「斑尾ジャズ参加にあたっての心得」を伝授してくださった諸先輩方のおかげで、幸先良く最前列中央というベストポジションを確保できた私とBさん。迫力ある各アーティストのステージを間近で観る事ができた。
それぞれがとても素晴らしいステージだったが、日本での知名度の面から言えば、今回のフェスティバルにおける最大のウリはキャンディ・ダルファー・バンドだろう。アップテンポ揃いのセットリストで攻めてきたという事もあり、ジャズ・ピクニックのトリを務めた彼女達のステージは、最初から観客も踊りまくりだった。アンタ達、どこで彼女を知ったんだ!? と、どう見てもサックスやジャズとは縁遠そうな男性達からは「きゃーんでぃーーーーー!!!!!」という野太いコールまで巻き起こり、なんだかアイドルっぽいノリさえ感じられた。曲は一応ファンク&ジャズなのにねぇ(笑)
ところで、私とBさんはこの斑尾で、あるモットーを掲げていた。
「目立ったモン勝ち」(笑)
「どうせなら派手に何かやらかしたいですよねぇ。あわよくば、アーティストに存在アピールできるかもしんないし」という、いかにも関西気質な心意気で今回のフェスティバルに臨んだ私とBさんは、あらゆる「お目立ちグッズ」を準備していたのである。
その筆頭とも言えるアイテムが「シャボン玉製造サックス」なるもの。サックスの形をした両手サイズのオモチャで、ベルの部分に石鹸水を入れてマウスピース部から息を吹き込むとシャボン玉が飛び出す、という仕組みだ。私とBさんは、キャンディさんのステージの間、これを手にしてゴキゲンで踊っていた。
ジャズ・ピクニックの全プログラムが終了した直後から、早くもステージ横にはキャンディさん目当てにヤマのような人だかりができた。「あらぁ、キャンディさんって人気あるのねぇ」と、そのファン層の広さに改めて驚きつつ、例によってプレゼント(純和風の扇子)を持参していた私も、その一行に混ざった。
けっこうな行列だったにもかかわらず、接近遭遇は案外簡単だった。しかし、問題はその後、である。今回の私の目標である「オランダ語で喋ったる!!」は、果たして達成できるのだろうか。
ってか、アタシの蘭語、ホンマに通じるん?
これで発音不良で通じなかったらハジもいいとこだよなぁ(不安)
しかし、ここで試さん事には7ヶ月の努力もムダになる。持って行ったリードケースにサインをしてもらった後、プレゼントを差し出しながら思い切って
「Ik breng u een cadeau(プレゼント持って来たの)」
と言ってみた。すると
「cadeau!? わーお、thank you!!」
なんと、バッチリ通じちゃったのである。
ぎょえーっ!!!!
アタシの蘭語、ネイティブに通じた!!!!
「ホテルに戻って開けるねー!!」と、にこやかに返してくれたのも嬉しかったが、それよりも自分のオランダ語があっさり通用してしまった事に心底驚いた。しかも、初めての実践(「実戦」とも言えるかも)の相手が、よりにもよってキャンディさん。こんな事ってあり得るん!?!?
「あははは....通じちゃいましたね」
半分チカラが抜けたようになりながらBさんにヘラヘラと笑っていたが、私の目は早くも次なるターゲット、トーマス・バンクを捕らえていた(←おいおい・笑)
キャンディ・ダルファー・バンドのキーボード・プレイヤーとして活躍しているトーマスは、キャンディさんの公私に渡る良きパートナー。打ち込み系のダンサブルな曲でも彼のセンスの良さは十分に堪能できるけど、私は彼が作るバラードが大好き。それに加えてあのガタイ、あのお顔立ち。実は個人的に好みのタイプでもあったりする(笑)
「トーマスーーー!!」
私とBさんのモットーである「目立ったモン勝ち」は、早くも効果を現していたようで、呼びかけると「あー、最前列で踊ってたヒトタチ!!」と、チッキリ覚えてくれていた(嬉) 彼は、演奏している時からオモチャのサックスに気がついていたらしく、不思議そうに眺めて言った。
「これ何?」
「シャボン玉が出るんだよ。今日は出さなかったけど」
「明日も(ライブ観に)来る?」
「もちろん」
「じゃあ明日はシャボン玉出してもらおうかな」
「りょうかーい!!」
お望みとあらば、何だってやっちゃいます(笑)
トーマスと一緒に記念写真も撮る事ができ、満足度100%なAmandaさん。そうこうしているうちに、ファン・サービス(ホンマにサービス良かったです。サインを待っていた人ほぼ全員に接してはりました)をひと通り終えたキャンディさんご一行は、ホテル行きのバスに乗り込んでいった。目的も達成し、すっかり満足しきってボーッとしていた私の横で、突然Bさんがバスを指差して「あーーーーーっっっっ!!!!」と雄叫びを上げた。
何事?
「Amandaちゃん、ほらほら!!」
バスの中で、シールド付きのバスの窓を開けようと数人が必死になっているのが見えた。しばらく頑張っていた彼らだったが、その窓はどうしても動かないらしく、開けるのを諦めたようだった。しかしその次の瞬間、キャンディさんがこちらを見ながら手に何かを持ってヒラヒラと動かしているのが見えた。
あれ何?
扇形のモンが動いてる....って.......あれはもしや??
そのもしや、である。キャンディさんが持っていたのは、私がプレゼントした扇子だったのだ。
「あーーーーーっっっっ!!!!」
大笑いしながら、私とBさんはバスに向かって手を振った。
「バスの中から僕達の姿を見て、手にしてた包み紙を突然スゴイ勢いでバリバリ開け始めたんだよ。なんだろうと思ったら、Amandaちゃんが渡した扇子だったんだ」
バスが走り去った後、Bさんがそう教えてくれた。
キャンディさんの機転の良さとサービス精神に、心から感動した一瞬だった。
オマケ:
オランダ語では、「プレゼント」の事を「cadeau(カドー)」といいます。
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