[1.犯罪が増えるわけ]

 

 最近、世の中が物騒になってきたという話をよく聞く。

 わが国においても、治安の悪化が問題になっているようである。よく聞かされる

話によると「少年と外国人による犯罪が増加している」からということらしい。

 

 本当だろうか?

 私の見る限りにおいて、増加しているのは少年や外国人に限ったことではなく、

成人の犯罪の方が目に付く。それも、動機が了解不能にみえるものが増えてきている。

 しかし、いわゆる一般常識の豊富な人々にとっては、そんなことは問題ではなく、

少年や外国人のトリビアルな犯罪のほうが問題であるらしい。

 

 今、「トリビアル」といったが、これには異論も多いと思われる。しかし、私の目

からは、少年や外国人の犯罪が多いのは「あたりまえ」である。

 その原因は・・・実は簡単な答えがある。

「少年の身でも可能なことが相対的に増えたから」

 できることが増えたのだから、当然悪事の可能性も増え、成功率も上がる。

これが唯一の答えであり、これ以外の理由はたいした問題ではない。

 

 原因をモラルの低下や教育などに求めるのは誤りである。

 なぜなら、昔から子どもは元々モラルなど理解していなかったからである。

「昔はよかった」ように感じられるのは、昔は子どもの身でできることがわずかだった

ために、犯罪を企図しても成功率が低かったというだけのことである。

 

 では、一般常識人の多くが目をそらしている、成人の不可解犯罪増加の理由は?

 それは、属している集団の「建前としての」常識と構成員の「本音としての」常識が

今や乖離しつつあるからである。その結果、成人の「常識に基づく」行動は、集団に

とって「非常識な」ものとなる。

犯罪とは集団にとって「非常識な」ものの極値であるから、構成員にとっての「常識に

基づく」行為が、(全部ではないが)場合によっては犯罪となりうることになる。

 

 では、これからどうなるのか?

「非常識な」行為を行なうものは、集団からは排除される。しかし、排除されたものの

方が圧倒的に多かったら?

 そのとき、我々が属している社会は一変しているに違いない。排除されたはずのもの

が作る集団こそ新しい「社会」となるのだから。

 

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