#782 BSR5TN-CM
　今まで、2000本以上のいわゆるハイエンドと称される楽器を弾いてきましたが、弾き手と聴き手の双方、そして音楽に確実に良い影響を与え得る素晴らしい楽器の見本と呼べるのが、このBlack Tigerです。
　弾き易く、ストレスを感じさせないネックグリップとボディバランス、人間が存在している限り無くなることの無い、低音楽器の持つ不朽の音色の美しさなど、どんなに大袈裟に表現しても誇大にはなりえない素晴らしさがあります。
　現在PLEKを導入し、入荷時と出荷前にスキャンと調整を行っていますが、Ken Smithという楽器の精度の高さには驚かさせられます。
　良い楽器製作にマジックはない、と言われますが、当たり前にやるべきことを、当たり前のものとして具現化しており、その結果、高い評価を世界中で得ているのがKen Smihです。

#813 BSR5EG-QNX
　Quilted Mapleと、Puepleheartの組み合わせによって生じる、アクセントやコントラストには、惹き付けられるものが多分にあります。
　PLEKでスキャンすると、その楽器が、ある特定のプレイスタイルに特化したものか否か、どういうプレイヤーに向いているか等、様々な事案をかなりの程度推測することができますが、このBSR5EGは、まず弦高の設定にかなりの自由度があり、結果として、幅広いプレイヤーへの強力な訴求力を備えた楽器であることが分かります。
　音色は、柔軟な外周と、程よい食感を備えた芯のあるパスタのアルデンテに例えることが出来るものであり、ローミッドを中心に、雄大な裾野を備えています。
　指板上で起こっている全ての事象、例えば、左手が弦を抑える強ささえをも、アンプを通して尚、聴き手が判断することができる楽器です

#816 BB5EG-GM
　かなり珍しい木目のCocoboloに驚かされますが、もっとも大切な要素である"音"は、Out of This Worldと評すにふさわしいものです。
　トーンのことを聞かれれば、ただただ完璧としか答えようが無く、指弾きはもちろん、スラップにおいても、無数に存在する、弾き手それぞれの異なる好みを無視してしまえるだけの説得力で満たされています。
　このCocobolo Top & Back、Tiger Maple Core、7pc. Bodyは、Melvin Lee Davis氏の楽器と同じ組み合わせですが、その楽器が製作された時点では全くポピュラーでなかったCocoboloを選んだのは、やはり彼が、希有な慧眼の持ち主の類い稀なる演奏家であることの証明であると言えます。
　使用されているCocoboloは、10年以上前にKen Smithが入手したもののせいか、レスポンスが非常に良く、全ての音域にムラの無い圧倒的な説得力があり、完璧であることすらも、この楽器の面白味に溢れる個性の一カ所にしてしまっている楽器です。

#811 BSR5EG-EH
　100人のベースプレイヤーの全てを満足させる楽器というものはありませんが、限りなく多くのプレイヤーを満足させ、評価される存在があるのも事実です。
　Top材と親和性の高いMahogany Coreにより、Macassar Ebony独特の強固なファンダメンタルや、綺麗に伸びる倍音は一層強調され、この楽器の個性として印象付けられています。
　中高域は、アンサンブルの中でカットする主たる要因の一つですが、この部分が有りすぎても耳につく、嫌みのある音色になってしまいますが、このBSR5EGは、その部分に特徴があるものの、程よい甘さがあり、音域の全体が非常にバランスのよいものになっています。
　アンサンブルにおいて、常に良いポジションに収まり、安定したクオリティのある仕事を提供してくれる一本です。

