(左から、ゲイ=イー・ウェスターホフ、エイオス、ヘイリー・エッカー、タニア・デイビス)
葉加瀬太郎が属していたクライズラー・アンド・カンパニーや、
古くは女性三人(だったかな?)グループのClassic Crashなど、
クラシックとpopsとの融合を目指しているartistはたくさん存在します。
そんな中、プレイの良さだけでなく、visualの美しさでも勝負する
新しいカルテット・グループが注目を集めています。
その名もbond(ボンド)
大阪でのライブレポートと共に、彼女達の斬新な音楽スタイルをご紹介します。
bondな人達 「絆=ビジョンの統合」という願いを込めて名づけられらたカルテット・グループ「bond」は、第一ヴァイオリンのHaylie Echer(ヘイリー・エッカー/オーストラリア・パース出身)、第二ヴァイオリンのEos(エイオス/イギリス・ウェールズ出身)、ビオラのTania Davis(タニア・デイビス/オーストラリア・シドニー出身)、チェロのGay-Yee Westerhoff(ゲイ=イー・ウェスターホフ/イギリス・ヨークシャー州出身)という4人のメンバー構成。全員が幼い頃から楽器を手にし、名門と言われる音楽院で英才教育を受けてきた本格派のクラシック・プレイヤー。その素晴らしい才能は彼女達に数々の音楽賞をもたらし、エリザベス女王やアイルランド首相など、国家元首の前で演奏するという名誉あるチャンスを得るための貴重な財産となった。 優秀な成績で音楽院を卒業後、それぞれソリスト、トリオ、アーティストのバックバンド・メンバーとして活躍する。特にベーシストでもあるゲイ・イーにはStingやSpice Girlsなどのrock/pops系アーティストのステージ経験もあり、クラシック以外の音楽にも親しんでいる事がうかがえる。 共にオーストラリア生まれで古くからの友達だったヘイリーとタニア、そして一緒に室内楽演奏をしていたエイオスとゲイ・イー。彼女達がユニットを組むきっかけとなったのは、QueenやDavid Bowieなどのコンサート・プロモーターとして活躍していた奇才、Mel Bushとの出会いだった。彼のマネージメント・スキルと4人の若手ヴァイオリニスト達によって結成されたユニット「bond」は、クラシック音楽にありがちな固定観念を一切排除し、これまでの音楽とは全く違う新感覚のサウンド作りを目指した。その結果、クラシック音楽をベースに、rock/pops、ラテン、ハウスなど、タイプの全く異なるジャンルをミックスさせ、これまでになかった新しいサウンドを築き上げる事に成功した。 2000年8月にイギリスでデビューを飾ったbondは、彼女達の狙いどおり、そのユニークなスタイルとインパクトでヨーロッパ中を興奮させ、多くのfanがついた。2001年9月には、ロンドンのRoyal Albert Hall*でショーケースを開催するほどのビッグな存在となり、最近ではMTV Asia Awardsのステージでも演奏を披露するなど、活動の場を大きく広げている。また、先ほどのSalt Lake City オリンピックでは、フィギュアスケート・男子シングル部門の金メダリストであるアレクセイ・ヤグディンが、ショート・プログラムとエキシビションの演技でbondの楽曲を使用していた。この事からも、彼女達の知名度の高さがわかるだろう。 *Royal Albert Hall:ヴィクトリア女王の夫であるアルバート公の記念会堂として、1871年に完成した劇場。主にクラシック音楽が演奏されるが、The BeatlesやRolling Stonesなど、世界的に有名なロック・グループもこの舞台で演奏を行っている。イギリス版カーネギーホールって感じでしょうか。 |
