ライブレポート
Kenny G の巻



07/02/2004(Fri)
at 大阪厚生年金会館



一般人に「サックスプレイヤーと言えば誰を思い出すか」と聞けば、おそらくまず最初に挙がるのは彼の名前だろう。サックス界という結構オタク(!?)な世界の人間である割には、サックスに全く関係ない一般人にも「ああ、あの人ね」と言わせられるほどの知名度。まあそれも頷ける話かなあ。サックスのインスト音楽を世界に広く知らしめたのは、彼なのだし。


アタシがKennyGのコンサートへ行くのは、意外にも今回が初めて。いったい何をしていたんだか、前日の睡眠時間はわずか
3時間半。寝不足に加えてあの音楽じゃ、もしやちょっとヤバいんじゃないかと思っていたら....案の定、あまりの気持ち良さに一瞬落ちてしまった事数回。あはは(爆)


Gさんのショウは、想像していたよりもサービス良好でございました。客席後方から演奏しもって入場、客席をゆ〜〜〜っくりと練り歩いてステージに向かっていくGさん。それだけでも「へぇ、こんな事するんだ」って意外なカンジだったけど、それ以上に、彼の演奏に迫力があったのにビックリ。いつもは穏やかな曲でふわ〜っと吹くのが彼の定番なのに、一曲目の演奏でサックスから飛び出したのは、ちょっと攻め系のアグレッシブな音。いつものイメージと違ったから、すごく新鮮なカンジだったなあ。


ショウが始まってわずか10分たらずで、Gさんお得意の大ワザ「循環呼吸」が登場。これは、
鼻から息を吸いながら、同時に口から息を吐く、という驚くべき必殺技である。彼はこの循環呼吸を使ってロングトーンをカマしながら、約5分間ほどに渡って客席前部を一周してしまった。循環呼吸を知ってる人なら「ああ、あれね」って思うだろうけど、前知識がなかったらそりゃービックリよねぇ。どうやら循環呼吸を知らなかったらしいアタシの近くにいたお客さんは「なにあれーーーー!?!?」と、ひたすら驚いていた(笑)


しっかし何より驚いた事に、この必殺「循環呼吸ロングトーン」、音が全然ヤセない。フツーだったら音がグラグラと揺れて不安定になったり、尻すぼみ状に音がヤセてしまったりしそうなもんだけど、Gさんは全然ヤセない(←『Gさんが痩せない』んじゃなくて『Gさんの音が痩せない』ね・笑) ちなみに彼、この循環呼吸を45分間連続で行い、ギネスブックに載っているそうな。ホントは何時間も続けられるらしいんだけど、
キリがないから、とりあえず45分でやめちゃったんだって。すげー!!!!


彼のステージングは、けっこう面白い。おそらく必死になって覚えたんだろうなぁ、日本語を使って積極的に観客とコミュニケーションを取ろうとしていた。そんな真摯な姿勢に、すごく好感が持てる。しかもこの日本語、かなりフツーじゃない。他の来日アーティストがよく使う「ニホンニコレテ、トテモウレシイデス」とか「アリガトゴザイマース!!」などの必須フレーズではなく、
短文・重文・複文を駆使した、そりゃあもう素晴らしい日本語なのである。


「日本語、勉強しました」
「マクドナルド、どこですか?」
「スターバックス、どこですか?



と、とっぱなから笑いを取り、つかみのトークは完璧。しかし彼はそれだけにとどまらず、循環呼吸についてまでを日本語で解説してしまった。


「先ほど、ワタシがやった長い音(←循環呼吸の事) あれは、鼻から息を吸って、口から息を吐きます」
「どうやるか、見てみたいですか?」
「それでは、マイクを通してお聞かせします」


はっきり言って脱帽である。もしや彼は、
循環呼吸を20カ国語ぐらいで説明できるんじゃなかろうか?せ・びやーん!!


「それでは、私の友達であるバンドメンバーの紹介をします」
「カリフォルニアから来ましたー、ピアニストの○○ですぅ」
「ニューオーリンズから来ましたぁ、パーカッショニストの▽△です〜」
「次の曲はー、◇◇ですぅ」


スーツ姿でソプラノサックスを手に持ち、「次の曲は・・・・」などと、自ら日本語で曲紹介までしてしまうGさん。こんな事を言うとヒジョーに失礼なのだが、その姿が

『ちょっと胡散臭いキャラを持つ、結婚式の司会者兼バンドリーダー』

のように見えて仕方がなかった(核爆) まあアホな私見はともかく、とても丁寧に練り上げられたMCは賞賛に値する。ここまでMCの準備に時間をかけるアーティストなんて、他にいるか? 彼のステージに対する熱心さに、非常に感銘を受けた次第である。


肝心の曲はというと....まああんなカンジですわ(笑) さすがスムースジャズの草分け的存在なだけあり、泣かせ系バラードがてんこ盛り。『Paradise』みたいなテンポのあるヤツを、もうちっと多くやってほしかったかなあ。アンコールでは、アゴが外れそうなほどの指回りでクラシカルな曲を披露。「これって128分音符ぐらいか!?」っていうぐらい、とにかくめちゃめちゃ指回りが早いの!!! オペラグラス持ってたのに、それで見る事をも忘れさせられるぐらいスゴかった(驚)


それと合わせて、彼の十八番ギャグ(!?)
「新幹線のアテンション音」もソプラノサックスで披露。前からハナシは聞いてたけど、実際に聞くとかなり笑える。 こーゆー人達って、こんなチョコっとしたアテンション音でも音符で認識しちゃうんだろうなあ。しかし、マジなクラシカル曲と新幹線の音を同時に出してくるところ、確かに「音楽の可能性は無限だ!!」とは言うけど、このギャップはなんなんだ一体(爆笑)


到底マネできないほどの驚異的なスキルを持ちながら、『ちょっと胡散臭いバンドリーダー』的なハズした雰囲気も匂わせてくれるGさん。十分に神々しい存在なのに、イヤミなトコロが全く感じられない。むしろ、彼の素朴な人間味が、見ていてとても気持ち良い。そういったトコがまた、彼のいいところなんだなあ。ステージに立つ彼を見て、アタシはそう思った。