#619 BT4TNV-CM
　現代的な意味合いのモダンやハイファイ的な要素はもちろんありますが、それよりもこのKen Smithという素晴らしい楽器が世に知られるところとなったころの、この、それまでには存在し得なかった、新しい楽器を人々がどのように驚かせたかを感じ取ることのできる楽器です。
　例えとして、面白いのは、1950年代に新しく"正確な音程を持った楽器"を制作するときに、クラシック楽器に造詣がより深かった場合、このBT4が生まれていたのではないかと想像させてくれる、そのようなものです。
　ネックエンドのピッキングでは、１つのノートが、重厚に空間と小節を埋め、ブリッジピックアップ近辺では、小気味の良い、タイトで野太いトーンが野性的に吠えてくれます。
　このタイプの楽器は、往々にして音がきれいなもので、ハイエンド楽器として欠かせない要素の一つとも言えますが、Ken Smithの中ではこうしたラディカルで、力強く、徹底的に弾き倒してしまいたい、と思わせてくれるものも数多く存在しています。
　Preampによる補正は、その優秀性から依然として有効な手段ではありますが、どう弾いてもそれこそ60年前に作られた楽器であるかのような、鯔背でいなたいキャラクターが源流にあり、 地に足のついた、ギターではなく、ベース然たるトーンを常に生み出します。

#586 BSR6GN-FM
　長く自然な減衰を持ったサスティーンによって、エレクトロニクスの優秀性ではなく、この6GNに存在する素晴らしさが、材の良さに起因するものであることが理解できます。
　弦の振動がBodyに突き刺さるような鋭い響き方をし、ベースらしい力巣よさと耽美的でもある、重厚なフォーカスされた低域が大変に魅力的に感じます。
　Ken Smithの5弦ワイドピッチは、一般的な5弦楽器よりもナット部分がわずかに広く、通常であれば、それは弾きにくさとなって露骨に現れるはずですが、それよりもむしろ際立った弾きやすさを誇っており、それは数値でははかることのできないバランスによるものだとは理解していますが、白眉たる存在である6弦という楽器で培った経験とアイディアが活かされているためではないでしょうか。
　そのため、6本の弦を持ってはいますが、それがそうだと思わせない楽器でもあります。
　Ken Smithは、たくさん制作することにも、少量で希少価値を生じさせる製作方法のどちらも意味がなく、それぞれの楽器が弾き手とその音楽にとって良いことが全てであり、良いものを長い間作ることが最も大切としていますが、それは弾き手のみならず、一般的なオーディエンスにとっても美しいと思わせる説得力となっていきます。
　Neck-thruながら、上品すぎない暴れがあり、トライアドをコードにのせるだけでも自然にテンションノートを想起させてくれる楽器です。

#587 BSR6MS-WM
　Neck-thru構造ながら、ひと味もふた味も異なった響き方と感触に虜になってしまう、Bolt-onの、例えばJazz Bass Styleのベースになれているプレイヤーの方にも違和感を与えない楽器です。
　Alderが持つ特有の甘さとは違った、似通ってはいるものの微細な異なった感覚があるのが特徴であり、それぞれの持つピークや特性を上手に融合させるKen Smithの技術によって、MapleとWalnutの相性の良さを強く感じます。
　 ある意味、一般的な仕事に6弦という楽器を導入したい方にとっては、この6MSというモデルは最適な選択肢とも言え、従来のKen Smithとは違った特色があるものの、それが中途半端ではなく、完璧な状態として備わっています。
　究極的なバランスを持つ弾いていて楽しい楽器です。

#588 BSR6MW-WM
　6弦ではありますが、他のKen Smith同様、各弦のつながりは非常に滑らかで、良好なプレイアビリティなど、ストレスフリーという表現がぴったりです。
　がっちりとした堅牢な作りと、柔軟で包容力のある質が備わっており、濃厚な低域と、アンサンブルで弾き手はもちろん、共演者やオーディエンスまでもを魅了してしまうであろうことは想像に難くない、独特のLow Midと高域など、演奏活動における必需品と呼んでしまってさし支えのない楽器です。
　Bolt-onということで、Neck-thruのKen Smithとは異なったネックの仕込み角度等をもっているこの6MWですが、どのようなセットアップが適当であるかということが、自然に分かるようになっており、このあたりも非常に興味深いものがあります。
　もちろん弾き手次第かもしれませんが、その"理解"さえあれば、楽曲に対し、適切かつ音楽的な道しるべを提供し、フロントのプレイヤーに確実な台座を提供できるベースです。