脱・ステレオタイプ 音楽のジャンルの壁を打ち壊すというビジョンと希望を「bond」という名前に託し、彼女達は、型にはまらない豊かな想像力と個性で新しい音楽を生み出しています。先にもたくさんのアーティストがクラシックと他の音楽を融合させていましたが、彼女達は、これまでのアーティストが創り上げたclassical-crossoverの世界を更に進化させたとも言えるでしょう。つまり、従来のように、既成の伝統クラシック音楽にpops風のアレンジをかけるのではなく、クラシック系サウンドとpops系サウンドの両方を一から創作し、うまく混ぜ合わせてしまうんです。もちろん、ヴィヴァルディなど、昔ながらの名曲をモチーフにした楽曲もあり、そういった作品もまたステキなんですけどね。 本当はこのグループ、1999年にはデビュー可能な状態だったらしいんです。でも「3秒聞いただけでbondの曲だと分かってもらえるような音楽を創ること」を目標としていた彼女達は、独自の音楽を確立させるべく、デビューにじっくりと時間をかけたそうです。その思い、少なくとも私には届いています。デビュー・シングルとなった『Victory』は、一度聞いただけで耳から離れなくなるほどの馴染みやすいフレーズでしたもの。 また、彼女達は音楽だけでなくvisualの面でも、これまでのクラシック界の常識とは一線を画しています。今回のアジア・ツアーでも5人のバックバンド(ドラムス、キーボード、パーカッション、ギター、ベース)を携え、スティックを振り回しながらステージを所狭しと動き回り、他のアーティストと変わらないactiveなperformanceで熱気溢れるショーを披露。雑誌にセミ・ヌード写真を掲載したりしていますしね。ハッキリ言って「クラシック」という言葉から浮かぶお堅いイメージで彼女達を見ると、ド肝を抜かれまくる事は間違いありません(笑) 残念ながら、クラシック界の一部では彼女達の音楽に対する反感もあるとか。しかし、これは裏を返せば、彼女達の存在が音楽界に大きな影響をもたらしているという事の現れだと思います。「卓越した個性」を極限まで求めた結果、彼女達は完全に独自のスタイルを生み出す事に成功したと言っても過言ではないでしょう。 |
bondと出会った場所 何のことはありません。半年ほど前にフラッと立ち寄った、神戸の某CDショップです(なんの変哲もなくてゴメンね・笑)「イギリスで一大旋風を巻き起こしたセクシー・ストリング・カルテット!!」とかいう、かなりこっぱずかしいキャッチフレーズを掲げた専用コーナーが作られていたんです。そのコピーだけなら見向きもしなかったハズなんですが、モニターに映し出されていたビデオクリップに釘付けになりました。もともとクラシックは嫌いじゃないし、クライズラー・アンド・カンパニーの音楽も好んで聞いていたので、特に違和感を覚える事もなく彼女達の世界に同調できたんですよね。ビデオクリップのエキゾティックな雰囲気に惹かれ、その場で速攻「ハイ、まいどあり」というワケです(^^;) |
bondのオススメ楽曲 2000年8月にデビューしたばかりという事もあり、発表されているアルバムはまだ2枚だけ(来日記念として作成されたスペシャル版を除く)なので、今回は特にお気に入りなbondの楽曲をご紹介します。 『Victory』 bondのファースト・シングル。大きく3つのフレーズに分かれているのですが、それぞれが独特&馴染みやすく、イヤでも一度聞いただけで覚える事ができるぐらいです(ウソじゃないって、ホントホント) このビデオクリップはキューバで撮影されたもので、情熱的なサルサの雰囲気を画面いっぱいに堪能する事ができますよ。余談ですが、どこで聞いたんだか、うちの母親がこの曲を知っていてビックリしました(笑) 『Viva!』 ミニアルバム『Viva!』に収録されています。ヴィヴァルディ『四季』より<冬>をモチーフとした曲です。とは言え、イントロから超ド派手なデジタル系のオーケストラサウンド、そこに容赦なくダンサブルなアレンジが加わって「あら、これってホントにヴィヴァルディ?」って感じで、見事に輪廻転生してます(笑) でも、すごくまとまりのいい仕上がりで、クラシックが苦手な方もすんなりと馴染めるはずですよ。ふと思ったんですが....まさかこのタイトル、ヴィヴァルディの名前から取った??(謎) 『Alexander the Great』 「アレクサンダー大王」というタイトルからは到底想像もつかないような、明るくてpopな曲。ファースト・アルバム『Born』に収録されています。拍子取りがちょっと変則的なので、とても楽しく聞く事ができます。なかなかリズムが取れなくて、別に演奏するワケでもないのに必死でリズム取りの練習をしてしまいました(笑)しかしなぜこのタイトル? それがいまだに疑問なんですけどね。 |