「入れ歯のはなし」


入れ歯を入れておられる方。これから入れられる方。何かと、不安と御不自由が有るかと思います
「入れ歯」はどんな物か、そしてと上手く付き合うにはどうすればいいのか?
このコラムをお読みになり、少しでも「入れ歯」に対しての理解が深まれば幸いです。


1.なぜ入れ歯を入れなくてはならないのでしょうか?
 
 不幸にして歯を失ってしまうと、いろいろな不都合が出てきます。
噛みにくくなるのはもちろんのこと、前歯なら見た目も悪くなりますし話しづらくなったりします。また、抜けた歯の前後の歯や、相手の無くなった歯は位置も変わってきて、上下の噛み合わせが変わり、上下の顎の高さも変わってきてしまいます。
 歯は親知らずを除いて28本有りますが、歯が無くなるとその分残っている歯にかかる負担が増えます。負担が強すぎると、根を抱いている顎の骨が痩せてきて、その歯もまた寿命が短くなります。また、噛み合わせが全てそろっていると、繊維性の食べ物を噛んだとき、噛みつぶした食べ物の流れで歯の表面をこすり自浄作用が発生します。相手の歯が無いとそれができず、お口の中が不衛生になりやすくなります。
 1本でも歯を失うと、このようなことが起こってきますので、歯を入れる必要があります。入れ方としては、残っている歯に負担が掛かるけれども違和感の少ない固定式ブリッジ(抜けている前後の歯を削り、冠をかぶせ、橋を架けるようにして入れる方法。取り外す必要がない。)と、ブリッジと比べ負担の少ない「部分入れ歯」とがあります。歯周病などで歯が動いていると、噛んだ力がすべて歯にかかるブリッジでは架けた歯に負担が掛かりすぎ、その歯の寿命を短くしてしまう場合もあります。
 このように「部分入れ歯」は見た目や噛めるようにするだけでなく、残っている歯の寿命を短くしないためにも入れておく必要があるのです。

         

                           部分入れ歯                            ブリッジ 


2.入れ歯の調子が悪かったら

a)歯茎が痛いとき
 いくら精密に型を採っても、いくら一生懸命作っても、材料の精度の問題も有り、なかなかぴったりの物を作るのは難しい物です。でも、それを調子良く使っていただけるようにするために、私たち歯科医師と歯科技工士は努力しています。
 入れたときはそれほど痛くなくても、食事をして力が加わったり、長い時間入れていると痛くなったりするときもあります。もし、我慢して入れていると、歯茎に傷がつきすぎてしまい、なかなか治らなくなります。そうなるとその傷が治るまで入れ歯の調子が悪く、使えるようになるまで時間がかかります。つまり、痛ければ無理をして入れなくても良いのです。かといって、痛いからまったく入れないのも良くありません。痛い場合は、次回の来院日の前日一日と、来院日の朝からは入れておいて下さい。ただし食事と睡眠中以外だけです。この一日半くらいの長い時間で、歯茎の良く当たっているところに型がつきます。もちろん食事で強い力がかかってないので、きつい傷はつきません。この型のついたところだけ入れ歯を削り、歯茎の当たりを緩くしてやれば痛みは楽になります。痛いからと言って、全く入れずに来院されても、当たっているところを見つける方法は有ります。しかし、入れていただいてついた型の形や色を見て、歯科医師は入れ歯を削る量を判断していますので、その方が早く入れ歯の調子を出すことが出来るのです。

b)金具のかかっている歯が痛いとき,または、取り外ししにくいとき
 入れ歯が外れないように、歯に金具がかけて有ります。金具が強すぎたりして入れているだけで痛い時は、早く金具を調整する必要がありますので電話で急患の予約をした方が良いでしょう。
 装着時に取り外しの練習があったと思いますが、帰宅されてご自分で出来なかったり、痛みを伴ったりする場合も電話で急患の予約をして下さい。
 また、ゆるくて外れてくる時も電話で急患の予約をして下さい。もし最初は大丈夫でも、取り外しの時に無理がかかって金具が変形してしまう場合もあります。