#693 BSR5MS-TW
　Ken Smithという楽器の根底にあるコンセプトの優秀性を具現化した、良いベースと言う範疇に収まり切らない強力すぎる楽器です。
　ヘッドストックにある"S"のロゴは安心と信頼の象徴であり、それは何処に持っていっても、どういう状況でも弾き手を困らすこと無く、確実で明瞭な回答を常にアンサンブルと楽曲にもたらすということを意味しています。
　Ken Smithが、突出して良質の材料を使用し、長年の経験によって裏付けられた技術を用い製作されていることは、すでに良く知られていますが、それ以外に、Ken Smith足らしめているのは、そこにある全てに理論的な裏付けがミックスされているということも非常に大きいものと言えます。
　例えば、Pickupと弦の距離にしても、具体的な数値をユーザーに提供しているメーカーがある一方、Ken Smithでは、"楽器は１本１本個性があって異なるのだから、耳で判断して最適なものを見つけるべき"語っている一方、オイルフィニッシュにおいて、どの工程を何回行うか(Ken Smithでは、単一のオイルを用いて仕上げるのではなく、複数のオイルを幾重にも重ねて塗装しています)によって、どれくらい外気の影響を受けにくくなるか、どこまで行えば長期の使用に際して、生じるであろう問題を回避できるであろう可能性などの裏付けを、はっきりした数字によるデータとして持っています。
　これはあくまでのその一例にすぎませんが、Ken Smithがなぜ優れているかということは、考え得るべき全てのことを当たり前のように、楽器の全ての要素に織り込んでいるからでしょう。

#836 BT6EG-AM
　池部楽器店様の35周年記念モデルとして製作させていただいた、Ash Top & BackのBT6EGです。
　グレース・ケリーの纏っていた美しいミルク色のドレスのような色艶を持つAshの魅力以上に、圧倒的な印象を弾き手にもたらすのは、その音色でしょう。
　良い材を使用することは、良い楽器にとっての絶対条件の一つですが、例えばピックアップやプリアンプに優れたものを使用しても、その１点だけで素晴らしい楽器にならないのと同様に、優れた楽器としての過不足を感じさせない為には、バランス感覚と経験によって生み出される組み合わせの妙が必須であり、それこそが、Ken Smithを現在のような確固たる地位を築かせたと行っても過言ではないでしょう。
　このBT6EGには、古いAshを用いるべきであった、この楽器にとっての最善の選択肢であったという十分な説得力があるおとはおかしな話かもしれませんが、そう考えれば、決して不思議なことでは無いかもしれません。
　通常であれば、その良さを最大限活かし、最良のものしか世に送り出さないというKen Smithの変わることのない基本姿勢に基づき、Solid Bodyとしてしか使用されないAshですが、それらと異なるAshであれば、それに応じた適切な使用方法があるということが、このBT6EGからは強く感じられ、通常のAshに混ざりKen Smithの下に届いたという入手の経路を考えれば、やはり木材・楽器製作のエキスパートならでは楽器ということになります。
　密度があり、力感溢れる躍動的なトーンは、紛れも無くAshのそれであり、多様な表現を可能にする、真に優れた本物の楽器、傑作です。

#829 BB4P-TN
　十分なシーズニングが施されたMorado指板とBolt-onの組み合わせによって生じる、カラッとして力強く前に出るトーンが特徴です。
　ねばりがり、贅の削ぎ落とされた分厚いトーンから、荒々しい音色まで幅広く備えており、様々な表現を可能にし、弦振動が全体を貫いていく、良質の材料によってのみ生じる恩恵を最大限享受することのできる楽器です。
　Ken SmithのLow-Bは、そのタイトさから、E弦をならしているかのように感じさせるものですが、このBB4Pは、その逆で、E弦がB弦であるかのように響いています。

