生じ、よつて転貸借は右賃貸借の終了と同時に終了に帰する。
参照・法条: 民法601条,民法612条


28 最高裁一小判昭和37.03.29民集16巻3号662頁 昭和33(オ)963 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃料延滞による賃貸借の解除と転借人に対する催告の要否
(判決要旨)
 適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
参照・法条: 民法541条,民法612条,民法613条


29 最高裁二小判昭和38.04.12民集17巻3号460頁 昭和36(オ)1284 賃借権不存在確認等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 建物賃貸借契約の合意解除を転借人に対抗できるとされた事例
(判決要旨)
 賃借建物で鉄工場を経営していた賃借人が、その事業を自己が代表取締役となつて会社組織にした結果その建物を右会社に転貸するに至つた場合においては、賃貸人は賃貸借の合意解除の効果を転借人に対抗できる。
参照・法条: 民法612条,民法545条


30 最高裁一小判昭和38.09.26民集17巻8号1025頁 昭和35(オ)1251 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 転貸許容の特約と借家法第1条第1項の適用
(判決要旨)
 賃貸借の目的たる家屋の所有権を取得して賃貸人となつた者は、旧所有者と賃借人との間に存した転貸許容の特約をも承継する。
参照・法条: 借家法1条1項,民法612条


31 最高裁三小判昭和38.10.15民集17巻9号1202頁 昭和36(オ)1430 土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 僧侶個人所有の住居兼説教所用建物が宗教法人たる寺院の所有となつた場合に敷地の賃貸借につき民法第六一二条による解除権が発生しないとされた事例
(判決要旨)
 僧侶個人が住居兼説教所所有のために賃借使用して来た土地を本拠として宗教法人たる寺院が設立され、前示建物が同法人の所有に移された場合であつても、右僧侶がその住職として従前どおり家族と共に右建物に居住し、借地の使用関係に実質上の変化を生じない等原判示の事実関係(原判決理由ならびに同引用の第一審判決理由参照)のもとでは、敷地の賃貸借につき民法第六一二上による解除権は発生しない。
参照・法条: 民法612条


32 最高裁一小判昭和38.11.28民集17巻11号1446頁 昭和36(オ)183 土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 借地上建物の仮装譲渡の無効は土地賃貸人に対抗しうるか
(判決要旨)
 土地の賃借人が地上建物を他に仮装譲渡した場合、土地賃貸人は、右譲渡につき民法第九四条第二項にいわゆる第三者にあたらない。
参照・法条: 民法94条,民法612条


33 最高裁一小判昭和39.01.16民集18巻1号11頁 昭和37(オ)322 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  賃借権の持分の譲渡が民法第612条の解除事由にならないとされた事例
(判決要旨)
 建物所有のための土地賃借人たる母がその所有する建物をその親権に服する子との共有名義とし、これにともない敷地の賃借権の持分を譲渡した場合には、賃借地の利用および賃料支払等の実質関係に前後変りがなければ、右賃借権の持分の譲渡は、これについて賃貸人の承諾がなくても、民法第612条による解除の事由とはならない。
参照・法条: 民法612条,民法264条


34 最高裁二小判昭和39.06.26民集18巻5号910頁 昭和37(オ)294 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 無断譲渡を理由とする借地契約解除後の地上建物取得者と建物買取請求権
(判決要旨)
 借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
参照・法条: 借地法10条,民法612条


35 最高裁三小判昭和39.06.30民集18巻5号991頁 昭和39(オ)25 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 賃貸人の承諾をえないで賃借権の譲渡が行なわれたにかかわらず当該賃貸借契約を解除することができないとされた事例
2 右の場合における賃貸人と賃借権譲受人との間の関係
(判決要旨)
1 甲(女)が、乙の借地上にある乙所有建物に乙と事実上の夫婦として同棲し、協働して鮨屋を経営していたが、乙の死亡後、その相続人から建物とともに借地権の譲渡を受け、引きつづき右土地を使用し同建物で鮨屋を経営しており、賃貸人も、甲が右建物に事実上の夫婦として乙と同棲していたことを了知していたような場合は、右借地権譲渡は、これについて賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情がある場合にあたり、賃貸人は民法第六一二条第二項による賃貸借の解除をすることができない。
2 前項の場合、甲は、賃貸人の承諾がなくても、借地権の譲受をもつて賃貸人に対抗できるものと解するのが相当である。
参照・法条: 民法612条