c)総入れ歯がゆるい
 上の総入れ歯は歯茎を覆う面積が広く、不快感があるかもしれません。しかし、広く覆うことによって、総入れ歯は吸盤のように歯茎に吸い付くのです。歯茎の形は個人差があり、全ての方に落ちない入れ歯を作るのは難しいことです。しかし、通常では上手く行かない場合でも、材料を変えることによって対処できる場合もあります。
 下の総入れ歯は上に比べさらに難しくなります。上と違い、舌があるため上のように広く歯茎を覆うことが出来ません。そのため(よほど歯茎の形が良い場合を除いて)下の入れ歯は上のように吸い着いて安定してはくれません。しかし、ある程度の期間使っていると、舌と頬の筋肉とでその位置をコントロールしてくれるようになります。今回初めて総入れ歯をお入れした方はもちろん、作り替えた方でも、新しい総入れ歯ではすぐにはそう上手くは行きません。それは入れ歯が入った新しいお口の環境に、適応するまでの時間が必要なためです。

d)頬や舌を噛む
 この場合は噛み合わせの調節で解決できる場合がほとんどですが、ある程度新しい入れ歯の高さや噛み合わせに慣れていただく必要がある場合もあります。頬は一度きつく噛んでしまうとその傷が腫れてしまい、よけいに噛みやすくなります。あまり頻繁にこのようなことが起こると、早く調節する必要がありますので、電話で急患の予約をした方が良いでしょう。

e)噛みにくい
 この場合も噛み合わせの調節で改善できますが、慣れも必要です。新しい入れ歯をお入れして2〜3週間で慣れにくい場合は、診察を受けられた方が良いでしょう。

f)上手く話せない
 髪の毛一本入っても気になるくらい、お口の中はデリケートな器官です。そこに入れ歯が入るのですから、最初から上手く話せるわけがありません。これは新しい入れ歯を入れた環境に、発音に関する筋肉や舌等が、すぐに適応することが出来ないからです。早く話せるようになるには、新しい入れ歯を入れてたくさん話すことです。たとえば毎日新聞を声を出して読むなどで、発音のおかしい声を自分の耳で聞くことにより、て次第に修正されて行くのです。


3.入れ歯の使い方とお手入れ

 部分入れ歯は固定式のブリッジと違い、取り外すことに抵抗があり、装着することをためらう方がいらっしゃいます。でも、取り外して、手で持って見ながら洗うことが部分入れ歯は出来るのです。これはお口の中でブリッジをきれいに磨くことの方が数段難しいので、部分入れ歯のもっとも優れている点だと言えるでしょう。
  入れ歯の洗浄剤は汚れを取るとともに、入れ歯についた雑菌を消毒してくれますので、毎日使われることをお勧めします。消毒しようとして熱湯につけられる方がおられますが、入れ歯の材質は熱にはあまり強くありませんので、絶対に行わないで下さい。変形の原因となります。また歯を磨く「練り歯磨き」は使わないで下さい。歯よりも入れ歯のほうが柔らかいので、入れ歯がすり減っていまいます。ますブラシで水洗いをした後、洗浄剤をお使い下さい。
洗い方ですが、お口から取り出して水をかけながらブラシでこすります。部分入れ歯の場合、歯を抱いている金具の付近に汚れがたまりやすいので、直接歯に接しているところは時に念入りに洗いましょう。入れ歯用のブラシや洗浄剤は、受付に有りますのでご覧になって下さい。
 洗われるときは洗面器に水を張って、その上でされると良いでしょう。こうすると手が滑って落として割れたり、排水口から流れてしまったりする事が防げます。
就寝時に外ずされる場合の保管についてですが、必ず洗浄剤や水等につけて乾燥しないようにして下さい。乾燥させると、これも変形の原因となります。


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