#751 BSR5TNE-CM
　弾き手が重視する要素や、楽器に求めるものは様々ですが、トーンやバランス、プレイアビリティや、ボディバランスなど、そのいずれにおいて、間違いなく頂点に位置しているのがこのBlack Tiger Eilte5です。
　良くあるセールストークとして"弾き込めば良くなる"というものがありますが、こういう楽器の存在を知っていれば、それは単なる言い訳でしかなく、スタート地点はすでに山の頂きにあるべきであり、弾き手という最終的に楽器を完成に導く最大の要因によって、さらに上を目指せるものが"良い楽器"のあるべき姿です。
　好みを別にすれば、確実に弾き手や共演者、そしてオーディエンスにも一つの確固たる価値観を与える楽器です。

#750 BSR5EG-DN
　端正で上品かつ穏やかな佇まいのFlame Shaduaは、角度によって、その美しさを変えます。
　軽く抜けてくれる力強い中域と、粘りのある中低域をトーンの奥底に含んでおり、セットアップの良好さと相まり、タッチの加減が非常に効果的にアンサンブルに貢献してくれる楽器です。
　ベースプレイヤーであれば、誰もが虜になってしまう、地に足のついた安定したキャラクターは、フォーカスされ、大変引き締まったものですが、それがアンサンブルにおいて浮いてしまうことが無く、主張しながら調和するという絶妙なバランスを持っています。

#616 BSR5TNF-CM
　最良の材を惜しみなく投入できるのは、Ken Smithが過去の教訓から得た経験を基に構築した環境によるもので、それはいわば一種の企業努力ではありますが、実際にこういう楽器に出会えってしまうと、そういう楽器を製作しているルシアーの存在に対して感謝の気持ちでいっぱいになります。
　業界のスタンダード＝多数派が必ずしも正しく無い、ということを証明するかのような楽器製作をKen Smithは行ってきているわけですが、その矜持を、大変に洗練された形で具現化している希少な例と言えるでしょう。
　自分自身、数多くの素晴らしい楽器に幸運にも触れることができていますが、中でもKen Smithのフレットレスは、必ず手元に置いておきたい、欠かせない１本になっており、実際に使用している楽器は入れ替えが何度かありますが、同じスペックを持っている5TFNは2000年より一度として手放したことがありません。
　良質な材の持つ、堅牢かつ柔軟な性質によってのみ得ることのできる、特有のトーンと温かみにあふれており、それは、多くの楽器に精通していればいるほど、奥底に存在する強力な力と鳴って感じ取ることができるものです。
　フォーカスされたLow-Bは、もちろんG弦までの均一な発音、音色、弾きやすさ、質感、全てにおいて完璧な楽器です。

#784 BSR4EG-UQ
　非常にオーセンティックかつ、プリミティブなトーンが魅力的な楽器です。
　60年代の楽器のトーンを彷彿とさせる感がありますが、楽器の構造や、優秀なピックアップの存在も相まって、より材の質感を堪能でき、また、ナチュラルと感じさせるキャラクターがあり、EQや、弾き手のタッチの加減によるコントロールに忠実に反応してくれます。
　美しく独創的なEnglish/European Mapleの木目は、他では見ることが出来ず、この楽器の雰囲気を唯一無二のものとしており、楽器製作の前にその結果を見通しているKenが強く薦めていたことも納得できる、ルックスと音を兼ね備えています。
　非常に頼りがいのあるベースという楽器に必要な中低域を持っている為、汎用性の高さがあり、そのWestern Quilted Mapleの特徴である深さと濃密さは、攻撃的なトーンからJazzなどに向く調和的でスムースさまでをも創出します。