36 最高裁一小判昭和39.11.19民集18巻9号1900頁 昭和39(オ)696 家屋明渡等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借人が個人企業を会社組織に改め賃貸人の承諾なくして当該会社に賃借家屋を使用させている場合に民法第六一二条による解除権が発生しないとされた事例
(判決要旨)
 賃借家屋を使用してミシン販売の個人営業をしていた賃借人が、税金対策のため、これを株式会社組織にしたが、その株主は賃借人の家族や親族の名を借りたにすぎず、実際の出資はすべて賃借人がなし、該会社の実権はすべて賃借人が掌握し、その営業、従業員、店舗の使用状況等も個人営業の時と実質的になんら変更がない等判示事実関係のもとにおいては、賃貸人の承諾なくして賃借家屋を右会社に使用させていても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるから、賃貸人に民法第六一二条による解除権が発生しない。
参照・法条: 民法612条


37 最高裁二小判昭和39.11.20民集18巻9号1914頁 昭和38(オ)451 家屋明渡等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 土地転借権の対抗力
(判決要旨)
 土地賃借人の有する借地権が対抗要件を具備しており、かつ転貸借が適法に成立している以上、転借人は、賃借人(転貸人)がその借地権を対抗しうる第三者に対し、賃借人の借地権を援用して自己の転借権を主張しうるものと解すべきである。
参照・法条: 建物保護ニ関スル法律1条,民法612条


38 最高裁三小判昭和40.05.04民集19巻4号811頁 昭和39(オ)1033 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 土地貸借人が該地上の建物に設定した抵当権の効力は当該土地の賃借権に及ぶか
2 地上建物に抵当権を設定した土地賃借人は抵当建物の競落人に対し地主に代位して当該土地の明渡を請求できるか
(判決要旨)
1 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。
2 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないときであつても、競落人に対し、土地所有者たる賃貸人に代位して右土地の明渡を請求することはできない。
参照・法条: 民法370条,民法87条2項,民法423条,民法612条


39 最高裁二小判昭和40.06.18民集19巻4号976頁 昭和39(オ)144 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借地の無断転貸が賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるとされた事例
(判決要旨)
 宅地の賃借人が賃借地上に判示事情のある同居の家族に建物を建築させてこれにその敷地を転貸した場合には、右転貸につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるというべきである。
参照・法条: 民法612条


40 最高裁三小判昭和40.09.21民集19巻6号1550頁 昭和39(オ)767 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 借地権の無断譲渡について賃貸人に対する背信行為と認められない特別の事情があるとされた事例
(判決要旨)
 宅地の賃借人が借地上に所有する建物を同居の孫に贈与したのに伴い借地権を譲渡した場合において、賃貸人が賃借人の娘むこである等判示のような事情があるときは、右譲渡について賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りない特別の事情があるというべきである。
参照・法条: 民法612条


41 最高裁二小判昭和40.12.17民集19巻9号2159頁 昭和39(オ)422 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  賃借地上の建物が買戻特約付で第三者に売り渡された場合において右建物の敷地について賃借権の譲渡または転貸がなされなかつたものと解された事例
(判決要旨)
 土地賃借人が、第三者に対し、借地上の建物を買戻特約付で売り渡した場合において、当該売買が、実質上、第三者の債権担保の目的でなされたものであり、終局的確定的に権利を転移する趣旨のものでなく、かつ、買戻権がなお土地賃借人に留保されており、また、土地賃借人が前記建物売買後も引き続きその使用を許容されていた判示の事情のもとにおいては、右建物の敷地について民法第612条にいう賃借権の譲渡または転貸がなされなかつたものと解するのが相当である。
参照・法条: 民法612条


42 最高裁一小判昭和41.01.27民集20巻1号136頁 昭和40(オ)163 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 無断転貸を背信行為と認めるに足りないとする特段の事情の存否に関する主張・立証責任
(判決要旨)
 賃借地の無断転貸を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りないとする特段の事情は、その存在を賃借人において主張・立証すべきである。
参照・法条: 民法612条2項


43 最高裁一小判昭和41.04.21民集20巻4号720頁 昭和39(オ)1450 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
1 借地契約における増改築禁止の特約と解除権行使の許否
2 前項の特約がある場合において建物の増改築を理由とする解除権行使の効果が生じないとされた事例
(判決要旨)
1 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは、賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人は、前記特約に基づき、解除権を行使することは許されないものというべきである。
2 前記の特約がある場合において、借地人がその居住用建物の一部の根太などを取りかえ、二階部分を拡張してアパート用居室として他人に賃貸するように改造をしたが住宅用普通建物として前後同一であるなど判示事実(判決理由参照)のもとでは、賃貸人が右特約に基づいてした解除権の行使はその効力を生じないと認めるのが相当である。
参照・法条: 民法540条,民法601条,借地法11条


44 最高裁二小判昭和41.10.21民集20巻8号1640頁 昭和41(オ)792 土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸借契約が解除されていない場合において賃貸人は賃借権の無断譲受人たる占有者に対し損害賠償の請求をすることができるか
(判決要旨)
 賃貸借契約が解除されていない場合でも、賃貸人は、賃借人から賃料の支払を受けた等特別の事情のないかぎり、賃借権の無断譲受人たる目的物の占有者に対し賃料相当の損害賠償の請求をすることができる。
参照・法条: 民法709条,民法612条