#812 BSR5EG-PW
　剛胆な中低域を中心として広がっていく、昂然としたトーンは、ある意味見た目の上品さや美しさを、予想外に裏切ってくれ、どのようにして使うべきかを弾き手に自然に教えてくれる楽器です。
　新しく手に取った瞬間から、急激な変貌を感じるという経験は少なからずありますが、このBSR5EGは、弾き手に次々と新しい側面を発見させ、そのポテンシャルを容易に解放させてくれるという生きた楽器です。
　Purpleheartの根底にあるキャラクターは、Macassar Ebonyに類似のものをみることができますが、基音を増強しつつ、Walnut Coreの中域を程よく緩和するという親和性に関しては、明確な違いをみることができます。
　ローアクション、ソフトタッチでも、十二分にその存在感を誇示し、音楽的なマッチングを見せてくれる素晴らしい一本です。

#814 BSR5MW-WM
　良質の木材特有の柔らかい弦振動と温かみのあるトーンが特徴の楽器です。
　Bolt-on, 3pc. Neckによるオープンな響き方は、Neck-thruのそれとは赴きを異にしますが、現在では価格面でも同等の楽器になっており、完全に弾き手の好みで選択する、より主観を反映した選択肢に、このMWはなっています。
　PLEK入らずの行き届いた調整をKen Smithでは当たり前のものとしており、常に低域を安定して担える王道のトーンをもった、全てが丁度良いところに存在しています。

#817 BSR4EG-FW
　Walnut Coreの特徴である、バランスのとれた平均化された音域とエッジのあるMidだけでなく、弾き手はもちろん他のプレイヤーをも楽しませる深みもあります。
　Neck Pickupの音色は、Ken Smithの音色の評価として良く言われるように絶品であり、プリミティブかつラディカルな音色は、多くの真摯なプレイヤーの欲するところです。
　PLEKのスキャンでも音詰まりは一切無い素晴らしいセットアップが施された、軽量でバランスの良い楽器です。

#781 BSR5EG-PH
　Macassar Ebonyに非常に似通った印象を受けますが、高中域に僅かの差異を感じます。
　このBSR5EGの良さ、他には無いと感じさせる、全ての根源になっている、強固なファンダメンタルによって引き出される、安定した、締まった低域と中低域に、Bolivian Mahoganyが絶妙な甘さを加えており、それらが、弾き手に感動を与え、イマジネーションを刺激します。
　Body Topの美しく上品な紫と指板の黒、そしてCore材のMahoganyに持つオレンジが、7pc. Bodyによってそれぞれが引き立たせられ、トーンは語るべくもありませんが、見た目にもより一層の魅力を感じます。
　Active Circuitを全く使わなくても十分ですが、Bassを少しブーストすることによって生じる独特の粘りは、非常に感動的であり、筆舌に尽くし難いものがあります。
　Purpleheartは、やはり最良のTonewoodの一つと言って間違いありません

#714 BSR5MW-WM
　Ken Smithでは、2009年7月以降Bolt-onに関しては、完全な受注生産に切り替え、その価格も総じて上昇しましたが、作る手間に関しては、Neck-thruのモデルとは変わらず、強いて言えば、Finishによって製作時間が異なる(Oil FInish = 約一ヶ月、Lacquer = 約二ヶ月) 位の違いしかなく、MやMWをメインで使い続けている、第一線で活躍するミュージシャンも少なからずいる、廉価版という位置づけとして製作されているものでは無かったことからも、ある意味納得の企業判断であったと思います。
　十分にシーズニングされた材によって組み上げられている楽器は、軽いタッチでも、ネックとボディはもちろん、ハードウェアまでもが一体となって、十分に弾き手に応えてくれるものですが、この5MWもその例外ではありません。
　単板の方が鳴りが良い、という意見もありますが、それは決して全てに当てはまるものではなく、設計のコンセプトはもちろん、製法も違えば、材料も異なるわけですので、その全てを一括りにしてしまうことが正解でないということは、例えばこの楽器を弾けば容易に理解できるでしょう。
　Ken Smithは、ラミネート構造を楽器製作において、一般的なものとした製作者の一人ですが、 その理由には、はずれを作らない手段としてのもの、ということが一つとして上げられるでしょう。
　Low-Bの良い楽器は徐々に増えてきていますが、バランス、音色なども含めて、パイオニアでありながら、依然として頂点に君臨しており、価格ではなく、好みで選べるのがKen Smithです。