45 最高裁三小判昭和42.01.17民集21巻1号1頁 昭和40(オ)537 賃借権確認、賃貸借契約解除無効確認請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 土地の賃貸人が賃借権の譲渡につき承諾をする義務を負う場合と賃借権譲受人の賃貸人に対する借地権取得の主張の可否
(判決要旨)
 土地の賃貸人が調停の合意により将来一定の条件のもとに賃借権の譲渡について承諾をする義務を負う場合において、賃借人が該合意に基づき承諾を求める手続をつくしたときは、賃貸人の現実の承諾がなくても、賃借権譲受人は賃借権の譲受をもつて賃貸人に対抗することができると解するのが相当である。
参照・法条: 民法612条


46 最高裁三小判昭和44.02.13民集23巻2号316頁 昭和42(オ)1382 建物収去土地明渡等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借権譲渡に賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約と賃貸借の解除
(判決要旨)
 賃借権譲渡に賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の書面による承諾を得ないで賃借権を譲渡した場合であつても、右書面による承諾を必要とした特約の趣旨その他諸般の事情に照らし、右譲渡が賃貸人に対する背信的行為であると認めるに足りない特段の事情が存する事実について、賃借人から立証がなされたときには、前記特約に基づく賃貸借の解除は、許されない。
参照・法条: 民法540条,民法612条


47 最高裁三小判昭和44.02.18民集23巻2号379頁 昭和41(オ)429 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸人の承諾を得ない賃借権の譲受または転借が賃貸人に対抗できる場合とその主張・立証責任
(判決要旨)
 賃貸人の承諾を得ないで賃借権の譲渡または転貸が行なわれた場合であつても、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、譲受人または転借人は、譲受または転借をもつて、賃貸人に対抗することができ、右の特段の事情については、譲受人または転借人において主張・立証責任を負う。
参照・法条: 民法612条


48 最高裁一小判昭和44.04.24民集23巻4号855頁 昭和43(オ)1091 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 借地権の無断譲渡について賃貸人に対する背信行為と認められない特別の事情があるとされた事例
(判決要旨)
 夫は宅地を賃貸し妻はその地上に建物を所有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴い、夫が妻へ借地権を譲渡した場合において、賃貸人は右同居生活および妻の建物所有を知つて夫に宅地を賃貸したものである等の判示事情があるときは、借地権の譲渡につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する背信行為とは認められない特別の事情があるというべきである。
参照・法条: 民法612条


49 最高裁二小判昭和45.12.11民集24巻13号2015頁 昭和43(オ)1172 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 土地賃借権の無断譲渡が背信行為にあたらない場合における賃借権譲渡人の地位
(判決要旨)
 土地賃借権の無断譲渡につき、これを賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため、賃貸人が右無断譲渡を理由に賃貸借契約を解除することができない場合には、譲受人のみが賃借人となり、譲渡人たる前賃借人は、賃貸借契約関係から離脱し、特段の意思表示がないかぎり、賃貸人に対して契約上の債務を負わないものと解するのが相当である。
参照・法条: 民法612条


50 最高裁一小判昭和47.03.09民集26巻2号213頁 昭和45(オ)803 建物所有権確認等請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借地上にある建物の売主と敷地賃借権譲渡の承諾取得義務
(判決要旨)
 賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合においては、特別の事情のないかぎり、売主は、買主に対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したものであつて、それに伴い、その賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得る義務を負うものと解すべきである。
参照・法条: 民法612条


51 最高裁一小判昭和47.06.15民集26巻5号1015頁 昭和46(オ)540 家屋明渡本訴並びに反訴請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸家屋の一部の無断転貸を理山に賃貸借契約が解除されたのちに右家屋を譲り受けた転借人の賃借人に対する明渡請求が許されないとされた事例
(判決要旨)
 家屋賃貸人甲が、賃借人乙から丙への家屋の一部の無断転貸を理由に賃貸借契約を解除し、その後右家産を丙に譲渡した場合において、丙が、転借後約三年間転借部分を占有使用して、転貸借による利益を享受していた者であり、しかも、転借に際し、転貸についての家主の了解を丙みずから求めてもよい旨を乙に申し出ていながら、その後承諾を得るための努力を払つた形跡もないなど判示の事情があるときは、丙において、乙に対し、右賃貸借契約の解除を主張し、家屋所有権に基づき乙の占有部分の明渡を求めることは、信義則に反しまたは権利の濫用にあたるものであつて、許されない。
参照・法条: 民法1条,民法612条