#756 BSR5TN-CM
　Black Tiger Seriesは、Ken Smithの中でもその特徴を端的に備えている楽器であることは間違いなく、その完成された素晴らしさはいつも賛嘆に値するものです。
　人間同じ経験を何度も重ねると、そこには飽きや、マンネリズムは生じるのは別に珍しくないことですが、検品をさせていただく上で、かつて一度もそれらを感じること無く、より一層の感動をKen Smithはもたらしてくれています。
　それはやはりクオリティの維持と向上に対する最善を尽くすことと、彼が手本としている弦楽器達がそうであるように、100年後にも、なお、評価され続けられる楽器作りを至上命題としているからこそでは無いかと思います。
　通例、新しい楽器には弾き手が慣れる時間を必要としますが、Ken Smithにおいては、それらの姿勢と、真に良質な材料、そして熟練の技術と、洗練されたコンセプトの融合の結実によって、他のどの楽器よりもその為に要する時間が間違いなく短いものとなるでしょう。

#755 BSR5EG-KF
　Koaは、弦楽器の材料として希少かつ高価でありながらも、こだわりのあるメーカーで使い続けられている材料ですが、その光沢のある、常に魅了されてしまう見た目の美しさ以上に、音色にその理由を見いだすことができます。
　Top材の特徴をある意味もっとも引き出し、それぞれの楽器の個性の主要な部分とせしめているKen Smithにおいては、字面では同じように評されるPoplarの何倍ものプレーンな、Koa材の特質を存分に感じることができます。
　それでいて非常に質の良い透明な質感も備わっており、Claro Walnut Coreによってそれはより一層特徴的なものとなっています。
　材のキャラクターに言及している資料には、よく"Koaは中域に特徴のある材"という記述を見かけますが、 Ken Smithというフィルターを通してみれば、世の中にある材の中で最もフラットであり、昔の一般的な再生環境では、それが、ただ単に再生しきれていなかっただけなのかもしれません。

#783 BSR5TN-CM
　力強くベースらしい低域と、密度が濃くボリュームのある中域、琴線に触れる美しい高域を持った、妥協の無い製作姿勢によって導かれた"クオリティ"に溢れる楽器です。
　精度の高さは、時に無機質さにもつながり、弾き手に弾く楽しさを感じさせない理由にもなり得ますが、このBSR5TN(Black Tiger)からは、非常にオーガニックで、良質の材料によるあたたかさを感じます。
　音作りで悩むことは無く、プレイヤーを"弾く"ことだけに専念させてくれ、アンサンブルの形態を問うことも無い、常に確実かつ適切な仕事をさせてくれる楽器です。
　独特の中高域の癖は、Ken Smithの特徴ですが、これはアンサンブルにおいて、きっちりと役割を果たせる大きな理由となっています。

#749 BB5FE25-FT
　100人の弾き手の全てが手放しで良いと頷く楽器は存在しませんが、好みや価値観の違いを軽々と超越してしまう例外もあります。
　5弦ではありますが、High-C仕様になっており、多弦楽器製作の先駆者でありながら、依然として頂点に君臨しているKen Smithの持つ、完成度の高さや、エレクトリック楽器という区分けに全く意味を持たせない、純粋に美しい"音域"を堪能できる楽器です。
　見た目の良さのみに限定して考えれば、その点で合格点を与えることのできる材は、依然として入手は難しくないと言えます。しかし、楽器が完成した時点で、すでに最良のものたる確信を弾き手に与えてくれる質の部分でも納得できるものは、消費という要素を加えてみれば、年々減ってきているのが事実であり、それは作り手であるメーカーが最も良くわかっている部分でもあります。
　その中において、出し惜しみをしない、する必要の無い、常に本気であることが分かり易い形で感じることのできるのが、Ken Smithであり、この25th Anniversary Modelには、入念な下準備によって支えられている、あるべき全てのものが存在しています。
　１つ１つの音が、その場にある雰囲気を音楽的に支配します。