52 最高裁一小判昭和48.07.19民集27巻7号845頁 昭和47(オ)968 家屋明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 無断転貸を理由とする解除の意思表示と借家法一条の二の解約申入
(判決要旨)
 無断転貸を理由とする賃貸借契約解除の意思表示は、それ以外の理由によつては解除をしないことが明らかにされているなど特段の事情のないかぎり、同時に借家法一条の二の解約申入としての効力をも有する。
参照・法条: 民法612条,借家法1条ノ2


53 最高裁二小判昭和48.10.12民集27巻9号1192頁 昭和48(オ)68 建物収去土地明渡請求 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 土地の賃貸借契約が賃借人の破産により解除されても信義則上転借権が消滅しないとされた事例
(判決要旨)
 土地が適法に転貸され、転借人になんら非違もないのに、賃借人会社の代表者である賃貸入が、右転借権を消滅させるため、右会社の自己破産を申し立てて破産宣告をえ、これを理由に賃貸借契約を解除するようなことは、転借人に対し著しく信義則に反し、右解除により賃貸借契約が終了しても、転借権は消滅しない。
参照・法条: 民法1条2項,民法612条,民法621条


54 最高裁一小判昭和53.06.29民集32巻4号764頁 昭和52(オ)1111 建物明渡 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸中の不動産に対する競売開始決定後賃貸人のした賃借権譲渡の承諾と譲受人の競落人に対する地位
(判決要旨)
 賃貸中の不動産に対する競売開始決定の差押の効力発生後賃貸人のした賃借権譲渡の承諾は、特段の事情のない限り、右差押の効力によつて禁止される処分行為にあたらず、譲受人は、賃借権の取得をもつて競落人に対抗することができる。
参照・法条: 民法612条,民訴法644条,競売法25条


55 最高裁二小判昭和59.04.20民集38巻6号610頁 昭和58(オ)1289 建物収去土地明渡 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 更新料の支払義務の不履行を理由として土地賃貸借契約の解除が認められた事例
(判決要旨)
 建物の所有を目的とする土地の賃借権の存続期間の満了にあたり賃借人が賃貸人に更新料の支払を約しながらこれを履行しなかつた場合において、右更新料が、将来の賃料の一部、借地法四条一項及び六条所定の更新についての異議権放棄の対価並びに賃借人の従前の債務不履行行為についての紛争の解決金としての性質を有する等判示のような事実関係があるときは、賃貸人は、更新料の支払義務の不履行を理由として、更新されたのちの賃貸借契約を解除することができる。
参照・法条: 借地法4条1項,借地法6条,民法541条


56 最高裁二小判平成08.10.14民集50巻9号2431頁 平成6(オ)693 建物収去土地明渡 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 小規模で閉鎖的な有限会社における実質的な経営者の交代と民法六一二条にいう賃借権の譲渡
(判決要旨)
 賃借人である小規模で閉鎖的な有限会社において、持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても、そのことは、民法六一二条にいう賃借権の譲渡に当たらない。
参照・法条: 民法612条


57 最高裁三小判平成09.02.25民集51巻2号398頁 平成6(オ)456 建物賃料等請求本訴、保証金返還請求反訴 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃借人の債務不履行による賃貸借の解除と賃貸人の承諾のある転貸借の帰すう
(判決要旨)
 賃貸借が賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃.貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。
参照・法条: 民法601条,民法612条


58 最高裁一小判平成09.07.17民集51巻6号2882頁 平成5(オ)486 建物収去土地明渡等、建物収去土地明渡 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
  借地上の建物の譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用収益をする場合と民法六一二条にいう賃借権の譲渡又は転貸
(判決要旨)
  借地上の建物につき借地人から譲渡担保権の設定を受けた者が、建物の引渡しを受けて使用又は収益をする場合には、いまだ譲渡担保権が実行されておらず、譲渡担保権設定者による受戻権の行使が可能であるとしても、建物の敷地について民法六一二条にいう賃借権の譲渡又は転貸がされたものと解するのが相当である。
参照・法条: 民法369条(譲渡担保),民法612条


59 最高裁一小判平成14.03.28民集56巻3号662頁 平成11(受)1220 建物明渡等請求事件 (最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了しても賃貸人が信義則上その終了を再転借人に対抗することができないとされた事例
(判決要旨)
 ビルの賃貸,管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビル1棟の賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において,賃貸人が,賃借人にその知識,経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって,自ら各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れるとともに,賃借人から安定的に賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し,賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたものであること,当該ビルの貸室の転借人及び再転借人が,上記のような目的の下に賃貸借契約が締結され転貸及び再転貸の承諾がされることを前提として,転貸借契約及び再転貸借契約を締結し,再転借人が現にその貸室を占有していることなど判示の事実関係があるときは,賃貸人は,信義則上,賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができない。
参照・法条: 民法1条2項,民法612条,借地借家法34条


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